チートオリ主による、蒼かな太平記 作:テカサナ
俺達は校庭に場所を移して、転校生と合流した。
「っと言うわけで、お前たちの講師になった訳だ。宜しくな」
「うぁー講師って、日向さんだったんですか!まさかの再会でしたね!」
どうやら、二人は既に面識があるらしく、すぐに打ち解けあった。俺はと言えば、完全に浮いている。
「あのー日向さん、この方は?」
転校生が、不思議そうにこちらを見ている。振り向く際、ピンク色のロングヘアーがなびいた。
(うむ。写真だけではよくわからなかったが、中々の美人だ。性格も良さそうだ。これなら、俺が居ても差し障りは有るまい……)
「あぁーこいつの名前は司馬十六夜。クラスメートだ」
「転校生ではないんですか?では、なぜここに?」
「それは、先生からの指示だ。よくわからないが、倉科さんと一緒に講義を受けることになった」
「そうなんですか!よろしくお願いします、司馬さん。倉科明日香っていいます!」
そう言って、彼女は手を出してきた。
(握手をしたいんだろか……?ならば、こちらも出さなくはならないな……)
「よろしく、倉科」
俺は無難に手を出して、握手した。彼女は笑顔だったので、こちらも一応笑顔で返しといた……今の俺達の姿は、端から見れば、カップルに見えないこともない。
………すると、なぜか、背後に物凄い悪寒を感じた。自慢じゃないが、俺は大抵のことにはもの落ちしない。そんな俺がびびるくらいの悪寒だった。
俺はゆっくりと上半身を回し、背後を見た………
……すると、同じクラスの鳶沢みさきと……目が赤く光ってる、真白の奴がいた。目の光りからは、一切の感情が感じられない程冷たかった。
(意外だな。真白の奴、あんな目出来たのか……?しかし、それがなんで俺に向けられてるだ……?)
「なんで、君らまでいるのかな?みさきはともかく、有坂」
日向が溜息つきながら、当然の質問をしてくれた。
まず、みさきが
「悪友がこれから悪さしようとしてるのに、それを止めないわけにはいかないじゃない」
っと、お茶らけた感じで言ってくれたお陰で、場が和んだ……しかし、
「……そうですよ。悪さする先輩には、お仕置しなくちゃいけないですよね」
っと、真白がトーンの無い冷たい声で言ったので、一気に冷めてしまった。一緒に来た鳶沢までが、真白の豹変振りに戸惑ってしまった。そんな風に皆が固まっていたら、日向が小突いてきた。目を見ると、小声で「なんとか、しろ!」、と言われた。
(……何で、俺がそんなことをしなくちゃならないんだ?そもそも、何で真白は冷たい目で俺を見ているんだ?)
とは思いつつも、真白の機嫌を治すため……いつもの手を使った。
「…今日は、真白の家行こうかな」
そう言うと、さっきの表情から一変して、笑顔になった……
「あの~~日向さん、この方達は?」
置いてきぼりにされた、倉科は不思議そうに尋ねた。
「あ~別に気にしなくていいぞ。そんな重要じゃ…」
昌也が言い終わる前に、みさきと真白は高速で、少女に接近した。
「はじめましてー。2年C組の鳶沢みさきでーす。つねにお腹を空かせたキュートな女子高生で、うどんとお菓子をくれたら、とごでもついていきまーす」
「はいはーい。一年A組の有坂真白です。十六夜先輩の配下というか、しもべというか、そんな感じで楽しくやってまーす」
日向が二人が居た事情を聞いたが、どうやらただの興味本位らしい。日向は無視しようとしたが、二人は積極的に介入してきたので、意識せざるおえなくなったので、仕方なしに二人も講義に参加させた………
日向の講義は正に教科書通りだったので、俺からしたら本当に退屈だった。退屈過ぎて、あくびがでそうだった
。この調子では暇つぶしにすらならない。
それも仕方ないだろう。人間とは既知の物を再び教わることほど、つまらないことはないからだ。人間というのは常に未知を求める。しかし未知が既知になった瞬間、再び新しい未知を求める。人生とは総じて、そう連続だ……
とりあえず聞くだけ聞いといたが、意識は別の所にあった。
「それじゃー今日の講義はここまで!」
その言葉で、俺は意識を元に戻した。一応耳だけは働かせていたが、やっぱり全部知ってる内容だった。
「それでは、もう俺がここに居る理由はないな……」
俺はそう言って、早々に退散した。日向は何か言いたげだったが、何を言ってこなかった。
「先輩、一緒に帰りましょう!」
「好きにしろ」
「はい………!」
「……あの、先輩、家に寄って頂けるんですよね」
帰り道、突然真白は体をもじもじさせながら言ってきた。
「あぁーそうだったな。腹も減ってるし、調度いいや」
「ただいまー!」
上機嫌の真白は、大きな声で言った。
「おかえりなさい……あら、十六夜くん。来てくれたのね」
この人は、真白の母「有坂牡丹」。夫と一緒にうどん屋を経営してる人だ。
「…邪魔します」
「先輩、あそこの席で待っていて下さい!すぐにうどんをお持ちするので!」
真白は慌ただしく、二階に上がっていった。これまた凄い勢いで降りてきた。部屋に荷物を置いてきたのだろう、降りてきた真白は何も持ってなかった。
「いらっしゃい、ゆっくりしてってね。貴方が居ると、真白が凄い喜ぶもの」
牡丹さんは、水を置きながら言ってきた。
「……善処します」
……この人は普段はおしとやかだが、怒る時は怒る。この前、真白を泣かせそうになった時、もの凄い勢い右ストレートを顔面に喰わせてきた。それも中々の威力で、俺は意識を失ってしまった……それ以降、俺はこの人を怒らせないようにしている。
「うふっ、相変わらずね。あっ、お金のことなら心配しないで。真白の大切な友達だもの。そんな友達からお金はとれ」
「…そういう訳にも、いかないでしょう。俺はべつに施しを得たいがために、ここにきたわけではありません」
そう言うと、牡丹さんは嬉しそうに笑った。
「うふっ、そういうところも変わらないわね。なんだ、かんだ言って、結局、人の利になる様に貴方は動くのだから」
「買いかぶりですよ……ただ、そうしたいから、するだけです……」
少ししたら、エプロン姿をした真白が、うどんを持ってきた。旗から観たら、小学生かと思う程、周りの店員との身長差があった
「お待たせしました!私が丹精込めて持ってきたので、味わって食べて下さい!」
「……相変わらず、香ばしい匂いだ。食欲をそそられる」
うどんには無駄なトッピングはしていない。しかし俺はそれでいいのだ。俺は断固素うどん派だ。
「…うむ、悪くない」
うどんを啜る、一気にうどんの風味が口に広がった。それと同時に、うどんが口の中で蕩ける感じがした。まるで、上質の肉のようだ……
「それはそうですよ。私の気持ちが込もってるんです…………あと、え~と、その」
真白はまた体をもじもじさせていた。そして、弱冠頭をこちらに突きだしてきた……撫でて欲しいのだろうか?
横目で牡丹さんを見ると、笑いながらも凄い迫力がある。多分無視したら、殴られるな。
「どうですか……?」
「美味しいよ」
不安げに見る真白の頭を撫でながら言った。
「ふにゃゃゃゃゃ~~」
真白は気持ち良さそうな声した……こうしてみると、猫に見えないこもない。
「うふ、こうして見ると、まるで夫婦みたい」
「!!!おかーさん!」
真白は顔を真っ赤にして、声を荒らげた。
(この人、何かと俺と真白をくっつけたがるけど、何を考えてるんだろう。真白確かに俺になついているが、それは決して恋愛感情ではない……と思う……多分)
「ふぅ~~~~、ごちそうさま!」
結局、数回おかわりしてしまった。しかしその分腹は白いもので埋め尽くされている。
「では、お勘定お願いします」
「あら、気にしなくていいって言ったのに」
「いえ、そういうわけにもいきませんから………3万あれば足りますよね?」
俺は空っぽの財布から、なけなしの3万を出した。しかし牡丹さんは、受けとるのを拒否した。
「いいのよ。でも、その代わりいざなぎ君、また真白と遊んであげてくれる?あの子、十六夜くんと遊べる日を何より楽しみにしてるのよ」
「ちょ、お母さん!」
「いいじゃない。本当のことでしょ?」
「……それはそうだけど……」
真白はまた顔を真っ赤にして、もじもじしていた。
「だからね?お願い」
「………まぁー考えときます。しかし金は受け取ってもらいます」
俺は無理矢理金を牡丹さんに握られた。
「あら、あら、十六夜君」
「俺は先程払うと言いました。だったら、それは必ず払います。マイペースな俺ですけど、自分の言葉を違える程落ちぶてはいませんつ」
そう、俺は有言実行主義だ。言ったら、必ず成功させる。
「ふっふっ……」
「何がおかしいんですか……?」
「いや、本当に素直じゃないと思っただけよ」
(……はて、この人は何を言ってるのだろう。俺は常に正直に生きている。それを素直ではないとは……もしかして、脳にいく栄養が全て胸にいってしまったのであろうか……?)
「十六夜君、今失礼なこと思った?」
「……気のせいですよ。疲れたんじゃないんですか?」
「よかった、なぜか胸を悪く言われて気がしたの。そしたら、またパンチをしなきゃいけなかったわ」
……時々、この人はエスパーなんじゃないかと思う時がある……。