アフチャンネルが凱旋門に迫ってて笑いましたw アフチャンネル…人気なんやね、これは凱旋門が終わったやらないと(使命感)。
※なお、アフチャンネルの質問は感想欄で受けております。追記に質問したい質問などを書いてアフちゃんにぶつけてください。
前置きが長くなりましたが、どうぞ
金色じみた鹿毛の髪を靡かせる『樫の高木の密林』の異名を持つウマ娘。
肩にかかるほどの綺麗な鹿毛の髪に吸い込まれそうな水色の瞳は真っ直ぐに私の方を見つめている。
「はじめましてかな? 聞いてた通りお人形さんみたいに可愛いね」
「……どうも」
ハイシャパラルさんのその言葉に軽く頭を下げて答える私。
2番人気のハイシャパラルさん、だが、正直、今回の人気投票に関してはさしたる差は全く無い、私もシンボリクリスエスさん、ダラカニ、そして、このハイシャパラルさんも実績から考えれば誰が1番人気になってもおかしくはないのだ。
だが、その中でも私が1番人気に選ばれた事実は変わりはしない、そうなれば他のウマ娘達が警戒するのはなんの不思議もないだろう。
「今回、君と走るのが楽しみでね、ほら、ここ最近、少し退屈してたからさ」
「……退屈、ですか?」
「そうそう、でもやっぱり凱旋門はいいなぁ、強いウマ娘が集まるこのレースは楽しいよ」
そう言って、ハイシャパラルさんはゆっくりと私に近づいてくる
そして、何故かいつの間にか壁側に寄せられる私、それを見ていたハイシャパラルさんは勢いよく壁に手をついて顔を近づけてくる。
なんと、私、ハイシャパラルさんに壁ドンされました、ひぇ、顔が近い。
そして、顎をくいっと持ち上げられると耳元でゆっくりと私にこう語り出す。
「君には以前から個人的に興味があったんだ……。だから、少し賭けをしないかい?」
「えっ……?」
「君、案外、好きだろう? こういうのは。それとも私と賭けをするのは怖いのかな?」
挑発的で色っぽい言葉遣いで私にそう問いかけてくるハイシャパラルさん。
ひゃーイケメン、普通のウマ娘とか女の子ならここらで堕ちちゃうんでしょうけれど、生憎私ですからね。
私はうーんと顎に手を置いて何かを考えるような仕草を取ると、ハイシャパラルさんにこう告げる。
「ほほぅ、ギャンブルならば何度も全裸になっている私に勝負を挑むとは面白い」
「それは胸を張って言うことではないけどね」
私のキリッとした表情からの返しに顔を引きつらせるハイシャパラルさん。
何度負けて裸にひん剥かれた事か、多分、トレセン学園で私以上にセクハラされ、私以上に服を脱ぎ、私以上に乳を揉まれたウマ娘は居ませんよ。
凄い、トリプルでやばいですよねよくよく考えたら、パンツの行方不明率もトレセン学園一位です。
「では、単刀直入に言おうか? 私が勝ったら君をウチのチームに引き入れたい」
「え? 私をですか?」
「是非とも私のフィアンセになって欲しいんだ」
「いやいや、普通パートナーでしょ」
皆さんに悲報です。なんとこの人、やばい人だった。
なるほど、海外では同性愛に関して寛容だとは聞いてましたけどここまでド直球に言われたのは始めてでしたね。
あれ? これ、対決する相手間違えてませんか? ブライアン先輩とかドーベル先輩の方が適任なのではないだろうか。
凱旋門を前にシリアスで張り詰めた空気が一変、なんと求婚されるの巻、なるほど、私がウェディングドレス云々とか話してたせいかこれ。
ハイシャパラルさんはニッコリと笑ったまま、まるで王子様のような立ち振る舞いで私にこう告げ始める。
「いやはや、なんせ君はあのダラカニを一度破ったと聞いてね? ……今、全世界のトレーナー達がこぞって君に注目してるんだよ、リトルプリンセス」
「プリンセス……お、おぅ……」
まさか、私がお姫様と呼ばれる日が来ようとは思いもよらなかったな。あれ? これってもしかして私、口説かれてる?
なるほど、なんとなく、ハイシャパラルさんが言わんとしてる事はわかりました。
つまりは引き抜きですかね、……こんな事、以前もどっかであったような気もしますけど。
「引き抜きの話なら私は……」
「一つ忠告しておこうか、このまま君があのチームに居るのなら、いつか絶対に壊れる」
「ッ……! ど、どうして……!」
「どうして? それは君が一番理解しているんじゃないのかい」
私の言葉を遮るように真剣な眼差しで見つめてくるハイシャパラルさん。
私はその問いかけに思わず口を噤んだ。何故なら、ハイシャパラルさんが言わんとしてる事の意味は大体理解しているからだ。
ハイシャパラルさんはそんな私に対して言葉を続ける。
「君は最早、至宝なんだよアフトクラトラス。私は君の全てのレースのビデオを見た、素晴らしいし感動した事さえある、まるで、あの人の再来かと思ったよ。だけどね……」
ハイシャパラルさんは改めて私の肩をポンと叩くと悲しげな表情を浮かべていた。
一体なぜ、ハイシャパラルさんがここまで私の事を気にかけてくれるのかよくわからなかった。
ハイシャパラルさんはゆっくりと口を開き語り始める。
「君はあの人に迫る……いや、越えれる事ができる才能があるんだ。だからこそ、ウチに来て欲しいあの人の後継として、我がチームにね……」
「えっと……それは」
「私が勝ったら来てもらう、我がチームの中で唯一無二、最強を誇るウマ娘、リボーさんの後継者として」
それだけ告げると、ハイシャパラルは踵を返して私の前から立ち去っていった。
は? 私が? 誰の後継者だって?
いや、まさかね、今、リボーって言いませんでしたかね、ハイシャパラルさん。って事はあのリボーさんと同じチームって事!?
しかも、目が本気でした。あれは、本当に私の身体の事を思い、告げている眼差しでしたね。
なんでその事をハイシャパラルさんが見抜いていたのかは不思議でしたが、まさか、ここまで買われてるとは思いもしませんでした。
すると、その会話を聞いていたあるウマ娘が私の元へとやってくる。
長く束ねられた綺麗な黒と白が入り混じる芦毛の長髪、透き通るような白い素肌が見える露出が高いジーンズのショートパンツ。
だが、その目は以前、私が出会った時よりも荒々しく、勝ちに飢えている者のような獰猛な眼差しであった。
「……イギリスダービー以来ね」
「ダラカニ……さん」
そう、彼女の名はダラカニ、私が出てくるまでこの世代で最強と謳われていたウマ娘である。
だが、以前のような余裕さは全く無かった、私を見るその眼差しは前回の雪辱を一気に拭い去り、全力で叩き潰さんとする恐ろしい眼差しだった。
イギリスダービーまで、ダラカニは自分が負ける事は絶対に無いと信じて来た。それを打ち崩した代償を払ってもらう、そう心の内に秘めて彼女はこの日を迎えたのである。
「ハイシャパラル、シンボリクリスエス、そして、アンタ……私が纏めて潰してやるから覚悟しときなさい。……以前の私と思わない事ね」
気迫のこもった私に対する宣戦布告、ダラカニさんはそれ以上、多くは語らなかった。
その事はレースで証明して見せる、真の強者とは多くを語る事なく行動で示すとばかりの態度である。
私は立ち去っていくダラカニさんの背中を見ながら、以前とは異なる彼女の体つきにも気がついていた。おそらく、あの敗北で私は余計なものを目覚めさせてしまったのかもしれない。
この三人のウマ娘、おそらく、欧州で走ったどのレースよりも高く強大な障害になるに違いない。
「……凱旋門……か……」
私は明日のレースの難しさを改めて認識させられました。
幾つもの日本のウマ娘達が挑み散っていったレース、そして、未だに誰もが成し遂げられない偉業。
ウマ娘として生まれたからには目指すべき世界最強という頂、その頂に手が届くレース。
そして、同時に欧州三冠の最後のレース。
それに勝つには身を切る思いで、全身全霊を持って挑まなくてはならないであろう事を私はこの時、覚悟しつつあった。
そして、迎えた凱旋門賞当日。
会場は満杯、そして、世界各国からこのレースを見ようとあらゆるウマ娘達が会場に足を運んだ。
無敗、世界最強、世界最速、世界最長などなど。
その世界で一番を極めたウマ娘達が一同に集まり注目するこのレース。そんなレースの一番人気に私は皆から推された。
「アフトクラトラス! アフトクラトラスが今登場致しました。物凄い歓声です!」
私の登場に皆が湧く、これまでに負けた事の無い至高のウマ娘、中には私を無敗のウマ娘である怪物、リボーの再来としている人々もいる。
だが、それは関係ない、私は私だ。
今、踏み締めている凱旋門のターフの上にいるのは誰でもない、私なのだ。
大歓声の中、私は静かに歩き、まっすぐに凱旋門のゲートを見つめる。
ついにここまで来た、死ぬほどの練習を耐え抜き、姉弟子やライスシャワー先輩の背中を追い続けていた毎日。
だけど、今は。
「アフちゃん先輩頑張れー!」
後輩にその背中を見せる番になった。
張り上げるように私に声をかけてくるドゥラメンテちゃんの言葉は届いてる。そして、私を支えてくれた皆の声だって届いてる。
負けるな、勝ってこい、お前なら絶対やれる。
どれだけ、心強いだろう、私が背負っていたものと一緒に背中を押してくれる、そんな気がした。
「さあ、凱旋門賞! やはり、注目はアフトクラトラスでしょう! 欧州三冠ラストレース! 立ち塞がるは日欧米の中でも選りすぐりのG1ウマ娘達です! 日本の至宝は今日、その頂に届くのでしょうか!」
凱旋門を中継しているテレビの実況の言葉に固唾を飲んで見守る日本の全国民。
そして、世界中のウマ娘やその関係者達。
ずっと昔に夢を与えられていた私は、今、間違いなく夢を与える側になっていた。
私はゲートに向かって歩きながら、シンボリルドルフ生徒会長から譲り受けた外套を握りしめた。
Eclipse first, the rest nowhere (唯一抜きん出て、並ぶ者なし)。
この言葉とこの外套をルドルフ生徒会長から譲り受けたからには私には責任がある。
いつも問題児として、怒られては来たが、それでもルドルフ生徒会長は私にこれを預けた。
トレセン学園の皆の夢と思いも背負って欲しいという願い。
ならば、それに応えなければ私じゃないだろう。
運命の凱旋門のゲート、私は静かにそこに足を踏み入れる。
レース開始を後は待つだけ、皆は静かに各々スタートを待つ。
私はいつものようにクラウチングスタートの構えを取り、その時を静かに待った。
ファンファーレが鳴り響き、静まり返る会場、そして……。
目の前の夢へと続くゲートが今開いた。