さあ、皆さまお待ちかねウイニングライブのお時間がやって来ましたよー!
私の歌とか需要あんのかね、ない気しかしないんだけども。
いや、流石に凱旋門のウイニングライブだからね、真面目にやらないと私消されちゃいます。
なんだったら、その場で裸にひん剥かれてもおかしくないですからね。
「帰りたい、帰国しましょう」
「ダメに決まってます。ほら、行きなさい」
「姉弟子ー! 一緒に歌ってくださいよぉ」
やだやだーと駄々をこねる私。
だって、私だけだと基本、やらかししかしませんしね、きっとこれは私とペアで歌う人がいないからいけないんだという結論に至りました。
そんな私が駄々をこねている中、誰かが私の胸をムニっと背後から鷲掴みにする。
「ひゃあっ⁉︎ ちょ、ちょっと‼︎」
「あぁ〜気持ちいい〜……。やっぱり先輩の身体は柔らかいです〜」
揉み揉みと私の胸を容赦なく揉むドゥラメンテちゃんは悦に浸っていた。
私も胸は敏感なので思わず背筋がビクンと反応してしまいます。皆最近触りすぎではないかね、私の胸。
私の胸をなんの遠慮もなく揉んでくるなんてこの娘も随分と図太くなりましたね、全く、誰の後輩だ!
あ、私でしたっけ? そう言えばそうでした。
「そしてパンツは薄いピンクと……」
「私は今までこんな堂々とセクハラしてくる後輩に会った事がありません」
「良かったですね、巡り合えましたよ」
「何も嬉しくないんだが」
肩をぽんとしながら私のスカートを摘み上げ、パンツを覗いてくるドゥラメンテちゃんに顔を引きつらせる私。
どうしてこんな風に育ってしまったんだろう。
最初はあんなに私をリスペクトしてくれたはずなのに、おかしいなぁ。
あ、そうだ、良いこと思いついた。
「よし、君に決めたっ!」
「はい?」
「お前もライブで歌うんだよ、あくしろよ」
「え、えぇ⁉︎」
えーじゃない、決まった事だ諦めたまえ。
私だってな、何故か関係ないサクラバクシンオーさんのスプリンターズステークスのウイニングライブを歌わされた事があるんだぞ!
それに比べたらなんて事は無い、無名の私がG1の席で単独ライブした時に比べたらな!
日頃、私にセクハラしてるんだからこれくらいして当たり前である。パンツ見学料みたいなもんだ、私のパンツはタダではない。
だって、ネットで流出してるのなんて何百万円とかしますからね今。
ちなみに落札者は毎回おんなじ名前という恐怖、誰が落札してるのかは大体知ってますけど。
「なんで私が凱旋門のウイニングライブなんかに! 無理です! 無理!」
「無理という言葉はアンタレスにはないのですよ、ドゥラちゃん」
「そ、それは先輩達だけですよぅ……!」
何を言うか、私だってな、何回か死んでるんだよもう。
何度、三途の川を渡った事か、その度に義理母から首根っこ引っ掴まれて連れ戻されてきたんだぞ。
でも、出来れば死後にまで来ないで欲しいと思う、せめて安らかに死なせて欲しいじゃん?
「そういうわけで、準備しろい! 歌う曲は決めてるんですよ一応ですけど」
「えー……」
「良いんですよこういうのは適当で、振り付けわかんないならソーラン節でも踊ってればいいですから」
「先輩、よくそれで会長から怒られませんでしたね」
いや、普通に怒られたんですが? 何か?
いやもう、怒られるのにビビっていたら何も出来ませんからね、私なんてほぼ毎回怒られてますし、ウイニングライブ。
前回なんて調子こきすぎて煽ってましたからゲンコツが4つぐらい炸裂しましたよ、解せぬ。
「まあ、なんにしろ楽しめばええねん、細かい事は後でどうとでもなります」
「な、なるほど」
という事で、ドゥラちゃんとコラボが決まりましたーパチパチー。
適当に言いくるめればこんなもんよ、さて、歌う曲ですが、もう決まってるとお話しましたよね?
あ、大丈夫です、今回はおふざけはなしでいきますから。流石に凱旋門のウイニングライブでふざけたりなんかしたら殺されるどころの話じゃ済みませんからね。
冷静に考えてここは普通にやるのが無難というやつです。
さて、そのライブのその全貌をお見せしましょう!
ライブ会場はお客さんで大賑わい状態。
私とドゥラちゃんはすでに衣装に着替えて、万全の状態です。
毎回思うんですけど、私の衣装って本当、いろいろ露出高いですよね、いや、別にいいんですけど、可愛い衣装なんでね。
皆、ペンライトを持って今か今かと私が来るのを待っています。いやーこれだけお客さん入ってくれると暴れ甲斐がありますよね。
凄まじい音が鳴ったと思いきや、私が会場のど真ん中からゆっくりと現れます。
「Rise 空には太陽が〜♪ Force あなたには強さが 似合う♪」
そして、背中合わせで現れたドゥラちゃんもマイクを握りしめたまま声を振り絞り歌いはじめます。
そう、私といえばやきう、やきうと言えば私、これ以上ぴったりな曲ってないと思うんですよね。
そして、会場は盛り上がり始めました。
「Days 涙は夢をみて♪ Stage 未来を描いては 掴む♪」
「世界中 風さえ在るのなら♪ どこまでも ぼくらは飛べると誓い合う♪」
「絆〜が見えた♪」
「見えた〜♪」
瞬間、爆音のようなものが炸裂し、会場から火花が巻き起こる。
会場の皆は私達の歌に合わせてノリノリでした。お、嫌いじゃないぞ、ノリのいい客はいい客だ。
クルクル回り始めるお客さんに合わせて、私達も声を張り上げます。
これも演出ですから、会場の観客達はテンションマックスでペンライトを振り回していました。
「ダイアモンドから 夢を放つペ〜ル〜セ〜ウ〜ス♪ まだ見ぬチカラを その瞳に秘〜めて〜♪」
「光の翼が 虹をかけてゆく Field of dreams♪ 輝くあなたを信じてる〜♪」
観客達は私達の声に酔いしれたように歓声をあげていた。
オタ芸をする人達まで出てくるのでびっくりですよね、ちなみにオタ芸って失敗すると靭帯をやるそうなので、皆さんは気をつけてくださいね?
私達の魂込めた歌声聞けぇ、そう! 乙女は強くなくっちゃね!
「「帝◯ 魂〜♪」」
「え⁉︎ そんな歌詞あったかオイ!」
そして、アドリブも入れていくスタイル。
すかさず、私達のアドリブにツッコミを入れてくるヒシアマ姉さん。
いや、ないですよ、だってアドリブですもの、勝手にアレンジしてみました。
私を舐めちゃいかんよ、そんな普通に歌うわけないでしょ、怒られますよ! 私のファン達から!
大体、まじめを私に求めてはダメですね、ウイニングライブこそ、ネタに走らなくちゃダメなんですから。
それから、私は自前のイメージソングを歌いつつ、最後に歌いたかった曲に入ることにしました。
先程から一緒に歌ってくれていたドゥラちゃんは察してくれたのか、私に手を振りながら、ステージの外へと消えていきます。
実は凱旋門を勝った時に、これだけは歌で伝えたいと思った曲があります。
これは、私を支えてくれた方々に捧げる歌です。
流石にこれは真面目に歌います。
「聞いてください、影踏み」
すると、背後から流れてくる曲がしんみりとしたものに変わっていく。
先程まで盛り上がっていた会場も私の雰囲気を察してくれたのか、シンと静まりかえってくれました。
うん、歌いやすいですね、皆さんの協力に感謝です。
私はマイクを握りしめてゆっくりと歌いはじめた。
「卒業し〜たら〜♪ じぐざぐの前髪♪ 少し揃え♪ ママからの手紙で、2回泣きそ〜うになった♪」
私の静かな歌い出しにシンと静まり返る会場。
マイクを握りしめた私は笑みを浮かべたまま、姉弟子や義理母達を見渡し、瞳を瞑る。
思い出すのは苦しい日々、挫折した毎日の事。
義理母が病気になり、姉弟子は私の前から消えたあの日。
私を救ってくれたのは皆だった。
それから、足掻いて、また皆が一つになって私を支えてくれました。
「嘘でも天の川で〜♪ 一年一度の約束したい〜♪」
私を「良い状態で走らせたい」とオカさんは話していました。
義理母は私を最後まで信じてくれました。
ライスシャワー先輩と姉弟子は私に背中を見せていつも走ってくれました。
「いないときも頑張れたことが〜♪ 今になって自信になって〜♪」
私の目からは歌いながら自然と涙が出て来ています
それは、その日々を乗り越えて来たのは自分一人の力じゃないことを理解しているからだ。
義理母や姉弟子は私の歌を聞きながら、静かに涙を流していた。
「気づいてみたら〜♪ たくさんの人に〜♪ 囲まれてた♪ 君が僕を信じてる〜♪」
私はここまで皆のおかげで成長する事が出来た。
だからこそ、私は皆に感謝したいと思ってます。
義理母や姉弟子が消えた後、皆が支えてくれて自暴自棄にならずここまで頑張れたのは感謝しかありません。
凱旋門に勝てたのは夢のような気持ちでした。
「突然夢、が醒めて〜♪ 迷子のきもちで悲しくなった〜♪」
ブライアン先輩は並走に付き合ってくれました。
ドーベル先輩は私の悩みをいつも聞いてくれました。
ルドルフ先輩は私に勝者というものと義務を教えてくれました。
ゴルシちゃんはいつも私を気にかけて励ましてくれました。
他の皆も私の為にそれぞれ、いろんなことを学ばせてくれました。
「いつの間にか〜大きくなっても♪ 僕よりうんと〜幸せがいい〜♪」
私が大きく成長したのは一人の力だけじゃありません。
血の滲むような努力と皆の支えがあったからです。
だからこそ、私はこの曲を皆が揃って見てくれてるこの場で歌に乗せて伝えたかった。
「いつからずっと強くて弱いの♪ 君は知ってて〜♪ 同じ空みてくれてたの〜♪」
私の歌を聞いて、静まりかえった会場からは割れんばかりの拍手が響き渡ります。
静かに私は頭を下げて皆に一礼しました。
この曲は思いを込めた曲です。私が大事な時にしか歌わないと決めていた曲でした。
しばらく、拍手に包まれる中、私はゆっくりと会場を後にしました。