やあ! 良い子のみんなこんにちはーアッフだよ!
最近、菊花賞に向けてようやくエンジンが掛かってきた真っ最中です。また地獄のトレーニングの毎日ですよ。
私に安息の時はいつ訪れてくれるのか(遠い目)。
さて、私は現在ある探し物をしている真っ最中である。
そして、そんな私を後ろから首を傾げながら、ライスシャワー先輩は見つめていた。
「あれー? 無いなー、どこだろう?」
「アフちゃん何探してるの?」
尻尾をフリフリしている私のお尻を見つめながらそう問いかけてくるライスシャワー先輩。
ライスシャワーの視線の先には水色の縞々のパンツがひょっこりと顔を出している。
そして、呆れたようにため息を吐くと私のお尻の上らへんのスカートの裾にそっと手を伸ばしてきた。
「ひゃあ⁉︎」
「アフちゃん、下着が見えてるわよ。女の子なんだから気をつけなきゃ」
そう、物を探して深いところにばかり見ていたものだからスカートが捲れていた事に気がつきませんでした。
背後から見たら、パンツが見えてたのか私。
ライスシャワー先輩が直してくれなかったら大恥かいてたところでしたね、そういうところにも気を配らなきゃならないって大変です。
「……ところでパンツ見ました?」
「うん、あれだけお尻を丸出しにしてればね」
「恥ずかしいッ!」
私は顔を赤くしながら両手で顔を抑える。
いや、恥じらいくらい私にもありますからね。
お尻を丸出しでパンツまで見られたらそりゃ恥ずかしいですよ。
「良いお尻してるわね、日頃の坂路特訓の成果かしら?」
「……ライス先輩、そこはノーコメントで」
「冗談よ」
そう言いながら、私の頭を撫でてくるライスシャワー先輩。
そんな風に撫でられては私もなんも言えません、だって相手がライス先輩ですからね、天使に異議を唱えるなんて恐れ多い。
「それより、アフちゃん何を探していたの?」
「あー、実は今日の午後にライブを頼まれまして……たづなさんから」
「なるほどね、たづなさんはトレセンの広報もしてるから納得だわ」
私の言葉に納得したように頷くライス先輩。
そう、なんと私はたづなさんからライブを頼まれていたのです。
日本の皆さんの中には私の凱旋門でのウイングライブを聞けなかった方もいるので、たづなさんから生のウイニングライブを皆に聞かせてあげて欲しいとお願いされたものですから、流石にね?
「それで、ライブに使うマイクを無くしたみたいで……」
「マイク?」
「えぇ、装着するタイプのやつなんですが」
ライス先輩の言葉にコクリと頷き答える私。
ライブ中は歌うだけでなく踊ったりするので装着型のマイクを使うんですけどね。
これが非常に使い勝手がよろしいんですよ。
「それなら、よかったら私の貸してあげるわ」
「えっ!」
「可愛い後輩が困ってるんだものこれくらい当然よ」
そう言いながらニコリと微笑んでくるライス先輩。
おぉ、天使はここにいたのですね。何というかライスシャワー先輩からオーラが見えますよ。
そんな事を考えていた私にライスシャワー先輩は続けてこんな問いを投げかけてきた。
「しかしこの時期にライブ?」
「えぇ、最近、姉弟子が逃げ切りシスターズなるものを結成したらしくて」
「あぁ、あのユニットね……確か、ファル子ちゃんが決起人の……」
「そうそう、その逃げ切りシスターズです」
スズカさんもなんやかんやで巻き込まれる形で参加してるみたいですけどね、逃げ切りシスターズ。
私も逃げ切れるものなら逃げ切りたいものですよ色々と。
しかし、うまぴょいからは逃げれませんでしたし、大体、私捕まってしまうんですよね。
逃げるという選択肢が元からなかったらしい、なんてこった。
「ていうか、私と姉弟子、ガチのシスター(義理)なんですけども」
「あら? 言われてみればそうね?」
「私の姉がこれ以上増えるのは断固として認めんぞ! 妹なら許可しますがね! スズカさんの事をお姉ちゃんだなんて恐れ多い」
とんでもない、姉より胸が優れた妹なんて存在しちゃダメだとばかりに私が消されちゃうかもしれないじゃないですか。
まあ、スズカさんは優しいのでそんな事はないとは思いますけどね。
ただ、私みたいな問題児を妹には抱えたくはないんじゃなかろうかとは思います。
「まあ、何にしてもライブに誘われたからにはいつもお世話になっているので出なきゃいけないじゃないですか……」
「まあ、アフちゃんはそういう立ち位置だから」
そう言いながら顔を引きつらせるライスシャワー先輩。
自分の立ち位置はそういえばトレセンのマスコットの一人でしたね。主にお色気要因ですけども。
ヒシアマ姉さんとドトウさんに私みたいな抱き合わせセットのような立ち位置、かなり複雑ですね、はい、胸がおっきいくらいですけど、共通点。
「ぐぬぬ……、しかしながら普段からお世話になっている分、断れません……」
「アフちゃんは従順ね」
「ドMではないですよ?」
そう、これは致し方ない事なのだ。
私だって不本意ですよ、そもそも私、先行差しなので逃げではありませんしね。
はい、というわけで、その後、私は衣装に着替えてトレセン学園のライブ会場へと足を運びました。
そこでは、すでにライブが始まっていて大盛り上がりの真っ最中です。
「一人ぼっちのクリスマスからも逃げ切り」
「逃げ切り」
「逃げ切りー」
可愛い決めポーズをしながら、息ぴったりで歌う三人のウマ娘。
無表情でマイクを持つ姉弟子を見て、失礼ながら思わず吹きそうになってしまいました。
スズカさんも満面の笑みを浮かべながらノリノリで歌っています。
「甘あまスイーツ。カロリーからも逃げきれ」
「逃げ切れ」
「逃げ切れー」
しかし歌詞が何というかね、いや、きっと、それから逃れられるのはオグオグさんくらいですよ。
スペピッピ先輩とか腹回りに結構ついちゃいますからね。
突っ込んじゃダメなやつですね、ごめんなさい。
スズカさん、姉弟子ー、ファル子ちゃん可愛よー! わー! (棒読み)。
「夢を追い現実から逃・げ・切・れ! we are 逃げ切り⭐︎シスターズ!」
瞬間、ライブ会場は大盛り上がりになりました。
あれ? 私、もしかして要らない娘なんじゃないですかね? なんで私呼ばれたんじゃろうか。
ちなみに私がまともに歌えるのはウマぴょい伝説くらいしか歌詞覚えてないんだけども。
あ、あと、私の曲だけですね、ほかの曲はあまり歌った事は無いんです、実は。
「皆ー! 盛り上がってるー?」
「「おぉー!」」
「ありがとうー! 実はね! 今日はスペシャルゲストを呼んでるんだよー!」
という感じでMCをやり始めたファル子ちゃんの一言に会場はざわめき始める。
へー、スペシャルゲストかー、誰なんだろうね。
なんだかワクワクしてきましたよ、楽しみだなぁ。
「その名も! 欧州三冠ウマ娘で、凱旋門賞を勝った凄いゲスト! その名は!」
へー、凄いなぁ、ゲストのウマ娘さんって凱旋門賞勝ったんですね。
あんなクソやばい面子ばっかりのレースに勝つなんてどんな気狂ったウマ娘なんでしょう?
よっぽど頭がおかしなウマ娘なんやろなぁ。
「アフトクラトラスちゃんです!」
すると、観客に混じって、観客席に座っていた私に唐突にスポットライトが当たる。
え? ゲストは相当、頭がおかしなウマ娘とか散々言ってたのにまさかのブーメランでした?
嘘だぁ! こんなの何かの陰謀に決まっています! 私以上にまともなウマ娘なんていませんよ!
ちなみに観客席に私が紛れていた事に驚きを隠せない観客達は歓声を上げながら、私の出現に目を丸めていました。
とりあえず、マイクを取り出した私はスポットライトが当てられている中で指差してくるファル子ちゃんに向かって一言。
「多分、人違いですね」
「いや、そのアホそうな面構えは間違い無くウチの妹弟子です」
「えぇ、犯罪者予備軍みたいな青鹿毛は見間違いようがないものね」
「二人とも指摘が辛辣すぎィ⁉︎」
ミホノブルボンの姉弟子とスズカさんから浴びせられる辛辣な言葉に私も思わず泣きそうですよ。
会場からは笑い声が上がります。世界よ見よ、これが凱旋門賞を勝った私に対する扱いですよ、涙が出てくるぜ。
仕方ないので、私はため息を吐くとゆっくりとステージに上がる。
「どっこいしょうきち」
「……アフちゃん、それはちょっと」
「どこの年寄りですか貴女は」
私のへんな掛け声に頭を抱えるスズカさんと姉弟子。
別にええやん! 言ってみたかっただけだもん! 年寄り臭いとか言うなよ!
そんな私の姿を見ていたライスシャワー先輩がステージ横からスッと現れる。
「もう、アフちゃん。ちゃんとしなきゃダメじゃ無い」
「うぉ! ライスシャワーだ!」
「まさか、ライスちゃんも歌うのか⁉︎」
私を見かねて登場したライスシャワー先輩に会場にいた皆は揃って声を上げる。
なんだよ、私が登場した時より反応が良いじゃ無いですか。もっと私を崇めなさい、なんなら貢ぎなさいよ。
はい、というわけでですね、ライスシャワー先輩も一緒にステージで歌ってくれることになりました。皆さん拍手。
「じゃあ! 皆盛り上がっていくよー!」
「次はぴょいっと♪ はれるや!」
そう言って、曲に合わせて歌い始めるスズカさんとミホノブルボンの姉弟子。
そして、ライスシャワー先輩と私もそれに合わせて踊り始め、歌を歌い始めます。
「タッタカツッタカぴょいっと駆けちゃおう♪」
「HEY! かけちゃYO!」
「パッパラパッパせーのでスタート♪」
「スタートで躓いた感情♪ いつから参上SEY♪」
そして、何故か私は曲にラップ調でリミックスを入れていくというスタイル。
それから、私の謎のソロラップがちょいちょい入りながら皆、息のあった踊りと歌を披露します。
なんか途中からユーロビートみたいになってしまいましたが多分大丈夫でしょう。
ただ、ライブ後、トレノで坂を超スピードで降る人が出ないか不安ですね。さすがにそんな人は居ませんかね?
あ、マルゼンスキーさん、ただし貴女はダメです。
理由はわかるな? そのでかい胸に手を当てて考えてください。
助手席に座るたづなさんの泣き顔が思い浮かぶでしょう? つまりそう言う事だ。
さて、話は逸れてしまいましたが、こうして、私達が入った逃げ切りシスターズのライブは大反響を巻き起こしたまま幕を閉じるのでした。
ちなみに私はこの後、勝手に歌詞を改変するなとルドルフ会長から怒られたのは言うまでもない。
アニメ、うまよんもよろしくです。