遥かな、夢の11Rを見るために   作:パトラッシュS

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遥かな、夢の11Rへ

 

 

 

 さあ、天皇賞秋も終わった訳ですが、これは天皇賞秋を走る数日前の事。

 

 私にはある指令がルドルフ会長から下されていた。

 

 まあ、察しのいい人ならすぐに気付くかもしれませんね。

 

 そうウイニングライブです。

 

 

「お前、有馬の時も歌えてなかったからな、その分も歌うんだぞ」

「そんな借金みたいな……」

「いや、普通だ馬鹿者」

 

 

 そうですね、私、かなりG1取ってましたけど、身体の事もあってかあんましウイニングライブをしてなかったんですよね。

 

 そんでもって、ルドルフ会長からは当然のようにやるよな? という風に圧がかかっているわけです。

 

 まあ、やんなきゃならないでしょうね。

 

 ファンには散々迷惑をかけてきたわけですから。

 

 

「仕方ないですね、わかりましたよ」

「振り付けはちゃんと覚えるんだぞ、ソーラン節とか阿波踊りとかしたら拳骨だからな」

「私の頭をなんだと思ってるんですかっ!?」

 

 

 これは酷い、これが凱旋門勝ってきたウマ娘に対する扱いなんでしょうか。

 

 こいつは泣けるぜ、まあ、ルドルフ会長にはいつも迷惑というか怒らせてばかりですからたまには言うことを聞いてあげるとしましょうかね。

 

 そんなこんなで、ウイニングライブをレース後に開く事になりました。

 

 ファンに公式で顔を出すのはこれが初めてになるかもしれません。

 

 まあ、病院から抜け出しては顔出ししてたんですがね、最近では不定期に出没するアフトクラトラスを探せみたいなコーナーがテレビで出来たとかなんとか。

 

 でもね、ほら、もう完治しましたし、いちいちこそこそしなくても良くなりましたから私は。

 

 ウイニングライブかぁ、仕方ないやるしかないか。

 

 

 

 そんなこんなで、こんなやりとりがあったのが数日前、そして、今、私は身内を含め有馬記念を走ったメンバーと共にカーテンが開くのを待っている

 

 ウイニングライブをする為に振り付けくらい覚えるのなんて朝飯前ですよ。

 

 センターには私が立たされております、手が掴まれていて逃げれません、なんてこったい。

 

 イントロと共に会場からは声が上がる。

 

 

 手拍子と共に一斉に声を上げる皆。

 

 会場からは盛り上がるような声が聞こえてきます。そんなに楽しみだったか皆の衆。

 

 そして、カーテンが上がると共に私も歌を歌い始める。

 

 

「待たせたなー!」

 

 

 それから、私は皆と共に踊りながら、楽しそうに歌を歌う。

 

 隣にはライスシャワー先輩とミホノブルボンの姉弟子がいて、私のことをよく知る人達がバックダンサーや歌を歌ってくれている。

 

 

「やっとみんな会えたね〜♪」

「 Don’t stop! No,don’t stop ’til finish♪」

 

 

 私が歌って踊る姿に皆は笑みを浮かべながら合いの手を入れてくれます。

 

 皆の笑顔が見れて、私も嬉しい限りですよ、いやはや、待たせてしまいましたね本当。

 

 そして、流石私のファンですよ、一体感が素晴らしい。

 

 

「アンタレス〜♪ふぁい♪」

「オー!」

「ファイ!」

「オー!」

 

 

 まあ、リアルの掛け声はこんな可愛くなんてないんですがね。

 

 罵声が飛び交っています、皆さんは誤解しないように、アンタレス〜なんていう前に走れの檄が飛んできます。

 

 とりあえず、野暮なツッコミは無しでいきましょう。

 

 私は歌いながら慣れた振り付けで踊ります。

 

 そして、ライスシャワー先輩のパートに入る。

 

 

「もう、ドキドキもトキメキも♪ 抑えられないたまんない〜♪」

「熱いハラハラが止まらなぁい ♪」

 

 

 そして、私は復帰までに覚えた振り付けを踊り始める。

 

 というかライスシャワー先輩の声が天使すぎて脳死しそう、本当、生きてくれて良かった。

 

 私がメインのパートへ、声を張り上げながら歌を歌う。

 

 

「皆と走り競いゴール目指し♪ 遥か響け届けMUSIC♪」

 

 

 私の中で、義理母と過ごした日々がフラッシュバックする。

 

 そう、トレセンに来てからたくさんの人達から支えられて走ってきた。

 

 だから、私はこれまで走って来れた。これからも走ることができる。

 

 

「ずっとずっとずっとずっと想い♪ 夢がきっと叶うなら〜♪」

「あの日二人に感じた何かを信じて〜♪」

 

 

 いつか見た、あの夢の11Rまで、私は走り続ける。

 

 ライスシャワー先輩とミホノブルボンの姉弟子、そして、皆が私の側にいるから。

 

 私はライスシャワー先輩とミホノブルボンの姉弟子の顔を見ながらサビを思いっきり歌う。

 

 

「春も夏も秋も冬も超え願い焦がれ走れ〜♪ Ah 勝利へ〜♪」

 

 

 サビの最後を声高に歌い切る私。

 

 振り付けもバッチリ皆に合わせましたからね。普段からちゃんとやろうと思えばやれる娘なんですよ私はね。

 

 そらね、皆も私に会いたかったでしょうから締めるところはしっかり締めますよ。

 

 

「 Don’t stop! No,don’t stop ’til finish♪」

 

 

 バン! という音と共にフラッシュがステージを照らす。

 

 中央にいる私の名前とライスシャワー先輩を呼ぶ声があちらこちらから聞こえてくる。

 

 それから、会場からは溢れんばかりの拍手喝采が皆から送られてきた。

 

 

 

 しばらくして、会場は静かにライトが落ちる。暗転した会場はゆっくりと静まりかえった。

 

 私はマイクを付け直し、スタンバイする。

 

 前回の有馬の分と今回のこれは天皇賞秋の分だ。立て続けに2曲とかやるやんと誰か褒めてくだちい。

 

 そして、私にライトが当たり、ゆっくりと私は歌い始める。

 

 

「ここで今輝きたい〜♪ 」

 

 

 私の声と共に周りにライトが当たり、辺りを照らす。

 

 音楽が流れ始め、ライトに照らされたライスシャワー先輩とミホノブルボンの姉弟子、そして、ドゥラメンテちゃんが続けて歌い始める。

 

 

「叶えたい未来へ〜♪ 走り出そう夢は続いてく〜♪」

 

 

 三人と共に私は笑顔を振りまきながら歌って踊る。

 

 ウイニングライブの振り付けって可愛い振り付け多いですよねー、本当。

 

 今回も私は真面目に歌っています。はい、真面目です。雰囲気ぶち壊したりはしないです。

 

 だって、ファンの皆さんには心配かけましたからね今回はそのお詫びでも有りますから。

 

 

「ライバルがいるほど頑張れるよ〜♪ いつか手にしたい♪ 真剣勝負の栄光♪」

 

 

 私達の歌声に合わせて会場の皆も合いの手を入れてくれる。

 

 凄い一体感を感じる、風……なんだろう吹いてきてる確実に、着実に、私たちのほうに。

 

 いや、風は吹いてませんね、強いて言えばファン達からの熱気が凄いです。

 

 本当、喉乾いてきますよね。

 

 

「どんな時でも笑い合えるよ〜♪ 君の心に繋がるシンパシー♪」

 

 

 ライスシャワー先輩とミホノブルボンの姉弟子は笑い合いながら楽しく歌っている。

 

 なんだか、そんな二人を見るとほっこりしちゃいますよね。

 

 

「遠く離れてしまう時でも〜♪ いつまでも変わらないトキメキがあるから〜♪」

「勝利を目指して♪」

 

 

 バンッとステージからタイミングよく爆音が鳴り、クラッカーから出た紙吹雪が辺りに舞う。

 

 私は教えられた振り付けを踊り、声を張り上げる。

 

 サビですからね、締めないといけませんから。

 

 

「ここで今輝きたい〜♪ いつかは憧れも君も越えていくよ♪」

 

 

 私はライスシャワー先輩とミホノブルボンの姉弟子を見ながらそう歌う。

 

 二人は嬉しそうに笑いながら、それに頷いて応えてくれた。

 

 いつか越えていく憧れの存在、きっとそれはドゥラちゃんにとっての私でもあるんでしょうからね。

 

 

「step by step ♪ もう止められない〜♪ specialな勝負で駆け抜けよう〜♪ キミと紡いでく〜♪」

 

 

 私の歌声に皆は静まり返ります。

 

 しばらくして、音楽が鳴り止み、私は姉弟子とライスシャワー先輩、そして、ドゥラちゃんとお客さんに向かって頭を下げる。

 

 これまでの道のりは、大変な道のりばかりでした。

 

 ですが、皆さんやアンタレスの仲間たち、そして、家族とともに私はこの場所に帰って来れた。

 

 いつか、私のようになりたいと思ってくれるウマ娘がこの会場のどこかにいるかもしれません。

 

 そんな、彼女達の力に私はなりたいと思います。

 

 

 こうして、私とライスシャワー先輩の復帰後のウイニングライブは大盛況で終わりを迎えることが出来た。

 

 

 

 

 あれから、数ヶ月の時が過ぎ、また季節は巡り春がやってくる。

 

 新入生のウマ娘が今年もたくさんやってきて、多くのトレセンのチームが優秀な生徒に声をかけていく時期がやってきた。

 

 オープンキャンパス、私はふと、そんな時期にいろんな場所を気まぐれに出歩いていた。

 

 そんな時だった、一人のウマ娘が私の側に駆け寄ってくる。

 

 

「あ、あの!?」

「ん……?」

 

 

 私は声をかけてきたウマ娘の方にゆっくりと振り返る。

 

 そこに居たのは私と同じような青鹿毛の髪色をしたウマ娘だった。彼女は目を輝かせながら私をジッと見つめてくる。

 

 オープンキャンパスの新入生ですかね、私は彼女に視線を合わせるとにっこりと笑みを浮かべこう問いかける。

 

 

「どうしたの? 迷子ですか?」

「あ、えと、違います……! わ、私! 貴女に逢いにきたんですっ!」

「私に?」

 

 

 彼女はそう告げると勢いよく首を縦に振る。

 

 なんだこの娘、めちゃくちゃ可愛いんだが、ルドルフ会長、すいません、誘拐してもいいですか? 

 

 おっと、いかんいかん、これでは私もあの変態なウマ娘達の仲間入りをしてしまうではないですか。

 

 私は首を傾げたまま彼女にこう問いかける。

 

 

「貴女の名前は?」

「えっと私の名前は……」

 

 

 そう問いかけられたウマ娘は恥ずかしそうに視線を逸らしながら顔を赤くしていた。

 

 私に逢いにきたというこの娘もきっと、この先、私よりももしかしたら強くなるかもしれませんね。

 

 世代は移り変わりゆく、それでも変わらないものがきっとあるはずだ。

 

 

「き、キズナです!」

「キズナちゃんか、いい名前だね」

 

 

 私はその名前を聞いて、笑みを浮かべる。

 

 それから、私はその娘を連れてトレセン学園を案内してあげた。

 

 いつかは憧れの人を越えていきたい、そんな気持ちで皆はこの学園へやってくる。

 

 キズナと名乗ったその女の子は満面の笑みを浮かべて私にこう言った。

 

 

「私! アフトクラトラスさんみたいになりたくてここに来たんです!」

 

 

 こうして、また、新しいウマ娘達がトレセン学園を賑わせる。

 

 私は彼女のその言葉に笑顔が自然と溢れてきた。

 

 私に憧れて来てくれる娘がまさか居てくれるなんて思いもしませんでしたよ。

 

 いつか、この娘もきっと、私の尊敬するウマ娘達のようになれると、私は彼女を見てそう確信した。

 

 

 拝啓、義理母へ。

 

 どうやら、私は皆から憧れられるようなウマ娘になれたみたいです。

 

 これから先も、きっといろいろあるとは思いますが、皆と力を合わせて乗り越えていきます。

 

 私も世界一のウマ娘を目指して、走りますからどうか見守っていてください。

 

 アフトクラトラスより。

 

 





これまで読んでいただきありがとうございました。
作品としましては、アフちゃんの物語は一旦完結になります。

一応、次話も投稿する予定ですが、新章として投下します。番外編やその後の話としてお楽しみください。

応援していただき、ありがとうございました。
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