遥かな、夢の11Rを見るために   作:パトラッシュS

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襲来

 

 

 いろは坂でのトレーニング。

 

 さて、このいろは坂だが、走り屋がよく走る事で有名だ。

 

 まさに走り屋の聖地といってもいいかもしれない。

 

 

「くっ……な、なんだあのランボルギーニッ! どこ走ってやがるッ! この俺がッ!」

 

 

 そして、そのいろは坂にはある噂が流れていた。

 

 それは、赤いランボルギーニ・カウンタック、それが現れてからというものこのいろは坂では幾人の走り屋がそのランボルギーニに置き去りにされていたのだ。

 

 それから、もう一つ、彼らの目にはとんでもない光景が広がっていた。

 

 

「ぬがあああああああああ」

「はああああああああああ」

「な、なんだとォ!?」

 

 

 それはなんと生身で走る二人のウマ娘の姿である。

 

 そう、もはや車にすら乗っていない二人がなんと凄まじい速さで走るランボルギーニを追走しているのだ。

 

 ありえない、しかも、ものすごく速い。

 

 

「生身だとォ! 舐めてんじゃねーよ! いかすかよォ!」

 

 

 だが、差が詰まらない、こちらはGTRだというのにランボルギーニだけでなく、生身のウマ娘二人からかわされる。

 

 だが、目の前を駆ける二人はそんな事は関係ないといった具合にカーブでかわし、直線の坂をかけていく。

 

 

「登りは負けましたけど! 下りならァァ!」

「行かせませんッ!」

 

 

 姉弟子が凄まじい角度で曲がっていくのに必死についていく私。

 

 こころなしかうまぴょい伝説の曲とテロップが流れてきてるのは気のせいでしょうか。

 

 おい、誰だショートムービー撮ってるやつ、アフちゃん怒らないから出てきなさい。

 

 おかしいな、ここは普通かっこいいユーロビートが流れてくるのが普通なんではないでしょうか? 

 

 目を凝らしてみると、ゴール付近で後輩二人が楽しそうに歌っています。

 

 セルフうまぴょい伝説やめーや、誰も望んでないて! 

 

 だが、やはり、下りでもランボルギーニを抜けませんか。

 

 雰囲気がユーロビートに戻ってきたところで私は次のコーナリングを見据える。

 

 

「姉弟子ィ! お先!」

「甘いッ!」

「うぎゃっ!?」

 

 

 あーと! アフちゃん選手吹っ飛ばされたー! 

 

 姉弟子フィジカル強すぎてワロタで工藤。

 

 抜けると思ったらこれですもんね、ほんとにつよつよですよ姉弟子は。

 

 思わず肋の骨がないなったと思いました。

 

 

「アフちゃん先輩ー!」

「がんばれ! がんばれ!」

 

 

 能天気に私を応援してくる後輩二人。

 

 他人事のようにしてるがお前達も走らすからな! いやほんとこれきついんですってば。

 

 そんな風な事を考える余裕なんてないんですがね、姉弟子相手じゃ気を抜くなんてとでもじゃないができないですよ。

 

 こうなったら抜くなら最後のコーナーしか無い! 

 

 私は足に力を入れて力強く踏み出す。

 

 持ってくれ! 私のハチロク! (脚)。

 

 そんな中、私と姉弟子のレースを見ていた野次馬の一人が口を開く。

 

 

「ミホノブルボンが頭だッ!」

「インかアウトかッ!」

 

 

 インは無理やりねじ込もうとしたがダメだった。

 

 なら、必然的に抜くとしたらそこしかない。

 

 外を目一杯ぶん回してッ! 一気に姉弟子と並んでやるッ! 

 

 

「うおおおおりゃああああああ」

 

 

 カーブを曲がった先にはランボルギーニも見えてるッ! 

 

 外から一気に二人とも抜いたらァ! 

 

 私は足に力を入れてギアをフルに引き上げる。この走りは封印していましたが、しのごの言って勝てるほど甘くは無い。

 

 

「アウトだとォォォォ!」

「ラインがクロスするぞ!」

 

 

 バチバチと火花を散らしながら慣性ドリフト! 

 

 しかし、スポーツカーと並走するウマ娘なんてかつていたでしょうか。

 

 私と姉弟子くらいのもんだな! 多分! 

 

 姉弟子とランボルギーニを抜いた私はラストスパートに入る。そう、地を這う走りだ。

 

 リミッター外さなきゃ無理です。

 

 カーブで抜いても、直線で抜き返されちゃいますからね。

 

 

「ぬあああああああああ!!」

「ちぃッ! 行かせませんッ!」

「ッ……! これなら走った方が早いわねッ!」

 

 

 そう言ってなんとマルゼンスキーさんがランボルギーニを乗り捨てて参戦。

 

 いや待て待て、ランボルギーニを道中に乗り捨てるな、隣で座ってたたづなさんが慌ててハンドル握って操作してたから良かったものを。

 

 最後の直線坂、私と姉弟子、そして、マルゼン先輩は横一線に並ぶ。

 

 

「うああああああああああ!」

 

 

 私は声を張り上げて、足に力を込めた。

 

 

 

 丁度、同時刻。

 

 スカジャンと短パンのダメージジーンズという格好をした露出の高い格好に、髪の左側をドレッドで編み込んだ青鹿毛のウマ娘は静かに空港のベンチに座ったまま目を瞑っていた。

 

 その隣には、どこか落ち着かない様子であたりを見渡す緑の髪留めで束ねた黒と白が入り交じる芦毛の長髪のウマ娘の姿があった。

 

 

「落ち着けよ、ダラカニ」

「そんなの無理に決まってるでしょう! あー! なんで来るのを先に言ってくれないんですか本当!」

「そら、姫様の気分次第で日程も変わるだろうさ、いつものことだろ?」

「そうですけどッ!」

 

 

 そう言って声を荒げる黒と白が入り交じる芦毛の長髪のウマ娘であるダラカニに肩をすくめながら諦めろと諭すように告げる髪の左側をドレッドで編み込んだ青鹿毛のウマ娘、サンデーサイレンス。

 

 彼女達が今空港に来ているのには当然理由があった。

 

 それは、現在、ダラカニも所属している世界でも名を轟かせている最強チームの3チームが急遽来日することになったからだ。

 

 

「お、噂をすればなんとやらだ。来たぞ、姫様達だ」

「what’s !?」

 

 

 思わずサンデーサイレンスの言葉に目を丸くさせるダラカニ。

 

 そこには、栗毛の綺麗な癖のあるセミロングの髪白いワンピースに透き通るような水色の瞳のウマ娘を筆頭にズラリと世界の名だたるウマ娘達がキャリーケースを持って歩いてきているではないか。

 

 もちろん、そこには、ダラカニの姉であるデイラミの姿もあった。

 

 

「シーバードの姉さん長旅お疲れさん。あと、セクレタリアトの姉さんも」

「ほんとよぉ、わざわざプライベートジェットまで使って来ちゃったわよぉ、大変だったわ」

 

 

 そう言って、先頭にいるシーバードと呼ばれたウマ娘はニコニコと笑いながらサンデーサイレンスにそう告げた。

 

 

 世界最強のウマ娘、一位、シーバード。

 

 彼女を知らないウマ娘は今のところ誰一人としていない。

 

 歴代最強のウマ娘が集う凱旋門賞で他を寄せつけずにねじ伏せた彼女の強さを目の当たりにした者達。まさしく彼女こそが世界最強だと確信している。

 

 彼女に追従するように率いられている面々も誰もが聞いたことがある様なウマ娘ばかりだ。

 

 

「サンデーさん、先にいってたんなら連絡くださいよ」

「そう拗ねんなよ、ファラオ。別に良いじゃねーか、私に馴染みある国なんだよ日本ってのは、ダチもいるしな」

「全く」

 

 

 そう言いながら肩をすくめる金装飾のイヤリングやネックレスをした褐色の短髪のウマ娘。

 

 彼女の名はアメリカンファラオという。11戦9勝の勝率を誇り。アメリカクラシック三冠とブリーダーズカップ・クラシックと定義されるグランドスラムを史上初めて達成したウマ娘として知られている。

 

 彼女が所属しているチームは世界最強の第二位、セクレタリアトの率いるチームだ。

 

 

「あれ? リボーさんは?」

「何、いつものことだ。来てそうそう勝手にどっかに行ってしまったよ」

「もぉー! あの人はほんとにぃー!!」

 

 

 そう言って、『樫の高木の密林』の異名を持つウマ娘ハイシャパラルの言葉に頭を抱えるのは癖っ毛が強い長い長髪を青いヘッドバンドで止めている鹿毛のウマ娘。

 

 彼女の名はハリケーンラン、海外遠征中のディープインパクトと幾度もやり合った事があるウマ娘だ。

 

 現在、怒涛の重賞、G1五連勝中のノリにノッてるウマ娘である。

 

 そんな彼女だが、チームリーダーであるリボーからはいつも振り回されっぱなしという苦労人でもあった。

 

 

「相変わらずだな、リボーは」

「毎度、振り回されるこちらの身にもなって欲しいんですけども」

「まぁ、ウチのリーダーも大概だと思うがね」

「なんだと? それはどういう意味だサンデー!」

「ってイージーゴアが言ってましたー」

「んなぁ!? あんた! 何嘘っぱち言ってんの!? ファッキンサンデー!」

 

 

 そう言いながら、サンデーサイレンスのホラに食い掛かるように声をあげる長い赤みがかった栗毛の髪を束ねた勝気なウマ娘。

 

 彼女の名はイージーゴア、サンデーサイレンスとは鎬を削りあっている永遠のライバルである。

 

 なんだかんだで彼女達の付き合いは長い、こんなふうに戯れあっているのももはやチームメイトの皆からしてみれば見慣れた光景だ。

 

 

「さて、茶番はホテルに着いてからね、まずはトレセン学園の理事長に挨拶しないと」

「挨拶……ですか?」

「そうよぉ」

 

 

 そう言いながらにっこりと満面の笑みを浮かべるシーバード。

 

 そして、彼女は自分のチームメイトである黒鹿毛のウマ娘に肩に手を置く。

 

 長くて綺麗な黒髪、異様な雰囲気を醸し出していて物静かな彼女は手を置いたシーバードの方に視線を向ける。

 

 白と黒、対照的な色の彼女達の姿はどこか絵になっていた。

 

 

「日本のウマ娘達を根こそぎ屠りに来たってね? ねぇ、ブラックキャビア」

「………………」

 

 

 ブラックキャビアと呼ばれた彼女はそのシーバードの言葉に応えるかのように静かに頷いた。

 

 25戦25勝無敗。

 

 その圧倒的な勝率を誇るスプリンター。黒い真珠と呼ばれる彼女の強さは誰もが知っている。

 

 前回はスプリンターズステークスを回避したことで日本に来訪する事はなかったが今回はチームに帯同する形で来日。

 

 ブラックキャビアもアメリカンファラオもそうだが、普通なら彼女達が日本に来訪することなど、ほとんど無いのだ。

 

 理由はただ一つ、凱旋門賞での二度に渡る日本ウマ娘への敗北が理由である。

 

 要約すると、大体、アフトクラトラスとディープインパクトのせいと言い切っても良いだろう。

 

 彼女達からしたら、とりあえずカチコミに来たくらいのノリと勢いなのだ。

 

 世界一強いシーバードやリボーが気分屋だから仕方ないとはいえ、付き合わされる海外ウマ娘達も仕方ないとばかりに日本に来るしかなかった。

 

 凱旋門取られて、ひよってるやついるぅ? いねーよなぁ! とリボーから言われたら、行くしか無いというのはハイシャパラル談である。

 

 サンデーサイレンスをはじめ、海外のウマ娘達も血の気が多いウマ娘がたくさんいる。

 

 その中で、そんな風に煽ればそうなってしまうのも仕方ないだろう。

 

 来年の海外ウマ娘と日本ウマ娘の決戦の為、約3年間、彼女達は滞在するつもりであった。

 

 

「今回はフランケルもいるんだから、短距離に関しては問題ないんじゃないんですか姫?」

「……それもそうね! さあ! こんなとこで話し込むのはやめましょう! さっさとホテルに行って早くジャパニーズスシ食べに行きましょ! ニンジンスシ食べたいわ!」

「なんだそれは! 私も連れて行けシーバード!」

「セクレタリアトさん……ほんと食べ物には目がないんですから……」

 

 

 そう言いながら、呆れたようにため息を吐くアメリカンファラオ。

 

 世界最高峰の三チームが来日、この衝撃は瞬く間に日本中に知れ渡った。

 

 なお、この来日が知れ渡った理由がトレセン学園の近場にある、ウマ娘専門の寿司屋が壊滅した事が理由であったことは言うまでもない。

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