遥かな、夢の11Rを見るために   作:パトラッシュS

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英雄VS怪物

 

 

 さて、先日、クタクタになりながら後輩二人を抱っこやおんぶをして無事にトレセン学園に帰還した私ですけど、帰って来てからなんか大変でした。

 

 海外ウマ娘さん達がどうやら来訪したみたいです。

 

 なんか他人事みたいに私は話していますけど、どうやら私を海外に引き抜きたいとかどうとかで先日のSWDTの記者会見は大波乱だったとか。

 

 私がいないところでの出来事ですけど、なんと、私当事者ですからね。

 

 なんで私のいないところで私のことで盛り上がってんだ! おかしいでしょ! 

 

 まあ、そんなすったもんだがいろいろあったんですけど、いよいよSWDTも3戦目です。

 

 当日の対戦相手はこの二人

 

 ナリタブライアン先輩とディープインパクトちゃん。

 

 SWDT3戦目にして、ついに、この二人が激突する。

 

 二人のことはよく知ってます。私の事を気にかけてくれる二人だ。

 

 ディープインパクトちゃんに関しては私の背中をずっと追いかけて来てくれている可愛い後輩。

 

 ナリタブライアン先輩は私の事をずっと気に入ってくれている大好きな先輩。

 

 どちらも負けてほしく無いなと思いつつも、二人とも頑張って欲しいという複雑な心境です。

 

 そんなレース前だと言うのに。

 

 

「ブライアン先輩〜離してくださいよ〜これからレースでしょう?」

「やだ」

「やだじゃないです、やだじゃ、子供ですか貴女は!?」

 

 

 私はブライアン先輩からギュッとハグをされて逃げれません。

 

 周りから見られたら恥ずかしいでしょう。けど、ハグしている当人はご満悦のようです。

 

 巷ではこれをアフぴょいしているというらしいです。

 

 アフぴょいって言葉を作ったのはキズナちゃんとドゥラちゃんの後輩コンビなんですけどね、なんで動詞を作ったんやお前達。

 

 

「よし! 充電完了!!」

「あ……はい」

 

 

 なんだこの切り替えの早さ。

 

 早すぎて唖然としちゃいましたよ。

 

 すると、ブライアン先輩は私のことをじっと見つめると、少しだけ申し訳なさそうな表情を浮かべながらゆっくりと話をし始めた。

 

 それは、今までブライアン先輩が私に見せたことがないような表情だった。

 

 

「……アフ、お前、トレセン学園や私達の事は好きか?」

「なんですか? 急に」

「…………」

 

 

 私の問いに無言で応えるブライアン先輩。

 

 彼女のその表情から、私は何かを感じとった。

 

 それは、自分をまるで責めているような表情に見えました。

 

 そんなの決まっています。

 

 

「好きに決まってるじゃないですか、何言ってるんですか」

「痛ッ……デコピン!?」

 

 

 私から受けたデコピンに呆気に取られるナリタブライアン先輩。

 

 昨日、合宿から帰ったばかりだってのに、そんなしけた先輩の面なんて私は見たくないですからね、しかも勝負前でしょう? 

 

 そもそも、トレセン学園にいる皆さんからこれだけ愛されてるのに嫌いになる要素なんてあるわけないじゃないですか。

 

 強いて言えば、私の下着がすぐに無くなるとか練習が馬鹿みたいにとんでもないとかそんくらいですよ。

 

 

「有での事とか、私のことに関して責任を感じてるなら筋違いです。あれは私の自業自得ですからね」

「…………」

「自分の事は自分で決める。そんな事は生きてれば当たり前の事です。わかったら行ってください先輩」

 

 

 そう言ってバシンとナリタブライアン先輩の背中を叩いて私は彼女を送り出す。

 

 ナリタブライアン先輩はその言葉を聞いて安心したように鼻で笑うと、顔つきが一気に変わった。

 

 スイッチがいい具合に入りましたかね。

 

 

「ありがとうアフ、行ってくる」

「いってらっしゃい」

 

 

 私はそんなナリタブライアン先輩を笑みを浮かべて見送ります。

 

 なんだろう、この絵面、いろいろと思うところはありますけどまあ、気合いが入ってくれたのならいいです。

 

 おい、誰が会社出勤を見送る奥さんだ! 言った奴出てこい! 

 

 そんなわけで、ナリタブライアン先輩を見送った私は観客席でちょこんと座り観戦へ。

 

 観客席はたくさんの人で埋まっていますねー、凄い盛り上がりだな。

 

 

「先輩、あれディープインパクトさんですよね?」

「うん」

「さっきからこちらをジーっと見てますよ」

 

 

 うん、気づかないようにしてたのにドゥラちゃんわざわざありがとう。

 

 熱い視線がこちらに向いてるのは気づいてました。なんだよ、こっち見んなよ、何か言いたいことでもあるんですか。

 

 いや、理由はわかってるんです。

 

 先日の出来事はブライアン先輩とかルドルフ先輩から聞いていましたからね。

 

 私がいないところで私の争奪戦が勃発していると。

 

 私の身体は一つだというのに皆で引っ張り合わないで! 

 

 海外まで引っ張られるのはご勘弁願いたいんですけど本当。

 

 

「ただでさえ貴女達で頭が痛いというのに……もう」

「なッ!? ドゥラちゃんはそうかもしれないですけど私は違いますよ!」

「あー! そうやって裏切るのは良くないんだぞキズナちゃん!」

 

 

 わちゃわちゃしている後輩二人の姿に改めてため息が出る私。

 

 仕方ないからディープちゃんに私はヒラヒラと手を振ってあげます。

 

 わかりましたから、ちゃんと見ときますから安心してください。

 

 それが伝わったかどうかは知りませんけど、ディープちゃんは軽く笑みを浮かべてゲートに向かい走っていく。

 

 どうやら満足してくれたようだ。なんだこれ。

 

 

「先輩方って私の扱い大変だったんだろうなぁ……多分、今も大変なんだろうけど」

「何悟ったような事言ってるんですか?」

「今も現在進行形で問題児ですよアフ先輩」

「なんだとこのやろう」

 

 

 二人の連携攻撃に思わずカチンと来る私。

 

 いや、でも先日やらかしたばかりなんで何も言えない、何だったらこの二人よりも問題行動してるんじゃないでしょうかね、私。

 

 自覚がありながらも己を貫き通す、うむ、我ながらカッコいい。

 

 おい、そこ、相変わらずアホとか言わない、聞こえてますからね。

 

 アフだけにって、やかましいわ! 

 

 

「貴女達、始まるわよ、戯れてないでレースに集中しなさい?」

「はーい」

「すいません」

 

 

 そう言ってドーベルさんから注意を受けた二人は素直に従う。

 

 ドーベルさんも義理母が居なくなってからよくアンタレスを纏めてくれています。

 

 姉弟子やライスシャワー先輩も頼り甲斐はあるんですが、やっぱり、不在の時などもありますし、常にチームを見てくれる人がいてくれるはありがたいです。

 

 え? 私ですか? 私が纏めるチームなんてとんでもないことになるに決まってるじゃないですかーやだなー。

 

 多分、ルドルフ会長の胃に穴がバチバチ空いちゃいますよ。

 

 ゲートの前で軽く準備体操をしながら、視線を交差させるナリタブライアン先輩とディープインパクトちゃん。

 

 おー、二人ともバチバチ火花散らしてますねー。いいぞー! もっとやれ! 

 

 これぞ野次ウマ精神、ウマ娘だけにな! 今、我ながら上手いこと言った気がするぞ。え? 気のせいですか? そうですか。

 

 そんな最中、私は肩を叩かれました。

 

 

「何してんだ? アフ」

「あれ? ゴルシちゃん。そりゃ今からレース観戦を……」

 

 

 そして、私が振り返った先には満面の笑みを浮かべたゴルシちゃんがいました。

 

 手には何故か、チアガールのコスとなんかわからんが焼きそばを持っています。

 

 おい、なんだその笑顔の圧は……。

 

 

たこ焼き担当、頼んだぞ」

「………………」

 

 

 私はゴルシちゃんのその一言に思わず顔を引き攣らせます。

 

 おい! おかしいだろ! なんでまた私たこ焼き売らないといけないんですか! 

 

 しかもそれ、スカート丈は短いわ、胸のサイズは合ってないわで大変だった衣装じゃないですか。

 

 まあ、スカート丈に関しては今は下はスパッツ穿いてるからいいとして、胸のサイズはちゃんと合わせてるんでしょうね! 

 

 キズナちゃんもドゥラちゃんも目を輝かせながら口を合わせ可愛いとか言ってるんじゃないよ。

 

 

「安心しろーお前達の分もあるぞー」

「本当ですかー!」

「やったー!」

 

 

 そして、この二人、なんとノリノリである。

 

 流石は一筋縄ではいかない我が後輩達である。これも私の指導の賜物だな(白目)、だめだ、頭痛くなってきた。

 

 助けてフジキセキ先輩、最近、勝負服の胸ばかり見てますけど助けて。

 

 あの人、意外とあるんですよね。正直、最初見た時は感動しました。

 

 まあ、そんな事はどうでもいいんですけど。

 

 

「ほら行くぞー」

「やだやだー! レースを普通に見たいんですー!」

 

 

 といった感じに意思は関係ないとばかりにゴルシちゃんから更衣室へ引き摺られていく私。

 

 キズナちゃんとドゥラちゃんはなんだか楽しそうにそんな私の後からついて来ます。

 

 二人の大事なレース前だというのになんでこんな事に! 

 

 それからしばらくして、更衣室から出て来た私は自分が着たチアガールの衣装を確かめる。

 

 前のチャックが閉まらずに下から胸が見えてます。

 

 おい、こんな衣装見たことあるぞ、神を喰らえとか言っていたゲームで、かわいいヒロインがこんな衣装してたな! おい! 

 

 

「……なんでこれ、胸が下から見える仕様なんですか」

「いや、お前の胸がデカすぎるだけだ。普通だぞ、ほれ」

 

 

 そう言って指差す先には可愛い後輩二人の姿が。

 

 なんか普通に衣装着てるじゃないですか、しかも似合ってるし、悔しい。

 

 そして、チアガールの衣装を着た二人は私の格好をまじまじと見つめるとそれぞれ口を開いて感想を述べ始めた。

 

 

「アフちゃん先輩やっぱりアレですね、敵いませんよ本当に超可愛いです!」

「凄い、下から見えてるよ! ドゥラちゃん!」

「え! 本当だ! 眼福眼福!」

 

 

 私のチア衣装を見てはしゃぐ後輩二人。

 

 二人は揃って私の胸の南半球に向かって手を合わせて合掌している始末である。

 

 流石にこのまま会場でたこ焼きを売るわけにはいかないので、ひとまず、いつもブライアン先輩が付けているような晒しでなんとか隠す事に。

 

 こんなん着ていたら本当いつか警察に連れてかれますよ。

 

 

「よし! 売るぞ! 野郎どもー!」

「おー!」

「たくさん売るぞー!」

「……皆女の子なんだけどね」

 

 

 私の冷静なツッコミは軽く流され、意気揚々とたこ焼きと焼きそばを抱えて観客席へ向かう私達。

 

 そもそも私達って何しに来たんでしたっけ? 

 

 レース見るためだった筈なのになー、あれれー? おっかしいぞー。

 

 そんな最中、レース会場ではいよいよディープちゃんとナリタブライアン先輩のレースが始まろうとしていました。

 

 

「両者! 構え!」

 

 

 主審の一言で会場の空気が止まり、静かな時が流れる。

 

 SWDT、三冠ウマ娘八番勝負、第3戦目。

 

 英雄ディープインパクト対シャドーロールの怪物ナリタブライアン。

 

 そのレースの火蓋が今……。

 

 

「始めッ!」

 

 

 勢いよく開いたゲートと共に切られた。

 

 ゲートが開いた途端に顔つきが一気に豹変し、飛び出す二人の姿に会場からは歓喜の声が上がる。

 

 二人の三冠ウマ娘が繰り広げるレースに観客達は大きな期待感を抱きながら釘付けになるのだった。

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