前回の遥かな、夢の11Rを見るために!
いよいよ始まったディープインパクトちゃんとナリタブライアン先輩との三冠ウマ娘同士のレース!
私達の中でも緊張が張り詰める中、いよいよゲートが開いてレーススタート!
どっちにも負けてほしくない私の割とどうでもいい乙女心を他所にゴルシちゃんに拉致られてたこ焼きを作ることになった私達。
とんでもなくあざとい格好をさせられた私は後輩二人と共にたこ焼きを売る事になりました。
なんでこうなったの!
そんな最中、私のたこ焼きは皆から何故か相変わらず好評!
そして、デッドヒートしそうなSWDTのレース! もうどっちが勝つの!?
お願い! 負けないで、ディープインパクトちゃん! ナリタブライアン先輩!
二人が今ここで負けちゃったら私やルドルフ先輩との約束はどうなっちゃうの?
ライフはまだ残ってる。ここを耐えれば、きっと私と戦えるんだから!
次回! アフトクラトラス死す! デュエルスタンバイ!
はい、そんなこんなで前回の回想なのか次回予告なのか訳の分からない茶番はここまでにしておきましょう。
前回の回想なのに私が死んでるやないか、誰だこんな回想考えた奴! ちょっと出てこい! お前かゴルシ!
さて、そんなこんなで始まったSWDTの第三戦は互いに見事なスタートダッシュが決まってのスタートとなった。
先行を取るのはディープインパクトちゃん。
まあ、ディープちゃんは逃げもできる脚質ですからね。
意外と器用なんですよねーあの娘。
「これは面白いレースになりそうですね」
「そうですね」
「いやはや、展開が読めませんよ」
そう言いながら私の胸を下から揺らすドゥラちゃんとキズナちゃん。
おいお前たち、早くたこ焼き売ってこんかい。
なんで揃いも揃って私の胸を下から揺らしてんだこいつら。
まあ、可愛い後輩に愛されてるのは嬉しい限りなんですけどね、私に対する依存が高い気がします。
しかしながら、後ろにナリタブライアン先輩をつけるという事は相当リスキーだと思いますけどね。
「……確か、トレーニングトレーナーはタケさんでしたか、逃げならディープちゃんも慣れているんでしょう……ですが……」
鬼気迫るようにピッタリとディープちゃんの背後に迫るナリタブライアン先輩の姿に私は顔を引き攣らせます。
あれを経験したらわかるんですけど、めっちゃ怖いんですよね。
まず、引き剥がせる気が全くしません。
「……体力を削られる分、不利なのはディープちゃんでしょうね」
遠目から見てもわかるし、私もナリタブライアン先輩と走った事があるからわかります。
ですが、ディープちゃんもかなり強いのも事実です。
二人の実力は正直計りかねてます。どちらが勝ってもおかしくないですからね。
「アフちゃん先輩、ディープインパクト先輩、凄い綺麗なフォームですね」
キズナちゃんはディープインパクトちゃんの綺麗で無駄のないフォームに感心する。
道中のペース配分は後半に重要になってくる。
後半に脚をためるための工夫を考えて、走り方の改善をかなり重ねたんでしょうね。
すると、ドヤ顔で私の隣にいたドゥラちゃんが口を開いた。
「そりゃ、かつて暗黒面に堕ちたアフちゃん先輩を倒すために凄いトレーニング積んでたんだよ? あの時のアフちゃん先輩凄かったんだからキズナちゃん」
「え! それ本当! ドゥラちゃん! アフちゃん先輩って手から電撃出せてたの!?」
「待て待て、出せるかぁ! そんなもん!」
自慢げに話すドゥラちゃんの言葉に目を輝かせるキズナちゃん。そして、そんなお馬鹿な後輩二人に私は待ったをかけます。
誰が暗黒面に堕ちたですか! いや、確かにあん時はいろいろあって魔王とか言われてましたけども! 暗黒面とかどこの銀河系の話ですか!
あと、真っ赤なライトセイバーとか持ってませんからね私。
ウマ娘だけにホースと共にあれってか、やかましいわ。
けどまあ、当時は魔王VS英雄とか言われてましたし、そんな風に思われていても仕方ないのかな。
大体、あんなタコみたいな真っ黒な被り物被ってシュコーシュコーなんて私やってないですからね!
しかし、ドゥラちゃんは冗談をひとしきり言い終えると真面目な表情を浮かべながらこう話す。
「けど、あの時のアフちゃん先輩を倒す為にそれこそアンタレス式に加えて相当なトレーニングしてましたからね、ディープインパクト先輩は」
「ひぇ……」
「血反吐吐くくらいトレーニングしてたと思いますよ」
ディープちゃんの走りを見ながら真剣に語るドゥラちゃんに思わず小さく悲鳴をあげるキズナちゃん。
普段からアンタレス式のトレーニング積んでたらどんだけキツイかわかりますからね。
そんな中、焼きそばを売っていたゴルシちゃんがひょっこり現れると一言。
「じゃあ、アフが暗黒面なら私はジェ◯イだな!」
「え?」
「大丈夫、ゴルシちゃんそれは一番ない」
「なんだとこのやろう」
私は冷静な口調でドヤ顔のゴルシちゃんに容赦なく言い放つ。
しかしながら私の即答にカチンと来たみたいですね。
どちらかと言うと貴女達は戦闘民族でしょう。
貴女とマックイーン先輩とオルフェちゃんは特にそう。
メジロ一族なんて、あんなのトレセン学園のマンダ◯リアンかサ◯ヤ人ですからね。
ほんと誰ですか、名家とか言い始めた人達、とんでもないですよ、あの人達は基本、戦闘民族ですから。
そんな私はゴルシちゃんから、腹いせとばかりに背後から胸を鷲掴みにされます。
「そんな生意気な事いう胸はこいつかー!」
「んなぁ!? ば、馬鹿! 背後から掴むなっ! この服ただでさえアレなのに!? ……んっ!」
溢れる溢れる! やめないか! 何ですぐゴルシちゃんは胸を揉むんですかね!
ドゥラちゃんとキズナちゃんはそれを見て感心したように、おー! と声をあげている始末。
レースが落ち着いて見れたもんじゃないです。ただでさえたこ焼きを売りながら見てるってのに。
大体、生意気言う胸ってなんですか、胸が喋るわけないでしょうが!
「あ、レースが動きそうですよ?」
そんなわちゃわちゃしている私達を他所にレースに目を向けていたキズナちゃんがそう呟く。
ナリタブライアン先輩は静かにそれでいて淡々とディープインパクトちゃんに追従している。
ナリタブライアン先輩とも走った事があるからよくわかります。また、あの人強くなってる。
「風の抵抗を最低限に走るあのスタイル、やっぱり恐ろしいですね」
「なんていうか、凄い威圧感を感じます」
「うん」
ナリタブライアン先輩は凄まじくキレる末脚を持っている。
それこそ、土壇場で根こそぎレースをひっくり返すような末脚だ。
異様な威圧感、そして、その雰囲気はまるで天皇賞春のライスシャワー先輩の姿が重なる。
多分、ナリタブライアン先輩も相当なトレーニングを積んできたんだろう。
私は知っている。ナリタブライアン先輩も持っているのだ。
私と同じものを。
「……多分そろそろギアチェンジしますよ」
「……え?」
間の抜けた声を上げたのは私の隣にいたドゥラちゃん。
私は一度、そのギアチェンジを一度見せてもらったことがある。
スピードが急に切り替わるそれは、多分、重ねたトレーニングによって手にしたものだろう。
あのギアチェンジを見た時は私も思わず度肝を抜かされましたからね。
変幻自在に自足速度を変えられるというのはかなりの技術が必要になりますから。
私も義理母から檄飛ばされて、泣きながら覚えました。
会場の空気が次第に重くなっていく。
それからしばらくして、先に動いたのは案の定、ナリタブライアン先輩だったようだ。
ギアが切り替わるのが遠目で見てもわかった。
普通はディープインパクトちゃんから仕掛けるのを待ってから動きに合わせるのが定石なんですがね、多分これは。
(……揺さぶりですか……。凄いプレッシャー)
レースを駆ける私は冷や汗を掻きながら、背後から迫るナリタブライアン先輩に視線を何度か向けていた。
引き剥がそうかと、何度かペースを変えたりしてもピッタリと張り付いてくる。
これだけの圧力は有馬記念で追い上げてきたアフトクラトラス先輩以来だ。
それだけ、ナリタブライアンというウマ娘が相当な強さだという事だろう。
同じ三冠ウマ娘として、尊敬に値する。
(走ってみるまで分かりませんでしたがね……)
全力のアフトクラトラス先輩と走った事がある私でも、背後から迫るナリタブライアン先輩の実力をまだ計り切れていない。
どれだけの足を溜めているのか、どのタイミングで加速してくるのか。
逃げが不利な事はわかった上で今回、逃げに回ったが、こんなプレッシャーを背後からずっと受けていたんじゃレースを作るどころの話じゃない。
なんとか、今はペースを保ちながら、ギリギリで駆け引きしている状態だ。
「……流石はディープインパクトか、アフの奴とやり合っただけはあるな!」
「……どうもッ!」
並ぼうとナリタブライアン先輩がペースを上げれば、私も合わせて上げる。
これが揺さぶりって事は理解している。
だが、前に行かせてしまえば、勢いがついてそのまま私が抜き去られるのは明白だ。
だから、今は揺さぶりであっても敢えて乗る。揺さぶるにしてもナリタブライアン先輩もその分の体力は消耗している筈なのだ。
(……我慢合戦といったところですかね!)
前にアフ先輩から聞いたことがあった。
ナリタブライアン先輩を背後に背負うと凄まじく走りづらいと。
あのアフ先輩さえ、並走で負かされた事があると話していたくらいだ。
しかも、今回は本番、ナリタブライアン先輩は本気で私を負かしに来ている。
背中から迫る異様なプレッシャーがそれを物語っているし、何にしてもナリタブライアン先輩の揺さぶりに対して何もしない訳にはいかない。
レース巧者ぶりに思わず私も身体に力が入る。
(……だけどッ!)
私とて、あれから成長してないわけじゃない。
ナリタブライアン先輩は強い、多分、こんなに背後に圧を感じたのはアフ先輩以来だ。
だが、私はあの時の宝塚記念からアフ先輩に近づくために死に物狂いでトレーニングをしてきたんだ。
血反吐が出るほどに積み重ねたそれは決して裏切らないと背中でアフ先輩は語ってくれた。
だから……。
「だからもうッ! 誰にも負けないッ!」
「……なんだと!?」
ガツンと凄まじい地面が爆ぜるような踏み込み。
その瞬間、会場の空気が一変した。
いや、一番驚いたのはナリタブライアン先輩だろう。このタイミングでの急加速、表記はまだ800mも残っているというのにだ。
ナリタブライアン先輩もそれに引っ張られるように足に力を込めた。
「面白いッ! 乗ってやるよッ!」
続いて加速するナリタブライアン先輩。
二人の対決はいよいよ最終局面へ、果たして勝つのは英雄かそれともシャドーロールの怪物か。
会場に来ていた観客達は声を張り上げ、その決着に胸を躍らせていた。