遥かな、夢の11Rを見るために   作:パトラッシュS

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大遅刻

 

 

 さて、オルフェちゃんとの試合が近い中、私はあるウマ娘に呼ばれてトレセン学園のグラウンドに居ます。

 

 そのウマ娘というのは白い頭がちょっと飛んでいるウマ娘ゴルシちゃんです。

 

 

「おいお前、今失礼な事考えてなかったか?」

「いや、何も考えてませんよ、そんなーやだなー」

 

 

 私は視線を逸らしながらそう告げる。

 

 お前、今まで私にしてきたことを考えてみろ、胸はいつも揉んでくるわ、たこ焼きは売らせてくるわ、悪巧みを一緒に考えるわ挙げるとろくな事が無いぞ。

 

 まあ、そんなゴルシちゃんですが、多分、仮想オルフェーヴルとするならば彼女がなんとなく適役だと思いお願いしたわけです。

 

 

「オルフェーヴルのやつはいかんせん気が荒いからなぁ」

「そう貴女と一緒でね」

「どの口が言ってんだこのアホ、お前、会長に怒られてる回数ダントツ1位だからな」

「なん……だと……」

「私よりも癖が強いって皆口揃えて言ってんぞ」

 

 

 そう言って、欠伸をするゴルシちゃん。

 

 ば、馬鹿な、凱旋門賞を取り、魔王と恐れられたこの私がゴルシちゃんよりも癖が強いですと。

 

 何かの間違いですよ! 私、レースは真面目に走ってましたからね! 

 

 

「まあ、基本的にはお前は今じゃ色んな方面から要注意人物だしな、諦めろ」

「そんなっ!?」

「てか今更だろ、そのデカい胸に手を当てて考えてみろ」

 

 

 ぐぬぬ、なんて言い草だ。これは誠に遺憾であるぞ! 

 

 よし、そこまで言うなら手を当てて思い返してみようじゃないか! 

 

 私は自分の胸に手を当てて目を瞑ってこれまでの事を振り返ってみる。

 

 

「どうだった?」

「うん、柔らかいですね」

「そんなことは皆知ってんだよ」

 

 

 自分の胸に手を当てて考えて考えてみたが、柔らかいだけだった。

 

 思い当たる節がありすぎて考えるの自体を放棄しました。そんな過去のことアッフわかんない。

 

 皆、前を向いてポジティブに行きましょう、そう、私は過去を振り返らないウマ娘なんです。

 

 

「まあ、そうだなぁ、オルフェーヴルの対策ってならまず右のストレートを強化しないとな」

「ん?」

 

 

 あれ? 聞き間違えかな? 右ストレートって言いましたかね今。

 

 私は首を思わず傾げてしまう、うーんおかしいぞ、私はレースについてのアドバイスとか、あとは走り方について今日ゴルシちゃんを呼んだはずなんですけど

 

 

「あとはゴール付近でのラッシュをどうやって叩き込むのかが勝負の行方を左右するぞ」

「私が一緒に走るのは地下格闘場の格闘士か何かですか?」

 

 

 聞いた事ないわ! アホなんか! どこの世界にグーパンで殴り合うウマ娘のレースがあるんですか! 

 

 気性が荒いにも程がありますよ! 私も人の事言えないですけど! 

 

 ですが、ゴルシちゃんは確信を持って私に満面の笑みを浮かべながらこう告げてくる。

 

 

「互いに頭がプッツンしてるウマ娘が並走すんだから血の雨くらい降るだろ、多分そうなるぞ」

「えぇ……」

 

 

 私は思わずこのゴルシちゃんの言葉に顔を引きつらせる。

 

 つまり、オルフェーヴルとゴール直前でグーパンの応酬があると、ボクシングの試合かな? 

 

 そんなレース見たことないんですけど、ゴール前にどっちか意識飛びませんかねそれ。

 

 

「まあ、冗談はさておき、タフな試合になるんは間違いないな、身体のぶつけ合いは間違い無くあるぞ、プッツンしたオルフェーヴルは強引に身体ぶつけて来やがるからな、まあ、私なら逆に弾き飛ばしてやるけど」

「そういや貴女この間、レースで誰か吹っ飛ばしてましたよね?」

「あぁ、ジェンティルドンナだろ? あのバカ、タックルしてきやがってさー、逆に跳ね返してやった。オルフェにもタックルしたって言ってたっけなーそういや」

 

 

 

 ご愁傷さまジェンティルドンナさん、貴婦人というかタックラーになっていませんか? ラグビー部ですかね? 

 

 オルフェーヴルがよろけるタックルをものともしないなんてやっぱりゴルシちゃんは頭がおかしいんやなって。

 

 え? お前が言うなですって? なんだとこの野郎。

 

 

「ゴルシ、やっぱりお前がナンバーワンだ」

「何言ってんだ、お前もだぞ♪」

「嫌だー! 離せー! 私は癖ウマ娘を卒業するんだー!」

「大丈夫大丈夫、オルフェくらいならぶっ飛ばせるからよ!」

 

 

 聞いた相手が悪かった、もうなんて言うかダメな気がする。

 

 勝つ勝たないとかじゃなくて趣旨がぶっ飛ばすぶっ飛ばさないになってますからね、まるで意味がわからんぞ! 

 

 まーた、私病院行きですか、その時は誰が私を優しく看護して欲しいものですよ、スーパークリークさん! 君に決めた! 

 

 

「ほんじゃ走るぞー」

「…………」

 

 

 ズルズルとゴルシちゃんから襟を掴まれてレース場に引き摺られていく私。

 

 そこから、私はゴルシちゃんからトレーニングを受けることになった。

 

 

「よーし! それじゃまずは紐走りだな」

「紐走り?」

「アフ、お前あんまり追い込みしたことないだろ? とりあえず紐で身体括るから私の走りについてきな」

 

 

 そう言って、屈伸をするゴルシちゃん。

 

 私はそんなゴルシちゃんを横目に見ながら準備運動をしつつ、身体をペターンと地面に引っ付ける。

 

 だが、私は横目に見ていたゴルシちゃんの表情を見て少しだけ驚いた。

 

 その眼差しは真剣そのものだったからだ、ふざけ倒していた先程とは違い何やらスイッチ入ったみたいです。

 

 そんな中、ゴルシちゃんは笑みを浮かべ、私に静かにこう告げる。

 

 

「お前に見せてやるよ、掟破りのゴルシワープってやつをな」

「はい?」

「行くぞー! ついてきやがれい!」

「あっふっ!?」

 

 

 そう言って、いきなり走り始めるゴルシちゃん

 

 あだだだだだだ! バカバカバカ! 引きずっとんねん! 

 

 見ろ見ろ! まだストレッチ中だったでしょうが私! 

 

 あ、ちなみに皆さんに言うの忘れてましたが、これ最終調整です。

 

 

「ったくっ!? めちゃくちゃなんですから!」

「はっはー、あの体勢からよく持ち直しやがったな!」

「うっさいわ! アホ!」

 

 

 パンッと地面を蹴り上げてすぐに走る体勢に入り、並走を開始する私はそう言いながらゴルシちゃんに悪態を吐く。

 

 しかしながら重りをつけてる私を軽々と引き摺るなんて、なんて脚力と腕力してるんですかこの娘は……。

 

 相変わらずとんでもないですね。

 

 

「じゃあ、行くぞ……、これ、あんまし他のやつには見せた事無いけどな」

「ほぇ」

 

 

 次の瞬間、何かがゴルシちゃんの足元で爆発するような音が聞こえました。

 

 そこから、私はグンッ! とゴルシちゃんから強引に引っ張られます。

 

 それは、私が今まで体験した事がない急加速でした。

 

 

(な……!? なんですかこの末脚ッ!?)

 

 

 これまで、何度かゴルシちゃんのレースを見たことはありました。

 

 ですが、これほどまでの急加速は見た事がありません。

 

 私はほぼほぼこの時点で確信しました。

 

 こいつ、普段のレースを『本気』で走って無かったなと。

 

 それほどまでに異常な末脚だった。

 

 

「奥の手って奴ですか!」

 

 

 これには私もスイッチを入れるしかありませんでした。

 

 こんな走りを間近で見せられたんじゃ黙ってられないでしょう、というか、私の最終調整ですしねこの並走。

 

 

「へっ! やるじゃねーかアフ」

「こちとらG1で化け物とやり合ってきたんですよ! 当たり前じゃあ!」

 

 

 クソがよ! なんでレース前にこんなガチめに走らないといけないんですか! 

 

 これは背後からルドルフ会長のマシュマロを掴んで揉み上げるのレベルの所業ですよ。

 

 ちなみにこの間やったら頭にグーパンを食らいました、マシュマロはめっちゃ柔らかかったです。

 

 

「ラストスパートだぞ! ついてこいよ!」

「逆に置いていかれないでくださいよ!」

 

 

 ドンッと互いに急加速する私とゴルシちゃん。

 

 その息はピッタリでした、なんだろう、ゴルシちゃんと息ぴったりってなんだかアレなんですけどね。

 

 

「おっしゃあー!」

「ぬあー!」

 

 

 こうしてなんやかんやありながら、最終的な追い込みは非常に良いものになりました。

 

 かなり雑な追い込み方なような気もしますが、アンタレス式だから何も問題ないよね! 

 

 

 そんなこんなで迎えたレース当日。

 

 不安そうな表情を浮かべたルドルフ会長は私の登場をハラハラした心境で待っていました。

 

 

「あいつまたなんかやらかさないか? 大丈夫か? ブライアン? 今日は海外の名だたるウマ娘達も見に来てるんだが」

「大丈夫だルドルフ、心配するな」

 

 

 そう言って、心配そうな表情を浮かべているルドルフを安心させるように告げるブライアン。

 

 ブライアンがそう言うなら多分、大丈夫なんだろう、なんせ、アフトクラトラスと一緒にいる時間は長いのだから。

 

 ルドルフはとりあえず腕を組んだまま大きく一息つく。

 

 

「あいつは間違いなくやらかす」

「おい! 全く安心出来ないぞ! それは!?」

 

 

 悲しいかな、ブライアンの言葉はルドルフの安心を木っ端微塵にするものだった。

 

 これではションボリルドルフである。ルナちゃんファイト! 

 

 そんな皆の心配をよそに私はと言うと。

 

 

「……寝過ごした」

 

 

 盛大な寝坊をかましていた。

 

 あかん、昨日夜遅くまでFPS配信をしていたらこんな時間に起きてしまった。

 

 ち、違うんです。あまりに興奮しちゃって寝れなかったから魔が差してやっちゃったんです。

 

 うむ、これは間に合いそうにないな。

 

 冷静になった私はもう1回布団を被り……。

 

 

「アフちゃん!? 何してんの一体!!」

「ヴェ!?」

 

 

 メジロドーベルさんに叩き起されました。

 

 そらもうドーベルさんは激おこプンプン丸です。

 

 今ではアンタレスの総指導をしてますからね、看板の私がこの有様ですから。

 

 

「早く着替える! なんだったら裸にひん剥いて会場に連れていくわよ!」

「ひぃ!? は、早く着替えますです!」

 

 

 私は慌ててバタバタと着替えを行い全力疾走で会場に向かう羽目になりました。

 

 なんもかんも夜更かしさせるゲームが悪い。

 

 そういう訳で私はしばらくゲーム禁止令が出ました。解せぬ。

 

 その後、遅れて会場入りしてルドルフ会長から大激怒を食らったのはいうまでもない。

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