WDS、通称、ワールドドリームシリーズ。
世界ウマ娘選抜VS日本ウマ娘選抜。
日本で行われるレースに沿って、プラスαで行われる海外ウマ娘と日本ウマ娘との合同レースシーズン。
スプリンター、マイラー、クラシック、ステイヤー、ダートの五部門からなるこのシリーズレースはまさに総力戦と言っても過言ではないだろう。
「日本ウマ娘選抜ッ! 入場ッ!」
凄まじい盛り上がりの中、私を含めた日本ウマ娘選抜のメンバーが次々と入場していく。
いや、なんで私が先頭なのか分からないんですけども。
どうも、日本代表といえばお前だろ、はよ先頭行けとばかりに皆からケツを蹴っ飛ばされたアフトクラトラスです。
こちとら、この日のためにズタボロになるようなトレーニング積んできとんのやぞ! いたわれよ! 優しくちて!
まあ、そんな感じで入場したわけなんですけど。
「見てみろよ、あの面構え」
「おそらく、遠山式トレーニングの地獄を乗り越えた奴らだ。面構えが違う」
この有様である。
義理母よ、貴女のトレーニングは今もなお畏怖の対象として恐れられていますよ。
いや、誇らしいのかなんなのやら、おかげで私は今日も今日とて頭がおかしい奴ら扱いを受けております。
え? 頭がおかしいのは元々ですって?
別にそれで強くなってんだから良いでしょうが!
そんなアホみたいなことを私が考えている中、対面した海外勢筆頭の世界第一位、シーバードさんが口を開きます。
「……随分と皆さん顔つきが変わられたようで?」
紅茶を片手に余裕ある表情でそう告げてくるシーバードさん。
やはり、王者の貫禄があるというところでしょうかね。
そんな中、シーバードさんに対面するように立つ我らが会長は一言、ドぎつい言葉を投げかけた。
「まあ、お陰様で一部、思わぬ新戦力が入ってくれたみたいで助かりましたよ、ありがとうございます、シーバードさん」
ルドルフ会長のその一言によく言ったとばかりに盛り上がる日本のウマ娘達。
思わずこれにはシーバードさんも顔を引き攣らせ青筋が浮かび上がる。
なお、さらに煽るようにその合力したウマ娘からシーバードさんへ一言。
「よー! 姫ー! 元気してたかー?」
「おいゴラァ!? ファッキンサンデー!! お前帰ってきたらわかってんだろうなァ! アァ!?」
「どうどう、姫、ステイ! 落ち着いて! キャラがぶち壊れてますって!?」
どうやら癖が強いウマ娘に振り回されるのは世界も日本もそんなに変わらないらしい。
乱心したシーバードさんを羽交い締めにして落ち着かせているハリケーンランさんの姿に、苦笑いしか出てきません。
そんな中、急遽、爆発音と共にやたらと派手な衣装に身を包んだ異様な軍団が改造されたバギーやバイクと共に現れる。
それはまさに世紀末。
私、初めて見ましたよ、あんなトゲトゲの肩パッドをつけた衣装なんてあったんですね。
その軍団の登場に思わず観客席の実況から声が上がります。
「こ、これは何という事だ! ここにきて日本勢から荒くれ者集団の襲撃だぁー!!」
はい、皆さまは大体想像がつくと思います。
そう、我らが最終海外決戦兵器軍団のご到着でございます。
これが日本が誇るメジロ一族の本気だぞ、皆さん一応お嬢様家系なのをお忘れなく。
「ヒャッハー!!」
「おいおい! イキのいい海外のいいとこのお嬢様だぁー!」
「オラ! ありったけの有金と人参全部置いてけよーゴラァ」
皆さん、これが日本が誇るお嬢様です(二回目)。
おかしいな、目が曇っているんでしょうかね、私。
登場からものの数秒で海外勢の人にカツアゲを敢行しているイカれたお嬢様の軍団がいるって聞いたんですけど、それってマジ?
マジなんだなぁこれが。
マックイーン先輩、どうしたんですか、何があったんですか。
見てください、これを間近で目撃したサトノダイヤモンドちゃんが泡吹いて気絶しかけてますよ。
そんなクソヤバそうな木刀なんてどっから持ってきたんですか。
あと、ゴルシちゃん、その釘がたくさんついてる木製バットは手作りですか、手が込んでますね。
「おうおう! うちらの縄張りに喧嘩売るなんざいい度胸してるのーお姉ちゃん達ー」
「私らが居ないG1でご苦労さん! 随分暴れてたみたいだけどそれって意味ないからー! お疲れー!」
サングラスかけたステゴさんとゴルシちゃんのこの生き生きした立ち回りを見てください。
貴女達、ウマ娘だよな? どうした? ん? 何があったんだい君達は?
そんなチンピラみたいな煽り方して、殴り合いが始まってしまいますよ。
違うの、これそういう番組じゃ無いんですよ。
そんな中、海外勢も負けてないとばかりにすごい人らが彼女らの前にやってきました。
「あぁ? やんのかゴラァ」
「ファッキンジャパニーズウマガール」
指をパキパキさせながら出てきたのは気性があれで札付きでかなりやばいと噂のナスルーラさんとノーザンダンサーさんである。
やめてください、殴り合いはやめてくだされ! 血の雨が降ってしまいます! やめてくだされ!
そこにサンデーサイレンスさんが煽るようにこう一言。
「ちーっす! あれぇ? びびってんのかー? どうしたどうした? 随分余裕が無いんじゃねーの? あー! 私がこっちついちゃったから焦っちゃってんのかー? なーなー! 今どんな気持ち? ねぇ? どんな気持ち?」
「野郎! ぶっ◯してやらァァ!」
「待って! イージーゴア! おちついて!?」
まさにカオスである。
ルドルフ会長の顔を見ると何か悟ったような表情を浮かべていた。
あ、これはもう諦めている顔ですね、長く一緒にいたら大体わかります。
さて、じゃあ、そんなアルコルの状況を眺めているであろう副リーダーのマックイーンさんはというとなんかもうどうでもいいやとばかりにやさぐれた表情を浮かべていました。
そして、そのままトゲトゲ肩パッドをつけたマックイーンさんは魔改造されたヒャッハー車の上で人参をポリポリと齧っていました。
おい、副リーダーだろなんとかしろ!
あんたはそれでいいのか! ツッコミが誰もおらんなってもうたやないか。
「お! 殴り合いか! ワクワクするな! 久々に暴れっかー!」
「おい! 誰かリボーを止めろ!! こいつマジでやるぞ!」
「待て待て待て! あかんて! 姉御!」
腕をグルングルンしてるリボーを全力で止めに入る海外ウマ娘達。
あんたは海外勢率いるトップ3でしょうが! 何やってんねん!
まあ、気性の荒さは海外勢も負けず劣らずでしたね、これ、レース中に殴り合いにならないか不安で仕方ないんですがそれは。
「はいはーい、じゃあ茶番はこれくらいにして落ち着きましょうかー?」
そう言いながら手をぱんぱんと叩いてその場を収めたのはアメリカンファラオさん。
流石は米三冠ウマ娘といったところでしょうか、その一言に皆は一斉に静まり返りました。
そして、そのシーバードに続くように腕を組んだまま静かにことの顛末を見ていたセクレタリアトがゆっくりと口を開いた。
「……実力はレースで示せ、それが全てだ」
その一言にその場にいた全員が思わずそのオーラに圧倒される。
ふざけたとしても、やはり、世界最強格のセクレタリアトさんから漂う雰囲気はそれだけでその場を制するだけの凄みがあった。
まあ、事のきっかけは世界一位のシーバードさん、貴女なんですけどね。よしんばこんなんでも世界一位です。大丈夫かいな。
制されるような言葉に肩をすくめるリボーは口を尖らせながらつまらなさそうにこう呟く。
「……そもそも姫がきっかけじゃねーか、あーあーツマンネー」
「そこ! なんか言った!!」
「なんも言ってませーん、バーカ」
「おいコラ、今バカって言ったな? バカって言ったよな! はっきり!」
そう言いながらベーと下を出すリボーに拳をプルプルと振るわせるシーバードさん。
威厳とはなんなんだろう、今度、グー◯ル先生に聞いてみよう。
しかしながら、何というかこう、子供かいな、ほんとに癖が強い人達ばっかりなんでしょうね海外ウマ娘達は。
まあ、そんなこんなで丸く収まったみたいで、顔合わせ、もとい、WDSの開会式は進行していきます。
そんな中、ニコニコ顔で私の方に近づいてくる白いあんちくしょうが1人。
「アッフの分も一応作っといたぞ♪」
「着ません、なんで作ってきてんですか……。
……って! これ布面積少なっ!? こんなん着たら私痴女扱いされるでしょうがッ!」
「今さら何言ってんだお前」
さも当然のように告げてくるゴルシちゃんに思わず拳がプルプルしてしまいました。
なんで私は毎度そういう扱いなんですかね、お色気担当ならヒシアマ姐さんとか、ドトウさんとかたくさんいるでしょうが。
そんな中、本日、再会した2人の後輩から私に一言。
「絶対似合いますよ! アフちゃん先輩!」
「いやー、私見たいなー。アフちゃん先輩の素晴らしい世紀末衣装……ぐへへへ」
「お巡りさんすいません、でっかい絆創膏持ってきてくれませんかー? 後輩2人くらいつつめるくらいの」
しばらく見ない間に成長したんかなと思ったらこれですよ。
ドゥラちゃんとキズナちゃんの教育をどこで間違えてしまったんでしょうか、教えてください義理母。
なんだか、私よりメジロドーベルさんに寄ってきた自分の後輩達に危機感を覚えます。
こうして、私は遠い目をしながらはちゃめちゃなWDTの開会式を終えるのでした。