遥かな、夢の11Rを見るために   作:パトラッシュS
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トレセン学園 学園祭 中

 

 

 

 トレセン学園の学園祭、午後。

 

 ちびっ子探検隊にやられた私はクタクタになりながらげっそりとした表情を浮かべ、ライスシャワー先輩の後ろを歩いています。

 

 色んな意味で疲れました。子供の相手はやっぱり元気があって大変ですね。

 

 

「大丈夫? アフちゃん、ちょっとベンチに座って休もうか?」

「そ、そうですね…」

 

 

 そう言って、ちょこんとライスシャワー先輩の隣に座る私。

 

 普通に地獄のトレーニングするよりなんか精神的に疲れた気がします。

 

 ブライアン先輩達もよくあの子達の相手できるなぁと感心するばかりです。あ、でも、私の身体に飛びついてハグしてきた幼女は確かに可愛かったですね。

 

 柔らかーいとか言ってましたけど、そりゃ、私の胸元ですから、やっぱり私の胸には磁石か何か引っ付いているのかもしれない(危惧。

 

 そんな中、ライスシャワー先輩は隣に座る私にゆっくりと問いかけ始める。

 

 

「最近、学園生活はどう? アフちゃん」

「…どうと言われましても…まぁ充実しては…」

 

 

 そうライスシャワー先輩に言いかけて私の脳内にはふと、今までの学園での思い出が鮮明に蘇ってくる。

 

 それもだいたい黒歴史ばかりである。つい最近では廊下で縞パン晒して床で寝てましたしね私。

 

 ある朝起きたら隣に全裸のヒシアマ姉さんが寝てた事もありましたかね…。

 

 ある日のニンジンを賭けたちんちろりんでナリタブライアン先輩にぼろ負けして。夜中にトイレ行ってたら寝ぼけて寝てたベッドを間違えちゃったんですよね私。

 

 翌日、ブライアン先輩が拗ねてたのがものすごくめんどくさかった記憶があります。

 

 そして、ゴルシちゃんとの絡みやウイニングライブでの盛大なやらかしに義理母による地獄のトレーニングの数々など思い出せばキリがない。

 

 そんな事を思い出していた私はライスシャワー先輩の隣でズーンと落ち込む。

 

 多分、今の私の落ち込み顔、深刻すぎてかなり彫りが深くなってるだろうな、三センチくらい。

 

 そんな私の顔を確認したライスシャワー先輩はにっこりと笑顔を浮かべたままゆっくりと語り始める。

 

 

「それは良かったわ、楽しんでるみたいで…」

「今、私の顔見て視線逸らしましたよね? ね?」

「私もこの学園での生活、とても今充実してるの、アフちゃん」

「スルーしましたね、わかった上で今スルーしましたね、先輩」

 

 

 そう言って、隣で決して視線を合わせようとしないライスシャワー先輩に迫りながら問いかける私。

 

 最近、巷では私のことをチョロいアフちゃんと呼ばれる事が多々ありますが、とんでもない、私はこう見えてガードが固いウマ娘なのですよ。

 

 お前のガード、ガバガバやんけとか言わないで! そうなんだけども!

 

 私をスルーしたライスシャワー先輩は続ける様に話を続ける。

 

 

「最後のクラシック菊花賞。ブルボンちゃんに必ず勝つわ、私は」

「…あぁ、は、はい」

「血反吐を吐いても、まだまだもっと追い込まないといけない…今以上に」

「う…うぅん…ソウデスネ」

 

 

 私は拳を握り締め語るライスシャワー先輩の言葉に嫌な冷や汗がだらだらと背中から滲み出てくるのを感じる。

 

 それに付き合えっちゅう事ですね、言わなくてもわかります。わざわざ目を合わせて訴えかけてこなくてもわかってますから、はい。

 

 棒読みでライスシャワー先輩に答える私は思わず顔を引きつらせるしかなかった。

 

 私には悪いがただでさえ、とんでもなくキツイトレーニングをしているのに更に追い込むから覚悟しとけよとしか聞こえてこないから不思議ですね。

 

 うん、後輩だから致し方ない。付き合わなければいけない宿命なのでしょう。あぁ、死兆星が見えます。

 

 

「さて、じゃあ、気を取り直してお店を回りましょうアフちゃん。 私、ゴールドシップがやっているお好み焼きが食べたいなと思ってたの」

「えっ…!? ゴルシちゃんのお好み焼きですか…っ!」

 

 

 ライスシャワー先輩から話を聞いた私は思わず嫌な表情を浮かべる。

 

 なんでよりにもよってゴルシちゃんのお好み焼きなんですかね、どうせ、また胸揉まれますし、なんかボディタッチがやたら多いんですよあの娘。

 

 私のことを気に入っているのはわからんでもないですけれども、まぁ、可愛がられていると考えれば悪い気もしませんけどね。

 

 か、勘違いしないでよねっ! 別にだから好きだとかそんなんじゃないんだからねっ!

 

 今、一瞬、こいつ何言ってんだ? と思われた方、大丈夫です。

 

 私も自分で言ってて今ものすごく死にたくなりましたから、だから、馬刺しにするのは勘弁してくだしゃい。

 

 私はツンデレってキャラではないですものね、あぁ、ダイワスカーレットちゃんはそんなキャラなんですけども、あの娘がデレたらきっと包容力高そうだと思います(意味深)。

 

 さて、話は変わりますが、ライスシャワー先輩から連れられた私はゴルシちゃんの元へ。

 

 

「おー! 誰かと思えば! チョロアフじゃねーかぁ! 元気だったかぁ!」

「誰がチョロアフやねん!」

 

 

 しかし、行った店先での開口1番がこれである。

 

 誰がチョロいだって、心外な! 隙を生じぬ二段構えならぬ三段構えまでやるというのに! チョロアフとは心外な! ぷんすか!

 

 そして、お好みを売っているゴルシちゃんの横で不機嫌そうな表情を浮かべているウマ娘に私は視線を向ける。

 

 見慣れた芦毛の髪に私と同じくちっこい背丈、そして、メジロ家の世紀末モード開祖のウマ娘。

 

 

「マックイーン先輩何やってんですか?」

「何も言うんじゃありません、いいですね?」

「アッハイ」

 

 

 アイエエエ!! メジロマックイーン先輩がなんとお好み焼きを焼いていました。

 

 そしてなんとワザマエ! お嬢様に見せかけてお好み焼きを作るのが上手すぎてびっくりしています。はい。

 

 そんな中、私は隣にいたライスシャワー先輩に視線を向ける。

 

 せっかくお目当てのお好み焼きを買いに来たのだから何を食べるのか問いかけようと思ったからだ。

 

 しかし、私は視線を向けたライスシャワー先輩のその眼差しに思わず悪寒が背中にゾクリと走った。

 

 その目は真っ直ぐにお好み焼きを焼いているマックイーン先輩を捉えている。

 

 

「…あ、あのー…ライスシャワー先輩?」

 

 

 私は恐る恐るライスシャワー先輩に声を掛けようとするが思わずその迫力に押されて躊躇ってしまった。

 

 すると、ライスシャワー先輩はうって変わりにこやかな笑みを浮かべお好み焼きを焼いているマックイーン先輩にこう声を掛ける。

 

 

「メジロマックイーン先輩、天皇賞(春)連覇おめでとうございます」

「あら? 貴女は…」

「ライスシャワーです…あの…天皇賞のレースはほんとに見事な走りでした」

 

 

 そう言って、メジロマックイーン先輩に好意的な言葉を投げかけるライスシャワー先輩。

 

 私はそんな二人のやりとりを見ていて気が気でなかった。

 

 実績のある名優メジロマックイーン先輩に好意的な言葉を並べているライスシャワー先輩ではあるが、あの眼差しを見ればあれは明らかに闘志をむき出しにしているのがわかる。

 

 同じステイヤーのウマ娘同士、何かしら思うところがあったのかはわからない、しかしながら、ライスシャワー先輩の言葉はわたしには何処か意味深なように聞こえて仕方なかった。

 

 私的にはやべー、おうどん食べたいという心境である。

 

 だが、それを面白そうにニヤニヤと眺めているゴルシちゃんに馴れ馴れしくアフちゃんは肩を組まれ捕まってしまった! 胸を鷲掴みにされてるので逃げられない!

 

 そんな中、お好み焼きを作っているマックイーン先輩は笑みを浮かべたままライスシャワー先輩にこう告げる。

 

 

「メジロ家として当然の結果を出したまでですわ …はい、六百円」

「どうも…、来年は私も出る予定ですので手合わせできるのを…楽しみにしてますね」

 

 

 そう言って、ハイライトの無い眼差しでマックイーン先輩を見つめながら告げるライスシャワー先輩。

 

 マックイーン先輩を絶対背後から刺すウーマンかな?

 

 私は二人のやりとりを見ながら冷や汗をタラタラと流していた。

 

 目にハイライトは無いわ、何故か眼光が光ってる錯覚が見えるわ、しかも、ライスシャワー先輩ナイフ抜刀してませんでしたかね? 今。

 

 薩摩武士だったら一度刀抜いたら無事では終わらすなという言葉もあるんですよ! ライスシャワー先輩が薩摩生まれじゃなくて良かったと私は思わず安堵してしまいました。

 

 バトル漫画じゃないんですけどね、なんでライスシャワー先輩がナイフ持ってるのか不思議で仕方ないんですけども。

 

 そんな中、私の肩をバンバンと叩いてくるゴルシちゃんは笑顔を浮かべてこんな事を言いはじめる。

 

 

「いやー! お前の先輩すっごいなぁ! こりゃ来年が楽しみだ!」

「そうですね。…どうでもいいんですけど、ゴルシちゃんさりげなく私の右胸を揉みしだくのはやめてください」

 

 

 何もおかしな事は言っていない、その通りである。

 

 私は悟ったような表情を浮かべて肩を組みスキンシップが激しいゴルシちゃんに淡々とそう告げた。

 

 もしかして、ライスシャワー先輩がお好み焼き食べたいと言ったのはこうやってマックイーン先輩の顔を拝みに来たって事かもしれませんね、来年戦う事になるライバルになるという意味で。

 

 こうして、お好み焼きを手に入れた私とライスシャワー先輩はひとまず屋台から離れて二人で食べ歩きながら次のお店を探す。

 

 お次はここ、チームリギルがやっているという執事喫茶である。

 

 私はひとまず、からかいの意味も含めてライスシャワー先輩とともに立ち寄る事にした。

 

 

「へいへーい、お邪魔しますよー」

「やはり来たか! よし! 取り囲めっ!」

「…えっ!? 何っ!? なんなの!?」

 

 

 と思いきや、店に入った途端に私は執事服を着たルドルフ先輩、エアグルーヴ先輩、そして、何故か執事服を着ているナリタブライアン先輩に取り囲まれてしまった。

 

 突如、三人に囲まれて困惑する私、しかも、ナリタブライアン先輩に限っては先程までちびっ子探検隊に居た筈だ。

 

 いきなり囲まれた私はそのまま三人にされるがまま、ライスシャワー先輩の目の前で担ぎ上げられる。

 

 

「わぁーっ! ちょまっ!? なんじゃあこりゃあ!」

「あらあら、アフちゃん大変ね」

「わーしょい、わーしょい」

 

 

 そのまま私が運搬されて行くのを隣にいながら静かに見守り笑顔を浮かべているライスシャワー先輩。

 

 いやいや、助けてくださいよっ!? なんで担がれてるんだ私!

 

 そして、更衣室に連行された私は衣服をひん剥かれ、無理矢理、執事服を着させられるという恥辱を味わった。

 

 くっ…! 殺せ…っ!

 

 それはそうと、ルドルフ先輩かブライアン先輩がこのセリフ言うとしっくりきますよね。

 

 ルドルフ先輩にお尻弱そうですよねって前に面と向かって言った事があるんですが、頭をぶん殴られました。

 

 そんなわけで、私はなぜか執事服を着させられる事に。

 

 執事服は言わずもがな胸のあたりがパッツンパッツンである。

 

 

「人選ミスじゃないですかね? これ?」

「お客様は包容力をご所望だ。問題は無いさ」

「私の意思は全く無視ですか、そうですか」

 

 

 執事服を身に纏うルドルフ会長の言葉に死んだような表情を浮かべて告げる私。

 

 女性客に対する包容力という名目で私を無理矢理着替えさせるこの人達はなんなんでしょうね。

 

 包容力=胸という方式は成り立たないんですよ、それならまだメイド服の方が良かったのでは無いかと思ったりしちゃいます。

 

 

「女性客の中にはそういうお客様もいらっしゃるのだから致し方ない」

「アフの抱き心地は私の折り紙つきだからな」

「やっぱりアンタが原因かい」

 

 

 サムズアップでルドルフ会長の肩をポンと叩いているブライアン先輩にそう告げる私。

 

 なるほど、抱き心地で私の拉致を決めたわけか、こんな事で拉致られる私の扱いに涙が出ますよ。

 

 そういうわけで、私はそのまま執事服を身につけたまま執事喫茶のお手伝いをする事になりました。

 

 だが、皆の衆、安心してほしい、私はタダでは転びません、どうせやるならネタに振り切るのがアフトクラトラス流というやつです。

 

 お客様に指名を受けた私が何をしたかというと?

 

 

「はーい! シャンパンゴールド入りますぅ! こちらの姫にコールオーライ! さぁさぁ!シャンパンコール! シャンパンコール!」

 

 

 執事喫茶と言っているにもかかわらず、ホスト流におもてなしをやり始めてやりました。

 

 しかも、私のクラスメイトをわざわざ呼んで更にノリが良いテイエムオペラオー先輩を巻き込んでのシャンパンコール。

 

 女性客にお金を落とさせるなら任せんしゃい、見様見真似ながら、私はよく勉強してたのですよ。

 

 

「昼間っから飲みたい騒ぎたいっ! はい!胃腸に関して自信があるある!一気っ! 一気!一気っ!!」

「「フーフー!」」

 

 

 私がマイクを使って先導し、シャンパンコールを大合唱。

 

 ご安心ください学校の学園祭でシャンパンゴールドなんて出せるわけも無いので、中身はただのニンジンジュースです。

 

 ニンジンジュースなんで全く胃腸関係ないですね。

 

 そして、シャンパンコールが終わったと同時にテイエムオペラオー先輩をけしかけて、ニンジンジュースの入ったワイングラスを女性客とチンッ! と軽く乾杯しながらこう告げる。

 

 

「君の瞳に乾杯」

「キャー!!」

 

 

 こうして、騒ぎに騒ぐ事で何故かウマ娘の喫茶店がホストクラブみたいなノリになってしまいました。

 

 これなら間違いなく女性客はお金を落としてくれる筈です。間違いない。

 

 さっきまで執事喫茶だったのに完全に新宿歌舞伎町みたいなことになってますけれども。

 

 これには、ルドルフ会長も顔を引きつらせ、私の肩をポンと叩いてきました。

 

 そのルドルフ会長の背後から迫る気配にシャンパンコールで騒いでいた私も思わず身体が凍りついてしまいました。

 

 

「要件はわかるな?」

「…アッハイ」

 

 

 その後、ルドルフ会長から言わずもがなお説教を食らいました。

 

 だが、私は退かぬ、媚びぬ、省みぬの精神で根気強くルドルフ会長を説得。

 

 そして、そのまま執事喫茶店だったものをトレセン学園ホストクラブにしてやりました。

 

 タダでは転びませんよ、私を巻き込んだからにはとことんやってやりますよ。

 

 盛り上げ役にゴルシちゃんを呼びましたし、フジキセキ先輩とテイエムオペラオー先輩、ブライアン先輩は無理矢理、私が丸め込みんでそのまま押し切ってやりましたよ。

 

 そう、これも商売のためです。資本主義とは恐ろしいのです。

 

 そうして、執事喫茶を手伝う私はライスシャワー先輩と共に執事喫茶でしばらくの時間を過ごすことになりました。

 

 

 あれ? 良く考えたら私が執事喫茶を何故手伝っているんでしょうね?








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