遥かな、夢の11Rを見るために   作:パトラッシュS

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アフトクラトラス
メイド服イメージ図

【挿絵表示】



トレセン学園 学園祭 下

 

 

 

 トレセン学園、学園祭。

 

 さて、私、アフトクラトラスがどこにいるかと言いますと、ウマ娘の執事喫茶ならぬホスト喫茶にてお手伝いをしています。

 

 当然、私も超一流のホストウマ娘として、働いている…。

 

 

「お帰りなさいませー! ご主人様ー♪」

 

 

 訳もなく、何故かメイド服を着せられメイドをやっていました。

 

 雰囲気に逆行していくこのスタイル。

 

 まあ、メイド服を着せられたのは私が執事喫茶をホスト喫茶にしてしまったからでしょうね、はい。

 

 そんな中、何故か、お客様からは高評価を頂いてます、理由はわかってます。自己主張が激しい私の胸目的ですね、はい。またこれパッツンパッツンやないか。

 

 男女問わず、アフちゃんはちっこくて可愛いーとか、オウフ、アフ殿最高でござる。とか言われますけど全然嬉しくないのは何故だろうか。

 

 

「アフちゃん大天使でござるなぁ! ほんと! 拙者と結婚して欲しいでござる、グフフ」

「いやー、ありがとうございます、死ね

「ん? 今何か聞こえたような…」

「そんなことないですよー、やだなー、帰れ

「いや、今はっきり聞こえたんだけど…」

「やだ、ごめんなさい、私、男性のお客様に対して罵倒するのがマイブームでして」

「はぁはぁ…ご、ご褒美ですっ!」

 

 

 こんな感じに私が物事をはっきりと伝えるので、毎回、ルドルフ先輩からの冷ややかで鋭い視線を背中に浴びる羽目になった。

 

 なんでじゃあ! ルドルフ先輩! これはキツいっすよ!

 

 性別的には私は今ウマ娘なのですが、前世は違うのですよ、退職したら身体が入れ替わってる! で前前前世が流れてくるみたいな展開でウマ娘になったんですよ私。

 

 そんな私が男性客に向かってお帰りなさいませご主人様! ニャンニャン♪ とかできる訳ないでしょうが、ウマ娘ですし、しかも。

 

 ご褒美言うてるし、ええやん、もっと言ってあげたほうがきっと喜びますよこの人。

 

 まだ、女性客なら良いんだけども、私が見る限り童貞っぽい、私目当てに来た男性客によく注文を頼まれるので困ったもんだ。

 

 私はいつも通りの営業スマイルを浮かべて、伝票を持ち、心の底からお客様に敬意を払った上で注文を問いかける。

 

 

「チェリーボーイ三名様ご注文はなんでしょう? エロ本をお探しなら近くのコンビニで最近入荷した本がおすすめですよ」

「チェ…チェリー…?」

「エ、エロ本…?」

「ど、童貞ちゃうわ!」

「アフトクラトラスゥ!!」

 

 

 そして、いよいよ、私がお客に対しての扱いが雑になって来たところでルドルフ会長からお説教が入った。

 

 仕方ない、身体が勝手に動いてしまうんですよ。

 

 ちなみに私が情報を与えた男性客は帰りにコンビニで買って行くと豪語してくれました。

 

 そういった男らしいお客さんは大変好ましいですね、むしろ、私個人的には好きです。

 

 もちろん、こんなことは言ってますけど、お客様はアフトクラトラスだから仕方ないで大抵済ませてくれます。腑に落ちぬ。

 

 もちろん、そのあとは私も普通に接客します。頭にデカいタンコブを引っさげてですけどね。

 

 私が悪いんじゃないんだ。この胸が悪いんですよ。

 

 私の代わりにスーパークリークさんかメイショウドトウさん連れて来た方が良いんじゃないですかね? だいたいこの人達、胸しか見てないっすよ先輩。

 

 鼻の下を伸ばしてだらしがない!

 

 私はですね! ウマ娘となってからはそんなことは全くと言っていいほどな…。

 

 いや、ありましたね、ブライアン先輩やらヒシアマ姉さんのはもう揉み慣れた感ありますしね。

 

 まあ、でも、皆さん、男性に向かってですね、媚び売りつつ、お帰りなさいませご主人様ーって言ってる自分を想像してみてください。

 

 どうです、死にたくなってきたでしょう? つまりそういう事なんですよ。

 

 しかし、接客なら致し方ない、これは私に課せられた罰なんですからね、うーん世知辛い。

 

 ならば躊躇いもない、掛かってくるが良い(トキ感)。

 

 むしろ、私は迷える子羊達にある種の希望を与えるのには長けていると言っても良いだろう。

 

 

「俺…今まで彼女できなくてですね…」

「そうかそうか、それは辛いですよねー…、それならこいつを使いな坊や」

「これは一体…」

「近くの店で見つけてきて、偶々気分で買ったAVです…。お前さんにこれを授けよう、これはなかなか凄いやつですよ」

「アフさん!」

「何、いいって事よ、私はこう見えて淑女でしてね…」

 

 

 そう言いながら、私は青年の腕にわざと胸を当てながらどっからか買ってきたAVを彼に手渡す。

 

 年頃の男性の扱い方は熟知しているのでね、皆さん、アフ△とでも呼んでくれていいんですよ?

 

 ちなみにこんなことをするたびに私はルドルフ会長から説教を毎回されるんですね。

 

 けど、何故かこういった風な事をやっているうちに男性客からのウケは何故か良くなりました。

 

 そして、私は男性客だけではなく何故か女性客からも支持は絶大でした。

 

 

「っでさぁー、アフちゃんは彼ピッピとか居ないのー?」

「いやー、彼ピッピとか居ねーし、私どちらかといえばトゲピー派だし、マジ卍固めっていうかそれって普通にシャイニングウィザード的な?」

「何それ! ちょーウケる!」

「何言ってるかさっぱりなんだが…」

 

 

 こんな若くてヤングな女性客の相手も難なく熟せる訳ですよ。

 

 てか、トーセンジョーダンさん何やってんですかね、ほんと。

 

 私も自分で何言ってるかわからないのになんで彼女に話が通じてるか不思議でたまりません。ちょーやばい、マジ卍。

 

 そして、私の言語が理解できないブライアン先輩もこれには困惑していた。

 

 当たり前です。私も何言ってるかわからないんですもん。

 

 トーセンジョーダン先輩は多分、別の星の住人なんでしょうね。

 

 そうこうしているうちに、私はとりあえず、執事喫茶改め、ホスト喫茶の店員というお役目からようやく解放される事になりました。

 

 そこらへんはお察し下さい、こんな事ばっかりしている私を働かせるわけがないでしょうとそういう事ですね。

 

 ふっ…私の黒歴史にまた新たな1ページ。

 

 かっこいい事言ってるみたいですけどお馬鹿な事をやりすぎた結果がこれですからね。

 

 ちなみにトーセンジョーダンさんが来店してしばらくしてゴルシちゃんと鉢合わせになり、店外にて血の雨が降ったのはここだけの話です。

 

 あの二人、律儀にも店外で乱闘するあたり、そこは偉いなーとは思いました。あ、褒めるところではないですね、はい。

 

 しかし、何故かお店に私の残留を望む声が多かったのは不思議でなりませんでしたけども。

 

 さて、気を取り直しで私は待っててくれたライスシャワー先輩と合流する事に。

 

 

「お疲れ様ーアフちゃん、大活躍だったね」

「そうですね別の意味で大活躍してましたね」

 

 

 おうふ、満面の笑みを浮かべて放たれるライスシャワー先輩の一言が強烈でごわす。

 

 たしかに私はある意味活躍したと言っても良いだろう。売り上げにも一応貢献してますし、目立ってましたしね。それは果たして良いかと問われたら答えようがないのですけども。

 

 そして、ライスシャワー先輩を連れた私はミホノブルボン先輩の勇姿を拝みにステージへ、そこでは壮絶な大食い対決が繰り広げられていた。

 

 言わばそれはレースのようなデッドヒート振りに観客席からも声が上がる。

 

 

 88年、天皇賞、秋。

 

 芦毛のウマ娘は走らない、この二人が現れるまで人はそう言っていた。

 

 芦毛と芦毛の一騎打ち。

 

 宿敵が強さをくれる。

 

 風か光か、そのウマ娘の名はタマモクロス。

 

 

 とまあ、カッコいいフレーズですいませんが、生憎、今回は天皇賞秋ではありませんし、レースでもございませんただの大食い対決ですね、はい。

 

 タマモクロス先輩と我らが癒し系マスコットオグオグことオグリキャップ先輩がデッドヒートしていました。

 

 

「負けへんでー!」

「美味しい…」

 

 

 闘志を燃やすタマモクロス先輩と逆にドーナッツを味わって食べているオグリキャップ先輩。

 

 タマモクロス先輩はちっこいのでなんだか、私も親近感が湧きますね、二人で盃交わして大阪南でも制覇しませんかとスカウトしてみたいくらいです。

 

 タマモの金融道、うん、Vシネマ感すんごい気がしますね、はい。お金に関してものすごくこだわりがある方と聞いてましたので。

 

 

「つ…辛い…」

 

 

 スーパークリークさんも頑張って二人に食らいつこうとドーナッツを食べているようですがだいぶキツそうです。

 

 いやー、そりゃそうですよねぇ、私も食べれる気がしませんもん、食べれたらそれはもうただの変態です。

 

 スペ先輩ならいけそうですよね? つまり、スペ先輩はただの変態なんです(暴言)。

 

 これ言ったらグラスワンダー先輩とスズカ先輩に馬刺しにされそうだな、私。いや、確実にされると思いますね、ええ。

 

 すると、大食い対決もいよいよ決着、タマモクロス先輩僅差でしたが、オグリキャップ先輩が僅かに優先してフィニッシュしたようにも見えました、手を挙げたのはほぼ同時でしたね。

 

 しかし、ここでなんと審査員であるグラスワンダー先輩が審議の札を上げました。

 

 ビデオカメラをすぐさま確認する会場。

 

 すると、よく見ればスーパークリーク先輩がドーナッツを斜行させてオグリキャップ先輩の皿にぶち込んでました。

 

 逆にドーナッツ斜行させるとか技術高すぎるでしょう、そして、それでもなお、ドーナッツを完食してしまうオグリ先輩の食欲には参ったものだ。

 

 

「うーん、あれはダメよね…」

「ライスシャワー先輩、違います、あれは俗に言う高等魔法、ユタカマジックですよ」

「アフちゃんは何言ってるのかしら?」

 

 

 この審議に反論する様に告げる私に困った様な眼差しを向けてくるライスシャワー先輩。

 

 ライスシャワー先輩はご存知ないのですか! 一部のウマ娘に伝わる伝統的な高等魔法を! これを使えばなんと降着すると言う必殺技ですよ! 嘘です、とあるウマ娘の名前なんですけどね。

 

 なお、ライスシャワー先輩とグラスワンダー先輩にはヤンデレヒットマンという超必殺の暗殺スキルがあります。

 

 視界に入られた相手はドア越しから耳をピトッと付けられ盗聴されたり、背後からマークされたり、背後から差されたりする模様。

 

 被害者であるボテ腹ウマ娘S先輩が良くそういった経験をされてるとかされてないとか。

 

 さて、こうして、大食い対決の表彰式を見届けて、いよいよ、ミホノブルボン先輩の出番。

 

 法被を着たミホノブルボン先輩は用意された巨大な太鼓に向かいます。

 

 

「いよいよねー、ブルボンちゃん大丈夫かしら?」

「太鼓破壊しないか心配ですね」

 

 

 そう言って、ライスシャワー先輩とモグモグとお好み焼きを頬張りながら見守る私。

 

 太鼓を破壊すると言うのはあながち大袈裟ではないのでたちが悪い、勢いあまってぶち抜かないか心配である。

 

 下は袴なので、正直言って安心しました。褌とかだったらほんとにどうしようかと思ってましたけどね。

 

 しばらくして、ミホノブルボン先輩は深呼吸をして呼吸を整えると着ていた法被を豪快に脱いだ。

 

 そして、大太鼓を叩いて演奏を始める。

 

 それはもう豪快な演奏でした。普段は筋肉モリモリマッチョウーマンでターミネーターな未来感があるミホノブルボン先輩ですが、伝統的な巨大な和太鼓演奏は力強く会場も盛り上がる。

 

 始めてのトレセンの学園祭でしたが、やはり、皆さんの楽しい姿を見るのは嬉しいものですね。

 

 盛り上がった和太鼓演奏はラストスパート、力強く太鼓を叩くミホノブルボン先輩の身体からは汗が飛び散っていた。

 

 揺れる豊満な胸、腕の筋肉、引き締まった腹筋。

 

 それらが芸術的で思わず私も見入ってしまった。来年は私があんな風に和太鼓演奏をしなくてはならないのかと考えると思わず顔が引きつりそうになる。

 

 演奏が終わり、ミホノブルボン先輩は肩で息をしながら静かに頭を下げて礼をする。

 

 周りからは惜しみない拍手が彼女に向けて送られるのだった。

 

 

 こうして、色々ありましたが、必死で準備してきた楽しい学園祭は無事に終わりを迎えることができました。

 

 たこ焼き屋、ちびっこ探検隊、執事喫茶改めホスト喫茶、大食い対決、太鼓演奏、実に充実した学園祭だったと思います。

 

 ただ、あー、学園祭楽しかったね! でアンタレスが終わる訳がありませんよね?

 

 

「さぁ! 坂路後500本! 手を抜くなよぉ! レースは近いんだァ!! 追い込めェ! 返事はァ!」

「「サー! イエッサー!」」

 

 

 義理母の檄にナイターの坂路を爆走しながら汗を垂らし答える姉弟子と私。

 

 学園祭後にこれですよ、はい、キャンプファイヤー? あぁ、ウチでは闘志を燃やすのがキャンプファイヤーなので。

 

 いやー、夜空が綺麗だなー。

 

 大きな星が点いたり消えたりしている。アハハ、大きい...彗星かな。イヤ、違う、違うな。彗星はもっとバーって動きますもんね。

 

 

 夜空の下、坂路を爆走する私はそんなことを考えながら走っていたわけなんですけど、翌日、筋肉痛でナリタブライアン先輩の部屋から出ることができませんでした。


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