遥かな、夢の11Rを見るために   作:パトラッシュS
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動画デビュー

 

 

 休暇も開けて、私もG1朝日杯に向けてようやく動き始めた。

 

 トレーニングトレーナーのオカさんからのアドバイスを受けながら、アンタレス式のトレーニングを行います。

 

 坂路につぐ坂路、そして、筋力増強トレーニング、これは、義理母と姉弟子がいた時からずっと変えずに行っている事だ。

 

 坂路を走り切った私は息を切らしながら足の調子を確認する。

 

 問題はない、休暇を挟んだので不安なところはあったが、むしろ、脚が少し軽くなったようにすら感じる。

 

 

「はぁ……はぁ……、ふぅ…」

「脚は問題ないようだな」

 

 

 すると、そんな私にオカさんが優しく笑みを浮かべたまま、肩にポンと手を置いて告げてきた。

 

 やはり、この人は流石だなと思う、私の些細な動きだけで調子を見極める眼力はトレーニングトレーナーをしている中でも随一だと言わざる得ない。

 

 流石はシンボリルドルフ会長のトレーニングトレーナーを務めている事だけはある。

 

 

「えぇ、上々ですね」

「あぁ、前回よりも足の切れ味が上がってきてるな良い傾向だ、あと走り方だが…」

 

 

 そう言って、オカさんは私に具体的な走りをレクチャーし始めた。

 

 第三者からの視点で、なおかつ、ベテランのトレーニングトレーナーとしての分析から何が走りのロスに繋がっているのかを私にわかりやすく明確にオカさんは教えてくれる。

 

 修正する箇所や走りの乱れがどの地点で見られるのかを的確に指摘してくれるので本当にやりやすい。

 

 私が今回出走する朝日杯、そのレベルは言わずもがな高い。

 

 有力候補はエイシンチャンプことシンチャン、チームリギルの期待の新星、ネオユニヴァースことネオちゃん。

 

 そして、私、アフトクラトラスの3人が優勝候補に名を連ねている。

 

 うーんこの、私が優勝候補に挙げられるのは嬉しいのですが、反面、ノーマークの方がやりやすかったんですけどね。

 

 トレーニングを終えて、お昼になったので、私はズルズルと中華そばを啜りながらそんな事を考えていました。

 

 目の前ではオグリ先輩が黙々とご飯を口に運んでいます。いつもながらよく食べるなと感心するばかりです。

 

 それを見て癒されるのもまた一興、オグリ先輩は可愛いなぁ。

 

 とそんな風に昼休みを私が満喫している最中の事だった。

 

 

「よぉ、アフアフ、ちょいと時間あるかい?」

「ないです」

「そうかそうかー! ゴルシちゃん大好き! 愛してるから沢山時間あるよだなんて可愛い奴だなー! よかったよかった!」

「一言も言ってないんだよなぁ…」

 

 

 そう言って、サムズアップしながら私の肩を叩いて満面の笑みを浮かべたゴルシちゃんが背後に現れた!

 

 そして、私の話を全く聞いていない、そう言ったかと思うと私はゴルシちゃんに制服をズルズル引きずられながら食堂から拉致されてしまった。

 

 耳に何か詰まってるんですかね? これがいわゆる馬耳東風というやつですか、これはひどい。

 

 ゴルシちゃんから引き摺られた私はそのまま何故かラジオの放送スタジオのような場所にまで連れてこられる。

 

 

「いやー、私さ! ちょっと動画配信やりはじめたんだけどな! 丁度、ゲストに困ってたんだよ! 助かるわー!」

「…はい?」

「はいはい、良いから座って座って」

 

 

 そう言って、わけのわからないまま、私はゴルシちゃんから肩を掴まれて無理矢理椅子に座らされる。

 

 ゲスト? 動画配信? 何を言っているのかこの娘は。

 

 しかし、私の疑問は知らぬとばかりに満面の笑みの頭がぶっ飛んでいるゴルシちゃんはこう告げてきた。

 

 

「というわけで、アフ公、お前人気あるからゲスト出演してくれ」

「何を言っているのか、まるでわけがわからんぞ!」

 

 

 肩をポンと叩いてくるゴルシちゃんに青筋を立て声を上げる私。

 

 食堂からいきなり拉致られて動画配信するからゲストになれといきなり言われたらそりゃそうなりますとも。

 

 何故、私をゲストに選んだのか…、そして、人気があるとは一体どういう事なんでしょうかね?

 

 魔王とかポンコツとかマスコットとかアホの子とか、胸に栄養が偏ってるとか普段から散々な言われようの私が人気があるとかどうしてそうなるのか。

 

 おかしいですね、私はライスシャワー先輩同様、ヒールな扱いな筈なんですけどね?

 

 さて、そんな話はさておき、ゴルシちゃんから無理矢理椅子に座らされた私はこうしてラジオに出演する事となりました。

 

 オンエアじゃねーよ、私は帰るぞ! お前!

 

 あっ! いつのまにか椅子に身体がロープで固定されてる!

 

 そんなこんなで、まるで流れるようにゴルシちゃんの動画配信が始まってしまった。

 

 

「さて、みんなーはろはろー! ゴルシちゃんだよー! 今日はーなんとゲストを呼んできたのだー! パチパチー!」

「呼んだんじゃなくて拉致なんですけども」

「まあまあ、細かい事は気にしなさんなー、みんな誰だと思う?」

 

 

 そう言ってゴルシちゃんは怪しげな笑みを浮かべて動画を見ている視聴者達に問いかける。

 

 ちなみにこれはリアルタイムで配信されているようだ。なんで今日に限ってリアルタイムで配信してんですかねこの人。

 

 尚、動画にはいろんなコメントが流れている模様、その様子はこちらからも確認ができる。

 

 察しのいい人は「なんだかそこはかとないポンコツ臭がする」とか「チョロそう」とかコメントしていた。

 

 好き勝手言いよってからに、しかし、否定はできないですよねぇ、自覚はあるので(悲しみ)。

 

 そして、ゴルシちゃんは今回の動画配信に呼んだゲストである私の名前を挙げる。

 

 

「そう! アフトクラトラスでーす! はーいパチパチー」

「紹介が棒読みやないかいっ!」

「まぁ、細かい事は気にしなさんな」

 

 

 そう言って、雑なゲスト紹介をするゴルシちゃん、動画配信に巻き込まれた私の身にもなって欲しいものだ。

 

 ただでさえ、ウイニングライブでも目立つのは嫌だというのに!

 

 と言いつつも私のセンター率がかなり高いんですけども本当に何故だろう。

 

 そして、コメント覧だが、私の名前が出た途端にお祭り騒ぎだった。

 

 特に頻繁に見かけたのが『やっぱりヤベー奴だった』というコメントが目立ってました。

 

 いや、ヤベー奴ってなんだよ、私の事か? いやいやー、ゴルシちゃんの事ですよねー?

 

 他には『アフちゃん可愛い』だとか、『我らがマスコット』とか『癖ウマ界の女王』など好き勝手に書かれていましたね。

 

 言われ慣れてるんで、というか自覚はあるんで今更なんですけど、私よりやばい奴はアンタレスにゴロゴロ居るんだよなぁ…(悲しみ)。

 

 目の前にいるゴルシちゃんもヤバイと言ったら別の意味でヤバイんですけどね、ぶっ飛んでる的な意味で。

 

 

「それじゃ気を取り直して! アフに対する質問コーナー行ってみようか! 今回はコメントから出すぞよ!」

「…はぁ、質問コーナーですか…」

「よし! これにするか!」

 

 

 そう言って、ゴルシちゃんはコメント覧から視聴者が抱く私に対する質問について、適当に選ぶ。

 

 そして、コメントをじっくり読んだのち、口に出しながら私に聞こえるように読み上げはじめた。

 

 

「なになに? アフちゃんの胸の感度は良いのでしょうか? 私、気になります! by黒ワンコ、だそうだ」

「ん? それちょっと気になる名前ですね」

「まあまあ、それでどうなのさー?」

「どうって言われましても」

 

 

 そう言って問い詰めてくるゴルシちゃんに私は顔をひきつらせる。

 

 どう答えろというのだ一体、胸の感度なんて今の今まで気にした事なんて微塵もなかったわ!

 

 それが知りたいというその人も凄い人だなと私は思う、なんか、ネームが気になりますけども。

 

 仕方ないので私は今までの経験を踏まえて無難に答えることにした。

 

 

「良いんじゃないですかね? 多分、よく仲間内じゃ私は弄られてますし」

「ほほぅ」

「その中には貴女も入ってるんですけどね…」

 

 

 興味深そうに声を上げるゴルシちゃんに対し、顔をひきつらせながら青筋を立て笑みを浮かべる私。

 

 何感心しとんねん、ほんまにお前もやぞ。

 

 コメント覧はこの私の話した事実に大盛り上がりであった。紳士が基本多いからね、致し方ないね。

 

 私のそんな表情を見たゴルシちゃんは面白がるようにニヤニヤとなんだか腹立つ笑みを浮かべたまま次の質問へと移り始める。

 

 

「では第2問、なんで貴女は小さいのにそんなにヤンチャで武闘派なんですか? 気品が無いと思います byエンペラーさん」

「さっきからこれぜったい身内ですよね? ハンドルネームバレバレなんですけど?」

 

 

 最早隠す気が無いのか、身内感半端ない質問が飛び交っている事に私は苦笑いを浮かべるしか無い。

 

 というか直接聞きに来たらええやん、なんで質問コーナーにぶち込んできたし! 普段の腹いせかなんかですかね!

 

 まあ、しかしながら、確信を得てるわけではありませんしね、憶測で物事を判断するのは良くありませんから。

 

 私はコホンと咳払いをするとその質問に答え始める。

 

 

「えー…それは若さゆえの過ちといいますか、私も未熟でしたゆえ、ヤンチャもしましたよ、盗んだバイクで走り出すくらいのテンションでしたので」

「なるほどなー、それはなんとなくわかるなー」

「ですが、私はあくまでもテンションだけですからね、えぇ今となっては仏のアフちゃんですから」

「いや、魔王って呼ばれてんぞお前」

 

 

 そう言って、自信満々に質問に答えていた私に対して鋭い突っ込みを入れてくるゴルシちゃん。

 

 余計なことを言いよってからに、私のイメージが台無しじゃないですか、何という事を言うのですか貴女。

 

 私は仏のアフちゃんなんです、ん? でも仏のアフちゃんって私、故人になってませんかね? アレ?

 

 まあ、いっか、とりあえずそんなところです。魔王なんて誰が付けたんでしょうね全くもう。

 

 さて、2問目の質問を終えたゴルシちゃんは私に対して次の質問を話しはじめた。

 

 

「第3問、アフはなんでそんなに抱き心地が良いんですか? 柔らかくて気持ちが良いです byナリブ海の海賊」

「…何やってんですか先輩」

 

 

 そう言って、私は最早冷静な口調でそう突っ込むしか無かった、ハンドルネームが分かり易過ぎて本当に困るんですけど。

 

 抱き心地良いとか知ってるのはそれこそ身内だけですからね、ナリブ海ってそれは無理がありますよ。

 

 誰かは予想できますけどね、誰とは言いませんけど。

 

 私はコホンと咳払いをすると深いため息を吐きその質問に対してこう話をしはじめた。

 

 

「身体がちっこいからですかね…、柔らかいのはもうお察しの通りですよ、毎回、鷲掴みしてるんだからわかるでしょ」

「おー…なるほどなぁ、それが原因かやっぱり」

「えぇ、ですからゴルシちゃんも抱き心地良いんじゃないですか?」

「ん? 私か? どうだろうなぁ」

「どうでしょうねぇ?」

 

 

 そう言って、意味深な発言をしながらニコニコと笑みを浮かべ見つめ合う私とゴルシちゃん。

 

 真実は闇の中ですね、私が柔らかいのは弾力性のある筋肉があるからかもしれませんけどね。

 

 まあ、皆さんのテンションが上がる回答は出来たんじゃないですかね? コングラチュレーション。

 

 気を取り直して次の質問に行くとしましょうかね、時間的に次でラストになるのかな? 多分。

 

 ゴルシちゃんはコホンと一息咳き込むと、最後の質問を私に投げかけはじめる。

 

 

「第4問、アフちゃんはファンの事は好きですか? それとも嫌いですか? by米雨さん」

「…え? ファン?」

「ほうほう、ちなみに私は大好きだぞ」

 

 

 そう言って、ゴルシちゃんから投げかけられた質問に私は思わずキョトンと目を丸くしてしまう。

 

 ファンの事が好きか嫌いか、と言われれば嫌いではないが、ライスシャワー先輩の件もあって好きだとは明言し難い部分がある。

 

 どちらかといえば普通といったところだろうか? たしかに私を応援してくれる人達は大好きで良くしてあげたいとは常々思っている。

 

 しばらく悩んだのち、私はゴルシちゃんにこう答えた。

 

 

「好きですよ? えぇ、私やチームを応援してくれるファンは大好きですとも」

「ま、当然だな」

「えぇ、アフちゃん愛してるなんて言ってくれる人は本当に好きですねー、私も愛してますよー」

「こういうところで、さりげなく人気取りをしてくるところが本当マスコット感あるよなお前」

 

 

 そう言って苦笑いを浮かべるゴルシちゃん。

 

 コメント覧を見てみると「嫁に来い」だの「トレセンのポンコツマスコット」だの好き勝手な事が書かれていました。

 

 流石にアフちゃんママァというコメントが見えた時は背中に悪寒がゾクゾクと走りましたけどね、やめなさい、私はママにはなりません。

 

 乳がデカいんだからママになるんだよ! じゃないです。なりません。

 

 最後の質問がまさか、ファンの事について聞かれるとは予想外でしたけど、たまにはこういうファンとの質疑応答も面白いかもしれませんね。

 

 そうして、一通り質問が終わったところでゴルシちゃんはにこやかな笑みを浮かべながら進行を進める。

 

 

「 今回はお前に対して色んな質問が出てきたなぁ、さて! じゃあ次のコーナー行ってみよう!」

「まだ続くんですかこれっ!」

 

 

 質問コーナー終わったし、出番は終わりかなーと思っていたら、どうやら、まだゴルシちゃんの動画配信は続くようです。

 

 ゲストとは…(哲学。

 






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