遥かな、夢の11Rを見るために   作:パトラッシュS
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朝日杯前日

 

 朝日杯を2日後に控え。

 

 私は現在、ナリタブライアン先輩のベットの上で目を覚ました。

 

 相変わらずガッチリホールドが掛かってますね、主に私の胸のあたりにチョークスリーパーかな?

 

 そんな中、ナリタブライアン先輩も目を覚ました様子で私の耳元に彼女の吐息がかかる。

 

 ひゃあ、ゾクゾクするんじゃあ〜。

 

 そして、そんなナリタブライアン先輩から一言。

 

 

「なぁ、アフ…」

「なんですか?」

「ニャンニャンしよう」

「しません、なんですかニャンニャンって」

 

 

 そう告げた私はズビシッと背後から囁いてくるナリタブライアン先輩の頭に軽く裏拳でチョップを入れる。

 

 ニャンニャンとは一体、教えてウィ◯ぺディ◯先生。

 

 ニャンニャンとは、昭和くらいに流行ったアイドルグループ…ではないです。

 

 意味深でしょうね、話の流れからして、さて、意味深とは、私は知りませんね(すっとぼけ)。

 

 最近、私に対するセクハラが凄く過激になってきている気がします。

 

 この間は動画配信中にゴルシちゃんに襲われますし、犯人はわかりませんが何故か、私の下着が減っていたりしますし、ナリタブライアン先輩からはナチュラルに胸触られますからね。

 

 これは由々しき事態である。誠に遺憾である、ぷんぷん。

 

 最近、巷では私のことをマスコットだとかアホの娘だとか、癖強ウマ娘とか散々な言われようですからね。

 

 小さくて可愛いと言われるのにも最近慣れてきました。あと、だいたい、おっぱい言われるのも慣れました。こいつはやべーぜ。

 

 

「ニャンニャンってなんだろうな、私もよくわからん」

「私もわかりませんけども? 何故言ったんですかね? ニャンニャン」

 

 

 適当な事を言うナリタブライアン先輩にそう告げる私。

 

 ニャンニャンという言葉の語源は遥か昔、メソポタミアの地から始まる(大嘘)。

 

 まあ、詰まる話が、安西先生、セクハラしたいです、という事でしょう。

 

 私なりの解釈ですけれども、多分、大体あってると思います。

 

 おっぱ◯ばっかり掴みよってからに!

 

 それからしばらくして、ムクリとナリタブライアン先輩のベットから起き上がった私はいよいよ、近づいてくる朝日杯に向けて、コンディションを整えるトレーニングを行うことにしました。

 

 朝日杯まで時間はありませんからね、やるべきことは全てやっておかねばなりません。

 

 

「アフ〜まだ〜」

「アホ言ってないで起きますよ、さぁ! ハリー! ハリー!」

 

 

 嫌々と起きるのを嫌がるナリタブライアン先輩のお尻を叩いて無理矢理起こす私。

 

 私の胸をつかんだ罪は重いのです。いっつも引っ掴まれてますけどね。

 

 そう、今日はナリタブライアン先輩とレース前の併せをする予定なのです。

 

 駄々こねるブライアン先輩には困ったものですね、もう。

 

 しばらくしてブライアン先輩が渋々起きてきたのを見計らい、私は準備運動をしてコースに出ます。

 

 今日は新走法を完全に完成させねばなりませんからね。

 

 朝早くから準備運動をして、しっかりと身体に負担が掛からないようにしておかねば。

 

 私はペタンとお尻を地面に付けると股割りをしっかりと行い、身体をぐいっと伸ばします。

 

 この柔軟性も姉弟子と義理母との日々のトレーニングの積み重ねで身に付けたものですけどね。

 

 

「お前は色々と柔らかいなぁアフ」

「どこ見て言ってます?」

 

 

 地面に押し付けて潰れる胸をまじまじと見ながら感想を述べるナリタブライアン先輩にツッコミを入れる私。

 

 全く解せない、おっぱいより見るところあるでしょうが。

 

 私のジト目に目を逸らしながらすっとぼけるナリタブライアン先輩。

 

 尻と胸が柔らかいですって? やかましいわ!

 

 さて、気を取り直して、ここからは真面目に行きましょう。いや、普段から真面目にやってますけどね私は。

 

 

「さてアフ、お前の新走法とやらを見せて貰おうか?」

「ビビって腰抜かさないでくださいよ?」

「ふっ、それは楽しみだな」

 

 

 私独自のクラウチングスタイルでスタートをきる体勢を整える。横では準備体操を終えたナリタブライアン先輩が静かに走る体勢を整えていた。

 

 いざ走るとなると、やはり、この人は目の色が変わる。だからこそ、強者と呼ばれているのだろうと私は納得してしまった。

 

 そして、地面を一斉に蹴り上げ、加速する。

 

 真横に走るブライアン先輩を横目に見ながら私は顔をひきつらせた。

 

 

(ロケットスタート切ったつもりなのに、なんでついてくるんですか! この人!?)

 

 

 スタートは先行得意とする私の十八番。

 

 それにもかかわらず、差しであるはずのナリタブライアン先輩は何事もないかのように私の足に合わせてスタートを切ってきた。

 

 足の回転速度を上げてみるが、ナリタブライアン先輩は何事もないかのようにそれについてくる。

 

 何というか、併せを行なっている感覚がいつも、行なっていた姉弟子の姿と被ってしまう。

 

 そう、これこそが強者の走りなのだ。

 

 

「おいどうしたアフ? こんなもんじゃあ無いんだろ?」

「貴女も変態ですね、本当!」

「お褒めに預かり光栄だな、行かないなら私が先に行くぞ?」

「行かせると思ってますか?」

 

 

 私を置き去りにしようと足の回転スピードを上げたナリタブライアン先輩に食らいつくように私もスピードを上げて並ぶ。

 

 簡単に行かせるわけにはいかないし、それは、私のプライドが許さない。

 

 そろそろ、一周を終えるくらいですし、出すならこのタイミングですね。

 

 残り400mの表記を横目で見た私は足に力を込める。

 

 そして、前に屈むような体制をとり、小さな身体を生かして空気抵抗を最大限にまで落とし込む。

 

 編み出した新走法である。

 

 ナリタブライアン先輩にどこまで通用するかはわかりませんが、残りラストスパートで仕掛けるなら問題無い筈だ。

 

 ドンッ! と地面を蹴り上げた私の身体はみるみる加速していく。

 

 前がかりに身体を縮めて走っているので、ビュンビュンと風を切る音が耳に聞こえてくる。

 

 

(それが例の走り方か…だが)

 

 

 だが、残り400mのナリタブライアン先輩の脚は化け物じみて凄まじい。

 

 目がギラリと光ったかと思うと、凄まじい勢いで私の後を追撃してきた。

 

 これが、ナリタブライアン先輩が持つ強さの秘訣である特有の差し技である。

 

 背後から追尾してくるナリタブライアン先輩のプレッシャーは本当におっかない、私はまっすぐに前を見て、敢えてそちらに視線を向けないようにしていた。

 

 残り100m…50mとゴールへの間合いが詰まっていく。

 

 ゴール直前、私は更に脚に力を入れて一気に突っ切ろうと踏ん張りをきかせる。

 

 そして、ゴールを決めるその直前、私の横目に見えたのは見慣れた白いシャドーロールだった。

 

 おそらくは数センチくらいだろう。だが、その僅かな差、ナリタブライアン先輩が私より優っていた。

 

 ゴールを駆け抜けた私は肩で息をしながら、顔をしかめる。

 

 

「…くっ…うっ…、あとちょっとの差だったのにっ…はぁ…はぁ…」

「はぁ…はぁ…、惜しかったな、最後は少しばかりヒヤッとはしたが、詰めが甘い」

 

 

 ナリタブライアン先輩は肩で息をし、中腰の姿勢の私の背中をポンと撫でながら笑みを浮かべそう告げる。

 

 単純に悔しかった。悔しかったが、それ以上に走り方に手ごたえは感じた。

 

 あと数センチ、脚の爆発力が加わりさえすればナリタブライアン先輩とて私を差し切るには至らなかっただろうと思う。

 

 そして、私の走りについて後ろから見ていたナリタブライアン先輩は私にアドバイスをくれた。

 

 

「体の重心がブレ気味だな、後は最後の加速、地面に脚がついた時にもっと力を込めた方がいい、蹴る力が軽い」

「…なるほど」

「直線で良い脚で走れてるんだから、詰めはそこだな、特に前がかりで風の抵抗を減らすのは良い選択だと思ったよ、後ろから走っている私もやり辛かったからな」

 

 

 そう言って、ナリタブライアン先輩はニコリと優しい笑みを浮かべていた。

 

 スリップストリームという現象をレースでは利用するウマ娘がいる。ナリタブライアン先輩もその一人だ。

 

 特に、ナリタブライアン先輩は差しの戦法に回る事で、前を走るウマ娘を利用し空気の抵抗を最大限にまで軽減させるという走りがスリップストリームでは基本的な走り方であると話してくれた。

 

 だが、私の場合、身長が低い上に身体を縮めて空気抵抗をなくす事で背後から迫るウマ娘にとってはその分、空気抵抗を受ける事になり、身体に負荷が掛かるらしい。

 

 

「最後の直線まで、お前の背後についたら上手いようにはなかなか差し戦法のウマ娘は走れんだろうな」

「ナリタブライアン先輩には負けましたけどね」

「あの走りが未だ未完成だからこそだろう。完全に完成したら抜けるかどうか怪しいな」

 

 

 ブライアン先輩はそう言うとニコリと笑みを浮かべて私の頭をポンと優しく撫でてくれた。

 

 未完成だが、完成系は見えてきている。朝日杯になれば、きっと完成するはずだ。

 

 しかしながら、ナリタブライアン先輩は何故私のトレーニングに付き合ってくれるのでしょうか?

 

 その事に関して、ブライアン先輩は私にこんな話をしてくださいました。

 

 

「朝日杯は私が初めて勝ったG1レースだ。お前の事は気に入っているし、好きだからな、だから、お前にも朝日杯を勝って欲しい、それだけだよ」

「それは有り難い話ですね、後輩思いの優しい先輩に恵まれて私は幸せ者です」

 

 

 そう言って、ナリタブライアン先輩に答える私。

 

 ナリタブライアン先輩は思い出すように私の言葉に笑みを浮かべ話を続ける。

 

 

「ふふっ、…お前の姉弟子であるミホノブルボンも勝ったレースだからな。姉には負けるな。妹として同じ立場の私なりのお前への激励だ」

「ありがたく受け取っておきます」

「よし、なら、トレーニングを続けるか、ミナさんとオカさんを呼んでこよう。トレーニングトレーナーに見てもらった方がより良いトレーニングができるだろうしな」

「はいっ!」

 

 

 それから、私はナリタブライアン先輩と共に朝日杯に向けてのトレーニングを始めました。

 

 途中、メジロドーベルさんが差し入れをしてくださったり、ヒシアマ姉さんが茶々を入れにきたりといろんな方が来てくれました。

 

 気がつけば、何時間も何時間も朝日杯に向けて走り、調整を行い、それにナリタブライアン先輩だけではなくアンタレスの皆さんも交代で併走に付き合ってくれた。

 

 

 そして、いよいよ朝日杯前日を迎える。

 

 テレビの中継が入る中、私は記者会見の為に横にトレーニングトレーナーであるオカさんと共にインタビューを受ける。

 

 ちなみに私の格好はジャージである。

 

 他のウマ娘は気合いを入れて勝負服で来ていますが、私は敢えてジャージできました。

 

 勝負服と履いてくる勝負パンツは当日で間に合いますしね、当日までのお楽しみです。

 

 私が着る勝負服には、義理母が作ってくれた思いが詰まっていますから、こんな場所で着るものではないと私が勝手にそう思っただけなんですけども。

 

 その隣にはエイシンチャンプ、チームリギルのネオちゃんことネオユニヴァース、そして、サクラプレジデントがそれぞれ、別個でインタビューを受けていた。

 

 特に警戒すべきと言われているのは調子が良いエイシンチャンプ、彼女の爆発的な脚は強力だ

 

 周りを見渡して彼女たちの姿を確認した私に早速、記者から質問が飛んでくる。

 

 

「さて、未だ無敗のアフトクラトラスさんっ! 今回のレースへの意気込みを聞かせてくださいっ!」

「そうですね、いつも通りに走るだけですかね」

「いつも通り…ですか?」

「えぇ、どんな相手だろうが、どんな強いウマ娘が居ようが、私には関係ありませんからね、勝者は常に一人、それが、勝負の世界ですから」

 

 

 私は静かにそう告げる。

 

 別に意気込みというほどのものは無い、入れ込みすぎて空回りする方が良く無いとオカさんからは言われたし、私もそう思う。

 

 すると、私のインタビューを隣で聞いていたエイシンチャンプはほくそ笑むと私の方へ向くとこんな話をし始めた。

 

 

「同感ね、無敗…、なるほど、なら私が貴女にとって初の黒星になるかもですね」

「…さぁ? どうでしょうかね?」

 

 

 火花を散らす私とエイシンチャンプさん、

 

 エイシンチャンプさんは青が特徴の丈が短いスカートの勝負服に赤い髪留めに長くて綺麗な鹿毛の髪を左に流している勝ち気なつり目の美人ですが、そんなことは私には関係ありません。

 

 というか、身長高くて羨ましいとか思って無いです。チクショーめ。

 

 互いに負けず嫌いな性格ですから、こうなるのは当たり前ですよね。

 

 

「二人とも盛り上がってるとこ悪いんだけど、1着は私が貰うわよ」

「…ネオちゃん」

「アフちゃん、貴女の事は好きだけど、それとこれとは話が別。譲れないものがあるわ」

 

 

 そう告げるネオちゃんことネオユニヴァースはギラついた眼差しで私の事をジッと見据えて来た。

 

 要はメンチを切ってきたのである。

 

 私も負けじと、顔をコツンとネオちゃんに引っ付けて見据える。まさに一触即発といったところだろう。

 

 周りに緊張感が漂う。まるで格闘技の緊迫した記者会見のようだ。

 

 あれ? これ、レースの記者会見でしたよね? なんでこんなことになってるんでしょう?

 

 私がふと、そんなつまらないことを考えていたその時だった。

 

 気が抜けたようにチュっという音が辺りに響き渡る。

 

 なんと、メンチを切っていたはずのネオちゃんが何を思ったのか接吻を仕掛けてきたのだ。

 

 私は思わずその行動に顔を真っ赤にして吹き出してしまい、ゴホゴホと咽せる。

 

 

「な、なななななっ! 何すんですかっ!」

「隙ありー、やっぱりチョロいなーアフちゃんはさー」

「もー! ネオちゃん、せっかくいい感じになってたのに台無しじゃんかー!」

 

 

 そうネオちゃんに告げるエイシンチャンプことシンチャン。

 

 つまる話、要は茶番である。

 

 緊張感とはなんだったのか、レース前にライバル心を煽るはずがこれではシンチャンが言うように色々台無しである。

 

 そんな私達の様子を見ながら、サクラプレジデントはゲラゲラと笑いながら私達に近づいてくる。

 

 

「あはははは! そりゃー! そんな身長差あったらキスくらいしたくなるよねー! わかるわかるー」

「なんじゃとー! ワレェ! 誰がちっこいねん! 」

「だって頑張ってつま先立ちしてるアフちゃんが可愛いものだからさー」

 

 

 ネオちゃんは私の頭を撫でながらそう告げる。

 

 なんだかんだ言っても、同じクラスで私達は同期だ。互いにリスペクトし合っているし、よく話もする。

 

 そういうわけで、私はクラスでもよくみんなからはこんな扱いを受けているのである。なんもかんもあの白いあんちくしょうが悪いですね。

 

 身長差と私の固定されてしまったキャラ付けは変えれ無いんですね、悲しいなぁ(悲壮感)。

 

 

「では、皆さま、最後に仲良く記念撮影をお願いしてもよろしいでしょうか?」

「あ! ほら! 記念撮影だってっ! アフちゃん! ほらセンター来てほら!」

「ピースしようピース!」

「修学旅行かっ!!」

 

 

 私の突っ込みも虚しく、記者さんが写真撮影が始める。

 

 なんでこうなるのかなー、おかしいなー、さっきまでのやりとりはなんだったのかなー。

 

 とはいえ、茶番とはいえど、先程のやりとりは多分、みんな内に秘めている本音も入っていることは間違いない。

 

 誰もが勝ちたいと思っている。私は少なくとも皆の野心がうっすらと今回の記者会見を通して見えた。

 

 特にネオちゃんは、身体つきが以前に比べて格段に逞しくなったような気がする。外見的な意味だけでなくしなやかで綺麗な脚を見ればわかる。

 

 私を倒すため、自分を追い込んできたのだろう。

 

 カシャリというシャッターの音と共に笑顔で写る私達。

 

 修学旅行のような奇妙な写真撮影とはなってしまったが、その笑顔の下で一人一人が煮え滾る闘争心を潜ませているのは言うまでもない。

 

 と思いたいです(願望)。








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