遥かな、夢の11Rを見るために   作:パトラッシュS

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スピカ合宿!

 

 

 

 はい、皆さんこんにちは、コンダラを引き引きしていますアフトクラトラスです。

 

 いやー、コンダラって良いですよね! 何が良いかって? めちゃくちゃ重いとことか! 身体が良い具合に悲鳴をあげるとことか!

 

 阿鼻叫喚としてるスピカの皆さんを見るとことか! 最高ですね! クソ野郎ですいません、あ、私、ウマ娘でした。

 

 

「スカーレット二等兵! なんだその体たらくは! その無駄に自己主張の激しい胸はただの脂肪か! 揉みしだかれたくなければ足を動かせぇ!」

「…ひ、ひゃい…」

「ウオッカ二等兵! 貴様! なんだその触り心地が良さそうな尻は! 飾りかッ! 気合いを入れんかッ! ぶっ叩きますよ!」

「ぜぇ…ぜぇ…ち、ちくしょうがあああ!」

「良い気合いだ! まだ半分もいってないがな! さあ、早く来い! 先は長いぞー!」

 

 

 こうして私はスピカの皆さんに罵声を浴びせながら意気揚々と士気をあげ、コンダラを引いて合宿所を目指しています。

 

 これが、遠山式トレーニング、ミホノブルボンの姉弟子仕込み軍隊仕様の掛け声です。

 

 まさか、私が言う立場になるとは思ってもみませんでしたけどね、あ、アンタレスでは日常茶飯事です。

 

 アンタレスでの叩き上げのウマ娘達は一通り罵声を浴びられた超絶レンジャー仕様の変態ウマ娘ばかりですので悪しからず。

 

 メジロドーベルさんなんかは私からの罵声を喜んでる節もあるくらいですからね。

 

 

「スズカ軍曹! お前の根性はそんなものか! 胸が痛いな! 板だけになッ!」

「…コロス…」

「さあ、私はここですよ! コンダラを引いてかかってこい! どうした? 怖いのか?」

「野郎ぶっ殺してやるゥ!!」

「待ってスズカさん! キャラが怖くなってるから! いつもの優しいスズカさんに戻って!」

 

 

 凄い勢いで、私の元までコンダラを引いて迫ってくるスズカさん。スペ先輩の制止を他所に鬼気迫る殺気である。

 

 これだよこれ! こういうのが欲しかったんですよ! …やばい、これ、私、本気で殺されてしまう。

 

 カメラは止めてはダメですよ! そのままですよ!

 

 そして、スズカさんに殺されまいと私のコンダラを引くスピードも自然と上がるわけですね。

 

 自ら首を締めて追い込んでいくスタイル、そして私の身体にはめちゃくちゃ重い重石が手足に付いています。

 

 うん、手足が千切れりゅのぉぉ!おほー!

 

 そんな中、コンダラを欠伸をしながら平然と引くウマ娘が一人、そうゴルシちゃんである。

 

 コンダラをまるで軽々しく引いてしまうこの脚力は本当に化け物じみていると思います。

 

 そして、マックイーン先輩も同様に割と他の方々よりも涼しい顔でコンダラを引いていました。

 

 やっぱり腕っ節がやばい人はやばいですね。私も若干ドン引きしちゃいました。

 

 

「アフ〜、約束だぞ〜私が勝ったら好き放題だからな〜」

「ハッ! 絶対負けたりなんかしませんけどね! べー!」

「はっはっはっ! マックイーン見てろよ? あの顔、今日の夜には涙目にしてやるからなぁ!」

「あら? それは面白そうですわね、詳しく聞かせてもらえるかしら?」

 

 

 鼻で笑った私の言葉にカチンと来たのかマックイーン先輩までノリノリで乗って来やがりました。

 

 安易に挑発しすぎたかも…。いやー、でも私が負けるなんてこたぁ無いですけどね、年季が違いますよ! 年季が!

 

 1番、きつそうにしてるのは、やっぱりテイオーちゃんですね、予想通りといいますか、スパルタじみたこんなトレーニングは彼女はしたことがなかったでしょうからね。

 

 なので、私は敢えてテイオーちゃんは無理に煽ろうとはしませんでした。だって可愛いんですもの、私には無理です。

 

 

「待ってよぉ〜みんなぁ〜〜」

「テイオーさんは自分のペースで大丈夫ですからねー」

「うへぇ〜」

 

 

 何かあったら、私が会長からぶっ殺されちゃいますから。

 

 テイオーちゃんは護らねば(本部感)、前回、死に芸を身につけておいてよかったと思います、つまり、また私が希望の花を咲かせる事になるって事なんでしょうけどね。

 

 だからといって皆さん、変な銀髪っぽい前髪を私の髪に生やさないでくださいね、素材なんてねーです。

 

 

「ど根性ー!」

「スペ軍曹は流石ですねー! いやー、私もやり甲斐があるってもんですよッ!」

 

 

 私は後続でついてくるスペ先輩に賞賛の声を送ります。

 

 努力、友情、勝利! これこそが王道ですよね! 特にウマ娘にとっては必須とも言えます。

 

 幾多のライバル達、様々な経験と自分との戦いを超えて、きっと強くなっていくのです。

 

 さて、そして、嬉々としてコンダラを引き引きして合宿所を目指していたわけなんですけど、結果としてどうなったのか?

 

 うん、私ってフラグを立てるのがほんとに得意なんだなって我ながら思います。

 

 なんでしょうね、いやー、普段から? 坂路を馬鹿みたいに走ってるし? コンダラとか余裕だし? まあ、スピカの皆さんなら別に重石を手足に付けてても勝てるっしょ!

 

 みたいな余裕をかましていたんですけどね、正直、私、調子に乗ってたと思います。

 

 あのね、ゴルシちゃんの末脚の爆発力とマックイーンさんのアホみたいな耐久力をね、視野に入れてなかったんですね。

 

 あ、その結果、どうなったかというと。

 

 

「あはははは! お前の身体は私達のものだぁー!」

「ぎゃあああああ!!」

 

 

 最後の最後に捲られて、尻やら胸やら身体中を弄られ、やられたい放題にされる事となりました。

 

 今も背後から服の中をゴルシちゃんから弄られて好き放題にされています。

 

 胸を揺らされるわ、パンツ越しに尻は鷲掴みにされるわで私はされるがままです。オマケにマックイーンさんまでそこに加わってくるものだから手のつけようがありません。

 

 

「あら〜、貴女、やっぱり胸は大きいですわね! ん〜、リボンとか尻尾に付けるとさらに可愛いかもしれませんわ」

「おっ! 良いね!」

「…ゴールドシップ、後でその娘、私に貸して頂戴? …ちょっと試したい技があるの」

「ん? スズカもか! 良いぞ!良いぞ! なんたって今日はコイツを好き勝手に出来るからな!」

「ぴゃー! ご、ご勘弁をー!」

 

 

 即堕ちアフちゃん、絶賛弄られ中です。

 

 その昔、誰かが言いました。撃っていいのは撃たれる覚悟がある奴だけだと、私は特に何も考えずに煽ったおかげでこんな風になっちゃっているわけですね。

 

 コンダラ引きに負けた以上は意味深な目に合おうが、全裸にひん剥かれようが、どうしようもないわけです。

 

 自分が墓穴掘ってしまったわけですからね、なんてこった。

 

 スズカさんは拳の骨と首の骨を鳴らしています。あ、私明日まで生きてるでしょうかね?

 

 居酒屋に飲みに行くそこのお父さん、もし、馬刺しが出ることがあれば私の事を思い出してみてください。

 

 多分、それが私かもしれません。

 

 

「今夜は安眠できると思わないことですわね」

「ふふふ、たくさん弄り回してヒーヒー言わしてやるからな、あ、動画にあげたら視聴率上がるかもしれん」

 

 

 そう言いながら口元を釣り上げ、笑みを浮かべながら手をワキワキさせるゴルシちゃん。

 

 私はその光景に頼り甲斐がある後輩2人に助け船を求めるべく、プライドやら何やらを全てかなぐり捨てて縋り付く。

 

 え? プライド? 私にそもそもそんなものないですよ?

 

 助かるならそんなものそこらへんに投げ捨てます、私の手のひらは360度、クルックルで有名ですので(ゲス)。

 

 ということで、私はすかさず2人に涙目で助けを請います。

 

 先輩の威厳とは一体(哲学)。

 

 

「やだぁ! やだぁ! スカーレットちゃん、ウオッカちゃん! お助けを…!」

「…私、胸、脂肪とか言われましたしねー」

「あたしも、尻揉むとか言われたからなー」

「きゃん!?」

 

 

 そう言いながら、さりげなく私の右胸と左尻を鷲掴みにしてくる2人の後輩。

 

 だからといってなぜ私のを掴むのか、これには私も思わず変な声が出てしまいました。

 

 皆さん、セクハラしていいのはされていい覚悟がある人だけなんです。

 

 んなことはないですね、誰だそんなアホなこと言ってるのは!

 

 そんな中、自分の放った言葉により自業自得となった私の側にやってきたのは天使の笑顔を浮かべているスペ先輩でした。

 

 

「ほら、あんましアフちゃんを弄ったら可哀想ではないですかっ! 皆さん!」

「す、スペ先輩…」

「アフちゃんが可愛いのはわかりましたから、とりあえず、私が一旦お預かりしておきます!」

「どうしてそうなる」

 

 

 そう言いながら、ビシッとスペ先輩に突っ込みを入れる私。

 

 違うのだ、そうではないのだ、スペ先輩。

 

 耳をぴこぴこさせて、これだ! と言わんばかりにドヤ顔しているところ申し訳ないんですけど、まず、私の扱いのところに注目してみましょう!

 

 それって根本的な解決になってませんよね?(ミスト感)。

 

 はい、霧が出てまいりましたよ、馬券を握りしめるおいちゃん達はこの事をバイオレットステークス状態と言います。

 

 そんな中、スピカのトレーナーさんは手をパンパンと叩くと呆れた様子でこう話し始める。

 

 

「ハイハイ! お前達! まだトレーニングは始まったばっかりだぞー! 次は筋力トレーニングだ!」

「ですってよ! さあ! 皆さん張り切っていきましょう!」

 

 

 そう言いながら、嬉々として筋力トレーニングを行おうとする私。

 

 いやー、わかっているではないですか、スピカのトレーナーさん何キロから始めるんですか?

 

 腕立ての時には当然ながら重石を背中に乗せてやるんですよね!

 

 目をキラキラさせながら真っ直ぐにスピカのトレーナーを見つめる私、すると、スピカのトレーナーさんは私の肩を叩くとこう告げ始める。

 

 

「ただしアフトクラトラス、お前は重しを減らしてトレーニングしなさい」

「…えー…」

「えーじゃない、お前、手足にそんなもの引っさげたままコンダラ引いてここまで来るとかぶっ飛びすぎだ!」

 

 

 そう言いながら、私の手首に付いているバンドを軽く引き剥がすスピカのトレーナーさん。

 

 そして、私の手首から引き離された重石が地面に接触した瞬間、ズドーンと凄まじい音を立てて落下する。

 

 重石が落下した場所の地面は凄まじい砂埃を立ててかなり陥没していました。

 

 その光景にスピカの皆さんは口を開けてポカンとしていました。

 

 あれ? なぜそんな顔をされるのですか? これくらい、ウチでは日常茶飯事なんですけれども。

 

 それから、スピカのトレーナーさんは頭を掻き毟りながら話を続けるように私のシャツを軽く捲る。

 

 

「それとだな…」

「きゃん! えっち!」

「えっち! …じゃない! お前よぉ、なんだこいつはっ!」

 

 

 そう言いながら、私の服下に隠れていながら、ギチギチと凄い音を立てている鋼色のバネの装着物を見つけ、スピカのトレーナーさんは呆れ返っていました。

 

 あれ? ご存知ではない?

 

 皆さん、これが、今、巷で流行りの超優秀な強制筋力増強装備、義理母が名付けたその名も大ダービーウマ娘養成ギプスですよ。

 

 なんと、身体を動かすたびにギチギチと筋肉に負担が掛かるという鬼畜仕様です。

 

 ライスシャワー先輩とかミホノブルボン先輩とか割と愛用していましたけどね?

 

 

「大ダービーウマ娘養成ギプスです」

「アホかッ!」

「これ付けてる間は私の筋力落ちちゃうんですよねー」

 

 

 それは、当たり前である。

 

 盛大にスピカのトレーナーさんから突っ込みを入れられていますね、はい。

 

 余談ですが、ミホノブルボン先輩はトレーニングのし過ぎで一度この養成ギプスを破壊したことがありました。

 

 よって、破壊まで行き着いていない私はまだまだという事なんでね、いずれはトレーニングのし過ぎで破壊できるくらいにはなりたいなとは思っています。

 

 そんな中、これには流石にスピカの皆さんもドン引きしていました。

 

 

「え…? アフちゃん、それ付けてた上に重石を手足に引っ付けてコンダラ引いてあの速さだったの?」

「ん? あぁ、そうですね。…我ながらまだまだだと痛感させられました」

「えっ?」

「んっ?」

 

 

 私の言葉に可笑しいと言わんばかりに目を丸くして聞き返してくるスペ先輩。

 

 スズカ先輩は頭が痛くなってきたのか、片手で頭を抱えたまま、顔をしかめると私に向かい改めて聞き返してくる。

 

 

「ん? ちょっと待って? アフちゃん、貴女コンダラ引いて確か2番目に着いたわよね」

「えぇ、誠に残念ながら、最後にゴルシちゃんに捲られてしまいました…悔しい限りです」

「結構接戦……でしたよね? アフ先輩…」

「でしたかねー」

 

 

 首を傾げたまま、スズカ先輩に便乗して聞き返してくるスカーレットちゃんに思い出すように告げる私。

 

 うん、まあ、そうでしたけど、私の力不足でしたからね。

 

 こうなってしまうのも致し方ないとは思ってはいたんですけど、煽った上で負けたのだからそれは自業自得というものです。

 

 そんな私の言葉を聞いて、その場が一気に凍りつく。

 

 それからしばらくして、皆さんの口から出た第一声がこちら。

 

 

「頭が可笑しいでしょう!! 」

「ウマ娘ですか貴女!?」

「ちょっとこの娘、頭のネジが…というか身体が…」

 

 

 この言われようである。

 

 何故だ! 私の何が間違っていたというのですか!?

 

 いや、かなりいい感じのトレーニング方法でしょう! 義理母直伝ですよ! この画期的な鬼畜装備の数々。

 

 スピカのトレーナーさんは呆れたようにため息を吐くと私に向かいこう告げ始めた。

 

 

「…お前のこれ、オカさんもドン引きして心配してるって聞いてるからな? …いや、それはやばいって本当に」

「トレーニングを止められるウマ娘とは一体…」

「それ、アンタレスの一部とお前さんくらいだよ」

 

 

 そう言いながら、左右に首を振り、私を諭すようにしてくるスピカのトレーナーさん。

 

 スピカのトレーナーさん、もっと早くに私に言っておけば良かったですね、もうね、私も頭が可笑しいなとわかっているんですけど、身体がそれに慣れ過ぎて感覚が最早麻痺してるんですよ私の場合。

 

 これ付けたままウイニングライブはしますし、踊りますし、筋トレしますし、坂路は登りますしね。

 

 体重は減る一方で、身体にはムチムチで健康的な筋肉ばかりが増えていきます。

 

 胸はもちろん、硬い大胸筋ではなく弾力性のある脂肪なんですけども、ここは鍛えても筋肉にはならなんだ。

 

 それから私は、結局、駄々をこねてこれら全てを身につけたまま筋力トレーニングをする事を無理矢理了承させました。

 

 これが、義理母流です。

 

 ちなみにスピカの皆さんは私に対して物凄く優しく接してくれるようになりました。

 

 何故だかわかりませんけど、その生暖かい眼差しと優しさに違和感を感じざる得ません。

 

 

「まあ、強く生きろ! アフ!…いや、少し休めお前は」

「え? どっちなんですか?」

 

 

 変にゴルシちゃんにまで慰められる始末。

 

 後輩2人、私が以前、なんで悲鳴をあげたかこれで理解したでしょう?

 

 次の機会にはは皆さんでアンタレスの義理母式トレーニングをしてみましょうか?

 

 本気で死人が出るかもしれませんけど、きっと大丈夫です。死なない程度には設定はされていますので(瀕死にならないとは言っていない)。

 

 皆さんもよければ、次の機会にご一緒してはいかがでしょう?

 

 アンタレス地獄トレーニングツアー、体重は3日で15キロ以上は軽く落ちます。ダイエットにはオススメです。

 

 ついでに地獄もたまに見えますし、はたまた極楽浄土も見えることもあります。

 

 天にも昇る心地良さ、皆さんの参加心からお待ちしています(ゲス顔)。


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