遥かな、夢の11Rを見るために   作:パトラッシュS

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ダイエット大作戦 その2(結果にコミット)

 

 さて、ダイエット大作戦二日目。

 

 今後の方針として大幅な軌道修正をして、スペ先輩が身体を絞りやすくなるメニューとスケジュールを考えました。

 

 うむ、これを見ればスペ先輩も私に感謝するに違いありません! 

 

 

サンキューアッフ! フォーエバーアッフ! と拝んでくれるに違いありませんね。

 

 

 やっぱり私って頭いいなぁ、天才とは私みたいなウマ娘のことを言うのですよ多分。

 

 さて、そんな自画自賛はさておき、修正したメニューを早速、スペピッピに見せてあげましょう。

 

 

「どうですか? スペ先輩」

「うーん……昨日よりは……」

「昨日が異常過ぎたんだよ」

 

 

 そう言って、ため息を吐くオグリキャップ先輩。

 

 うん、なんも言えねぇ……。

 

 確かによくよく考えたらあのトレーニング量とスケジュールは他のチームではあり得ないようなスケジュールですもんね。

 

 

「ふっ……私も反省して改善をしたのですよ、若さゆえの過ちってやつです」

過ちが詰まったデカイ胸が付いて歩いているような奴が何を言っているんだ?」

「せめて服着て歩いているにしましょう? そこは!?」

 

 

 自信ありげに告げる私にオグリ先輩から痛烈な一言。

 

 過ちがおっぱい付いてるとかあんまりだ! 確かにそうなんだけど! ぐうの音も出ないんですけども! 

 

 え? 私が胸が大きいのってそういうこと? ぶっ飛んだ事しすぎたから? 

 

 エチエチの実の能力者みたいな言い方には大変、遺憾の意があります、私は露出狂ではありませんし、あ、でも寝るとき最近服着てないや。

 

 

「でもこれならやれそうかも……」

「私も同じ経験がありますからね、初心に返って良いダイエット方を考え抜いたのですよ、えへん」

「最初から初心に帰ればよかったんじゃないのか?」

「こ、細かいことは言いっこなしです!」

 

 

 オグオグさんからの一言に顔をひきつらせて答える私。

 

 私とて日々、成長してるのですよ! そこ、身長は成長してないとか言わない。

 

 身長は伸びないんや……。

 

 

「では気を取り直して、早速取り掛かりましょう、まずはレース場を走るところからですね、動的運動しましょう」

 

 

 そう言って、私はスペ先輩とオグリ先輩と共に並んで動的運動を開始する。

 

 うむ、これが普通のトレーニングなんですよね、なんかムズムズするのはきっと気のせいに違いありません。

 

 ……コンクリ持って来ようかな……。

 

 それから、動的運動が終わったら続いてレース場を走る。

 

 

「ねぇ、アフちゃん?」

「なんですか?」

「……うん、スペ、言いたいことはわかるぞ」

 

 

 二人とも私と横に並んで走る中、ジッと視線を私に向けてくる。

 

 皆まで言うな、自覚はあるんですよ。

 

 でもね、私もねこればっかりはね、なんの手の施しようも無いのでね。

 

 

「アフちゃん身長ちっさくて可愛いですよね」

「なんだとこのやろう」

「うん、でもまあ、それでファンが付いてきてるからなお前の場合は」

 

 

 うん、まあ、そうなんですけども。

 

 おっきなお友達から小さな友達までみんなから何故か人気あるんですよね、しかも何故か女性まで。

 

 寝る子は育つと言いますが、アンタレスのスケジュールを改めて見るとこれは育ちませんわ。

 

 だけど、一箇所だけは育っているのは何故? 教えてエ◯い人。

 

 さて、そんな身長差を弄られた私ですがひとまずレース場のランニングを終えるとスペ先輩と共に次のメニューに移ります。

 

 

「いやー、ダイエットってこんなに楽でいいんですかね……」

「え? 割と距離は走った気はするけど?」

「うーん……なんていうかこう……ね?」

 

 

 平和なトレーニング、普通はそうなんですよ普通はね。

 

 久方ぶりの普通のトレーニングに戸惑ってしまっていると言いますか、うん、私はこれ参加しない方が良いかもしれない、なんか、身体が落ち着きませんからね。

 

 気を取り直して、私ができる事をやろう。そうだ、まずは食の改善からだ! 

 

 という事で、今日は私が二人にお昼ご飯を振舞ってあげる事にしました。

 

 いやー、ご飯を作るのも久方ぶりですね、だいたい食堂があるのでご飯はそこで済ませられるんですけどもたまにはね? 

 

 エプロンを付けた私はフライパンをクルリと回すと料理に取り掛かります。

 

 その間、お二人は併走でサイボーグ専用坂路を登っています。

 

 

「さてと、じゃあ、パパッと作っちゃいますかね」

 

 

 髪留めで髪を束ね、早速調理に取り掛かる私。

 

 あ、場所は家庭科室を借りています。家庭科室なんてあったのはびっくりでしたけど。

 

 炭水化物を抜いた食事で出来るだけ油を使わない料理にしないと、あと、あの二人たくさん食べるから大量に作らないとなぁ……。

 

 上機嫌に尻尾をフリフリさせながらそんな事を考えていた私はまな板に向かい包丁で食材を切る。

 

 私のエプロン姿なんて貴重ですよ? ほら、皆さん拝んで拝んで。

 

 久々の料理、腕を思う存分振るわねば! 懐かしいなぁ、義理母と二人で生活をしている時はいつもこうしてご飯を作ってましたっけ? 

 

 今回は腹ペコさんが二人いるので余計に気合いが入りますね、炊事なら幾千もしてきた甲斐があったというものですよ。

 

 

「るんるんるん♪」

「……アフちゃんが料理をしてるですと!?」

「……アグデジ先輩、背後から人のスカートをさも当然のように捲らないでください」

 

 

 そう言って、上機嫌で料理をしていたのもつかの間、背後から現れたアグデジ先輩からスカートを捲られている私は手を止め、冷静に告げる。

 

 なんですか? ゴルシちゃんといい、最近は私のスカートを捲るのが流行りになっているんですか? 誰だそんなものを流行らせたのは!! 

 

 冷静な口調で告げる私が背後に振り返るとニマァと笑みを浮かべたアグデジさんが私に一言。

 

 

今日はピンクなんだね」

「新しく買ったんですよ、紛失した分をね!」

 

 

 何故かもってた下着が消失するから仕方ないでしょうが! 

 

 なんで消えちゃうんだろ? 謎は深まるばかり、まあ、最近はちょっとはマシにはなっていて下着が一気に減る事は無くなりましたけども。

 

 私のお気に入りの縞パン達を盗んだら本当に容赦せんぞ! あれ、一応、勝負下着なんで、しかも割と金かかったんですよね。

 

 まあ、私の下着事情はこの際どうでも良いとして、早く料理を作らなきゃ(使命感)。

 

 

「いい匂いがしますねー」

「まあ私の料理ですからね! そらそうよ!」

 

 

 ふんす! と自己主張の激しい胸を張る私。

 

 私がガサツでアホでポンコツで女の子らしくないですって? とんでもない、こう見えて女子力めちゃくちゃ高いんですからね。

 

 まあ、高いと言ってもヒシアマ姉さんよりはですけども、あ、いや、ヒシアマ姉さん可愛いから女子力高いのか? 

 

 女子力とは一体なんだろう? わからなくなってきたぞい。

 

 さて、それから数分の後、私は二人に作った大量の料理を机に並べ終えます。

 

 

「なんか物凄い量なんだけど!? え!? これ誰が食べるの!?」

 

 

 アグデジさんからの当然の反応。

 

 だってあの二人ですよ? こんくらいは食べますよ。でも、カロリーや栄養バランスはちゃんと考えてますしダイエット食ですからね。

 

 そうして、作り終えた私は椅子に腰掛けフゥと一息入れる。

 

 作るのも大変でしたけど並べるのも大変ですね、こんな量。

 

 さて、それからしばらくして、二人の大飯食らい達がやってきます。

 

 

「いい匂い〜!!」

「……ご飯……ご飯だ……」

 

 

 家庭科室に目をキラキラさせたスペピッピとヨダレを垂らしているオグオグ先輩が襲来! 

 

 さあ、かかってこいや! こちとら万全の準備で迎え撃つ覚悟はできてるんじゃ! 

 

 私の作った自信ありの料理、さて、君たちに食べ尽くせるかな? 

 

 

「すごーい! これ全部アフちゃんが作ったの?」

「そりゃそうですよ、学食じゃやっぱりカロリーや脂質が多いですからね」

「いただきます」

 

 

 そう言って、私の作ったご飯に向かい一心不乱に手を合わせるオグオグ先輩、迷いが一切無いですね、目がガチだ。

 

 上機嫌なスペピッピ先輩も続くように手を合わせて早速料理に手をつけ始める。

 

 

「どうですか? 味は?」

 

 

 勢いよく食べ始めた二人に私は味はどうか問いかけた。

 

 まあ、力作ですからね、当然美味しいでしょう、伊達に料理歴を歩んではいないですよ、私。

 

 さあ、味はどうなんですかね? 返答は……。

 

 

「ハムハムハムハムハム」

「モグモグモグモグモグ」

「……聞いちゃいねぇ……」

 

 

 と思いきや、私の言葉をガンスルーする二人はとにかく箸を動かし目の前に広がる食材をパクパクと口に突っ込んでいく。

 

 うん、まあ、確かにトレーニング後ですし、お腹減るのもわかりますけどね。

 

 みるみる減っていく食料、ダイエット食なんでいくら食べても大丈夫といえば大丈夫なんですけど壮観ですね。

 

 こんな風に作ったご飯を美味しく食べてもらえるとなんだか嬉しいです。

 

 

「アフちゃん! 美味しい! 凄く美味しいよ!」

「それは良かったです」

 

 

 スペ先輩の言葉にそう言って笑顔を浮かべる私。

 

 作った甲斐があったというものですね、うん、ダイエットで初日からちょっと無茶させちゃったからそのお詫びも込めたつもりだったんですけども。

 

 そうして、食べ始めてからなんと30分足らず。

 

 二人は大量の食事を完食してしまいました。凄いなー、私、10人前くらいの気持ちで作ったんですけどね。

 

 そして、食べ終えたオグリさんは口元を拭うと真顔になり私に一言。

 

 

アフ、結婚してくれ

「真顔で何言ってるんですか貴女は」

 

 

 相変わらず現金だなとか思いつつ、スペちゃんとアグデジさんから笑いが起こる。

 

 真顔で言われましたからね、いやいや、結婚って女の子同士でどうやってするんですかね? 

 

 ご飯くらいならいつでも作ってあげるというのに、でも、次回からは有料ですよ? オグリさん。

 

 さて、昼食もしっかりとりましたし続きですよ! ダイエットの続き! エネルギーチャージは十分でしょう? なんせ、私がご飯を手作りで作ってあげたんですからね。

 

 私は食器を全て片した後、二人を連れて午後のダイエットトレーニングへと戻りました。

 

 

 こうして、スペちゃんのダイエット大作戦を数日行い、その結果は当然ながら反映されていきます。

 

 みるみる減っていくスペちゃんの体脂肪率、ついでにオグオグさんも下がっていく。

 

 そしてついに……! 

 

 

「アフちゃん! やったよ! やったあ! 20キロ近く体重が落ちたよ!」

「おー……凄いじゃないですか!」

「ウエスト周りとかホラ! スッキリしてる!」

 

 

 そう言って、晴れやかな表情を浮かべているスペ先輩。

 

 まあ、初日から13キロ近く一気に体重落ちましたからね、あとは筋トレとか食事の改善で一気にガタンですよ。

 

 うむ、良かった良かった頑張った甲斐がありましたね。

 

 ちなみにオグリ先輩も一気に体重が落ちるとともに筋肉量が付いたらしい、何故か物凄く感謝された。

 

 それがきっかけで私がトレセン学園にてダイエットのマエストロという謎のあだ名が付き、ダイエットを懇願するウマ娘達が殺到するのはまた別の話。

 

 スペ先輩のダイエット大作戦はこうして、無事に成功を収めることができたのでした。

 

 

 今日から君も理想のボディを手に入れよう! 

 


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