やっほー! アッフだよ!(唐突)。
はい、というわけでね、着きましたよイギリス。
ひゃー、外人の人がいっぱいだー、しゅごい、これがイギリスですか。
あ、ちなみに私達が今いるのはロンドンです。ベイカーストリートとかちょっと行ったりしてみたかったんですよね。
日本食以外の食べ物なんかもこの機会に食べたいなーなんて思ったり。
ふふん、海外ということで、私服も気合い入れましたからね今回はね!
外国ってこともあって、ジーンズのショートパンツ! そして、ヘソ出しTシャツ!上に軽く赤いシャツを羽織ってみました。
「アフ、大胆な格好だなお前」
「えへへー、可愛いでしょうこの服」
「というか、悩殺するような格好なんだが」
そう言って、苦笑いを浮かべるナリタブライアン先輩。
悩殺は流石に言い過ぎですよー、確かにちょっと露出は多いかもですけども。
アフちゃんも海外仕様というわけです。
「まあ、こんくらいなら問題ないですよ、たまにはスカート以外も履きたかったですし」
「まあ、確かに機動性は良さそうだな」
そう言って、尻尾をフリフリしながら上機嫌に答える私、ふふん、我ながら良い買い物をしたものです、えぇ。
後、イギリスは個人的に好きです。
まあ、フランスやスペインとかも好きなんですけどね。
なんでかって? あの田舎感というかカントリー感があるのが好きなんですよ。
私、人混みが苦手なんですよねこう見えて。
だから、私が地方が大好きなのはそういうところです。
私が血気盛んなのはあれです、将来は修羅の国、福岡で余生を過ごしたいなーって思っているからですね、はい。
東京よりも埼玉、千葉、群馬、茨城の方が好きです。
あんなところに人詰め込んだらだめですよ。
まあ、大阪も人多いですけど人はあったかいんで人情に溢れてる街ですからね。
名古屋も串カツが美味しいです。あと色んなものが大盛りなのが好き。
なので、トレセン学園は北海道に作るべきだと思います。
東京も確かに色んな場所があって便利なんですけどね、私はトレセンの寮だから良いんですけど東京はあれです、人がおおすぎ内。
あんな人口密集地帯とか息が詰まりますね、それだけ人口がいればね…、私が田舎っぺなだけですね、都会より自然が大好き、だってウマ娘だもの。
てな話をオグリ先輩とメイセイオペラ先輩にしたら頷いて共感してくれた挙句ハグしてくれました。
では、今日本で1番熱いところはどこ?
正解は佐賀です。嘘です、ごめんなさい。
強いて言えば、ゾンビのアイドルグループとか、ガタリンピックとか……まあ、そこはゾンビのアイドルグループさんが色々紹介してくれると思います。
やっぱり、地方は最高だと思います。この際、首都、北海道にしたら良いのに、土地1番デカイですし、人も密集しませんしね。
まあ、私は住みやすくて人が暖かくてそれなりに便利な街に住みたいなというだけです。
なので、イギリスは良いなーって、ほら、フットボール熱も凄いですし地方愛に溢れてる国だなって感じるので。
さて、話を戻しましょうか、という訳で私達は下宿先に移動。
とは言ってもホテルなんですけどね、ここからさらに調整のため荷物を置いてそそくさと準備してトレーニング場に向かいます。
「さてと、それじゃ早速、調整に移りましょうかね」
「そうですね、妹弟子、私のトレーニングについてこれますか?」
「愚問ですよ、姉弟子」
準備体操をしながらそう言って、互いに笑みをこぼす私と姉弟子。
こうして二人でトレーニングするのも久方振りですね。ライスシャワー先輩は次のレースがあるので日本に残っていますけれど、やはり、姉弟子とのトレーニングはしっくり来ます。
見よ、この二人揃ってのこの柔軟性!
ペターンと地面に足を全開にして体もペタリんこ、いやはや、こう言うときにはやはり日頃の成果が出ますな。
「ぬーん……」
「アッフ、お前体柔らかすぎだよな、ほんと、なんでそんな体勢ができるんだか……」
変な掛け声と共にあり得ない方向にストレッチをする私にツッコミを入れるブライアン先輩。
怪我しない秘訣は柔軟性ですからね、特に私は柔軟性がある筋肉が多くついているのでこんな体勢も可能なのですよ。
ただし、私の身体は反面、感度も良いのが難点なのですぐ即堕ちします。
だからあまり敏感なところは刺激しないでくださいね? ……するなよ、絶対するなよ!
「さて、では海外のターフに慣れるところから始めましょうか」
「……なんか、日本と感触が違いますね」
準備体操が終わり、姉弟子の言葉を聞いて改めて、芝を確認する私。
なんか踏み応えがあるというか、足を取られそうというかなんとも言えない感覚ですね。
そんな中、私の背後から現れる鬼が一人。
このプレッシャーは一体……! 心なしかゴゴゴゴゴッという擬音が聞こえてきそうです。
怖いよー背後向きたくないよー。
うん、何が立っているのか、すでに察しがついているんですけどね?
冷や汗が背中にたらりと流れます。フラッシュバックする走馬灯の数々。
「さて、アフ、ブルボン、久々の師弟揃ってのトレーニングだが、覚悟はいいだろうな?」
「も、ももももも勿論ですっ! わ、私とて、伊達に己を追い込んでいませんかららららら」
「声が震えてるぞアフ?」
私の返答に冷静にツッコミを入れるナリタブライアン先輩。
こ、怖くなんてないんだからね! か、勘違いしないでよね! ね!
義理母からケツを叩かれる日々がまたこうして幕を開けるんですねー、私のお尻が叩きごたえがあるとか言ってるやつは正直に前に出なさい。
「では、早速はじめるがまずは……──」
「……へぇ、貴女がアフトクラトラス?」
トレーニングの準備が整い姉弟子と私が義理母の前で話を聞いている最中であった。
どこからか声が聞こえて来ると共に私はそちらへと振り返る。すると、そこに居たのは異様な雰囲気を醸し出している二人のウマ娘達であった。
長く束ねられた綺麗な黒と白が入り混じる芦毛の長髪、透き通るような白い素肌が見える露出が高いジーンズのショートパンツ、色気を醸し出している黒のチューブトップの上から白いシャツを着崩すように羽織っていた。
まるで、モデルのように綺麗な人だなーというのが私の第一印象だ。
「……ダラカニ……」
「……えっ!? だ、ダラカニさんなんですか!? この人がっ!?」
義理母が呟いた言葉に驚くように声を上げる私、いや、確かに雰囲気はあったが、まさかダラカニさんがこんな綺麗な方だとは思いもしませんでした。
めちゃくちゃ美人です。びっくりです、あと、格好がものすごくその……色っぽすぎる。
「……録画で見た通りね、本当に小さいわね貴女」
だが、そんな美人からでた私への第一声は辛辣な言葉でした。
その言葉を聞いた私は思わず固まってしまいます。なんだ、この人、会って間もないというのにいきなり。
カチンとは来ましたけど、まあ、小さい可愛いとかは良く皆さんから言われ慣れてるんでこれくらいならなんの問題もないです。
だが、二言目からはちょっと事情が違ってきた。
「私がこんなのとレース? はっ! ジョークがキツイわよねー……」
「……は?」
「貴女達バカみたいなトレーニングばかりしてるんでしょう? そこのトレーナーと一緒にさ、イギリスまできて見苦しいと思わないのかしら?」
煽ってきよったのですよ、しかも割とガチ目に、これには流石に私もカチンと来てしまいました。
しかし、ダラカニは笑みを浮かべたまま、そんな私の表情の変化を目の当たりにして、こう告げてきます。
「なんなら今、ここで貴女に併走して現実を教えてあげましょうか? ……本来ウマ娘っていうものがどういった意味を持つ存在なのかっていうのをね」
私は優しいから、と付け足して笑い声を上げるダラカニ、プライドの塊というか、何というかここまで言うからにはよほど自信があるのだろう。
表情を曇らせたら私はその提案、つまりは喧嘩ですね、買ってやることにしました。
上等だこの野郎と、急に現れてなんだこの野郎ってなったわけですよ。
「その喧嘩買いましたよ、レース場に出ろコラ」
「おい! アフ!」
一度闘志が付けば、止まりません、義理母が制そうとしてきましたが、私は問題ないと親指を立てて応えます。
レース前、しかもこちらに来たばかりですが、こんな奴に負けてたまるか。
相手があの天下のダラカニでもナンボのもんじゃいという気持ちでした。
ウマ娘たるもの、走りで黙らせるのが手っ取り早い、そう思ったわけです。
すると、姉弟子はもう片方のダラカニの付き添いで来ていた青いカチューシャをし、ジーンズと白いキャミソールを身に纏う芦毛の短髪に黒いメッシュが入った特徴的な髪をしたデイラミに話しかける。
「……どういうつもりですか」
「どうもこうも見ての通りよ、あの娘が聞こうとしなかったものでね」
「どうせ、レースで走ることになるんですからここで妹弟子とあの娘を走らせる必要性があるとは思えません」
姉弟子はそう言って、真っ直ぐにデイラミを見据えながら告げる。
だが、デイラミはそんな姉弟子の言葉に肩をすくめると笑みを浮かべたまま、ゆっくりと語りはじめた。
「それが共に走るに値するウマ娘ならね、貴女も海を渡って受けたでしょう? ……洗礼というやつを」
そう言って、意味深な言葉を姉弟子に投げかけるデイラミさん。
姉弟子はその言葉に静かに視線を逸らすと沈黙する。そう、あれは自分がアメリカに来たばかりだった。
そこで待っていたのは、燃えるように赤い髪をしたウマ娘であった。彼女はアメリカの生ける伝説、そう、アメリカに住む人間が知らないほどに有名なウマ娘だ。
その名はビッグ・レッド、彼女はアメリカの主流とするダートレースならば全てのウマ娘の頂点に君臨するウマ娘であった。
「……嫌なことを思い出させてくれますね」
姉弟子は静かにそう呟く、握る拳には力がこもっていた。
姉弟子が受けたのはそのビッグ・レッドからの鮮烈な歓迎だった。何故ならば、主流としているダートではなく、なんとターフでミホノブルボンの姉弟子は彼女に完敗したのである。
ターフならば負けるはずがない、そう確信していた、だが、彼女はそんなミホノブルボンの姉弟子を突き放すような圧倒的な強さを持っていたのである。
これが、世界の強さだと、まざまざと見せつけられるような気分だった。
世界には自分のようなウマ娘はごまんといる。
小さな島国で最強を謳うのはなんと愚かだと、彼女から姉弟子は実力という形で突きつけられた。
ビッグ・レッド、その名はセクレタリアト。
赤い栗毛の絶対王者はアメリカ遠征に意気込むミホノブルボンの姉弟子の前に立ち塞がる巨大な壁だった。
「……まあ、貴女のその後の活躍はそれが大きかったんでしょうけど」
「…………」
「あの娘にも必要でしょう? 自分が今から挑もうとしているものがどういうものか、という事はね?」
姉弟子にそう語るデイラミは笑みを浮かべ、静かに併走をこれから行う私とダラカニの方へと視線を移す。
最強のウマ娘を目指すということがどういうことか。
そこには多大な積み重ねは勿論、精神力、いや、全ての能力が高い者でなければならない。
その中のほんの一握りが、最強への頂に登れる。
私は隣にいるダラカニへと視線を向ける。
このウマ娘は私が倒すべきウマ娘だ。この先に立ち塞がる障壁だ。
静かに身構える私とダラカニの二人、そして、その火蓋が……切られた。