遥かな、夢の11Rを見るために   作:パトラッシュS

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悔しさをバネに

 

 

 

 

 レースの後、不機嫌な表情を浮かべた私は怒りのぶつけ先が無く、近くにあった小屋の壁を思いっきり蹴り上げていた。

 

 物に当たるのは良くないのは知っています。

 

 本当ならあんにゃろうに一発グーパンしたかった。

 

 

「くそッ! ……負けた、あんなのに負けるなんて!」

 

 

 そう、私の力足らずがそもそもの原因だ。

 

 ここまで公式戦無敗、確かに凄いことだ。

 

 だが、自分の走りが思い通りにいかないとあんな風に負けてしまった。差を縮めることが出来なかった。

 

 芝が言い訳になんてなるわけがない、そんなのは二の次だ。

 

 私自身の実力、それがあれだっただけの話。

 

 

「あの……アフちゃん、大丈夫?」

 

 

 そう言って、私の背後から恐る恐る心配そうに声をかけてくるウマ娘。

 

 メジロドーベルさんだ。

 

 私はハッ! っとしたように後ろを振り返ると笑顔を浮かべたままこう話し出す。

 

 

「……い、いえ、すいません……少しばかり気が立っていたもので」

「ううん、いいの、アフちゃんの気持ち、私もわかるから」

 

 

 メジロドーベルさんは優しげな笑みを浮かべたまま、私の手をそっと握る。

 

 私の気持ち……、うん、はらわたが煮えくり返る思いです。誠に遺憾である、遺憾の意です。これはいかん。

 

 ムスッとしてる私にドーベルさんは慈愛に満ちた眼差しを向けてくる。なんかわかりませんが溶けそう。

 

 私は落ち込んだようにこう語り出す。

 

 

「……私の力足らずです……。……義理母に合わす顔がありません……」

 

 

 私は視線を逸らしながら絞り出すように声を震わせてそう語る。耳と尻尾はシュン……と項垂れてしまっていた。

 

 義理母の全てを否定されて、私は結果でもそれを訂正させる事が出来なかった。

 

 世界との壁、それを痛感した。

 

 併走してなければ分からなかっただろう、自分の力量、そして、今までに走った事のないターフの感触を把握出来なかったに違いない。

 

 

「うん……わかるよ、私も悔しい思いしたことあるから……」

「ドーベルさん……」

「でも、今日は本番じゃない、でしょ? 見返してやるチャンスはまだあるわ」

 

 

 ドーベルさんの言葉に私は目を見開く。

 

 そう、負けで終わりではない、負けた事こそ、価値があるのだ。

 

 悔しさ、己の力の足りなさを実感できた。

 

 何故負けたのか、どうすれば強くなれるのかもっと突き詰める事の出来るきっかけができた。

 

 

「それじゃ戻りましょ」

 

 

 そう言って、メジロドーベルさんは私の手を引いて姉弟子達の元に戻るよう促してくる。

 

 うん、やっぱりドーベルさんの手はあったかいなぁ……。

 

 ほら、みんなが大好きなヒヒ^~ンな展開ですよ、喜びなさい。え? もっと過激なのキボンヌですって? 

 

 普段から私の下着姿とか見ているんだから別に今更でしょう。というか半裸とか見てるじゃないですか、まあ、私が気にしてないだけですけども。

 

 そして、戻って早々なのですが。

 

 

「アフトクラトラスゥ! なんだあの走りはぁ! 鍛え直しだ! 来い!」

「ぴゃああああああ!?」

 

 

 首根っこを引っ掴まれて義理母からずるずると引き摺られて特訓に駆り出される事になりました。

 

 うん、知ってた。というかそのつもりだったんですけど何というかトラウマが……(ガクブル)。

 

 ほら、巨乳JKウマ娘が半泣きで助けを求めてますよ、誰か助けろ、いや、助けてください、なんでもしますから!(必死)。

 

 

「さあ! 走れ! 休んでる暇はないぞ!」

「イエスマムッ!」

 

 

 私はそこから、義理母にみっちりとしごかれました。

 

 まあ、練習内容は割愛します。何故ならば! もう皆さんはどんな練習をしてるかご存知の通りだからです! 

 

 芝に慣れるのも目的なんですけどね、ひたすら走ればそのうち慣れる、これは、かなり効果的だと思います。

 

 走りなれてない芝はやっぱり感触が違うのでね、あのアンポンタンをぶっ倒すにはやっぱり数をこなすのが1番です。

 

 

「……うん、タイムもだんだん良くなって来たな」

「いやいや、まだまだですよ、もっと短縮できます」

 

 

 走った後のタイムを計ってくれているナリタブライアン先輩は私のその言葉を聞いてニコリと笑みを溢す。

 

 向上心、これが何より大切です。

 

 非効率、合理的ではない、数より質、確かにそれもそうだろう。

 

 私はそれは重々承知です。ですから、私は質が高く、合理的なトレーニングをしつつ莫大な数をこなしているのです。

 

 あれ? 莫大な数をこなす時点で効率的ではないのでは? と思われました? 

 

 大丈夫です、私はタフですからね、何回戦でもバッチコイですよ(意味深)。

 

 

「妹弟子、併走しましょうか、まずはギアをどんどん上げていきましょう」

「ハァ……ハァ……、はい!」

 

 

 姉弟子との併走はやはり、身体に馴染みますね。

 

 本来の力を出しても問題ないのがやはり大きいです。とはいえ、もちろん身体には負荷を掛けてやるわけなんですけども。

 

 それから私は日が暮れるまでみっちりとトレーニングをこなすのでした。

 

 

 日が暮れて、ロンドンの街。

 

 地獄のトレーニングを終えた私はメジロドーベルさんと共に街を歩いていました。少しだけの自由時間ですが、せっかくロンドンに来たので気分転換にという感じでこうして観光をしているわけです。

 

 ロンドンの街並みはやはり良いものですねー、ワクワクします。

 

 まずはやはり、バッキンガム宮殿ですよね! それに、ビッグ・ベン! 

 

 なんかビッグ・ベンって聞くと魔術師が居そうだなーとか思っちゃいます。ロマンがありますよね。

 

 

「……んー、これがフィッシュ&チップス……」

 

 

 そして、何より初の本場のフィッシュ&チップスを食べれたことには感動しました。

 

 イギリスってメシマズみたいなイメージがあったんですけどね、意外といけます。モグモグ。

 

 それからセントポール大聖堂に、タワーブリッジ! 

 

 ロンドン・アイは外せません! 

 

 行きたいとこがたくさんありすぎて困るなー、うん、満喫したい(願望)。

 

 てな具合で、メジロドーベルさんといろんなところを見て回って、色々と楽しんでいたわけなんですけども当然、ナンパされました。

 

 

「ヘイ!」

「ほぇ……?」

 

 

 外国人の人に声をいきなりかけられた時はびっくりしましたけどね。

 

 しかも、外国人の方ってイケメンが多いじゃないですか、何故かカフェにいたドーベルさんと私が声を掛けられたわけですけど私英語はさっぱりでして(ポンコツ)。

 

 代わりにメジロドーベルさんが通訳してくれました。なんで英語できるんだろ? あ、そういえばメジロ家のお嬢様でしたね。

 

 話を聞くとなんとこの外国人のお二人、オックスフォード大学とケンブリッジ大学の学生さんだったことが判明しました。

 

 道理で爽やかなイケメンな筈ですよ。

 

 

「……ウマ娘に興味があるんですって、少し話したいそうだけどどうする? アフちゃん?」

「せっかくですから、良ければ話を聞きたいですね」

 

 

 というわけで大学生のお二人とお話をすることに。

 

 オックスフォードとケンブリッジってどんだけ頭良いんだろうこの人達。

 

 しかも、かなり紳士的というね、さすがイギリス、紳士な人が多い国です。

 

 まあ、私は英語はさっぱりだったんで通訳はドーベルさんにお願いしたんですけども、名前はそれぞれジョンとルーカスというらしいです。

 

 なんか頭の良い話と為になる話を二人と交わしながら、私達の話もそれとなく話しつつ次第に打ち解けました。

 

 それから、二人とフレンドになりました。

 

 その後、連絡先を交換したのちに別れることに、いやー、外国に来るとこういう出会いがあるから面白いですよね。

 

 後で聞いたんですけど、メジロドーベルさん曰く、私はめっちゃジョンに口説かれていたらしい。

 

 言葉がさっぱりだったんで、わかんなかったんですけども、そういや、それっぽい単語も言ってたような気がします。

 

 メジロドーベルさんは釘を刺しておいたと言ってましたけど何言ったんだろうなぁ。

 

 ロンドンにもケモナーって居るんですね。

 

 

「さあ、アフちゃん帰りましょ♪」

「え? あ、うん」

 

 

 そう言って、上機嫌に私に腕を絡めてくるドーベルさん。

 

 まさか、恋人とか言ってないでしょうね? この人。そんなこと言ったら貴女、私がそっち系の人って思われるじゃないですか! 

 

 いや、確かに好きですけどね? うーん、でも私はナチュラルな筈だから……うーん。

 

 

 私はしばらく考え込んでいたが、思考が停止したので考えるのをやめた。

 

 

 

 

【ウマ娘】アフちゃん応援死隊スレ

 

 

455:名無しに代わりまして観客がお送りします

アフちゃんの新聞見たか? なんだか不安なんだが……

 

 

456:名無しに代わりまして観客がお送りします。

アフちゃんのレースは毎回不安だろJK(主にウイニングライブ)。

 

 

457:名無しに代わりまして観客がお送りします。

前回のレースは安心だったゾ^~

 

 

458:名無しに代わりまして観客がお送りします。

ウイニングライブ弾けてない、やり直し(無慈悲)

 

 

459:名無しに代わりまして観客がお送りします

なんでや! アフちゃん歌上手かったやろ! 

 

 

460:名無しに代わりまして観客がお送りします。

アフちゃんの魅力は破天荒さだから……(悲しみ)

 

 

461:名無しに代わりまして観客がお送りします。

アフちゃんの魅力。

 1、ロリ巨乳

 2、すごくつおい

 3、ポンコツマスコット

 

 

462:名無しに代わりましてブライアンがお送りします。

それを挙げるなら作文用紙50枚は必要だろうが覚悟はいいか? 

 

 

463:名無しに代わりまして観客がお送りします。

!? 

 

 

464:名無しに代わりまして観客がお送りします。

!? 

 

 

465:名無しに代わりまして観客がお送りします。

草www

 

 

466:名無しに代わりまして観客がお送りします。

あ……ありのまま 今 起こった事を話すぜ! アフちゃんの魅力を語り始めたらナリタブライアンが降臨した! な、何を言っているのか(ry

 

 

467:名無しに代わりましてドーベルがお送りします。

はっ? 作文用紙50枚程度? 私なら小説にしてベストセラーにするけどね。

 

 

468:名無しに代わりまして観客がお送りします。

ファッ!? 

 

 

469:名無しに代わりまして観客がお送りします。

G1ウマ娘のお二人がこんなところで何やってるんですかねぇ……(呆れ)。

 

 

470:アフちゃんがお送りします。

……やめなされ……やめなされ……。

 

 

471:名無しに代わりまして観客がお送りします。

そして、最終的に本人が降臨してて草。

 

 

 

 この後、このスレは何故かお祭り騒ぎになりました。

 

 私の話題で何故こうなるのか、軽く開いてみっか、久しぶりにってウマ娘の板を開いて私のスレを見てみたらなんでこんなことになってんの? 

 

 ちなみにたまに私がこうして降臨するのでこの板の住人はみんな優しい。

 

 ごめんね、みんな、悪気はないんですよこの二人……、ただちょっとアレなだけなんで、え? 私が言うなって? そうですね(白目)。

 

 それから、私のスレで愛に満ち溢れた意味不明な大乱闘が勃発し、なんか訳がわからないうちに収束した。

 

 うん、アフちゃんねるは更新できないので、お詫びに近々皆さんの話し相手になってあげましょう。

 

 今回の件も含めてですけども(吐血)。


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