織斑一夏は逃げられない   作:ニジョー条

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戦闘時はカワカミン成分増し増しでお送りします


亮斗 vs セシリア(上)

―――月曜

 時は既に放課後。本日はオルコットとクラス代表を決める為、6時限目の終業チャイムが鳴るのと同時、真っ直ぐに第三アリーナに入り、更衣室でISスーツに着替え、

「遅い!」「遅いな」「遅過ぎる」

 ピットで待ち惚けを喰らっていた。どれくらいかと言うと、箒が呟いた一言に便して三段変化するくらいに。

 理由は極単純、ISの搬入が遅れているのだ。

 まあ、その間、俺はIS《白式》にインストールするプログラムの最終確認をし、亮斗は週刊ジャムプを読み、箒は仁王立ちで腕を組んで静かに苛立っていた。

 ……試合しない箒が苛立ってるってのもなぁ。普通、立場が逆の状況だろうに。つか眠い。

 この二日の総計睡眠時間が5時間しかなかったからだ。まあ、それでも眠る気が起きないのは、内心、この後のイベントを楽しみにしてたからだろう。

 ……眠いのに眠気が無いとはこれ如何に。

 

『お、お待たせしました二人とも!』

 

「っと、よーやくか」

「――後は実戦で、だな」

 山田先生の声がピット内に響き、目の前のシャッターが開き始め、其処から似た様な形の、しかし非固定浮遊武装の位置が、それぞれ両肩と背部の二機が姿を現す。

『コレが御二人の専用機、木場君の専用機《黒式》と織斑君の《白式》です!』

「やっぱ似た名前だよなぁ?」

「お前の機体の名前考えるのが面倒だったんだろ、束さんが」

 俺の言葉に二人が、あり得る、と呟きながら頭を押さえる。

 と、今度は姉さんの声がスピーカーから聞こえて来た。

『何、頭を抱えている。 さっさと纏え。――全く、こんな余興にアリーナを貸し切ったんだ。くだらんやり取りで時間を潰すなバカども。まずは木場からだ』

「うぃース!」

 そう言って亮斗が《黒式》の前に立ち、その身にISを纏う。

「ど、どうだ?亮斗?」

「んー、なんつーか、《打鉄》と比べると感覚の広がりがえらい違いだな」

 そうだろうな、と《白式》の前に立ちながら俺はそう心の中で言う。

 不特定多数の人間使い、誰もが平均的に扱えるのが《打鉄》や《ラファール・リヴァイヴ》と言った量産前提の機体なのに対し、専用機とは、文字通りその人専用に調整された機体なのだ。一応前者の機体も、乗る人に合わせてのバランサーや出力系の調整は出来るが、専用機と比べたら雲泥の差だ。

 ……と言うのが、エロゲ好き会長から教えられた事だったな。

 この二日の事を振り返っている間に俺もISを纏っていた。無数のパネルが表示される中、視線は武装覧に向けられ――ズキリ、と胸の中心が痛んだ。

 ……雪片弐型。雪片、か。

『二人とも装着したな』

 管制室からの姉さんの声で、意識を自身の内から外へと向ける。

「ウッス!」「はい」

 今は姉さんの影を気にする時じゃない。今は、目の前の戦いに集中するべきだ。

『事前に伝えてあった通り、まずは木場からだ。その後、10分の休憩を取り織斑がオルコットと戦う。そして最後に織斑と木場の計三戦を予定している。 何か質問は? あっても時間が無いから受け付けんがな』

「「「(じゃあなんで聞いた?!)」」」

『では準備に掛かれ。 篠ノ之は……今回だけサービスだ。 そのまま管制室まで来い。 織斑は公平を期す為、更衣室で待機だ』

 姉さんの言葉を合図に、俺達はそれぞれの場所へと移動し始めた。

 

 

 

 

「負ける事など許さんぞ、亮斗!」

 箒の遠回しな声援が聞こえる。

「へいへい、この一週間の訓練を無駄にするような試合は見せねぇよ」

「むっ、とと当然だ!」

「はは、……じゃあ先、行かせてもらうぜ、一夏」

「おう、ボロ負けして来い」

「言ってろ!」

 そう言い、射出用カタパルトに足を運ぶ事に、(木場亮斗)は感慨深い気持ちになる。

 ……始まる。

 約十六年。この世界で自分という存在を思い出してから約十三年。漸くと言った感じだ。

 自分は転生者だ。それも、俗に言う『神様転生』と言うヤツ。死んだ事に色々悩んだが、その事も『インフィニット・ストラトス(この世界)』へ転生させてくれると言う事と、転生特典をくれると言う事で割りきる事にした。

 俺が願った『特典』は2つ。

 一つは『原作に関わって行ける事』。これなら、あの天災(篠ノ之束)にも怪しまずにISに乗れると思ったからだ。それに、原作の女性キャラは美女・美少女ばかりだし、多少性格に難が有っても、それさえ何とか出来れば良い女になるからだ。

 もう一つは『戦いに関する才能』。コレは文字通り、戦いに関する事の才能だ。

 初めは『身体能力強化』とか『オリジナルIS』とか考えたのだが、もともと完璧主人公とか嫌いな性質だし、幾ら女好きだとしても、篠ノ之束あの性格は遠慮したかったので、変に目を付けられないこの二つにした。

それに、一から子供をやり直すなら、努力して体を鍛え、強くなる方が自分の好みだったからだ。だから二つ目の特典は、言わば“手に入らないモノ”を補う感じで頼んだのだ。

 

そして転生。

 

初めは色々苦労した。大人と子供では思考の違いもあるし、体も出来てないので、つい大人の考えで動かし体の節々を痛めまくった。後になって成長期に入ると、筋肉痛が無い日など無かったのも良い思い出だ。

……まあ一番苦労したのが、子供のフリだがな。

そんな事はさて置き、5歳の頃、俺は初めて原作キャラに出会った。その人物が箒と千冬さんだった。

出会った場所は、箒の実家が経営している剣道場。当然、狙ってやった事だ。嬉しい事に、箒とは『織斑一夏』と出逢う前だった。当然話しかけた。その後、周囲にトラップが仕掛けられる様になった。でも諦めなかった。

初めは余所余所しかった箒に何度も声を掛け、トラップが悪質化し、次第に一緒に打ち合うようになり、トラップが減り、道場が無い日も一緒に遊ぶようになった時、千冬さんと束さんに、某エイリアンの様に連れられて来た一夏と出逢った。――確か、小学校に上がった直辺りだった気がする。

 アイツとの出会いの印象は、『イケメンの将来を約束されたショタ』『良く笑ってる奴』と言う印象だった。通ってた生徒の女性陣が構うようになり、ソレに嫉妬した幼稚な男の子陣にイジメられ、ハブかれ、更にソレを見た女性陣が一夏を構うと言った悪循環の中、アイツはニコニコと笑いながら、

 ……ただ黙々と、自分の体を苛めるように基礎だけを続けていたんだっけ。

 明らかに異常だった。しかもソレを数名――箒と束さんのお父さんの柳韻さんに、千冬さん、束さん以外に知られない様にしていたのだ。俺が気付いたのは、単に一回戦ったからだ。

 ……戦った理由は、まあ、ただの嫉妬だ。

 後から来たのにあっという間に仲良くなって、俺でも2ヶ月ちょっと掛かった箒の笑顔を向けられるようになって、――前世でも出した事が無かった、殺意と言うモノを向けたのだ。

 だから、行動は早かった。

 まず男子陣と結託し、教師陣にバレないように小学校の体育館の周囲を見張らせ、一夏が何時も持っていた小物を入れているケースを盗みおびき出し、稽古と称してアイツをボコる。という段取りだった。

 初めの男子陣との結託は上手くいき、対戦する相手決めも俺に決まった。その次の小学校の体育館を利用するのも、戸締りが甘い教師の日を選択して何とかクリア。一夏を千冬さんにバレないようにおびき出すのも成功した。

 体力の差は無し、使う木刀も言い訳の為同じ物。剣道の経験で言えば、俺の方が僅かに早かったぐらい。だが俺には、転生特典で『戦いに関する才能』と言う力があった。だから上手くいったと思った――最後の最後、俺との一戦以外は。

 

 互角だった

 

 試合内容は、終始俺が攻めでアイツが防御一辺倒だった。なのに、仕留めきれなかった。何度打ち込もうとも防がれ、防ぎきれなくて体に打ち込まれ、痣ができ、斬れて血が出てこようとも、アイツはずっと俺を見続けていた、

 ――嗤った顔で。

 その時悟った。コイツはずっと笑っていたんじゃない、この顔(嗤った顔)しか出来ないだと。それ程の出来事がコイツに遭ったのだと。そして、俺の持つ“ちっぽけな力(転生特典)”に追い付ける程、――血が滲む所じゃない、それこそ体を壊す程の鍛錬を自分に課していたのだと。

 それに気付いた瞬間、なんだかあまりにも自分がしている事が馬鹿らしくなった。

 ……コイツは“主人公”じゃない、って理解しちまったんだよなぁ。

 だから、この茶番は終わりにしようって思って構えを取り直し、アイツも構えを取り直し、いざ――、

 ……って時に、しびれを切らした低レベル精神組が木刀持って乱入してきて、俺と一夏が即席コンビ組んでそのまま大乱闘。一夏の帰りが遅い事に気付いた――って言うか、お腹が空き過ぎて苛立った千冬さんに制圧されたっけ。

 懐かしいが、改めて思い返してみると奇妙な縁だ。戦いから生まれた友情なんて、なんてジャンプ臭漂う関係だ、と亮斗は思う。だが、

 ……アイツとつるんでると、飽きねぇし。

 だからこそ、これからもバカやって、面倒事押し付け合って、頼って頼られて、――これからはISも絡んだぶつかり合いも増えて来るのだ。

 ……そう言えば、あの時の決着、結局勝負付かずのままだったんだな……。

 そいつはいけない。だからまあ、取り敢えず、

「――まずは目の前のケリを付けてからにするかね。なあ? セシリア……!」

 ピットから飛び立ち、不慣れな飛行でセシリアの前まで飛ぶ。

「………………この一週間、ずっと思っていたのですが。――貴方方の話しの展開が理解出来ませんわ!」

 まあそうかもな、と亮斗は思う。

 ……寧ろ、一週間で会話に混ざって来れるのほほんさんの方が異常……!まさに『女子高生は異常』!!

 そもそも学園が異常だった、と思い出し。思考を冷静にする。

「さてと。……悪かったな、女性との逢引なのに遅れて来ちまって」

「……そうですわね。 時間も押している事ですし、早速ダンスを始めましょうか? ――もっとも、私の一方的な輪舞曲(ロンド)で終わるかもしれませんが」

「クククッ、言うなぁ。 なら、俺の演武とで舞闘祭とでも行くかい……?」

『両者共に良いようだな?』

 俺達の口上にケリが付くのを見計らった様に、耳元に管制室から通信が届く。

「私の方は何時でも」

「俺も良いぜ」

『よし! ――ではこれより、一回戦、オルコット対木場を始める!』

「その真新しいIS、蜂の巣にして差し上げますわ!」

「やってみろよ、英国淑女!!!」

 

『――始め!!』

 

 試合開始の合図と共に、両者が動いた。

 

 二人が最初に取った行動は、攻撃と移動に別れた。

 セシリアは己の領域内から、得意武器であり、《ブルー・ティアーズ》の主力武装の大型レーザーライフル『スターライトmk-Ⅱ』をコール。同時、亮斗へ向けて構える。

 一方、亮斗は武器を呼び出さず、猛スピードで、ただ真っ直ぐにセシリアに突っ込んだ。

「速い!?」

「うお、危ね!?」

 それに気付いたセシリアがすぐさまトリガーを引き、銃口からレーザーが放たれる――が、照準が定まっていない攻撃だったのと、亮斗も回避の動きを取った為に、あっけなく避わされる。

「っく、今度こそ……!」

 外した。

 ただそれだけの事なのだが、自尊心の塊であるセシリアにとっては、『ド素人』『男性』『入学初日から散々コケにしてくれた男』である人物に初撃をかわされたのは、プライドをいたく傷付けられたも同然なのだ。

 その屈辱を晴らさんと、さらにトリガーを連続で引くが、

「ははっ! どう、したよッ! 当てる気あんのかっ!?」

 全て避けられた。――いや、シールドエネルギーは削れているので、当たってはいる。ただクリーンヒットは無いだけだ。

「っく!何故当たりませんの?!」

「自分で、考えろよッ、代表候補生!!」

 苛立つセシリア。対する亮斗も煽って入るが、心臓の鼓動は速く、内心では物凄く冷や汗を掻きまくっていた。

 

 そもそも、なぜISに関する素人の亮斗がセシリアの狙撃を避けられるのかと言うと、亮斗の持つ『戦いに関する才能』だ。その“才能”が、最初の行動でセシリアの感情を揺さぶり、狙撃の狙いが付き易く、かと言って近づき過ぎない微妙な距離での行動を心掛け、更に常にセシリアの正面に立ち、

 

 ……見える見える、流石“ハイパー”の一文字が付くセンサーって事か……!

 ハイパーセンサーを最大望遠にし、セシリアの指の動きを常に視ているからだ。

 

 

―――管制室

「――と言う事だ」

 先程までの説明を、千冬が語った。もちろん転生だとか、転生特典だとかは知らないので先天的なモノと言う説明だったが、あながち外れても居ない説明だ。

 対して、それを聞いた二人の反応はと言うと、

「はぁ~凄いですねぇ、木場君」

「ふん、亮斗ならまあ確かに出来ない事も無いと思ったがな」

 一人は素直な関心。もう一人は微妙におかしい日本語だった。

 ……心配なら、素直に態度に出せばいいだろうに、箒。

 千冬にはバレバレだった。

「でも、何で木場君は武装を展開しないんでしょうか……?まさか、武装の展開の仕方が分からない?」

「なっ!ちふ――織斑先生!亮斗にアドバイスを」

 箒の言葉を、睨む事で止める。山田君の懸念も無い訳でも無いだろう。事実、搭乗回数二回では、幾らサポートシステムが起動していても武装展開に時間が掛かる事ぐらい分かっている。

 だが、違う、と千冬は判断している。

 ……アイツの機体は、まだ一次移行(ファースト・シフト)すらしてない。

 最適化処理を終えた状態と、終えていない状態ではかなりの差がある。もし、今の段階で武器を振り回していたら、一次移行をした後に感覚のズレが起きる。そのズレは戦いにおいて決定的な隙となる。

 それ以外にも、ISの動きに慣れる事と、戦闘勘を養う事も含まれてる事だろう。

 ……まあ、一番初めに考えられるのが、束が一次移行しないと武装展開出来ないようにしたか、だな。

 身内が敵と言う状況も中々無いだろう。だが、と千冬は心の中で付けたし、

 ……出し惜しみは止めておけ、オルコット。貴様の目の前に居るのはまぎれもなく戦士だ。

 そう思っていた時、画面の向こうの戦場は動きを変えた。オルコットが、機体の非固定浮遊武装の下側に付いている武装を分離したのだ。

「イギリスの第三世代IS《ブルー・ティアーズ》。最大の特徴は、名の由来にも成っている特殊兵装『BT兵器』です」

「素直にファンネ」

「ソレ以上、言っちゃダメですー!」

 山田君にダメ出しされたので言い留まったが、実を言うと、IS委員会の議員達間で水面下の話題になっているのだ。

 ……イギリスはこれから先、SEED系に行くのかOO系に行くのか、とな。

 割とどうでも良い事で盛り上がってるIS委員会は、本気で大丈夫なのか不安になる。

「???」

 そして、隣で疑問顔の箒に少し癒された。

 ……ま、すぐに染まるんだろうな。

 正面モニターに映る光景を目にしつつ、その実、試合時間を見る。試合開始から15分は経過している。

 ……そろそろか。

 そう思ったと同時、モニターに映る木場が勢いよく啖呵を切り、ISがその想いを反映するように姿形が変化した。

 

 

 




誤字、脱字、コレおかしくね?って部分があったら御一報をヨロ――Death!

――本日のあとがき雑談コーナーは営業を休止しました(?)――
2条「もうあれだ、『ボクもう疲れたよパトラッシュ』状態だ。眠眠打破でも防げないぞ」
KIBA改めキバ「お前、消えるのか……?」
2条「死んでねーよ。でもまあ、布団に入って5秒で昇天できる自信がある」
1夏「のび太君よりは遅いな」
DAN「つーか結局ダベってんじゃん」
たばね「それより早く私を出してよー!」
全員「お前は出るな!」
たばね「だが断る!」

 結局gdgdなので強制カット
2条「下は今月中に投稿出来たら良いな?」
1夏「疑問形か」


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