―――試合の翌日
「――と言う事で、一年一組のクラス代表はセシリアさんに決まりました~、ハァ……」
山ちゃんがそう宣言して溜息を吐き、クラスの約全員が戸惑いの声を上げ、一夏がガッツポーズを取るのを、亮斗は苦笑しながら見ていた。
だが、一番困惑しているのは当のセシリア本人だった。
「あの、質問……と言いますか、疑問があるのですが?」
「はいー?何ですかぁ……?」
セシリアが手を上げ、山ちゃんが間延びした声で応じる。つーか、その態度は教師としては駄目じゃないだろうか……?
「何故私なのでしょう?確か、昨日の戦績は全員一勝一敗。こういった場合、今度はクラスでの投票ではないかと」
普通はそれが一番最初にくるのだが、ISを扱うと言う特殊な学園事情と、セシリアが千冬の精神を煽った事による、えらく個人的な事な理由から来るものだったりする。
「説明しよう!」
セシリアの疑問に、眼鏡を掛けた一人の生徒が答えた。白の制服を着た男子生徒。つーか一夏だ。
「あの、一夏さん……?何故メガネを掛けているのでしょうか?」
「いやな?最近になって少し吹っ切れたんで、周りに居ない解説キャラでも目指そうかと思って」
ちなみにあの眼鏡、昨日売店で購入するのを見た。伊達メガネらしい。
……そう言えば、一夏のルームメイトって更識簪さんだっけ?なら仕方ないな。
アイツは『属性:妹』持ちの娘にはかなり弱い。どれくらい弱いかと言うと、友人である
……つーか、日常的に節約を心がけてたみたいだから気付かなかったが、中学生にしてはかなり金持ってるよなアイツ。
それ以外にも、結構兄・姉持ちの娘(時々ショタ系の少年)には懐かれていた。
まあ、それが恋愛感情じゃなく、『頼れる兄』ポジションと言う所が“原作一夏”と同じようなフラグブレイカーっぷりだが。
「――と言う訳だ」
何時の間にか一夏の説明が終わったので話を纏めると。
一つ、俺と一夏は推薦組。対するセシリアは自分こそがクラス代表に相応しいと豪語した、言わば自薦組。
……言葉には気を付けようって事だな。
一つ、俺と一夏のISは中破と大破。対するセシリアのISはパーツを交換すれば早期復帰が可能な機体。
……こればかりは突如現れた機体と、国が関わった機体の差だ。図面が無い。
一つ、やっぱり強い人がなってくれた方が良いっしょ?
……学食の食券が手に入れられるチャンスが増すしな。
以上の3つ目の理由を千冬さんと山ちゃんに説明して、反対意見も出なかったようなので押しきった。唯一気がかりなのは、千冬さんが反論の一つも出さないで許可した事だ。
……なんかありそうだなぁ……。
◆
一夏の説明を聞き、セシリアは思案していた。
クラス代表。これになる事が出来れば、他の娘達と違い早い段階で試合に出場でき、『セシリア・オルコット』『イギリスの代表候補』『第三世代ISブルー・ティアーズ』と言った“名”を売る事が出来る。
昨夜、本国に連絡を取った所、サラ先輩の言った通り代表候補生、相続権の保障と言った案件は“一考の余地あり”と言う沙汰を貰った。
従者であるチェルシー・ブランケットにも家の事を尋ねると、「企業や政府の方々から遠まわしに仕事が減りますと言われましたが、オルコット家に関しては何も問題はありません。ええありませんでしたフフ……」との報告を貰った。最後の笑い声はなんですの。
つまりは評価が下がったが、現状に関しては変化なしだ。
……言い変えると、今後何もなければ“そう言う事も在る”と言う事ですわね。
政府の思惑は、コレを期に二人の内のどちらかと積極的に絡、――はしたないですわ! 取り敢えず親密な関係を結べ。あわよくば連れて帰って来い、と言ったところだろう。言われなくとも、お二方とは親密な関係を築かせて貰うつもりだ。
……ええ、出来れば親密!親密な関係が望ましいですわ!
取りあえず落ち着こう。
クラス代表をやる事には異存はない。寧ろ望む所だ。クラスの娘達からも、何でか知らないが受け入れられている。
ですが、
「その……私で宜しいのですか?私自身では亮斗さんか一夏さんのほうが良いのではないかと考えているのですが」
たった二人しかいない男性のIS操縦者と言うこともあるが、好きな殿方にもっと輝いて欲しいと言う願いもある。それに同じ専用機持ちと言うことで、御二人の内どちらかと二人っきりの放課後授業の予定もあったがパーだ。
……まあ、輝きすぎて他の女性が惚れるかもしれませんが、お二人と結ばれるのは私です。今のところ敵は亮斗さん狙いの篠ノ之さんだけですし。
「「面倒だからパス」」
「あ、はい」
そう言えば、御二人ともご自身で代表になろうとした訳ではありませんでしたわねー。
「では反対意見も出ないようなので、改めまして一年一組のクラス代表はセシリア・オルコットさんと言うことで――――はぁぁぁ、良かったぁ。また揉め事とか起きなくて」
山田教員がなにかごにょごにょと言っていたが無視。ただお疲れさまでしたとだけ心の中で労っておく。
周りからバラバラなタイミングで拍手が送られ、殿方二名がガッツポーズをし、
「よくやった亮斗!!」
「ったりめーだ!もっと褒めろ!」
……そんなに面倒でしたか。
嬉しさ半面、御二人が活躍できる場と二人っきりの放課後授業は諦めるしかない。別の方策を考えなければ。
「残念だがソレはない」
織斑先生が入室早々、そんな事を言い出した。と言うかタイミング良すぎじゃありませんか……?
「千冬姉!頭がおか「それ以上言ったら縦だ」しくはないので黙りまーす」
手慣れてますわねぇ。やはり織斑先生のような方でないと一夏さんはゲット出来ないと言う事ですか。見習わなければなりませんね。
「それで、先ほどの発言はどう言う事でしょうか?織斑先生」
「ああ、そうだったな」
私の問いに、織斑先生は教壇に立つ。
「まあ簡単な話なんだが、IS委員会から今回の件を報告したら、『男性操縦者二名はなるべく多くISに乗せて経過を報告するように』、との返答があった」
「えっと、つまりその……」
「ああ、ISを使用する行事にはよっぽどの理由がない限り強制参加だ。ぶっちゃけ客寄せパンダとモルモットだな」
お二人をちらっと見れば、何か悟ったような表情をしていた。
◆
……ああ、うん。何かしてくるだろうなー、とは思ってたが。IS委員会かー。
「首尾よくいかなかったな」
「流石姉さん姉さん流石、としか言いようがない」
亮斗がこっそり話しかけてきたので言い返し、俺も愚痴る。
達観している俺たちを他所に、姉さんへの質疑応答は続く。
「先生!じゃあ来月のクラス対抗戦で、二人のうちどちらかが優勝した場合の食券はどうなるんですか?!」
「優勝は優勝。同じように扱うとのことだ」
ある者はガッツポーズをし、ある者は拳をグッと握り、ある者は声に出して喜んだ。
「頑張ってね!織斑君!」
「木場君も負けちゃ嫌だよ!」
「オルコットさん!イケるイケる!」
「「「欲望に忠実だな!」」」
『いやぁ……』
オイ、そこは照れる場面じゃないぞ。
「おりむーがんばって!」
「よぉし!お兄さん頑張っちゃうよっ!」
「お前は単純だな、一夏……!」
亮斗が何か言っているが、妹成分満載ののほほんさんに応援されたとなれば、もう優勝狙いしかない。
「さて連絡事項等言い終わった。授業を開始するぞ」
『はーい!』
姉さん改め織斑先生の号令に、全員が返事を返す。
そして始まる授業、――に意識を向けながらも頭の中では別の事を考えている。それは更識さんの事。
……一カ月ちょっと、か。専用武装は無いにしても、機体にだけ集中すれば間に合うか……?
ちょっとだけ想像してみる。
鋼の鎧を身に纏い、必死に戦いながらもどこか楽しそうな笑みを零し、アリーナの上空を舞う更識さんの姿。対戦相手は「簪ちゃんにヤられるのもまた至高!!」と笑顔全開で攻撃を当たりに行ってる我らのエロゲ好きシスコン生徒会長。
……うん、まあシスコン会長の事はともかく、良い笑顔の更識さんは見たいな。
クラス対抗戦までのスケジュールは大体埋まった。
あとがきこぅなぁ――は本日休業
全員「おい!!」
誤字、脱字、コレおかしくね?って部分があったら御一報をヨロ