織斑一夏は逃げられない   作:ニジョー条

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原作一巻開始





入学。視線って重圧になると知った日

―――4月7日

「「「「(じーーーーっ)」」」」

「「…………」」

 圧倒的戦力差、と言うのはまさにこういう事を指すのだと、実体験して初めて分かった入学式の今日。場所はIS学園1年1組。クラス比は実に2対28。女が28で、男が2だ。

 その女性陣が見る場所は2ヵ所。

 一つは教室の真ん中の座席で伏し、視界から強制的に周りの風景をシャットアウトした“世界初の男性IS操縦者”の称号を手にした木場亮斗。

 もう一つは、教壇の正面の席に座る、“世界で二番目の男性IS操縦者”の称号を(不本意ながら)手にした、俺こと織斑一夏だ。

「「「「「「(じーーーーーーっ)」」」」」」

「(さっきより増えたな)」

 入学式はとっくに済ませ、現在は一時限目、担任の先生を待つ時間だ。

 俺と亮斗は、朝の人の視線が少ない時間帯に学園に登校した。その方が人に絡まらなくて良いと思ったからだ。――が、どうやらヒトの好奇心とは抑えられないモノの様で、好奇心旺盛な女子生徒(中には教師も入ってたが)は俺達のクラスを調べると、教室に入らずとも廊下でひきりなしに――それこそ珍種を一目だけでも見ようとする客の様に――じろじろと見て、挙句の果てには写真を取る者もいた。

 それ“だけ”ならばまだ良い方だ。中には雑誌社に売ろうとしたり、勝手に写真集とか作ろうとしたり、どっちが受けだ攻めだとか考えるのだ。

 ――マジ止めて欲しい、特に最後の。

 まあ今はもう授業時間内のなので、廊下には誰も居ない。今はクラスの女子の視線だけだ……それでもウザいレベルだが。

 ちなみに、教室に入り早1分で亮斗は机に伏した。

「皆さん、ご入学おめでとうございます」

 教室のドアが開き、一人の女性が入って来る。

 背丈は150後半程で、緑色のショートボブヘアーの女性だ。教師と言う事は、少なくとも二十歳は越えている筈なのだが、低い身長に童顔で、私服に眼鏡を掛けた姿は中学生、もしくは高校生と見間違えそうな程だ。 ただある一点だけ、

「(デカイ)」

 其処は見事に育ったようである……御胸様が、だ。おっと!身長の事を述べたので隠しようが無かったぜ!

 その女性が教壇に立つと、その横に空間ディスプレイを開き名前を表示する。

「私はこれから3年間、皆さんの副担任を務めさせていただきます。山田 真耶(やまだまや)です」

「「「「「「(じーーーーっ)」」」」」」」

 意気揚々と自己紹介する可愛い系女教師の山田先生だが、聞き手側である生徒達はそんなの知った事かと言わんばかりに、視線は俺と亮斗に向いたままだった。

「(……威厳無いけど教師なんだから、少しは視線を向けてやれよ)」

 そんな事を考える俺自身、視線は教壇では無く、一週間ほど前に学園から届けられた、手元の分厚い教科書『ISの基礎理論』を読んでいるが。

 昔、束さんの手伝いで知っていたので流し読みしていたが、後半になるにつれて此処十年程で新たに判明した能力なんかも載っているので、非常にタメになる。

「え、ぇえっと、今日から皆さんは、このIS学園の生徒です。この学園は全寮制で、放課後も一緒に過す事になりますので、仲良く助け合い、楽しい3年間にしましょう!」

「「「「「「「「「じーーーーっ」」」」」」」」」

「すぅ……、すぅ……」

「ぅう……っ」

「(哀れな)」

 必死なのは分かるけど、それでもクラスメイト達の関心は俺たちに集中してるようだった。……うん。山田先生は頑張ってるよ?でもまずは、全員の視線を自分に向けさせないと、俺も手元から顔を上げられないんだ、だから泣かないで!? あと亮斗、テメェ寝てんじゃねえよ!!

「じゃ、じゃあ自己しましょうッ!出席番号順に、まずは「あ」行の相川さんから!」

「え?……あ、はい、えーっと相川清香です。出身は――」

 こればかりは無視する訳にもいかず、呼ばれた生徒は順々に自己紹介してく。これには功を奏したのか、全員の視線が俺達から視線が逸れた。あと山田先生が涙目から戻った。

 ――が、実は問題の先送りだった事を俺は気付いている。

「はい有難うございます!……じゃ、じゃあ次ぎはお、織斑君。お願いします」

「……はい」

 流石にコレばかりは無視する訳にはいかず、教科書を閉じ立つのと同時、先程以上のプレッシャーが圧し掛かった。

「(ぅおう視線が凄い。マジ穴が空きそう)織斑一夏です。何故かISを動かせる二人目の男性操縦者です」

 無難な挨拶と言うのなら此処で終わりにすれば良いのだが、周りからは、無言だが『もっと!』と催促が来ている。

 ……良いだろう、俺の体を張ったボケを活目するが良い!!

「好きな事は体を動かす事、ボケる事、パソコンの前に陣取る事。嫌いなのは人の話しを聞かないとある女性。趣味はネットサーフィン、読書、料理。男友達は多い方で、彼女は今の所なし。ちなみに童tぃたぁッッ?!」

「あがぁーーッ!?!?」

 最後まで言う前に、側頭部からの鋭い衝撃が来た。ついでに後ろ側から亮斗の叫びも聴こえた。

「そこまでにしておけ盛年(せいねん)。それと起きろ木場亮斗、授業中だ」

 叩いた人物は、この学園の教師にして、俺の姉『織斑千冬』だった。……そう言えば、さっき山田先生は副担任って言ってたな。と言う事は、もしかして姉さんが担任って事か?

「「「「「「「「「「きゃあ~~~~!!!」」」」」」」」」」

「「うおっ!?!?」」

 四方八方から音響兵器が発生した。マジ耳が痛てェ!!

「本物のブリュンヒルデ!生千冬様だわ!!」

「生きてて良かった!!」

「私、此処に来るために沖縄から泳ぎと徒歩で来ました!」

 最後スゲーな、アスリート目指せんじゃね?

「はぁ~、全く。毎年毎年、私の受け持つ奴等は信者ばかりか」

 そりゃあご愁傷様です。けどまあ、『モンドグロッソ』を見てISに憧れた子達ばかりだから仕方ないんじゃね?ある意味生きた伝説だし。女性としてもスタイル良いし、美人だからモテるしな。――家だと、社会に疲れきったOLみたいだけど。

「あだぁぁぁッッ?!」

 乾いた音が俺の側頭部から出た。

「い、イテェぜ姉さんッ!今にも脳が二つに分かれそうだッ!!」

「馬鹿な事を考えるなよ、愚弟? あと、脳は元々二つに分かれているし、側頭部だから割れる訳が無い。それと、学園内では『織斑先生』だ」

「流石だね☆ちーちゃンガッッ!!!」

 今度は木場が束さんの真似をして叩かれた。

 ……バカめ!今束さんネタは藪蛇所か逆鱗だぞ?言うつもりは無いが。

「そのふざけたしゃべり方は余計イラつく。即刻止めろ――次は“縦”だ。分かったな?木場、織斑……?」

 マジで殺す気の目だ!!

「「Yes,ma’am!織斑先生!!」」

 俺と亮斗がハモって答えた。しかも、立ち上がり敬礼もしている。

(――完璧だな俺達!)

(――当然だろ?義兄弟よ!)

 アイコンタクトもバッチリだ。

 

「「「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」」」

 

 クラスメイト達からは、唖然とした表情で見られていた。

 ……むう、まだ俺達のノリには乗って来れないか。

「……まあ良いだろう。座れ」

「「ハッ!有難うございます!!」」

 危ねぇ危ねぇ。縦はマジ危ねぇって。

「すまなかったな山田先生、SHRを押しつけてしまって」

「い、いえ!私だって教師なんです、これくらい出来ませんと!」

 半分以上出来てないがな。現に自己紹介も俺で止まってるし。

「織斑先生こそ、お疲れさまでした!」

「ああ、此処からは私が引き継ごう」

「はい!」

 む!山田先生から、何処となく百合臭が漂うぞ?……やっぱアレか?敷居の高い女子高特有の姉妹関係でも目指してんのか?お勧めはしないが、姉さんが幸せなら俺は反対しないけどな。

「さて、入学おめでとう諸君。私がこの一組の担任、織斑千冬だ。私の仕事は、諸君等新人(ルーキー)を1年で使い物にする事だ。私の言う事は良く聞き理解しろ、出来なくとも出来るまでやってもらう。分かったら返事をしろ、分からなくとも私の言葉には返事をしろ。良いな」

「「「「「「「「「はい!!」」」」」」」」」

 鬼教官の言葉にも、元気良く返事をするクラスメイト達。

 その言葉に、満足げに頷く姉――いや、織斑先生。だから殺気を放つのを止めて下さい。

「今日だけは1、2時限をHRとして使って学園の規則や行事、その他色々な事を教える。3時限目から普通の授業を行っていくから、全員、進んで自薦しろ」

 ああ、そう言う所は普通の学校と変わりないんだな。でもまあ入学初日から授業をするのは、やはりというか特殊な学校なだけある。

 

 

 

 

 

 

―――時は進み、1時限目終了

 やはり特殊な学校なだけあった、と言っておこう。部活動とかは“割りと”普通なのだが、決まり事やら、制約などがかなりあった。

「流石はIS学園、と言えば良いんだろうな」

 亮斗が俺の席までやってきて駄弁る。

 まあその意見には同意しよう。何だ校則が55項目もあるって。しかもその中に国連がどうの、各国の政府がどうのって……校則に国の事情が入って来るとかマジパネェ。

「ちょっと宜しくて?」

「「ん?」」

 声を掛けられた方向、左側に立っていたのは金髪で、先の部分だけ緩めの内巻きヘアーの女子生徒だった。

 ついでに、此方に声を掛けようと席から立ち上がった幼馴染の少女が居たが敢えてスルーだ。

 ……相変わらずタイミングの合わん娘だ。

「それで、俺?それとも俺達?に何か用か?ええっと――」

「まあっ!私の名を知らないと?このイギリス代表候補のセシリア・オルコットに声を掛けられたのですから、光栄に思いなさいな!」

 コイツ、女尊男卑の間違った思想のバカ女か。

 即座に亮斗とアイコンタクトスタート。

 

(――どうする?叩く?ボッコ?この一言だけでツッコミ所が一杯あるんだが)

(――久しぶりにヤルか)

 

 一致団結だったようだ。

「いや、君の名前聞いた事ないし。1時限目の自己紹介、俺の番で終わったじゃん」

「その歳でボケか……大変だな」

 先制で俺が入れ、亮斗が続く。

「な――ッ!」

 驚き、言葉が詰まるのを尻目に、今度は亮斗から口を開く。

「そもそも元々ISに関わってない男なんだから、代表候補まで把握してる訳無いじゃん」

「少し考えれば分かりそうだけどな」

「そ、それは――」

 まだまだ俺達のターンだ!

「確かに代表候補の人ってCMとか映画出演とかモデルもするらしいけど、アンタの事見た事ないんだけど?出た事あるのか?それも全世界規模のな、国内しか放送してないなら知らないの当たり前だし」

「あ、あの……」

「ついでに国家代表でもないのに、代表候補程度で偉そうにしない方が良いよ?――器の程が知れるから」

「うっ……!」

「あとマナーが成ってないな。知っている前程だとしても、初対面同士なんだから、まずは普通に挨拶だろう。常識だぞ?」

「はい……」

「あと髪の巻きが足りない。もっと巻けよ」

「そ、そうでしょうか……?」

「長手袋も無いな」

「長袖では目立たないと思うのですが?」

「目にしいたけ模様入れろよ」

「そ、それは――って最後のは個人の自由でしょう!!」

 チッ、掛ける言葉を間違えたか。

「それで、……セシーナ・ウォルコットンさん?」

「セシリア・オルコットです!何でのすの、その化粧品会社が出した化粧道具みたいな名前はッ!?」

 おお、コイツ、ツッコミレベルが意外と高い!

「ならセシリーはどうよ?」

「……良いニックネームですけど、その名前、私には荷が重すぎる気がします」

 今度は亮斗が進めるが、やんわりと断られた。まあいい判断だと言わせてもらう。

「じゃあ~セッシーはどぉ~?」

 すぐ近くから、一人の女子生徒が間延びした口調で混ざって来た。

 制服の袖を長めに改造した、あずき色のセミロングをツーサイドアップヘアーにした少女だ。印象としては“ゆるい(漢字ではなく平仮名で)”だ。俺が見ているのに気付いたその子は、にへらぁ、と笑顔を見せた。

 ……何この子、物凄くマイナスイオンが溢れてるんですけど?

「私、『布仏 本音(のほとけ ほんね)』ね~。よろしく、おりむー」

「お、おりむー……? いや、まあ呼び易いようで呼んでくれて良いけどさ……のほほんさんで良いか?」

 俺も束さんの事は言えないな。名前よりニックネームの方が長いってどうよ?

「お~! おりむーは意外とネーミングセンスがあるね~」

「のほほんさんも、解り易いニックネームを付けるの上手いよな」

「じゃあ俺なんかどう?あ、俺は木場亮斗な」

 のほほんさんとの話し中に、亮斗の奴が混じって来た。オルコットはガン無視か、スルーして対応するようだ。――まあ気持ちは分かる。

「ん~、じゃあ“りょっちゃん”」

「「「「ぶッッ!!」」」

 二人――いや、箒も含め三人で噴き出した。

 りょっちゃん!りょっちゃんだとよ!!束さんと同じネーミングセンスかよッ!

「良かったな、りょっちゃん!」

「良くねえよ!」

 亮斗が憤慨する。

「――ふ――」

「「「ん?」」」

 声の漏れた方を見ると、肩を震わしたオルコットの姿。

 ――あ、すっかり忘れてたな。と言うかコレは来るか?耳塞いどくか。

「――ふざけないで頂きたいですわッ!!」

 予想通り爆発した。

「何なんですの!? 先程から私を無視しておいて、我慢がなりませんわッ!! あの《ブリュンヒルデ》様の弟であり、朝から教書を読む勤勉で、其処らにいる卑しい男性よりもマシな方だと思っていましたのに!――なんて最低な屑ですの!」

 あ゛? コイツ、自分から非常識な声のかけ方をしたのもう忘れてんのか?それに変な理想押しつけんな。あと、『最低の屑』は別の人物だ。俺は催眠携帯なんか持ってねえよ。

「(おい、一夏)」

 罵詈雑言を言いまくってるオルコットを他所に、亮斗が小声で話しかけて来る。

「(なんだ亮斗。俺、結構頭にキてんだけど?)」

「(抑えろ一夏。時間見ろ)」

 時間?――あ。

「おい、オルコット。戻れ」

「戻れ!?この私に、イギリス代表候補であり、第三世代機である《ブルー・ティアーズ》を持つこのセシリア・オルコットに、男如きと机を並べ勉学に励むのが嫌なら母国へ帰れと言うのですかッ?!」

 いや其処まで言ってねえし!――って来たぁ!

 その人物が教室に足を踏み入れるのを見たクラスメイトは、一斉に自席へと戻る。――1人の女子生徒を除き。

「おい」

「今度は何ですの?!私はこれか、ら……」

 オルコットの声が、段々と萎んで行く。それはそうだろう。なにせ、不機嫌そうに振り返った先に居たのは、出席簿(エモノ)を持って、自らの肩を軽く叩いていたねe――織斑先生なのだから。

「お、織斑先生……えっと、何かご用でしょうか?」

「用か、ああ確かにあるな。――オルコット」

「は、はいッ!」

 たった一声掛けられただけで、オルコットが背筋を正し、――顔をほんの少し赤らめて織斑先生を見る。

 ……いやいや、何で顔赤らめてんだよ!?

「休みの時間をどう過ごすかは個人の自由だ。――だがな、大声を上げて騒ぐとなると話しは別だ」

「うっ……!」

 おお、オルコットがヘコんだ。

「それと、お前はイギリスの代表候補だったな?お前の態度や生活、他者とのコミュニケーション能力は少なからず自国の風評へと響く。よく覚えておけ」

「で、ですが名を弄られた上に、あまつさえ話しの最中に他の方との話に夢中になられたのですよ!?」

 さっさと本題に入らないのが悪いんじゃね? でもまあ、無視したのは悪いとは思ってる。予想以上に、のほほんさんとの会話が弾んじゃったからなぁ。

 でもオルコット。ウチの姉さんはちょっと非常識だぞ?

「――だからどうした?」

「なッ!?」

「無視された? 男の視線ぐらい振り向かせろ。名を弄られた? そんなの芸人のコントかパフォーマンスの一種ぐらいに思え、むしろ普通の自己紹介くらいじゃ印象に残らん」

 そら来た。 理不尽な発言だとは思うが、姉さんの人生、出会った人達はかなり濃い人格が多いのだ。

だからこそ、こう言う発言も説得力がある。

「あ、う……」

 そして大概の人が、今のオルコットの様に口をパクパクさせて唖然とする。

「話しは以上か?――なら、私の手間を取らせた罰だ……初犯だから軽めにしておいてやる。よく覚えておけ」

 

 直後、軽快な音が響き、同時に二時限目のチャイムが鳴った。

 

 

 

 





やっと4話を投稿。
意外と時間が掛ったのは、木場のISの構想を練るのに色々と他作アニメを見回ってたから。
2条「――楽しみにしてた方々、木場君が迷惑をかけて申し訳ない」
木「とばちり来たぁぁ!? で、俺のISは出来たのか?」
2条「構想は。あとは数話あるからなんとか。――最悪出来るまで更新しないし」
1夏「木場ァ……」
木「俺か?!俺の所為か?!」

――グダルので強制終了――


p.s.3話の時点でお気に入りが70越えしてちょっと嬉しいのと、まだ本格的に始まってもいないのに70越えしてるのでちょっとコワヒ
あと、誤字、脱字、コレおかしくね?って部分があったら御一報をヨロ
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