織斑一夏は逃げられない   作:ニジョー条

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真昼の出会い

―――同日、正午―――

 時間は少し進んで、昼休み。

 3・4時限目は特に何の問題も無く終わった……のだが、4時限目が始まる前の休憩時間に、オルコットと三度目の口喧嘩になり、何故か負けたら一生小間使い――所謂奴隷宣言された。英国、つーか貴族って連中、好きだよな奴隷――させるのも、なるのも…………あ、なるのはゲームの中だけか。

 

「よし、一狩り行こうぜ一夏!箒!」

 

 授業終了のチャイムが鳴り、逸早く亮斗が昼食の誘い(?) をしてきた。ので、

「そこは昼食にしとけ」

「サバイバルでもするつもりか?バカ者め」

 当然、ボケには全自動でツッコム俺達は反応する。

「ずっるーい篠ノ之さん!」

「織斑君!一緒に昼食でもどう?!」

「あっ!私も私も!」

「お弁当持参だけど一緒にどうですか?!」

「い、今から作るんですが、一緒に食べませんか?!」

 そして、良いタイミングと言わんばかりに、クラスメイト達が乗って来た。ってまたしても最後の方凄い奴が居るんだが…?

 ――って、コラコラ箒。そんな嫌そうな顔すんじゃないの……気持ちは察してやれるがな、……仕方ない、フォローするか。

「悪い皆。今日の所は、俺達幼馴染組だけにしてくれないか?」

これから先も遠慮したいが。

「あっ、幼馴染なんだ」

「ああ、6年振りに会えたんだ。近況報告を兼ねてるから、居ても気まずいだけだと思うぞ?」

 亮斗が俺に合わせて言葉を重ねて来る。

「ちぇっ、じゃあ仕方ないか」

「うーん、織斑君達の昔ってのも気になるけど、流石に、ねぇ……?」

「「「「「うんうん」」」」」

 話の解る娘達で有難い限りだ。…………一部の女子の頭の一部が腐ってるのを除けばな。

「じゃあ行こうぜ、箒。 ――此処の学食って、一夏の作る物より美味いらしいぜ」

「いや、一夏の作る料理の味自体、もう記憶の彼方なのだが……」

「――ほう? 流石ISの名の付く学校。 やはり俺に喧嘩を売って来るか」

「お前はお前で、目つきが鋭くなってるぞ!?」

「一夏のより美味かったら、……クククッ、お前の持ちネタが一つ無くなるな」

「俺のより味が格下だった場合、――まずは食堂から制圧すべきだよな?」

「お前達、別れる前と全然変わってないなっ」

 

(((((((((((((小学生の時からあの性格?!)))))))))))))

 

 おや?何やら周囲が驚愕しているが、……まあ良い。取り敢えずは昼食だ。

()せてもらおうか、IS学園の実力とやらを……!」

「「此処、料理学校じゃないから!」」

 そのまま三人で移動し、――その後ろからぞろぞろと女子の群れが付いて来て、食堂へ向かった。

 

 

 

 

―――学生食堂

「箒。お前、何食うよ?」

 食券券売機の前で亮斗が箒に聞いてきた。ちなみに、券売機はタッチパネル式の最新機だ。

「私は、今日は蕎麦系だな。 稲荷セット(3個+お新香付き)の方で」

「「やっぱり米か」」

「わ、悪いかッ?!」

 いいえ悪くありませんとも。

「つーか凄いよな。和洋中の他にエスニックとかあるし。 ……は?精進料理?あんのかよっ」

 言いつつ、肉野菜炒め定食を購入。ちなみに金額は500円。恐らくは食材を大量購入する事で、値段を安くしてるのだと推測する。

「検索方法も国別の他に、今日のオススメ、定食系から主食別、名前検索……種類自体は少ないけど単品で頼めるし、組み合わせは自由だからバラエティは豊富だな」

 亮斗はカツ丼定食(味噌汁、お新香、日替わり惣菜(小鉢))の大盛を注文した。

 そして、後ろからのほほんさんが券売機の前に立つ。

「カロリーも普通より低くしてあるから、深く考えなくて良いよね~」

 そう言って白玉あんみつにチョコパフェ、野菜ミックスジュースを注文。

「「「速攻デザート?!」」」

「?」

 俺達3人のツッコミに、のほほんさんは首を傾げるだけだった。

 ……ゆ、勇者だなオイ!

 その後、食堂のおばちゃん達からそれぞれメシを受け取り、

「あ、お姉ちゃんはっけ~ん! じゃあまたね、おりむーにもっぴーにりょっちゃん!」

「もっぴーは止めろ!」「りょっちゃんは……」

 爆弾を落としてのほほんさんは別れ、俺達は窓際のCの字型のテーブル席に着く。

「「「頂きます」」」

 手を合わせて三人同時に言う。そして肉野菜炒めを一口、

「っ! 負け――い、いやまだ負けてないっ」

「アウトだ一夏」

「素直に負けを認めておけ、一夏」

 ――悔しいっ!でも(舌は)感じちゃう……っ!つーかマジうめぇ!下拵えからして念入りにしてあるぞ、コレ?!

「ふむ。 コレは……まさか手打ちか?」

「ダシ汁が米に染みてて美味いなコレ」

 その後黙々と食べて、定食の3分の2程食べ終えた所で箒が口を開いた。

「――それで? 何か対策はあるのか? 亮斗、一夏」

 対策?……ああ、クラス代表決定戦の事ね。…………うん、

「「無いな」」

 亮斗と同時に、同じ言葉で返した。

「ってダメだろ!」「それダメでしょ!?」

「「ん?」」

 声が、重なって返ってきた。

 声を発した人物は二人。一人は対面に座る箒だ。そしてもう一人は、俺達が座るテーブルのすぐ近くに立っている人物。

 亜麻色のショートヘアーで、此方をみる瞳の色は黒色の少女。手に持つトレーには、サンドウィッチセットと少量のサラダが載っている。

「「遠見?!」」

 その声の持ち主は、実に約2年振りに見る友人の姿があった。

「やっほー、久しぶり、二人とも。……隣、良いかな?」

 そう言いながら、件の少女――『遠見真矢(とおみまや)』は、空いていた箒の隣に腰を下ろした。

「誰だ?」

 箒が怪訝そうに、そして不機嫌そうに俺たちに問いかけてくる。

「っと、そう言えばそっちの人とは初対面だったね。 木場君とかからは良く聞くけど。――私は遠見真矢、宜しくね」

「篠ノ之箒だ。 ……そ、それと、二人とは随分と親しいようだが?」

「えっと、……中学校の同級生?」

 まあ間違っては無いが、一応捕捉してくか。

「1年の時、ISの適性が高かったから政府からスカウトされて、実質名前だけの幽霊生徒だ」

「ひっどーい! ちゃんとテストとかは受けてたよ!? ――別室で一人だったけど。それに終わったらすぐにISの訓練だったから、皆と会う時間とか取れなかったけど…!」

「とまあ、寂しい青春時代を送ってた友人だ」

 ん?遠見が項垂れてやがるな。箒も同情的な目を向けてやがるし。

「ドSめ」

「うん。 織斑君、なんかいじめっ子になった?」

「最近、Sっ気が出てきたよな一夏」

 失礼な。俺はドSじゃない。ちょっと前に、銀髪少女の所為で責めの快感に目覚めただけだ。

「あ、あと日本の狙撃部門の代表候補生で、――3組のクラス代表でもあるよ」

 その一言で、聞き耳は立てていた周りの生徒達の視線が、一斉に此方を向いた。

 ……遠見のヤツ、随分とまあ逞しくなりやがって。

「聞いたよ? イギリスの代表候補生と自薦で被って、クラス代表の座を賭けて勝負を挑んだんだってね」

「「「捏造されてるっ!?」」」

「えっ!?」

 驚く遠見。

……いやいや、こっちが「えっ!?」だよ!誰だ、そんな風に改竄したヤツ!

「ん~、ああそっか、確かに私が知ってる二人とは性格がちょっと違う気がしたけど、……でも、クラス代表を争ってるのは事実なんだよね?」

「ああ、そっちは本当だ。 ……不本意ながらな」

「推薦より、自薦の方が絶対ヤル気あるよな?」

「決まってしまったのは仕方が無かろう。 それに、千冬さん――織斑先生の言葉は絶対だ。 逆らえん」

「ああ、千冬さんはねぇ……」

 その場の全員が沈黙した。

「そっ、そう言えば!」

 不意に、遠見が声を上げて口を開く。

「さっきの話に戻るけどっ、……本当に無いの? 幾らなんでも、いきなり代表候補生と戦うなんて無謀すぎると思うんだけど…?」

「つってもなー。 姉さん命令だし、今更止めるとは言えない状況だからなぁ」

「同意。 それにISを動かしちまった以上、戦う事からは逃げられないしな」

 亮斗がえらくマジに言っているが、確かに洒落にならない事態だ。何時までも姉さんの威光で防ぎきれるほど政府もIS委員会も、それに女尊男卑を掲げるヤツ等も黙っちゃいないだろう。――前者はモルモットとして、後者は自分達の権威を脅かす存在として。

 場の空気が重くなるから言わないけど。

「へえ、結構考えてるんだね――木場君」

「俺だけか?!」

「当然だ。 亮斗はやれば出来るのだ」

「止めろ箒! それだと普段は全然出来ないヤツみたいだと思われる!」

「ごちそうさま」

「「「食べるの早っ!」」」

 普通だよ。15分もあれば食えるだろ?

「まあ話しを戻すけど、やれる事だけはやっとかないとな」

「何かあるのか?」

「ああ。まずはオルコットの機体データだな……コレは俺が調べてみるとして、あとは戦いの感を養う事だな――箒」

「うむ、任せろ。 今日は色々と忙しいから、明日からで良いか?」

「ああ」

「まあ学校始まって初日だしなぁ……」

 初日からイギリスの代表候補と喧嘩になるなんてありえねーから。何処の主人公だよ!

 ……いや、そう言えば小説が元の世界だったっけ……? 昔、亮斗が原作だヒロインだ俺の嫁だとか言ってウザかったから聞き流したが……アイツは、この後の歴史の流れも知ってるのだろうか?

 少し、聞いてみたくもある――が、

「くだらないな」

「? 何か言ったか一夏?」

 つい口から出てしまった所を亮斗に聞かれてしまったが、なんでもないと答えた。

 ……今更、“正史”を聞かされたってどうしようも無い。

 自分を変えられる訳無いし、今から自分の性格を主人公と同じなんかに出来ない。何よりも、

「(そんな事、考えた事もなかったな……)」

 俺が今生きているのは“この世界”なのだ。一々原作とか考えるのは、思考の破棄と同じだ。いくら俺の人生を流れに任せているとは言え、思考の破棄は自分を殺す事だ。

 ……それだけは、したくない。

「(そうだろ? ――円夏(まどか))」

 腰に付けた、スマホ用のホルダーケースとは別のケース。その内の一つにそっと触る。……その中身の、欠けたブレスレットに語りかけるように。

「「一夏……?」」

「織斑君?」

 他人の変化に敏感な三人が、黙した俺に声を掛けて来る。

 ……駄目だな。コイツらに心配かけさせるようじゃ

「何でもないさ」

 そう、何でも無いただの独り言だ。

「――――さてと、まだ午後の授業までは20分くらいあるし……ちょっと花摘みに行って来る」

「「女子かっ!」」

「サイテーだよ、織斑君」

「箒達のツッコミが正しいから、遠見の負けだな」

「何で?!」

 遠見が疑問の声を上げるが、箒と亮斗の二人は首を縦にして頷き肯定していた。

「亮斗」

「任せろ一夏。 ――良いか? 遠見。 そもそもボケとツッコミの関係とは―――」

 亮斗がボケとツッコミの重要性について語り始めたのを無視し、俺は席を立ち食器返却棚に置き、そのまま食堂を出る。

 そのまま8分ほど早歩きして遠くにあって、かつ女子の視線がない男子専用トイレに入り、

「……いい加減、出てきません?」

 口を開く。 その言葉に、

 

「ふふっ、やっぱり気付かれたてたんだ。 おねーさん、素直に感心するわ」

 

 声が返って来る。

 何時入ってきたのか判らないが、トイレの入り口付近――外側からは見られない所に、一人の女子生徒が『驚』と書かれた扇子を口元に広げて立っていた。

 無改造の制服に、上着ではなくベストを着、深紅のストッキングを穿いた空色のショートヘアーの女子生徒だ。ネクタイの色は黄色――2年の先輩だ。そのオッ輩……じゃなかった先輩の紅目が、尚も鋭く俺を見つめる。

 ……そう、この視線だ。朝、教室に入った時からずっと視られていたモノだ。

「良く分かったわね? 隠行には結構自身があったんだけど」

「居場所までは分かりませんでしたよ。 ただ、育ちが特殊過ぎるんで」

 気付いたのは日頃の経験。“世界最強のIS操縦者(ブリュンヒルデ)の弟”として見られて、此処最近では“超イケメンの男子”と言う視線で視られていたから気付いたのだ。

 ……随分と久しぶりだな、“俺”と言う存在を見る視線は。

 一挙手一投足所じゃない、人と話す時の目線・口・表情といった顔の動きから、俺の性格まで視切ろうとする観察眼(しせん)だからこそ気付けたのだ。

「それで、何の御用でしょうか? 先輩」

「ん~特に話す用事がある訳でも無いんだけど、……ちょっと確認したかった事があってね」

「確かめたい事、ね」

 ……つーかホント何者?立ってるだけに見えるのに隙が無いし、穏行が出来るとか言うし、……確かな事は研究職の人じゃないって事だな。

「まあもう大体分かったし、 特に問題無さそうだから織斑先生からの案件は受諾かな……?」

「……話が全然見えないんですが」

 つーか自己紹介くらいしろよ。――いや、もしかしてアレか?関わったら面倒な人か?初日からストレス溜まったり、面倒な性格の人ばっかと会ってもう一杯一杯なんだが。

「ああ、そう言えばまだ自己紹介して無かったわね、――――でも今は言わないわっ!」

「言わねぇのかよっ!」

 何だそのフェイント!つーか、やっぱこの人色々と面倒な人だ!

「ふふっ、別に言ったって構わないんだけどね、……この後の事を考えると、言わない方が良いと判断したのよ」

「めっちゃ思わせぶりな発言ですね。――はぁ、もう良いですよ。言わないなら言わないで」

「聞きわけが良い子はおねーさん好きよ」

「納得したんじゃ無くて、色々面倒になっただけです」

「あらあら随分と投げやりね? そんなんじゃ人生大損しちゃうわよ?」

「余計なお世話です先輩」

 つーか既に手遅れだ。ISに関わった所為で、もう普通の人生踏み外したわ!!

「余計なお世話、ねぇ。 ……じゃあ余計なお世話ついでに、ISの実機訓練でもつけてあげようかしら?」

「考えておきます。 ……そろそろ休み時間終わりますね」

 時計を見れば、あと10分程で昼休みが終わる時間だった。10分前ならまだ十分あると思うが、如何せん今居る場所は教室とは距離があるだ。

「あら、もうそんな時間? 楽しい時間ってあっという間に過ぎちゃうものなのね……時が止まれば良いと思わない?」

「――無いですね。止まっても、過ぎてしまったモノは還りませんから。 あと、先輩が意外とエロゲ脳だって事が良く分かりました」

「エロこそ至高よ!特に妹モノなんか最高に萌るわ!」

 ……言い切りやがったよ、このエロゲ先輩。

 その一方、言い切った女は、背を向けて男子トイレから出て行こうとし、

「あ、そうそう」

 足を止め、顔だけを此方に向ける――所謂シャフ度的なポーズを取り。

 

「予知してあげる。君、意外と早く私と再会する事になるわ」

 

 そう不吉な事を言い残し、今度こそ男子トイレから出て行った。

 ……やっぱISに関わると碌な事にならないな。こんなのが3年間も続くのか……ストレスで禿げないか?俺の頭?

「――こんな時は、一旦思考を放棄する事べきだな」

 取り敢えず、さっさと用を足して教室に向かうか。

 

 

 そして――、

 

 

「織斑に木場。お前達に急遽専用機が拝領される事になった」

 五時間目の開始前に姉――織斑先生が入ってきて、ドヤ顔で爆弾発言をブチかました。

 

「もうヤダ……」

 

 どうやら今日はまだ災難が続くらしい。

 

 

 




約一か月振りの更新。諸処の事情で創作活動が遅れてしまい、大変申し訳ないですm(__)m

時間が掛った原因は、
1・仕事量が増して、疲れてパソの前で寝落ち
2・何をクロスさせるか迷った
3・クロス先のアニメを一から見直し
4・ファルコムが新作なんか出すから悪い
 の以上4つほどになります。

一夏(雪片弐式装備)「つまり、どうゆーことだ?あァ?」
2条「俺が悪いッス」


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