織斑一夏は逃げられない   作:ニジョー条

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放課後の出会い

―――同日・放課後

 時刻は16時を回った所。

 すでに殆どの生徒は寮に帰ったり、校内を探索する為に居ない。今居残っている生徒は、俺達を鬼気迫る勢いで写生しているヤツ等ぐらいだ。

 ……と言うか貴様ら、程々にしないとアイアンクローで沈めるぞ?

「疲れた」

「だな。入学初日から6時限授業とか、マジ常識外な場所だと思う」

 ポロっと零れた愚痴に、亮斗が同意した。

 六時限なのもそうだが、3時限目以降昼休みも含め、全部の授業・休憩時間において平穏な時間など無かった。

 その中で、一番有難くない事と言えば専用機持ちになった事だ。

 

『専用機』

 言葉通り、その人専用に調整・開発されたISの事だ。

 貴重なISコア467個(もう間違えないぞ)の内、『研究用』+『IS学園に配備されている数60個』を除けば、その分だけ国や企業が保有する分が少ないのだ。その少ない中で、俺と亮斗の専用機用のコアを用意したとなれば、――俺達がISを動かせる事を知っていたとしか思えない。

 

 ……其処ら辺も、少し調べてみる必要がありそうだ。ただまあ、

「面倒だよなぁ」

「ああ」

 今は物凄くタイミングが悪い。なんせオルコットとクラス代表の座を賭けた勝負が行われるからだ。

 オルコットがポロリと言ったが、彼女も専用機を持っているので性能面では互角になったが――普通に考えれば、まだ初心者の域を出ない俺達と、年単位でIS操縦の訓練を受けたオルコットでは錬度の差がある。

 その為、三時限目前の休憩時に箒に言った、『使用機を学園の訓練機である《打鉄》と《ラファール・リヴァイヴ》に限定する』と言う策は物の見事に失敗した。

 だが、決まってしまったモノは仕方ないとして頭を切り替え、取り敢えずは、姉さんにスペックと武装関係のデータを貰える事にしたが、

「肝心のISを使った訓練が出来ないとは……」

 と言うか姉さん、対応早すぎ。

「まだ入学したばっかだから、ISを使った訓練は許可が下りないんだってさ。出来たとしても、教員(ほごしゃ)同伴だってよ」

「知ってる教員二人は忙しいから無理だな。……せめて一度くらいは実機で訓練したかったな」

 なんつーか、更に難易度が上がった?……俺の受験内容よりは簡単だろうけど。

 

「あっ! 居た! 良かった。 まだ教室に居たんですね二人とも!」

 

 二人して黄昏ていると、不意に教室の入り口から、今日知ったばかりの人物――山田先生が、此方に駆けて来た。

 ……オイ教師、廊下は走っちゃいけないんじゃなかったのか?……いや、急ぎの用件だったなら可なのか?つーか山田先生、ノーブラ?走る度にかなり激しく揺れてんだが?あ、三要さん?!泣きながら廊下を走っちゃ駄目だぞ!?怪我すんぞ!!

「――あーっと、俺達に何か用ですか?」

「あ、はい。 お二人の部屋の鍵を持って来るのを忘れてしまって」

「ん? あれ? 寮暮らしになるのは知ってますけど、確か、部屋の準備に一ヶ月くらい掛かるんじゃ……?」

 しかも一人部屋。ぜってー政府の目論見が丸解りな采配だ。

 いやでも、そう言えば、亮斗の奴が1週間分の下宿の準備はしとけって言ってたな。気になったから土日までの下着の替えと、スマホ用の充電器にその他必需品に小物、それと自作PCも纏めて荷物の傍に用意しといたが。

「え、あ、あれ? 連絡がいってませんでした?実はですね――」

 

「事情が変わったんだ」

 

 山田先生がしゃべろうとした矢先、今度は姉さんが入って来た。肩にボストンバッグを掛け、片手にPCケースとスーパーの袋、もう片手はMサイズのキャリーケースを引いていた。

 ……つーかアレ、俺のバックとPCケースじゃん。ならキャリーケースは亮斗のか?つーかスーパーの袋に、家にあった野菜類と賞味期限が近い食品とか入ってるし。

「知り合いの専門家に、朝から私と木場の家を監視させていたんだがな。 予想以上に各国家や企業、研究施設の人間、挙句の果てに裏関係のヤツも居たらしくてな。 一ヶ月も自宅登校だと“何かしら”の問題が出ないとも限らん。 だから学園理事やIS委員会に進言して、強制的ではあるがお前達二人を寮に入れる事にした。 ――全く、日本政府は詰めが甘い」

 どうしよう。姉さんの発言が突っ込み所が多くて突っ込み難い…………うん無視しよう。

「えーっと、では織斑先生。 それでは1カ月先まで女子生徒と半同棲という事でしょうか?」

「…………不本意だが、そうならざる負えない状況になった。 ――くっ……! あのバカの所業を繰り返させないと誓ったばかりだと言うのに……ッ!」

 引いてる。周りの人が引いてるから、姉さん!つーか姉さん、まだ束さんのした事を引き摺ってんのかよ。

 あ、俺?俺はまあ男だし?初めてがどうとか考えてなかったし……寧ろラッキー?――次があったら仕留めるがな。

 そもそも束さんの行動を止められるとしたら、その場に姉さんクラスの武力を持った人が居ないと阻止出来んぞ?

「そんな訳で、こっちも色々苦労した。 篠ノ之が居るから一人は確定してたし、もう片方の方も…………まあ色々調査して、取り敢えず国や企業系の思惑が介入して来ない生徒を選んどいた」

 もしかして、昼に会った先輩の事か? ――いや、あの時の会話の内容だとなんか違う気がするな。

「ちなみに木場、お前のルームメイトが篠ノ之だ。 織斑の方は……まあ、部屋に付いたら自己紹介でもしろ。 どちらも襲ってくる心配は無い。寧ろ心配なのは木場の方だがな」

 ソレには同意するが、俺の予想だと、ナチュラルエロの箒が極自然にエロ方面に場の空気に持って行って、それに耐え切れなくなった亮斗が箒を襲うってパターンな気がする。

「ひでぇ。 つーか其処は普通、弟の方を心配するんじゃないんですか?」

 その言葉に姉さんは、ふんっ、と鼻で笑い。

「コイツの事なら心配いらん。 普通に迫られたくらいじゃ手なんか出さんし、自分の立場くらい理解している」

 最初が『普通』じゃなかったしな。

「それに、コイツの同室の相手にも此処の生徒会長から直接伝達が云ってる筈だ。 …………アレ渡したから、寧ろ別の意味で興味を持たれるだろうがな」

 ナニ渡した?!山田先生も乾いた笑みを浮かべてるって事は、アンタも一枚噛んだな!?

「そんな訳で、いい加減受け取れ。 持ってるのも疲れた」

「「あ、はい」」

 いやに疲れた声を出した姉さんに逆らわず、素直に荷物を受け取る。

 ……むう、野菜類が大半に肉もあるな。あとはバターとか、タッパーに入れた惣菜類か……今度の休みは一度家に帰って在庫の整理だな。弾とか数馬の家に送るか?後は一騎の所だろ。あとは、ってそう言えば小鷹は地方に引っ越したんだっけ?まあ3か所あれば十分だな。

「話しは以上だ。 学園内を見て回るのも良いが門限までには寮に戻れよ? 今の私は寮長も兼任しているからな」

 どうやら、姉さんは予想以上に役職が多いようである。そりゃ偶にしか帰って来ない筈だ。

 そして姉さんは言うだけ言って、足早に教室を出て行った。その後を引き継ぐように山田先生が説明に入った。

「えっと、それと申し訳ないんですが、今現在、お二人の大浴場の使用は禁止させて貰います」

 まあそれは仕方ないよな。環境からして家とは全く違うし。

「では此方をどうぞ」

 山田先生が差し出して来たのは、二つの鍵と寮の案内図だった。

 ……1060号室か。2階の一番奥だから、意外と覚えやすいな。

 案内図を見ると、各学年ごとに寮が別れているようで、一棟全てが今年入った新入生の学生寮らしい。大きさそれなりで、一階は食堂と大浴場とランドリー設備があり。2、3階が生徒用の寮室である百二十室がある。

 一見して金の無駄遣いな気もするが、見様によっては納得できる部分もある。

 と言うのも、IS学園の入学者数は8クラスの240人前後と決まっている。それも世界各国から集まって来る――それこそ、オルコットの様な生粋のお嬢様から、宗教信のある子や腐女子まで、だ。 そんな我の強い子たちが部屋内の改装をしないと思うだろうか?

 恐らくNOだ。

 だから入学してから卒業までの3年間。入学してから入った部屋を使って貰い、その子達が卒業したら、一気に内装を整え、次に入学して来る新入生たちが使う、と言うサイクルを行っているのだそうだ。学年ごとに寮が別れているので、非常に整備がし易い環境になっている。

と言うのが、山田先生の話である。

「それでは、私も職員室に戻りますね」

「ええ、わざわざ有難うございます。 ――やまちゃん」

「い、いえ! 私だって先生なんですからってやまちゃん?!」

「それでも有難い事には変わりないですよ、ヤーマ」

「そ、そんなッ! お二人のこれからの苦労に比べたらってヤーマ?!」

「マヤちゃんやっさしーっ」

「そ、そんな事ないです、ってマヤちゃん?!」

「おっぱい☆おっぱい☆」

「か、体ネタは禁止ですっ!」

 からかい甲斐あるなぁ。それにクラスメイト達もノリが良いし。でも、あんまりからかい過ぎると駄目なので、今日の所は此処までにしておこう。

「所で山田先生。 職員室に戻らなくて良いんですか?」

「あぁっ! そ、それじゃあ皆さんっ、近くですけど気を付けて帰って下さいね?!」

 そう言って足早に教室を出て行った。

 ……やっぱり良い先生だなぁ、やまちゃん。

「さて、俺達も寮に行くか? 取り敢えず、荷物を置きたいしな」

 食材も冷蔵庫に入れないといけないし。

 

 

 

~~少年達、移動中~~

 

 

 

―――IS学園・第一学年寮

 あの後、学園内の更衣室やアリーナの位置などを確認の意味も込め軽く回り、寮近くにある購買店(当たり前だが、女性用化粧品なんかが多かった)で飲み物や足りなさそうな食材を買った後寮に着き、

「……25、と。 俺の部屋は此処か」

 1025号室の前で亮斗が立ち止った。

「そっちは1025か。 結構中盤にあるから通り過ぎに注意だな」

「一夏は60だっけ? 端っこだから分かり易いよな。 ……そう言えば夕食はどうすんだ?」

「同居の娘と話し合って決める。 なるべく早く食材を使い切りたい所だがな」

 ルームメイトが居るとなると、流石に自分勝手にキッチンを使う訳にはいかない。向こうも料理をしたかったり、朝夕と食堂で摂るかも知れないのだ。それに冷蔵庫とかの取り決めもしないといけないし。

 ……コレが箒だったら、ある程度はお互いの事が分かるから話もスムーズなんだがなぁ。

 ちなみに、食堂自体は何時でも開いており利用可能だが、食時間帯は朝夕共に6時からやっており、朝は8時、夜は9時までだそうだ。

「決まったら連絡する」

「おう。 ……まあ、どんな娘とルームメイトになるかは知らんが頑張れよ」

「お前も……腰痛めるなよ?」

「やらんわ!!」

 別れ際に一言煽って再び歩き出し数分掛かって目的地に着く。

 ……さてどうするか。

 鈴とかなら、ある程度知り合った後に家に遊びに行った事があるが今回は違う。なにせこれから一ヶ月ほど同居するのだ――それも異性と。

「いや、気負い過ぎだな。 普通にしてれば良いんだ――多少は気を遣うがな」

 そう思いながらチャイムを鳴らし、ドアをノックしてその場で待つ。

 鍵があり、事前通達があったからといってすぐには入らない。なにせ同居相手は女性なのだ。 着替え中だったり、風呂――いや備え付いてるのはシャワールームだったか?――とにかく、そう言ったエロハプニングはしたくないし、しちゃダメだ。

 ……エロ不注意は一歩間違えれば死ぬしな。

 と言うか、エロハプニングが許されるのは二次元の中だけだ。

 そんな訳で1分ほどその場で立っていると、ドアの前からモノが退かされる音と、鍵が開く音と、チェーンが外れる音が聞こえた――が、ドアが開く気配は無い。

「(…………コレは、確かに問題は起きないだろうなぁ)」

 冷や汗が出る。まず間違いなく、同居人は不機嫌だ。不快指数MAXと言い変えても良い。

 そう考えていると、遠くの方で怒声が聞こえた。

 

「ま、待て箒! 今のは俺が悪かったからッ! だから竹刀は止めろッッ!!」

「ううううるさいッ! 二回死ねぇえええ!!」

「お前狼少女じゃないだーるとんッッ!!!!」

 

 ……あっちは問題なさそうだな。

 そう思うのも束の間で、亮斗の叫びを聞いた女子達が次々と部屋から出て来ては辺りを見渡し、

「あっ! 織斑君発見!」

「え? ――あ、本当だ」

「ふむふむ、織斑君の部屋はソコか……あの部屋の人、誰だか分かる?」

「さ、さあ……?」

「良いな~、ワタシも彼と一緒の部屋が良かったなぁ~。 ……毎日がカーニバルね!!」

「――ブハァッッ!!」

「「「「「「「「「キャァアアア!!」」」」」」」」」

「しっかりしなさい! まだ夏は先なのよ!? あ、誰かティッシュ持って来て! 10秒ね!?」

「「「「「お前が行けよ!」」」」」

 

 ……こっちはこっちでカオスか。あ、あと鼻血出た娘。鼻元抑えて上向いて、首の頸動脈辺り冷やすと止まるの早いぞ?

 

「おぉ?おりむーの部屋って、お隣さん~?」

 

「ん?この声」

 隣のドアが開き、聞き覚えのある(と言うか独特過ぎて記憶に残る)声が聞こえ、ひょっこりと顔を出してきたのは、のほほんさん事、布仏本音だった。着ているのは、制服と同じ感じ様な感じのダボダボのジャージだった。

「お隣はのほほんさんか」

「だね~……それにしても、おりむーがかんちゃんと同じ部屋か~」

「ん? 知り合い?」

 コクコクと頷き、

「幼馴染みたいなものかな~……?」

 そう言いながら此方に歩いて来て、ペタンペタンとドアを叩く。

 ……って叩いた音がしてねぇぞ?!

「かーんちゃーん、あーけーてー…………寝てるのかな?」

「いや、さっきドアの鍵を内から開けてたから起きてる筈だ」

「じゃあ、なんで入んないの~?」

「気配から察して入り難い雰囲気だったからな」

「……おりむーってヘタレ……?」

 この娘、意外とハッキリ物を言う性格してたんだな。

 そんな内心の評価など一切気にしないのほほんさんは、笑い顔でドアを開け、体を左右に揺らしながら入っていく。

 その行動に唖然としつつ、嫌な予感がするのでドアを閉め、耳を澄ます。

『かんちゃーん、遊びに来たよ~』

『ッ! ほ、本音?!』

『わ~お、かんちゃん凄いカッコウしてるね~!』

『こ、コレは、シャワー浴びてたからって本音!? 引っ張らないでっ!』

 言い争う声が聞こえ、その後に此方に向かって来る足跡が聞こえ。

 ……あ、ヤバい。

 そう思うのと同時ドアが開き、その中からのほほんさんに腕を引かれ、水色のセミロング少女が連れ出された。

 ちなみに着ているモノはバスタオル一枚だった。

「(……違うな)」

 水色の髪色を見て、昼に会った先輩を連想したが、ドア越しに聞いたのほほんさんとの会話の様相と、実際に見て、髪の長さと眼鏡の有無――それとオパーイの差から別の人物だと判断した。残念では無いのだが、その子の腕を挟んでいるのほほんさんのモノと比べると、どうしても差がハッキリしてしまうのだ。

 ……て言うか、連れて来ちゃダメだろのほほんさん。あと、強制エロ不注意は死亡フラグに入るのか?

「じゃじゃーん! 私の幼馴染のかんちゃんで~す!」

「ほ、本音っ! だ、だから引っ張らないで……!」

 だが、顔の輪郭なんかは似ているので、ちょっと聞いてみようと思った……目線は少女の首から上に固定して。

「なあ」

「な、なにっ」

「行き成りで何だが、二年生に姉とか居――」

 其処まで言い掛け、その先を言うのを止めた。

 ……地雷踏んだな、俺。

 さっきまで顔を真っ赤にしてアワアワしてたのに、『姉」の一言を言った辺りから、一気に顔から血の気が失せ、どう表現して良いのか分からない表情をし、

「――!!」

 右手が動いた。

 ……ああ、今日はやっぱ厄日だな。

 そう思いつつ、変に防御態勢や回避の姿勢を取らず、体から力を抜き衝撃に備え、

 

 

――――直後、乾いた音が廊下に響いた。

 

 




まだまだ続くIS学園初日。一体、何時になったらバトルに漕ぎ着くのやら(ォィ
誤字、脱字、コレおかしくね?って部分があったら御一報をヨロ (^O^)ノシ

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