喫茶店員に恋をしてしまった。   作:岸雨 三月

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ハーブを探す少女と少女を邪魔するうさぎ

 

チマメ隊とリゼの会話の一部始終を聞いた俺は、弾かれるようにして店外へ出ていた。何を隠そう、俺にはチノの探しているハーブの自生場所の「心当たり」があった。

 

……別に何もこんなハーブでチノの気を引こうとか、そういう訳ではない。ただ、チノが誰かのために何かを欲するなら。自分も出来る限りのことをして、その思いに応えたい、叶えさせてあげたい。そんな気持ちが、俺を突き動かしていた。

 

 

ハーブが生えていたのは、分かりにくい裏路地に入っていったところの突き当たりにある空き地だったはず。木組みの街の迷路のような街並みを、持ち前の方向感覚を生かして正確に進んでいく。

 

 

目的の空き地にたどり着こうとしたその時、俺は人影を目撃し、思わず物陰に隠れる。いや、冷静に考えると別に隠れる必要無かったのかもしれないが、本能的に隠れてしまった。

 

 

「も、もう、こんなところで何なのよー! 意地悪してないでそこを通して!」

 

 

見ると空き地の前の通路を塞ぐように、灰色のふてぶてしい態度のうさぎが鎮座していた。そしてその前で右往左往しているのは、確か桐間紗路――シャロと呼ばれていた、これもチノ達の友達の喫茶店員だ。

 

 

「わわわわわわわ私はそこの空き地のハーブを取って帰らないといけないの!チノちゃんのために!ああああああんたがどんなに邪魔しようと通るんだから!」

 

 

口では勇ましいことを言っているが、声が震えまくりである。どうやらシャロもチノのハーブ探しのため独自に動いていて、ここに辿りついたということらしい。

 

しかしそれにしても不思議なのは、灰色のうさぎ――確かワイルドギースと呼ばれている――が、シャロの邪魔をしているようにしか見えないことだ。俺の属する筋の情報網によれば、ワイルドギースは元々野良うさぎだったが、シャロの家に出入りするようになり、今では半分シャロの飼いうさぎのような形になっているはずだった。飼いうさぎが飼い主の邪魔をするとは、どういうことだろうか。

 

 

「うう…… リゼしぇんぱい……! どうかわたしに力をくだしゃい……! ってか、こんなことになるなら本当にリゼ先輩誘ってくれば良かった……」

 

 

シャロが半分涙声になりながら独り言のようなものを言っている。不思議といえば、シャロがワイルドギースを無理やりどけて通らないのも不思議だ。シャロは華奢な女の子だが、それでも力ではうさぎが人間にかなうはずもない。シャロはうさぎが嫌いか、もしかすると怖いのだろうか。だとするとなぜワイルドギースを飼っているのか、ますます不思議である。

 

 

「うわーん! もう本当に何なのよー!!!」

 

 

見ると、ワイルドギースVSシャロの対決は、ワイルドギースの勝利で決着がついたようだった。突然突進してきたワイルドギースの勢いにひるみ、シャロが逃げ出していくところが見えた。ワイルドギースはシャロを追いかけてそのままどこかへと行ってしまったので、その場に残されたのは物陰に隠れる俺だけとなった。

 

 

一人と一匹のことは気になりはするが、そうこうしている間にも貴重なハーブが誰かに摘まれてしまうかもしれない。誰もいなくなったのを良い事に、俺は空き地へと入り、ハーブ集めをすることにした。

 

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