勝負が勝利で終わったことに安心している俺に試験官は近づいてこう言った。
A「お疲れ様でした。これにて実技試験は終了となります。しかし、最後の方でややテンションが上がっていたのかな?態度がガラリと変わっていましたけど…」
これでどうやら実技試験は終了らしい。
…がかなり痛い所をついて質問された。
どうしようか…?
とりあえず適当に言って何とか誤魔化すことが出来るかな?
駆「す、すいません。え〜とこの幻想郷でいう外?の世界という所から来た者で俺が住んでいた前の世界ではこういったものが無く初めての体験だったのでつい興奮してしまいました…お気に障ったのなら大幅減点も覚悟の上です」
と、俺は申し訳なさそうに少々真実を混ぜつつ言ってみると試験官は驚いた表情でこう言った。
A「そうだったのですか、なら仕方は無いですね。それにバトルのプレイングも良かったですしそれも交えて減点の帳消しを考えて置きます。ありがとうございました」
駆「あ、ありがとうございました…!」
俺は礼をしたあと足速に第5ステージから出ていき、観客席に戻る。ふぅ…どうやら誤魔化しは効いたようだ。
それに、減点も帳消しにしてくれるか分からないがワンチャンしてくれるらしい。まぁバレたらあの職員の未来がどうなるかなんて火を見るより明らかだが…
いや、それよりも考えなければいけないことが他にあった。
先程のバトルでのあの現象だ。
…確か封印してソウルコアをバトルアーマーにセットした瞬間からバトルアーマーが変形して、身体のコントロールがなくなった。何故俺のバトルアーマーにこんなものがあるのか分からない。
…確か生前の記憶で、幻想郷では〇〇の程度の能力を持っているキャラクターが数人居たと思う。
例えると東方Projectの主人公である博麗霊夢の空を飛ぶ程度の能力。
…もしかして、インターネットでよく見る二次創作のマンガや小説のオリジナル主人公がその程度の能力とやらを発揮するように俺にも能力があるとでもいうのか?
………イヤイヤイヤ、それは無いだろう。前記のとうり、ソウルコアをバトルアーマーにセットしてから変化が起こったのだ。俺自身に何か特別な能力がある考えはいくらなんでもおかしい。だとすると、考えられる節はいくらでもある。
しかし、不確定要素のある仮説がどんどんと出てくるだけだ。
…この時点ではまだまだ情報が少な過ぎる。ならこれからの時間経過と共にこいつの謎を解いていくしか無いな。と思い俺は宇宙に追放された究極生命体の様に考えるのをやめた。
美弥「あ、駆君も終わったのかな?」
途端に後ろから声をかけられ俺は瞬時に振り返った。
そこに天野美弥が笑顔で問いかけていた。
駆「あぁ…そういう天野さんはもう終わったのか?」
俺は天野美弥の質問に答え、続けて俺も彼女に質問をする。
美弥「うん、今さっき終わったんだ。…ていうか駆君!わたし達もう友達同士なんだから私のこと名前で呼んでよ!」
天野美弥は苗字で呼ばれたことが癪に障ったのか、ジト目になりながら俺に説教を開始する。ていうか、いつから俺とお前は友達になったんだ?という疑問が頭の中で浮かんだ。単に隣で話してただけだし友達宣言も俺はしていないし…あれ、友達ってどうやって作られるものだった?
こうやって自然に話していたらなるものか?それとも友達宣言見たいなものが必要なのか?
生前の俺が持っていた友達は指で数えられる程だ。陰キャでコミュ症の俺は友達の作り方なんてものは分からなかった。今でも分からんが…
それがまして前者か後者のどちらかさえも…そう考えている間にも天野美弥はこちらを見ている。
…さてここは苗字で呼ぶべきか、名前で呼ぶべきか、この2つの選択肢はまるで恋愛シュミレーションゲームの様なものを感じさせる。あまりやった事は無いが…
しかし、今はデジタルの世界ではなくリアルの世界。ここは苗字で呼んで更に怒られるより名前で呼んだ方が無難か。それに一応表上こいつの友達になる事によって学園での孤独を回避することが出来るし、困ったことがあればお互いにカバーし会えるといったメリットがある。
兎に角こいつと友達になっておくことはメリットの塊だ。デメリットを言っておくなら、こいつが一々突っかかって来て面倒になるだけかな?
駆「わかったよ、でもさん付け抜きは勘弁してくれよ…。(でないとコミュ症の俺のSAN値が持たんからな。)ところでみ…美弥さんは実技試験どうだった?」
俺は天野美弥を名前で呼ぶことを宣言し、返しに結果を聞いてみることにする。
美弥「た、他人に結果を聞く時は自分から言った方がいいとお、思うよ〜」
…上手く誤魔化せているだろうと本人は思っているだろうが、彼女の額から汗が吹き出ているのを俺は見逃さないし、明らか動揺している様子なのであまり良くなかったのだろう。
駆「俺は…勝ったよ。それで美弥さんはどうだった?」
俺は自分の対戦結果を彼女に話しつつ、もう一度結果を聞いてみてた
美弥「わ、私?私はね…残念ながら負けちゃいました…」
と残念がる美弥。じ、地雷を踏んでしまったか…?負けた要因は不明だ。カードゲームにはその時の運にも左右されるゲームだから仕方はないが、筆記の成績が悪ければ最悪入試に落ちてしまう可能性がある。
駆「…そうか、すまない。悪かった」
俺は目の前で俯いている彼女に少し申し訳なく思い、謝った。
美弥「いやいや、そんなに謝らなくてもいいよ、結果を信じていればきっと受かるよ!」
と彼女はさっきの雰囲気と打って変わって笑顔になる。
…なるほど、彼女はかなりポジティブなようだ。そこは尊敬に値するな。何故なら16歳で人生を諦めた人間(この俺、天童駆)がここにいるんだ。
俺も彼女のようなポジティブな心があればまだまだ生前の世界で生き抜くことが出来ただろう。と思った。
…さて、筆記試験と実技試験を終えたところでそろそろ家に帰ろうか思い、俺が席をたった時に東風谷早苗があの馬神弾を連れてこっちに来た。
…おいおいおい、未来の世界を救った英雄を連れて来て一体何をする気なんだ?
美弥「あ!早苗ちゃん!ってどうしたの?
その人って…」
と早速、弾に反応する天野美弥。
早苗「いや〜どうしても紹介したかったのですよ!馬神弾さんを!」
一方で東風谷早苗は目をキラキラさせ、興奮しながら馬神弾の紹介をした。
まぁ有名人が自分の隣にいたら大半の人は興奮してしまうだろうな。
美弥「凄い!凄い!本物の馬神弾君が目の前に!凄いよ駆君!」
分かったから二人して体育館の観客席で騒ぐな。と俺は呆れつつ
それを尻目に微笑する馬神弾。
ダン「初めまして、俺は馬神弾。バトルとカレーが好きなんだ。よろしくな二人とも!」
美弥「私は天野美弥、よろしくね弾君!」
駆「俺は天童駆。よ、よろしく頼むよ」
俺達は互いに自己紹介を済ませる。まさか馬神弾と生で会話することになるとは思わなかった。
ダン「あ!君がさっきの赤色の寅の使い手か!出来れば学園で手合わせ出来ればいいな!」
すると馬神弾は俺の方を向き笑顔でそう言った。
駆「…あぁ、そうだですね」
…同い年らしいが、彼の経歴を知っている以上、敬語で話せばいいのか普通に話せばいいのか分からなくなり、曖昧な話し方をしてしまった。
美弥「あ〜!駆君ずるい!私ともバトルしてね、弾君!」
ダン「あぁ!もちろん受けて立つよ」
と美弥は抜けがけされたと思ったのか急いで弾との戦いの約束をする。
人気者は辛いものだな、馬神弾。
俺は現在の時間が気になったので腕時計を確認する。ふむ…そろそろ帰らなきゃ行けない時間だ。帰宅するか。
駆「さて、俺はここでおいとまするよ」
俺は自宅に帰るために鞄を持って体育館を立ち去ろうとする。
美弥「また学園で会おうね!」
ダン「君とのバトルを楽しみにしてるよ!」
早苗「駆さん、私ともバトルして
くださいね!」
と3人は俺にそう言ってくれた。
…しかし、それは俺達4人がちゃんと入試に合格することが前提となる約束だ。ちゃんと守ることが出来ればいいのだが…
と俺はそう思い、3人に手を振り会場を出た。
そして、学校を出た俺は帰宅途中に試験監督官が試験始まりの前に説明していたことをふと、思い出した。確か結果は3日後に自宅に届けられるシステムだったな…早くね?
俺はそんなことを考えながら足を進めた。
To be continued………
次回予告
俺の第2の人生が決まる試験が終わった。順位なんてどうでもいい、合格していればそれで…
しかし、仮に落ちていたら、仮に受かっていたらどうすべきか…と深く考えている間に3日なんて短い時間はすぐ過ぎてしまっていた。
未来を決める結果が俺にもたらしたものは…
次回、バトルスピリッツ 欠落
Turn-6 ファースト・コンタクト