赤い弓兵に成り代わり、ファンタジー世界で第二の人生を   作:松虫

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詳細とFランク依頼

しばらく聞いてなかった声に、驚いて大きな声が出る。

いけないいけない、ラフィール達を起こしてしまう。

何処か人気のないところ・・・そうだ、窓から屋根に移れるんじゃないか?

私は窓をそっと開けると、上半身を乗り出した。よし、行けそうだ。

腕力にものを言わせて、窓を抜けて屋根へとよじ登る。

 

「よし、ここならいいだろう。久し振りだな、新島少年、もといアリステア君」

『げっ、僕の名前、知っちゃったんですか』

 

新島少年はちょっと嫌そうな反応をしてみせる。

 

『だって、可愛すぎませんか?不思議の国のアリスみたいで。出来れば新島の方で呼んでくれるとありがたいんですが・・・・・・』

 

どっちでもいいんですけど、と渋々言う新島少年に、私は笑って答えた。

 

「嫌だというのに、無理に呼んだりせんよ。さて、二回目の神様通信はどんな内容かね」

 

屋根に腰を下ろして、私は話を聞く体制に入った。

 

『今回は、宝具について色々お話したいと思いまして。前回は、必要最低限のことしか伝えられていませんでしたからね。宝具の方は、もう使用しましたか?』

「ああ。画面越しに何度も見ていたものだが、あれは凄いな。ちょっと・・・いや、かなり感動した」

 

キングオーガ相手に、無限の剣製(アンリミテッド・ブレイドワークス)を使った事を話せば、新島少年はおおー、と感嘆の声を上げた。

 

『それでは、今のところ使った宝具は無限の剣製(アンリミテッド・ブレイドワークス)だけなんですね』

「そういうことになるな。ところで新島少年、一つ聞きたいんだが・・・神造兵装の宝具の場合、原作では投影出来ないことになっているが、そこの所はどうなっているんだ。約束された勝利の剣(エクスカリバー)とか、いまは遙か理想の城(ロード・キャメロット)とか」

 

投影出来ないことはないが、自滅覚悟しなくちゃいけなかったはずだ。

でも言ってみたいよね、エクス、カリバーッ!って。

 

『通常、神造兵装以外の宝具を使用した場合、その威力はほぼ100%の威力を発揮します。神造兵装の宝具だと、自滅したりすることはありませんが、威力は本来のものと比べると半減してしまうんです』

何せ、神が造りし兵装ですからね。

新島少年の話を聞きながら、私はちょっぴりがっかりする。なーんだ、半減しちゃうのか・・・・・・。

私の落胆に気づいたのか、彼は笑いを堪えるように続けた。

 

「そうしょんぼりしないで下さいよ。僕の言う半減というのは、言わば対サーヴァント戦では、ということです。あれだけの威力を誇る宝具、半減したと言ってもどれだけの破壊力か。普通の人間が太刀打ちできる代物ではありませんよ」

 

・・・・・・確かに。ということは、半減しててよかったのか?

だが、一際派手なのはよーくわかる。

超大型級の敵が現れでもしたとき以外は、使わないようにしよう。悪目立ちする。

 

『そうしてください。実は、最近僕もFate/GrandOrder始めまして。あ、勿論両親のスマホでですよ。あれ、面白いですね。僕、アーラシュ・カマンガーなんて人、名前すら知りませんでしたよ』

 

あー、あの人はある意味レアだよな。最初見たときは、誰?ってなったし。製作スタッフの人も凄いよ、よく見つけてきたよね。

 

『あ、そうそう。神造兵装の宝具ですが、一度使うと一週間程同じ宝具は使えませんからね。気をつけてください』

「・・・それ、かなり重要事項じゃないのか」

 

ジトーっとした声になる私に、新島少年はちょっと慌てながら言う。

 

『いや、だってその姿なら、まず最初に無限の剣製(アンリミテッド・ブレイドワークス)使うでしょ普通』

 

それもそうだけど。実際そうだったけど。まぁいいか、結果オーライだし。

 

『それじゃ、次は僕の番ですね。今までのこと、色々聞かせてもらってもいいですか』

「そう来ると思ったよ」

 

私は森で別れてからのことを、新島少年に語って聞かせた。カタール村でのこと、キングオーガと戦った時のこと、ラフィールを仲間にする時のこと・・・・・・。

新島少年は相槌を打ち、時にツッコミを入れ、声を上げて笑い、実に話し甲斐のある反応をくれた。

 

『それでは今はルーンベルグの冒険者ギルドで登録して、明日から依頼を受けるんですね・・・・・・ふむ、そうですか』

「・・・何か言いたそうだね」

 

最後の言葉が気になって、私は新島少年に訪ねてみる。

 

『いえ、ちょっと涼香さんにお告げ?的なものをお伝えしようと思いまして』

 

お告げ?何だよそれって。ジャンヌ・ダルクってか。

私の妙な雰囲気に気がついたのか、声が苦笑するような響きを持つ。

 

『別に国を救えなんて言いませんて。そうですね、今日は満月なので、今日から数えて九日後。丁度下弦の月の日の夜、町を散歩してみてください。きっといいものが拾えますよ』

 

いいもの・・・・・・一体何なんだろう。お金かな、武器かな。

少し考えてみるが、全く思いつかない。

ま、ここで簡単にわかってしまうようなものなら、お告げの意味がない。

 

「今日から九日後か。覚えておこう」

『そうしてください。ああ、もうこんな時間ですか・・・・・・涼香さん、名残惜しいですが、ここまでですね』

 

時間にして一時間弱程。まあまあゆっくり話せた方かな。

 

『夜も遅いのに、話してくれてありがとうございます。また、連絡しますね。おやすみなさい』

「ああ、待ってるよ。おやすみ」

 

ふっつりと聞こえなくなった新島少年の声。

あー、私も早く寝ないとな。明日から依頼をこなしていかなくちゃいけないんだから。

なるべく音を立てないように部屋に戻るのは至難の技だったが、どうにか入り込むとベッドに潜り込む。

そして目を閉じて、あっという間に眠りに落ちていった。

 

 

 

 

「師匠・・・師匠!起きてください、師匠!!!」

 

翌朝、ラフィールに身体をゆさゆさと揺さぶられ、私はぼんやりと目を開けた。

 

「ああ・・・・・・すまない、寝過ごしてしまった・・・・・・」

 

完全に寝惚けモードで、むくりと身を起こす。

 

「お寝坊とは珍しゅうございますね、アーチャー様。昨晩は緊張して眠れなかったのですか・・・・・・ふぎゃっ!?」

 

からかうように周りを飛ぶラピッドを、私は無造作に掴み取った。

そして、猫みたいな悲鳴をあげる彼を撫で回す。

 

「ちょっ・・・・アーチャー様ッ・・・・あっ・・・ダメ・・・にょっ!?そこダメですぅ~」

 

無言でラピッドを撫でまくる私、ひぃひぃ啼かされるラピッド。

 

「あー!もう、いい加減にしてください!」

「痛っ!?」

 

終いにはラフィールに杖でぶん殴られ、ようやく私は頭が覚醒する。

 

「ラフィール君、いきなり何を・・・・・・む?ラピッド、何故そんなところで寝ているんだ」

 

正気に戻った私を、ラピッドはジロっと睨み付けて。

 

「ラフィール様、もう一発お願いできますか」

「任せてください」

 

えぇ!?ちょっと待ってちょっと待って!

こら、ラフィールも杖を振り上げるんじゃない!

 

「すまない!本当にすまない!」

 

何処ぞのドラゴンスレイヤーのように、すまないを連呼しながら私は慌てて二人から距離をとった。

 

「僕達、先に朝食とってますから!師匠もさっさと身支度整えてくださいよ、まったく!」

「はい!すぐに行きます!」

 

ビシッと敬礼する私を、呆れたような視線が貫く。

そんな私を置き去りに、二人は一階に降りていった。

 

「・・・・・・はぁ、さすがに夜更かししすぎたか」

 

やってしまった。ラピッドを揉みしだいてしまった。

もにもにしてて気持ちよかったなー、あの子。

私はいそいそと支度を整えると、慌ただしく一階へと向かった。

食堂に入ると、隅のテーブルに陣取っている二人を見つけ、ごめんごめんと謝りながら椅子に座る。

私が来るまで、食べずに待ってくれていたようだ。

えーと、なになに献立は、っと。

塩漬けの肉を、こんがり焼いたパンに挟んだサンドイッチと、豆と根菜のサラダ、青リンゴに似た果物、花の香りのするお茶。

サンドイッチは、齧ると肉の脂がジュワッと染み出してきて、塩と胡椒の効いた味が文句無しに美味い。

豆と根菜のサラダはホクホクしていて、ナッツの風味の強いドレッシングが食欲をそそる。

最後に、こってりした口を落ち着けるのは、爽やかな風味の果物。味と食感は、まんまリンゴだ。

私はあっという間に平らげて、お茶を楽しんでいると。

 

「どうです、朝食の量は足りましたか」

 

べナードさんがお皿を下げにきてくれた。

 

「充分です。とても美味しかったですよ、ありがとうございます」

「僕、このお肉が好きです!これ、何の肉ですか?」

 

ラフィールがパンに挟まれている肉を指さすと、べナードさんはにこやかに答えてくれる。

 

「これは大猪の肉を、塩と胡椒で漬けたものです。氷室で熟成させてあるので、旨味が凝縮されているでしょう」

 

熱心にべナードさんの話を聞くラフィール。

うんうん、君も男の子だなー、お肉好きなんだね。

私はお茶を飲み終えると、ラピッドに残してあったリンゴ二切れを勧めた。

 

「ラピッド、これを。お詫びと言ってはアレだが・・・・・・」

 

ラピッドはクスクス笑いながら、私を見上げる。

 

「もう怒っておりませんよ。あれは・・・・・・その、くすぐったかっただけでございます」

 

あ、でもせっかくなので頂きますね、とリンゴにかぶりつくラピッドを、私は微笑みながら眺めるのであった。

 

 

 

さて、朝食を済ませ、いよいよギルドへと向かう。

ギルドの扉を開けると、ウルスさんが豪快な大声で声をかけてきた。

 

「おう、来やがったなアーチャー一行!」

「おはようございます、ウルスさん」

 

相変わらずの勢いの良さに、苦笑しつつ挨拶を返す。

カウンターのドアから、よっこらしょとウルスさんは狭そうに抜け出してくる。

 

「どうだ、風の微笑み亭は?」

「とても素晴らしい宿です。いい所を紹介してくれて、ありがとうございました」

 

ぺこりと頭を下げる私に、ウルスさんは額に手を当て、大袈裟に天を仰いでみせる。

 

「かーっ、お前って奴はバカ丁寧だなぁ!最近の冒険者の連中にも、見習わせたいくらいだぜ!」

 

バッシバシ背中を叩かれ、胃になかなかの衝撃波が来る。

が、何とか耐えて私は涼しい顔を取り繕う。

 

「よっしゃ、今日から依頼だな!頑張れよアーチャー」

 

ウルスさんに手を振り、私は掲示板へと足を進めた。

びっしりと貼り付けられた依頼の紙。どれどれ、と目を通してみると。

 

「迷子ペット探し・・・溝に詰まったスライム掃除・・・庭の草刈り・・・外出中の店番・・・薬草を詰んできて・・・本の虫干し・・・」

 

私とラフィールは、顔を見合わせた。

 

「アーチャー様、これって」

「うむ。ほとんど雑用だな」

 

片っ端から片付けられそうな依頼に、私は手分けしてこなしていこう作戦を提案する。

 

「アーチャー様、でしたらワタクシも提案を一つ」

 

ラピッドは自分の鱗を一枚ペりりっと剥がした。

何をするのかと様子を伺っていると。

 

「移し身よ、我が身を喰らいて目を覚ませ影分身(ブリンク・オブ・シャドウ)

 

ラピッドがそう唱えた瞬間、うねうねと鱗が蠢き、ぼんやりとした光が鱗を覆う。

それは粘土のように伸び縮みし、ラピッドそっくりの形になったではないか。何これメ〇モン?

 

「ラピッドがもう一匹・・・!?」

 

目を丸くする私に、ラピッドは得意げな顔で説明した。

 

「これはワタクシの分身でございます。ある程度の魔法なら使いこなせますよ。この分身をアーチャー様に、ワタクシ本体はラフィール様にお付きいたします」

「え?僕は別に、分身の方でも・・・・・・」

 

かまいませんよ、と続けそうになるラフィールを制して、ラピッドはキッパリと言い放った。

 

「ラフィール様、これは保険でございますよ。アーチャー様は腕っ節に関しては問題ありませんが、ラフィール様はそういう訳には参りません。万が一の時に備えて、ワタクシがお側におりますので」

 

有無を言わさぬ口調に、ラフィールは沈黙する。

うーん、ちょっと微妙な雰囲気だなぁ。

 

「ラフィール君、気に入らないかもしれないが・・・」

 

私の言葉を遮って、ラフィールは口を開いた。

 

「確かに、その通りですね。僕はまだまだ弱いですから、今のうちはしっかり頼らせてもらいます」

 

気がついたら私は手を伸ばし、ラフィールの頭をよしよしと撫でていた。

いやぁ、君は私が思うより、ずっとずっと大人だよ。

 

「そうしてくれ。君が強くなるまで、私達がしっかり守ろう」

「お願いします。でも、じきに自分の身は自分で守れるくらいに強くなってみせますよ」

 

なんてことはなさそうな様子のラフィールだが、その目にはやっぱり、悔しげな色が見て取れる。

 

「さぁ、依頼を選びましょう。師匠も早く!」

 

切り替えるように言って、ラフィールは私の手を引っ張り掲示板に歩み寄った。

わかったよ、じゃあこの話はもうおしまいってことで。

 

 

 

私が選んだものは、溝掃除、本の虫干し、庭の草刈りと力仕事三つだ。

アーチャーの筋力ステータスはDだが、サーヴァントの腕力と人間の腕力だと、天と地程の差がある。

つまるところ、力仕事バッチコーイ!である。

えーっと、最初の依頼はどれにしようかな・・・よし、かるーく溝の掃除から行ってみようか。

 

 

 

 

~Fランク依頼その1~

 

ラフィールと別れ、私はラピッドの分身・・・面倒だからラピッドⅡと呼ぼうか。

ラピッドⅡと依頼主のところへ向かっていた。

 

「スライムの研究中、何故か実験体のスライムが巨大化・・・無事討伐されたものの、スライムの身体の一部が溝に詰まっているのでどうにかして欲しい、か。ああ、ここだな依頼主の家は」

 

ちょっと怪しい佇まいの家のドアを叩くと、いかにも研究者だとわかるような身なりの青年が顔を出した。

私の顔を見るなり、怯えたような情けない顔で恐る恐る口を開く。

 

「あ、あの・・・どちら様で・・・?」

 

私は安心させるように微笑み、ギルドカードを提示する。

 

「ジェフ・マイリーさんですね。あなたの依頼を受け、ここに来ましたアーチャーといいます。早速、スライムの詰まった溝の掃除にかかりたいのですが・・・現場まで案内して頂けますか」

 

ついでに、ギルドカードの記録用魔石を起動させると、掲示板に貼ってあった依頼書の内容が、そっくりそのままホログラムのように魔石の放つ光の中に浮き上がる。

 

「あ・・・ありがとうございます!まさか、こんな依頼を受けてくれる冒険者の方がいたなんて!ええっと、ちょっと待ってて下さい、スコップどこ置いたっけ!?」

 

文字通り飛び上がって、依頼主のジェフさんは喜色満面に部屋へと引っ込んだ。

ガラガラガッシャーン!と何かが崩れる音、ドタドタと走り回る音と非常に気忙しい。

 

「アーチャー様、何やら初っ端から笑えるスタートでございますね」

 

私の肩に留まっているラピッドⅡは、呆れ混じりの溜め息を吐いてみせるのだった。

さて、青年に手渡されたスコップを担いで、私達は現場に向かう。

 

「あの、ここになります」

 

ジェフさんが指さした場所には、幅が60センチ程度の溝に、みっちりと青いぷるぷるした物質が詰まっていた。

長さは約3メートル程、予想してたよりは長くはないが、詰まっているスライムはそれなりに重量がありそうだった。

 

「い、一応ブルースライムなので、炎を浴びせると弾力はなくなります。お願いできますか・・・?」

 

遠慮がちなアドバイスを聞き、それなら話は早いとばかりにラピッドⅡが小さな翼を自慢げに広げた。

 

「それなら話は早いですね。アーチャー様、ワタクシにお任せを!」

「うわああっ!飛び蜥蜴(フライング・リザード)が喋った!?」

 

途端、ジェフさんが飛び退いて叫んだ。

 

「は・・・・・はあああぁ!?蜥蜴!?誰が蜥蜴ですか、誰が!!!」

 

ラピッドⅡは余程腹に据えかねたのか、口から青い炎をドロドロ吐きながら喚いた。

私はすかさずその口を指先で挟み込み、スコップを担ぎ直して足早に掃除場所へと向かう。

 

「むぐー!むぐっ、むうー!!」

「はい、クールダウンクールダウン」

 

じたばたと暴れるラピッドⅡに、私は言い聞かせる。

そっと指を離すと、ラピッドⅡは大層不服そうな顔で唸るように言った。

 

「何と無礼な・・・蜥蜴・・・言うに事欠いて、このワタクシを蜥蜴・・・!」

「まあまあ。知らぬ者からすれば、そう見えてしまうんだろう。君は立派なドラゴンだ、私は間違えんよ」

 

ラピッドⅡを宥めながら、私はちょっと納得していた。

なるほど、皆がラピッドを見て反応が薄かったのは、飛び蜥蜴(フライング・リザード)?という生き物だと思われていたわけか。これはこれで便利かもな。

半ば八つ当たり気味に、スライムに炎を浴びせるラピッドⅡ。

スライムは炎を浴びると、凄まじいまでの弾力を失い、豆腐のように柔らかくなる。

それを掬っては放り出し、掬っては放り出し・・・・・・。

汗を拭いながら、無心にスコップを動かす。

途中、ジェフさんが冷たいお茶を持ってきてくれたので、休憩を挟みながら作業を繰り返す。

サーヴァントの腕力のお陰か、昼になる前に溝に詰まっていたスライムは、すっかり除去できた。

外に掬い出したものは、一箇所に纏めてラピッドⅡの炎で焼き払う。

依頼完了を伝えれば、ジェフさんは驚いて目を丸くした。

 

「も、もう終わったんですか!?」

「はい、完了です。終了確認をして頂けますか」

 

すっかり綺麗になった溝に、ジェフさんはおお、と歓声を上げる。

 

「ありがとうございます!それじゃ、依頼完了の承認をさせてもらいます」

 

私の差し出したギルドカードを受け取ると、記録用魔石を起動させる。

 

「ジェフ・マイリーから冒険者アーチャーさんへ。依頼完了です、お疲れ様でした」

 

討伐依頼だと、討伐対象の爪や牙なんかを持ってくればいいが、こういう依頼では依頼主の音声データが依頼完了の証拠になるらしい。

まずは一つ目、終了である。

 

 

~Fランク依頼その2~

 

「助かるよ、アンタみたいな若い子が手伝ってくれると。アタシ一人じゃ、日が暮れたって終わりっこないからね」

 

次の依頼は、本の虫干しだ。

依頼主は、魔法書を専門に売ってる魔女のおばさん。

店の裏に小さいながらも倉庫があり、様々な魔法書が保管されている。

 

「天気も申し分ないですね。ああ、本は立てて置いていきましょう。その方が、中まで風が入りやすいそうですから」

 

敷物の上に、どんどん本を立てて並べていく。

たまに敷石のように大きな本もあれば、クレジットカードくらい小さい本もあるので、思わずまじまじと眺めそうになってしまう。

うぅ・・・よくあるじゃん。部屋の片付けしてたらさ、知らない間に漫画とか読んでるってこと。

魅力的な誘惑を振り切って、黙々と手を動かした。

ラピッドⅡも、運べそうな大きさの本を抱えて飛んだり、立ててある本にそよ風を送ってみたりしている。

作業が終わったのは、お昼を知らせる鐘の音が響いた頃だった。

ここから三時間ほど、太陽光と風による乾燥に入る。また時間をおいて、後片付けをすれば完了だ。

 

「ああ、とりあえずお疲れさんだねぇ。丁度いい、アンタお昼食べていきなよ。アタシが腕を奮ってやるからさ!」

 

おばさんの申し出に、それは悪いと断ろうとしたその時、盛大な音で腹の虫が鳴き叫んだ。

 

「・・・・・・では、お言葉に甘えて」

 

おばさんの大爆笑を聞きながら、私はお腹を押さえたのだった。

 

 

 

~Fランク依頼その3~

 

魔女特製のハーブパスタをたっぷり頂いて、私は最後の依頼へ向かう。

本を乾燥させている間に、草刈りを済ませてしまいたいのだ。

 

「すまんねぇ、お若いの。ワシが腰さえいわせなんだら、草刈りくらい自分でするんだがねぇ」

「ぎっくり腰は安静が一番の薬です。無理はなさらないでください」

 

最後の依頼主は、庭で魔法植物を栽培している老夫婦だった。

うん、確かにぎっくり腰じゃ草刈りなんて絶対出来ないよね。

私は庭に立つと、借りた草刈り鎌を握り締めて生い茂る雑草を睨みつけた。

 

「アーチャー様、ここはワタクシにお任せ下さい!」

 

いざ、と気合を入れた瞬間、元気よくラピッドⅡが飛び出してきた。

 

「こういう時の魔法、今使わずしていつ使うのです。舞え風よ、突き立てよその刃!風の輪舞曲(ロンド・オブ・ウィンディ)!」

 

びゅうっと風が吹いたかと思えば、あれだけ元気よく庭を埋め尽くしていた雑草が、瞬く間に鎌鼬によって根元から刈り取られていく。

いや、便利といえば便利なんだが・・・私のこのやる気はどこに持っていけばいいんだ。

 

「アーチャー様、これで大まかなところは刈れました。後は、細々した箇所をお願い出来ますでしょうか」

「あっ、はい」

 

ラピッドⅡの指示に従い、隅の方や鉢植えの裏側など、鎌鼬では届かなかったところの草を刈っていく。

なかなかの広さの庭だったが、ラピッドⅡのお陰でさくっと完了。

時間がちょっと余ってしまったので、鉢植えの場所替えなんかもサービスで手伝ってしまった。

 

「草刈り以外のことも手伝って貰って悪かったねぇ。これ、大したものじゃないけどお礼だよ。持っていっておくれ」

 

奥さんのばあちゃんは、嬉しそうに笑いながら青い花弁の沢山詰まった袋を差し出してくる。

 

「ロゼ・ラピスの花弁だよ。煎じて飲むと、魔力不足からくる目眩や吐き気を抑える効果があるのさ」

 

思わぬ収穫を、有り難く頂戴する。これは後々役立ちそうな物を頂けたな。

 

「感謝します」

「にしてもアンタ、かなり腕利きの魔獣使い(テイマー)だねぇ。ワシ、あんな芸達者な飛び蜥蜴(フライング・リザード)初めて見たよ」

 

ぎっくり腰のじいちゃんから、聞きなれぬ単語を拾って首を傾げる。

 

「ですから!ワタクシ蜥蜴などでは・・・・・・はぁ、もういいです。ワタクシのご主人は魔獣使い(テイマー)ではありませんよ。本職は弓兵でございますからね、これは副業のようなものです」

 

ラピッドは自分を蜥蜴ではないと否定することに疲れたのか、やや投げやり気味に適当な誤魔化しをする。

おい、私魔獣使い(テイマー)にはなった覚えないんだが。

とりあえず草刈りは終わり、完了の承認をもらって、私は2番目の依頼主のところまで戻る。

これでホントのラスト、頑張るぞ!

 

~Fランク依頼その2、最後のシメ~

 

魔女のおばさんの書店まで戻れば、早くもおばさんは虫干ししていた本を直している途中だった。

 

「すみません、先にやらせてしまって」

 

急いで作業に加わり、本を纏めて持ち上げる。

 

「いいんだよ、アタシもさっき手をつけ出したとこなんだ」

 

二人で倉庫と庭とを往復する。

全て片付け終わった頃には、もう時間は夕方になっていた。

 

「ありがとうね、助かったよ」

 

すっかり茜色になってしまった空。

あー、今日はほとんど屋外にいたな・・・・・・ちょっと疲れた。

おばさんから承認を貰い、これで全ての依頼が完了した。

 

「さ、ギルドに戻りましょうアーチャー様。ラフィール様も、もう戻られております」

「ああ、急ごう」

 

 

 

 

 

ギルドの扉を開けると、ラフィールがほっとしたように迎えてくれる。

 

「おかえりなさい、お疲れ様でした」

 

柔らかな労いの言葉に、ちょっとジーンとする。

今まで、おかえりなさいなんて言ってもらったことなかったから。

 

「ただいま。ラフィール、ラピッド」

 

ラピッドⅡは私の肩を離れ、小さな光の塊となってラピッド本体に吸収されていく。

残ったのは、依代として使われていた鱗だけ。

鱗を巾着にしまうと、私達はギルドカードを持って報酬の受け取りに向かう。

安いものだが、まぁFランクだから仕方ないだろう。

これにて、初めての依頼は幕引きだ。

さて、お腹も空いた事だし、宿に戻って夕飯にしようか。

 

 




で・・・できた・・・・・・長かった・・・!
どうも、松虫です。
お盆休みは皆様どうだったでしょうか?まったり出来ましたか?
今回は突然のデータ吹っ飛びのお陰で、更新がめっちゃ遅れました・・・
思ってるところまで行くには長すぎたので、一度ここで切ります(´•ω•`)
あんまり中身のない話ですなぁ、なかなか進展しねぇー!
宝具の話はツッコミ指摘、多々あるかと思いますが独自解釈ということでご容赦下さいませ。
次はー、いよいよ出したいお告げの真相!
真夜中の散歩で得たものは一体何なのか?
気を抜きつつご期待宜しくお願いします。
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