赤い弓兵に成り代わり、ファンタジー世界で第二の人生を   作:松虫

12 / 20
あてんしょーん。
初っ端から主人公とラフィール君の一緒に寝てるシーンから入るよ!
大したことないと思うけど、苦手な人は飛ばしてね!


狼少女、弓兵をマスターと呼ぶ

~アーチャー視点~

 

朝。私は静かな空気の中、ぼんやりと目を開けた。

あー、昨日の夜は大変だったな・・・・・・でもやっぱり破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)は便利だわ、あれこの世界の魔法師には天敵レベルの宝具じゃないか?

そんなことを考えながら、胸にくっついている温かい何かをきゅっと抱きしめた。

 

「んん・・・・・・師匠・・・くるしー、です・・・」

 

もぞもぞ動く温かい何かの、舌っ足らずな声が胸元から聞こえて瞠目する。

何度か瞬きして、ボケた視界を正常に戻す。

 

「ら、ラフィール君・・・?」

 

スヤァ・・・と眠る弟子の姿。そっか、狼さんにベッド譲ってあげたんだったな。

にしても温かい・・・・・・子供体温だなー、こりゃ二度寝できるわ。やんないけど。

 

「ラフィール君・・・起きられるかね?おーい」

 

腕を解いて、ラフィールの肩を軽く揺する。

何度か声をかけると、やっと紫色の瞳とお目見えできた。

 

「おはよう。昨日はお疲れ様だったな」

 

ぽーっとした目でこっちを見る彼だが、微かに呻いた後、再び私の胸に顔を埋めてしまう。

何だ何だ、えらく可愛いじゃないか今日は。おねーさんはドキドキしてしまうぞ。

 

「こら、今度寝惚けてるのは君か。私は君の布団じゃないんだぞ」

 

私は苦笑が隠せない。これ、正気に戻った時どんな反応するんだろ。

もう少し寝かせてあげたいのは山々だが、朝食の時間もあることだし、そろそろ起きてもらわないと。

 

「ラフィール君!起・き・ろ!」

 

耳元で、大きな声を張り上げると、今度こそガバッと顔を上げた。

 

「二度目になるが、おはよう。随分と積極的だったな、対応に困ってしまったよ」

 

ちょっとからかってみると、あっという間に首まで真っ赤になる。

高速で私から離れると、勢い余ってベッドから転げ落ちそうになるのを支えてやる。

 

「あのっ、そのっ、違うんですよ!?さっきのは!ええっと、僕・・・!」

「あー、はいはいわかってるわかってる。大丈夫だほら深呼吸してー」

 

恥ずかしさでパニックを起こして、オーバーヒートしているラフィール。

私はからかいすぎたかな、と思って背中を摩ってやる。

 

「う・・・うぅ・・・最悪だ・・・・・・何で僕、こんな・・・幻覚なんて・・・」

 

どんよりと雲を背負う彼に、私は乾いた笑いを返すだけだ。

うん、今は何を言ってもダメな気がする。ほっとこう。

 

「・・・ラフィール様にも、あんな可愛らしいところがあるのですね」

「ラピッド、今はちょーっと静かにしていようか」

 

先に起きて、面白そうに様子を伺っていたラピッドが追い打ちをかける。

それにシーッと静かにしてね、のジェスチャーをして、私はベッドから立ち上がる。

狼はまだすうすうと眠っており、起きる気配はない。

 

「眠りは余程深いのでしょう。とりあえずはワタクシ達を信用してくれたみたいなので、今は身体を徹底的に休めて、回復を促しているようですね」

 

死んだように眠る狼が少し心配だが、私達の胃が限界だったので、朝食をとりに一階へ向かおうか。

何せ、昨日の大騒ぎで空腹感がやばい。

 

「ラフィール君、いつまでぶつぶつ言ってるんだ。早く着替えて、朝食を食べに行くぞ」

 

さて、今日はどんな食事が出るんだろう。

私はシャツを脱ぎ、いつもの服に手を伸ばした。

 

 

 

 

いつもより早めに朝食を食べ終わり、私達は足早に部屋に戻る。

やっぱり心配だし、もしかしたら目を覚ましているかもしれない。

ガチャリとドアを開けると、そこには。

 

「待ってた、マスター」

 

はいはいはいストオオオオップウウウゥ!!!

何となく想像はしてたけどなー!やっぱりなー!

惜しげもなく晒された素肌は、透き通るように真っ白で細雪のよう。

光に照らされて、きらきら輝く髪は銀糸の如く。

何よりも印象的なのは、少し釣り上がり気味の双眼だ。

ルビーを彷彿させる、燃えるような真紅の瞳。

それはそれは見目麗しい美少女が、ベッドの上でちょこんと座っていた・・・・・・全裸で。

私はダッシュで毛布を引っ掴み、バッと広げて美少女を包み込んだ。そのスピードは、今の所の最高速度と言っても過言ではない。

というか、さっきこの子なんて言った?マスターって言ったっけ?誰が?私が?

 

「マスター、マスター。良かった、ちゃんと戻ってきてくれた」

 

嬉しげに美少女は、私をマスター、と繰り返して呼ぶ。

身体に被せた毛布の裾が、ハタハタと動いている。

改めてこの子を見ると、頭の上に髪と同色の耳が生えている。

そうか、毛布の裾を動かしているのは、この子の尻尾だな。

 

「目が覚めてよかった。君、名前は?」

 

私の問いかけに、すかさず美少女が答える。

 

「スノウ。スノウ・グランディー!」

 

元気いっぱいの名乗り声に、うっかりいい子だねー、と言いそうになるのをぐっと堪えて。

 

「スノウ、か。君にぴったりの名前だな。スノウ、お腹は空いているか?」

「お腹・・・空いている。スノウ、ほとんど食べてない」

 

へにょっと頭上の耳が伏せられる。あ・・・あざとい・・・無意識の可愛さか?

私は安心させるように微笑んでみせた。

 

「わかった、何か作ってあげよう。ラフィール君、申し訳ないが、ラピッドと二人でお使いに行ってきてくれないか。ミルクとパンと、卵が欲しいんだ」

 

こわごわと様子を伺っていたラフィールを呼び、欲しいものを告げると、彼は二つ返事で引き受けてくれた。

 

「はい、わかりました。あ、出るついでに、べナードさんにキッチン貸してくださいってお願いしときますね!」

 

うーん、うちの弟子マジ優秀。

ラピッドと二人、連れ立って出かけていくのを見送ると、私はスノウを毛布簀巻き状態のまま、抱き上げる。

ラフィール達がお使いに行ってくれている間に、この子をお風呂に入れてあげないと。

私は急いでアリッサさんのところへと走った。

慌ただしく、見知らぬ美少女を抱いて登場した私を見て、アリッサさんは目を丸くする。

 

「どうしたんですか、その子・・・!?」

「昨日拾ったんです。大怪我をしていて、一晩がかりで治療していました。今朝目を覚まして、申し訳ないのですがこの子を風呂に入れてあげてもらえないでしょうか」

 

さすがに、今この性別で私が入れてやるわけにはいかない。

今の所、こういったことで頼れるのはアリッサさんしかいないのだ。

 

「この子は白狼の一族!?アーチャーさん、一体何処で拾ったんです?」

 

べナードさんも同じく驚いた顔をしているが、詳しく話すよりも先にお風呂だ。

 

「まずは風呂が先です。お腹も空かせているので、もうしばらくしたらキッチンをお借りします」

 

アリッサさんにスノウを渡そうとすると、彼女は剣呑な唸り声をあげる。

 

「スノウ、大丈夫だ。この人は、君に酷いことはしない」

 

ぽんぽんと頭を撫でながら言えば、悲しげな瞳と目が合った。

私以外の人が怖いんだろうな。

 

「大丈夫だ、大丈夫。私の言う事が信じられないか?」

 

ふるる、と首を振るスノウは、小さな声で言う。

 

「わかった。マスターが言うなら、噛み付いたりしない」

「いい子だ。綺麗になったら、ご飯を食べよう。あともう少し我慢できるね」

 

私の腕から自ら降りると、スノウは怖々アリッサさんに近付いていく。

 

「偉いわね。私はアリッサ、お風呂は平気?」

 

にっこりと笑い、アリッサさんはスノウを覗き込んだ。

 

「・・・・・・平気」

 

まだ顔は強ばっているが、大人しくアリッサさんに手を引かれ、洗い場に入っていくのを見送る。

 

「ただいま!」

「戻りました!」

 

グッドタイミングで、ラフィールとラピッドがドアから飛び込んできた。

ラフィールの手にはミルクの瓶と卵が入った籠、ラピッドの手には長いパンがそれぞれ握られている。

 

「おかえり、二人共。べナードさん、砂糖をお借りしますね」

 

二人からミルクとパンと卵受け取り、キッチンへ入る。

 

「師匠、何作るんですか?」

 

横から興味津々と言わんがばかりに、ラフィールが顔を覗かせる。

 

「そんなに大したものではないよ」

 

腕まくりをして、私はパンを切っていく。

食べやすいように小さくすると、鍋の中にパンとミルクを入れ、火にかけた。

砂糖は程よい甘さになるように、量を加減して少しずつ。

温まってきたら、溶いた卵を入れてよくかき混ぜる。

ふんわり固まってきたら、火から下ろしてできあがりだ。

器にとって、スプーンを出していると背後から凄い視線を感じる。

見れば、ラフィールとラピッドが涎を垂らさんばかりの顔で、こちらを凝視していた。

 

「・・・・・・・・・食べるかね?」

 

こくり、と無言で頷く二人が面白くて、笑い声を噛み殺しながら器をもう二つ出す。

まぁいいけどさ、多めに作っておいたから。

 

「アーチャー様、これは一体何という名前なのですか?」

 

自分用に盛られた器の前で、早く食べたいとウズウズしているラピッドが私を見上げる。

 

「確か、パンプディングだったと思うが」

 

昔よくこれ作ったなー、晩御飯なしにされた時とか、夜中にそっと起きてさー。

古いパンなら使っても文句言われないから、よく助けられた。

塩鯖みたいな目になりそうになるのを、いかんいかんと踏みとどまる。

そうこうしていると、バタバタと賑やかしい騒音が聞こえてきた。

 

「ダメよ、スノウちゃん!まだ髪が濡れてるの!」

「マスター!お風呂終わった!」

 

ドアが開いて、ポーンと白い塊が私の胸に突撃してきた。

それを抱きとめると、すっかり綺麗さっぱりしたスノウが、ブルーのワンピースを着てにこにこしながら私を見ている。

あ、めっちゃ尻尾振ってる・・・狼ってよりわんこだなぁ、可愛い。

 

「こらこら、まだ終わってないぞ。すみませんアリッサさん、後は私がやります」

 

アリッサさんが持ってきてくれた手拭いを借りて、スノウの髪を丁寧に拭いてやる。

ああ、これでよし。雫が落ちてたからなー、後で床とかも拭いておこう。

スノウはパンプディングの甘い匂いに惹かれたのか、チラチラとテーブルの上を見ている。

 

「ほら、ここに座って。君の分だ、ゆっくり食べるんだぞ。いっきに食べると、お腹が痛くなってしまうからな」

 

椅子を引いてやると、素早くそこに座る。

スプーンを握りしめ、がっつきそうになるのを注意しながらゆっくり食べさせる。

 

「これ、美味しいです!甘くてふわとろで・・・!」

「パンプディング、といいましたか。これはよく冷やしてフルーツを乗せてもいいのでは!?」

 

ラフィールとラピッドも、目をキラキラさせてパンプディングを頬張っている。

おお、よかった好評のようだ。

 

「・・・スノウ、ゆっくり食べなさい。ゆっくり、だ」

 

ちょっと目を離した隙に、掃除機のように器の中身を吸い込むスノウ。凄いなどんな肺活量してんだ君は。

パンプディングを四回平らげて、ようやく彼女は一息つけたみたいだ。

洗い物を済ませると、私は皆に事の始まりを説明した。

当然、新島少年の「お告げ」のことは伏せて、多少話を変更しているが。

一人で危ないことして!とラフィールとラピッドからは叱られた。ごめんなさい。

 

 

 

「で、これからどうするんですか」

 

汚してしまったシーツを洗いながら、ラフィールが口を開く。

ちなみにスノウは、お腹が一杯になって眠ってしまっている。

 

「どうする、とは?」

 

くそ、やっぱり血の汚れって落ちにくい。洗濯板投影しておけばよかったか?

ゴシゴシとシーツを擦り合わせ、私はラフィールに聞き返す。

 

「スノウさんのことですよ。べナードさんが言ってたじゃないですか。白狼の一族にマスターって呼ばれるのが、どういうことか」

 

シーツを濯いで、もう一度ゴシゴシ、ゴシゴシ。

もこもこした泡をぼんやり眺め、白狼の一族なぁ・・・・・とべナードさんの説明を思い出していた。

スタンフィールドでは、牙、爪、翼、鱗の四種類の民がいるらしい。

その四種類の「始まり」となった一族が、四大神祖と呼ばれ今でも崇められているそうだ。

牙の一族では、狼の姿の「マカミ」。

爪の一族では、猫の姿の「バステト」。

翼の一族では、鳥の姿の「スザク」。

鱗の一族では、鰐の姿の「マカラ」。

聞いた瞬間、ちょっとちょっと、とつっこみそうになった。これ、ぜーんぶ神様の名前じゃないか!ってね。

マカミは日本の犬神だし、バステトはエジプトの猫頭の女神だ。スザクは中国、南の方角の守護神だし、マカラはインドの怪魚または鰐で、神々の騎獣と呼ばれている。

何でそんなに詳しいのかって?それは私が読書家でもあり、ゲーム大好き人間でもあったからだ。

詳しくは女〇転生でもやってみるといい、面白いから。

おっと話が逸れた。白狼の一族とは、その牙の一族の神祖、マカミの直系だと言われているらしい。

あれだな、日本の天皇の家系の最初が須佐之男命(スサノオノミコト)だっていうのと似たようなもんか。

まぁそういうことで、白狼の一族は言わばSR級の存在らしい。

 

「まぁ、目立つだろうな。Fランク冒険者が、そんな珍しい存在にマスターと呼ばれるのは」

 

・・・・・・何とか落ちたか?後は干すだけだな。

よっこらしょとシーツを抱えて、物干しにバサッと引っ掛ける。これでよし!

 

「それもありますけど!スノウさん、奴隷になりそうなところを逃げてきたんでしょう?だったらきっと、その奴隷商人が行方を探してるはずですよ」

 

ラフィールは私の正面に回り込んできて、眉を下げた情けない表情で言った。

うん、そりゃそうだろうな。白狼の一族の女の子なんてレア物、欲しがる奴はごまんといるだろう。

んで、Fランク冒険者の私がスノウと一緒にいるところを見られたら・・・噂はあっという間に広まる。

その噂を嗅ぎつけて、奴隷商人がやってくるはずだ。

 

「ラフィール君。私はスノウを、そう易々と渡す気は無いぞ」

 

私はふふん、と勝気に笑ってみせる。あんな可愛い子、酷い目に合うとわかっていて、はいそうですかと引き渡すものか。

 

「向こうから現れてくれれば、好都合。そうでなければ、こちらから出向こう。まずは、スノウにちゃんと話を聞かなければな」

 

違法に攫われてきたと、ラピッドは言っていたな。

今頃、レア物の目玉商品を血眼になって捜しているだろう。

だったら、撒き餌をすればいい。とびきりいい匂いのする撒き餌なら、そんなに待たなくても寄ってくるはずだ。

 

「無抵抗の相手にあんな仕打ちをする連中を、私は許さん。必ずぶちのめしてやる」

 

私の脳裏に、スノウの受けた数々の傷が浮かんでは消えていく。

鎖で縛って打ち据えて、挙句の果てに魔法で焼いただと?

許せるか、許せるものか。

抵抗出来ないまま奮われる暴力が、どれ程恐ろしいか・・・・・・私はそれをよく知っている。

だからこそ、余計に腹立たしくて耐えられないのかもしれない。

私の醸し出す怒気に、ラフィールは怯えたような、困ったような顔をした。

 

「師匠。師匠がスノウさんを守るつもりでいるのはよーく分かりました・・・・・・でも」

 

大丈夫なんですよね、とラフィールは消え入りそうな声で言う。

 

「大丈夫だとも。いざとなれば、ラピッドや君がいる。ラフィール君、まさか君・・・私が奴隷商人如きに遅れをとるとでも思っているのかね?」

 

ちょっと不服そうに顔を顰めれば、ラフィールは慌てて首を振る。

 

「そんなこと!万が一にだってありませんよ!」

「だったら、そんな萎れた顔をするんじゃない。シャキッとしないか、シャキッと」

 

私は勢い良く彼の背中を叩いた。ほれ、闘魂注入!

それに噎せながらも、ラフィールははい、と頷いてくれる。

さて、弟子の不安もちょっと解消できたことだし。

紙とペンってどこにあるのかなー、べナードさんに聞いてみよっと。

あ、それより先に、スノウに話を聞かなくちゃダメだな。

色々と考えるのは、それが終わってからにしよう。

 

 

 

 

 

それからしばらく。

スノウが目を覚ましたので、私達は彼女に話を聞くために、部屋に集まっていた。

 

「スノウ、最初から話をしてくれないか。君はどういう経緯でルーンベルグに来たんだ」

 

私とラピッド、ラフィール、べナードさん、アリッサさんに囲まれ、スノウは落ち着かないように耳をぴこぴこさせている。

 

「・・・・・・スノウ、スタンフィールドの村、ガルムにいた。一人で狩りに出かけて、変な罠にかかって、捕まった。ここに着いた日は、マスターに拾ってもらった日。船と、陸を続けて多分・・・一ヶ月くらいかかったと思う」

 

紅い目を伏せ気味に、ぽつぽつと話し始めるスノウ。

にしてもこの子、かなり喋り方に特徴があるな・・・ギルドにいるマリーナさんは、普通に喋ってたけど、やっぱり接客業してるからかな。

 

「鎖に繋がれてた場所、スノウの他にも人魚と、妖精がいた。数はわからない。スノウ、一番抵抗したから、一番殴られた。その時に聞こえたのが、あんまり殴るな、貴族連中に売りつけるのに値が下がる、って」

 

殴られたことを思い出したのか、白い手が隣に座る私に伸ばされ、袖の辺りをぎゅうっと握られる。

 

「スノウさん、何でもいい。誰かの名前など言ってなかったですか?」

 

厳しい顔をしたべナードさんの問いかけに、スノウは考え込むように黙り込んだ。

 

「・・・・・・よく、わからないけど。ここに着く日の、二日くらい前。スノウを買うのは多分、アウレリスだろうって話、してた。これ、名前?」

 

アウレリス、という名を耳にした途端、べナードさんの眉間の皺が一層深まった。

 

「べナードさん、聞き覚えのある名前なんですか?」

 

いつもの温和な雰囲気をかっ飛ばして、はっきりと嫌悪感を漂わせる顔つきのべナードさん。

ラフィールが、その変わりように目を丸くさせている。

 

「ええ。シグルド・ヴァン・サウザンの息子、アウレリス・ヴァン・サウザン。父親のシグルド様は、ルーンベルグ王立騎士団の一つ「金星騎士団」の団長で、品行方正なお方と聞きますが・・・・・・その息子のアウレリス様は、父親の権威を笠に着ての傍若無人な振る舞いが目立つ方ですね」

 

おおぅ、きたよきたよこういう系!

私はフフッ、とよくある話に笑ってしまう。

 

「なるほど。詳細を聞かずとも、色々わかる気がしますよ」

 

口元が嘲笑の形に歪んで、おっといけないと手で隠した。

そんな私をチラッと見て、べナードさんは続けた。

 

「ですが、どうやってお父様の目を盗んで奴隷を買うつもりなんでしょう。さすがにお屋敷に置いておくわけにはいかないと思うのですが・・・」

 

うーんと考えるべナードさんに、アリッサさんが口を開いた。

 

「あら、あるじゃないですかいい場所が」

 

え?と皆の視線がアリッサさんに注がれる。

彼女はおっとり微笑んではいるが、目だけは冷え冷えとしている。

 

「娼館、とかどうです?娼館に売ってしまえば、後は足繁く通うだけですしね。店側も、珍しい種族を売ってくれたとあらば、色々とサービスする筈でしょうし」

 

氷のような声が淡々と紡ぐ説明に、うわ、えげつなぁ・・・・・・という感想しか出てこない。

 

「可能性としては一番高いでしょうね。ですが、娼館といっても多く存在しますから・・・アタリをつけるのは難しゅうございますよ」

 

いつもにこやかなアリッサさんの見せた、氷のような目と声に固まっていると、一人平気そうにラピッドが彼女の肩に移動した。

 

「大丈夫よ、ラピッドちゃん。大体貴族が出入りしてる娼館は決まってるの。その辺の安い所は見向きもしないわ・・・そうね、高級娼館のある場所を重点的に調べればいいと思うわ。べナード、ウルスさん辺りなら、何か知ってるんじゃないの?」

 

あの人、昔はよくそういう場所にお世話になってたみたいだから。とアリッサさんは軽く息を吐いた。

娼館か・・・・・・となると、ラフィールは入れないなぁ。

私もあんまり気が進まないが、私が一応適任になるのか?

まぁ中身が女だから、色気たっぷりな娼婦のお姉様方の誘惑には引っかからないと思うけど。

あれ?なんか私、今の言い方だとオカマっぽくない?身体は男、心は女って。

・・・・・・私の性別ってどーなるんだろうな。いや、とりあえず男なんだろうけどさ。

ちょっとジェンダーがトランスしそうになるが、この辺りのことは非常にナイーブな問題なので考えないでおこう。

とりあえず、スノウから大体の情報は聞き出せた。

後は作戦の準備をするだけだ・・・・・・頑張って投影するぞー。

 

 

 

 

 

ちなみに。

私の作ったパンプディングはその後、「風の微笑み亭」の名物デザートになり、べナードさん達からえらく感謝されるのであった。

 




どうも皆様お疲れ様です松虫です。
残暑未だ厳しくもありますが、秋の空気ですね。
夜には虫の声が聞こえてきますし、もうハロウィンの飾りが店頭には出ております。
早いなぁ、もう秋か・・・この間セミ鳴きだしたと思ったのになぁ。
さて、今回はこんな話になりました。如何でございましょうか。
謎の狼さんは獣人美少女スノウちゃんでございます。
拙い喋り方ですが、年齢は17歳くらいのイメージでお願いします、幼女ではありません、はい。
あとですね、活動報告でも書かせて頂きましたが、お気に入り登録100件超え、誠にありがとうございます。
こ、こんな自己満足作品にこんなにお気に入り登録して頂けるとは・・・・・・!
非常に励みになります、この場を借りてもう一度御礼申し上げます。
そのうち100件登録ありがとう短編?的なものを上げたいと考えておりますので、のんびり待っていただければ・・・・・・
それでは、次回またお会いいたしましょー!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。