赤い弓兵に成り代わり、ファンタジー世界で第二の人生を   作:松虫

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弓兵、按摩師の真似事をする

スノウから話を聞いた後、私達は更に考えを纏めるべく、自室で会議をしていた。

 

「えー、では私から話すぞ。私は情報収集をメインにやっていきたい。ギルドに行って、ウルスさんに色々と聞きたいこともあるし。それから、夜は奴隷商人連中を釣る為の撒き餌を仕込みたいと思う」

「はい、師匠。奴隷商人連中を釣る撒き餌って、具体的には何をするんですか?」

 

挙手したラフィールに、私は考えていたことを述べる。

 

「少しばかり怪しい格好をして、あんまり評判の宜しくない所で「白い狼は幾らくらいで売れるのか?」と聞きまくる。その内噂になるだろうし、ウルスさんにも頼んで他の冒険者達に酒場とかで噂を流してもらうんだ」

「はい却下!」

「即答!?」

 

スパッとラフィールに提案を却下され、私は何でだよ!と彼にツッコミを入れた。

 

「絶ッッ対駄目です!第一危ないでしょうが!!」

「いや、でもこうしないと奴隷商人を割り出せないと思うんだが・・・・・・」

 

アメジストの双眼をひん剥いて、お怒り顔のラフィール。

困ったな、こうでもしないと必要なことはわからないと思うんだけど、まぁ確かに危険だよな。

さて、どうやって説き伏せたものかと考えていると、ラピッドが助け舟を出してくれた。

 

「まぁまぁ。ラフィール様の心配もわかりますが、ワタクシもアーチャー様の意見に賛成でございます。顔を隠し、衣服を変えてしまえば誰だかわからないので大丈夫でしょう。何より、アーチャー様の足の速さはラフィール様もご存知のはずでは?」

 

ラフィールの肩に留まって、ラピッドはその手で彼の頬を撫でる。

 

「そ、それはそうですけど・・・・・・」

 

もごもごと口籠もってしまうラフィールに、今まで黙って私達のやりとりを見ていたスノウが口を開いた。

 

「マスターの足、凄く早い。牙の一族と同じくらいか・・・それ以上。ラフィール、仲間のこと、心配するの大事。でも、信頼するの、もっと大事」

 

紅い瞳がラフィールを凝視して、淡々と言う。

三対一で私の勝ち、かな?

ラフィールは難しい顔で唸っていたが、やがて大きな溜め息を吐いた。

 

「わかりましたよ。師匠の足の速さは規格外だってことはよく知ってます。でも、危ない事はあんまりしてほしくないんですよ。毎日心配じゃないですか」

 

渋々、本当に渋々といった感じでラフィールは口を尖らせる。

その心配が嬉しくて、私はわしゃわしゃとラフィールの頭を両手で撫で回す。

 

「ちょ、わっ・・・・・・もう!そんなペットみたいな感じで撫でるの、やめてくださいってば!」

「ん?いやぁ、ちょっと嬉しくてね。誰かに心配されるなんて、私の記憶にはなかったから」

 

私がそう言えば、ラフィールは複雑な顔で黙り込んだ。

 

「と、とりあえず!師匠はしっかり、がっつり変装してくださいね。万が一、億が一、念には念を入れて!」

「はーい」

 

仕切り直すように咳払いをして言うラフィールに、私はニヨニヨ笑いながら返事をした。んっふふ、かーわいいなぁ少年。

 

「では、次にワタクシが。スノウ様をどうするかでございますが・・・・・・定番ですが髪と尻尾を染める、というのは如何でございましょう?」

「はい、ラピッド」

「アーチャー様、どうぞ」

 

次の議題に入り、私はサッと挙手。

ラピッドはテーブルの真ん中に立って、クリクリした目で私を見つめる。

 

「髪を染めるのと、男装させるのはどうだろう。帽子も被らせた方がいいと思うが・・・スノウ、染めても平気かね?」

 

こういうことは、本人にもしっかり許可を貰っときたい。何せ、スノウは女の子なのだ。髪は女の命、って言うしね。

 

「平気。スノウ白いから、きっとよく染まると思う」

 

意外と本人も前向きだった。心配する必要はあんまりなかったようだ。

 

「それでは明日、すぐに髪の染料とお洋服を買いに行きましょう。ラフィール様、ワタクシと一緒に行っていただけますか?」

「わかりました。アリッサさんに、染料を売っているお店の場所聞いておきますね」

 

ラフィールは頷き、次は自分の番だとばかりに姿勢を正して座り直す。

 

「最後は僕ですか。えーっと、スノウさんの護衛についてですが・・・・・・話を聞いた感じ、師匠が忙しいようなので必然的に僕とラピッドで務めることになりそうですね。あと、依頼についても僕達二人でこなしていくということでいいですか?」

「ラフィール!」

「スノウさん、どうぞ」

 

スノウは私達の真似をして、勢いよく挙手した。うん可愛い。

 

「スノウも、ラフィールとラピッドと一緒に、依頼やりたい・・・!」

 

ルビーの瞳をキラキラと輝かせながら言うスノウに、ラフィールはそれは・・・と言葉を詰まらせる。

うーん、やっぱりそう来たか。私は予想通りの要望に苦笑を隠せない。

 

「ラフィール君、スノウを閉じ込めておくことは難しいぞ」

「ですよねー・・・・・・」

 

私の言葉に、ラフィールはがっくりと項垂れる。

普通の人間でも、部屋に篭りっぱなしだと色々良くないのだ。

スノウみたいな獣人だと、尚良くないだろう。

わんこの散歩みたいに、一日に何時間か運動させてあげた方がいいんだよな。

悩む私達に、ラピッドがはい、と挙手する。

 

「皆様、スノウ様は三日に一日というペースで依頼に参加、という形で行くのはどうでしょうか。依頼に出かけない間は、この「風の微笑み亭」でべナード様とアリッサ様のお手伝い等をさせてもらえれば、お部屋にずっといなければならないということは免れるかと」

 

ラピッドの提案に、私も賛成だ、と言う。

スノウの安全を考えれば、部屋の中にずっと居た方がいいだろうが・・・・・・きっとストレスが半端ない。

具合を悪くするくらいなら、短時間でもいいから外に出る日を決めてあげた方が断然いいだろう。

 

「うーん、僕もそう思いますよ。でも、もしスノウさんのことがバレて、攫われでもしたらどうするんです?そりゃ、そうならないように僕とラピッドが頑張りますけど」

 

そうだなぁ、そこなんだよなぁラフィール。GPSなんてものは当然この世界にはないし、FGOの宝具でもそんなのはなかった・・・と思う。

頭を悩ませていると、ラピッドが再び挙手した。

 

「このワタクシを誰だと思っているのです!フェアリードラゴンはドラゴン種の中でも、最も魔法に特化した種族なのですよ。生活魔法から攻撃魔法、召喚魔法etc!ありとあらゆるニーズにお応え出来るのです!」

 

どどん、と効果音が付きそうなくらい、声高らかにラピッドは宣言する。

よし、これからは困った時のラピッドだな。

 

「アーチャー様、以前お渡ししたワタクシの鱗はまだお持ちでしょうか?」

 

私は頷いて、巾着を取り出した。

中指の爪程の大きさの鱗を一枚、ラピッドに差し出す。

ってかフェアリードラゴンの鱗スゲェな、何にでも使えるし・・・・・・あれか、こういうものって触媒になりやすいのかな。

私がそんなことを考えていると、ラピッドはおもむろに爪を自分の腕に突き刺した。

 

「え、いきなり何を・・・!?」

 

慌てる私達を余所に、鱗に一滴落とされた血は、すうっとスポンジに水が吸い込まれるように消えていった。

 

「スノウ様、これを普段からお持ちください。もしスノウ様が、ワタクシ達の力及ばず攫われてしまっても、これを持っていてくだされば居場所を知ることが出来ますので」

 

ラピッドは鱗を摘み上げ、スノウに手渡した。

スノウはそれを受け取ると、困ったように俯く。

 

「どうしたんですか?」

 

その様子を見て、ラフィールが声をかけると。

 

「これ、小さいから・・・・・・スノウ、すぐになくす、と思う」

 

何だそんなことか。私はカバンの中を漁ると、小さい箱に入った裁縫セットを持ってきた。

 

「スノウ、それを私に」

 

太めの針で穴を開けると、細い革紐を通し輪にして結ぶ。簡易的なもので申し訳ないが、これを首からかけておけばいいだろう。

 

「ほら、これでどうだ。これならそう簡単になくしはしないだろう。いいかね、これは服の内側に隠して、他人に見せたりしてはいけないぞ」

 

パッと顔を輝かせたスノウは、いそいそとラピッドの鱗を服の中に隠した。

これでスノウにmade inラピッドのGPSも付けられたし、思いつく限りの考えも纏まった。

それじゃあ、私も準備に入るとするか!

 

 

 

 

 

 

翌日、私は依頼に出かけるラピッドとラフィールを見送り、スノウの事をべナード夫妻にお願いすると、ギルドへと足を運んでいた。

目的は勿論、ウルスさんに会うためだ。

相変わらず賑やかしい通りを抜け、手土産に買ったドライフルーツ入りのパウンドケーキの包みを、落とさないように抱え込む。

ギルド前に到着し、私はよし、と気合いを入れた。さて、いい話は聞けるだろうか?

 

「おはようございます。ウルスさんはいらっしゃいますか」

 

スイングドアをくぐり抜けて、そう声をかけると。

 

「だあああぁ!しつこいってんだよロッサ!朝からお前は一々鬱陶しい!」

「はああぁ~??お前が適当な薬師を紹介するから、こんな事になっとるんだろうが!」

 

朝一番から、喧しいおっさんの怒鳴り声が私の鼓膜を貫通する。

何事かとそっちを見れば、一人はギルドマスターのウルスさん。

もう一人は・・・・・・見たこともない男がいた。

五十歳前半だろうか。年の割には綺麗なプラチナブロンドの髪を背中の真ん中辺りまで伸ばし、一つに結っている。

目は赤味の強い紅茶色で、若い時はさぞやモテたであろう・・・・・・いや、今でも充分イケオジか。

黒地の丈の長めなジャケットには、袖や裾に銀糸の刺繍が施され、一目で上質な物だとわかる。

白の細身のパンツに、脛まである黒い編み上げブーツを履いており、何処ぞの貴族のようだ。

 

「一体何事ですか、マリーナさん。あ、これ皆さんでどうぞ」

 

受付嬢の猫獣人、マリーナさんに手土産を渡して、耳打ちするように尋ねれば、彼女は苦笑しながら私に教えてくれた。

 

「まぁ、ありがとうございます。あの方は、ロッサ・フィアン様といって、ウルスさんの元・冒険者仲間なんです。冒険者を引退なさってからも、よく遊びに来てくれるんですよ」

 

へぇ、そういえばウルスさん、元はSランク冒険者だったってアリッサさんが言ってたような・・・・・・。

何でこんな朝から、あんな言い合いしてんだろ。

私がまじまじと見ていると、視線を感じたのかウルスさんと目が合った。

 

「よう、アーチャーじゃねぇか!どうしたんだ、こんな朝っぱらから!」

「おはようございます。それはこちらのセリフですよ」

 

片手を上げて、ウルスさんの元気な挨拶に歩み寄りながら返事を返す。

 

「お?あんたここいらじゃ見ない顔だな。新入りか」

 

貴族風の男は、興味深そうに私を覗き込む。

動きや顔つきはひょうきんだが、その目は注意深く私を観察しているようだった。

私はぴしっと背筋を伸ばし、軽く一礼する。

 

「初めまして。最近、こちらのギルドで登録させて頂きました、アーチャーといいます。ウルス殿には、日頃からお世話になっております。貴方のお名前を伺っても?」

 

ちょっと丁寧すぎたかと思うと、男はほほーう、と楽しそうな表情を浮かべた。

 

「最近の冒険者連中は、わりと礼儀がなってない阿呆共が多いが・・・・・・なるほどなるほど、ふむふむ。ウルス、こいつがお前の言ってた奴か?」

 

男は立ち上がると、私をじろじろと眺め回す。

背丈は私よりも高く、近付くとジャケットの上からでもがっちりした筋肉を纏っているのがわかった。

ひとしきり私を観察すると、気が済んだのか少し離れる。

そしてニカッと破顔して、私に手を差し出した。

 

「俺はロッサ・フィアン。ウルスとは長い付き合いでな、よくここに仕事の息抜きに来るんだ。アーチャーだったか、お前の話はウルスから聞いてるぜ」

 

握手を交わし、ロッサさんはまぁ座れよ、と自分の隣を指し示す。

私は素直にそれに従うと、マリーナさんが紅茶とケーキを持ってきてくれた。

 

「ウルスさん、ロッサさん。アーチャーさんがパウンドケーキ持ってきてくれたんですよ。言い争いはそこまでにして、これ食べて静かにしてください」

 

マリーナさんは、朝っぱらから聞かされ続けたおっさんの声にイライラしてたのか、若干笑顔が怖い。

 

「お二人のせいで、今日は誰も冒険者の方が入ってこられないじゃないですか。いい加減にしないと、私だって怒りますよ?」

「「すみませんでした」」

 

金色の目から、漆黒の瞳孔が真ん丸く開いている。

猫って不機嫌になると、瞳孔がこうなるんだよな・・・・・・でも、人の顔でこんな目で見られると、普通に怖い。

ソッコーに謝るおっさん達に、フンッとそっぽを向くマリーナさん。

 

「アーチャーさん、ごゆっくりなさってくださいね♪」

「あ、ああ。ありがとう、マリーナさん」

「いえいえ。美味しそうなケーキありがとうございます、私も頂きますね」

 

私の方を振り向いた顔は、先程の怖い顔ではなくいつも通りのマリーナさんだった。

何か人形浄瑠璃で、こんな仕掛けのある人形見たことあるな・・・・・・綺麗な女の人の顔から、一気に鬼の顔になる人形。

マリーナさんが受付に戻ってから、ロッサさんがボソッと言う。

 

「何であんなに態度が違うんだ・・・・・・」

「そりゃお前・・・見りゃわかるだろ」

 

ウルスさんとロッサさんは、私の顔をじろじろ見て深い溜め息を吐く。

・・・・・・何なんだ、人の顔見てそんな溜め息吐くなよ。

 

「・・・というか、言い争いの原因は何なんですか?」

 

あんな大声でギャーギャー言ってたんだから、何か相当の理由があるのかと思って聞いてみれば。

 

「おお、聞いてくれるか!もうなー、こいつのせいでなー、俺は大変な目にあってんだよ!」

「だァかァらァ!何で俺のせいなんだよ!?俺は普通に薬師を紹介しただけだろうが!」

「はいはーい、どうどう落ち着いて下さいネー」

 

額を押し付け合う勢いで、おっさん達は睨み合う。

それを私はげんなりしつつ、ベリっと引き剥がした。

 

「また怒鳴り合えば、次はマリーナさんに張り倒されますよ」

 

私の冷たい声に、ビクッと肩を跳ねさせておっさん達は口を噤む。

全く、世話の焼けるダメ親父だ。

 

「質問の仕方を変えましょうか。ロッサさん、ウルスさんの言葉を聞くに、貴方は何処か具合の悪いところがあって、それをどうにかしたくて薬師を紹介してもらった。そうですね?」

 

双方に喋らせるとダメだ。よって私が質問して、それに答えてもらう形式にしよう。

ロッサさんが頷くのを見て、私は更に質問を続ける。

 

「具体的には、何処が悪いんですか」

「あーーっと・・・最近目の痛みと、頭痛が酷いんだよ。それで、こいつに薬師を紹介してもらったんだが・・・・・・」

「薬の効き目がなかった、というわけですね」

 

ジト目でロッサさんはウルスさんを見る。

そういえば、この世界の薬はほとんど漢方薬みたいなものだ。

漢方薬って、確かに副作用がない代わりに効き目が穏やかじゃなかったっけ。

 

「ロッサさん、きちんと毎日継続して薬を飲んでますか」

 

私の問いかけに、ロッサさんの目がウロウロと泳ぐ。

 

「お前な!毎日きちんと飲まねぇと、そりゃ効くわけないだろ!馬鹿か!」

「うるせぇよ!俺はお前と違って毎日忙しいの!」

「だから静かにしろっつってんだろ」

 

またまた両者を引き剥がし、ついでにデコピンをかましておく。

痛みに悶絶するおっさんを見下ろし、私はあぁめんどくせぇ、と言いたくなるのを堪えて紅茶をグイッと煽った。

 

「ロッサさん。その目の痛みと頭痛、眼精疲労と肩凝りによるものですね」

「・・・がんせいひろう?かたこり?」

 

なんだそりゃ、と首を傾げるロッサさん。

あれ、知らないの・・・?マジで?

 

「普段、細かい字を見る仕事をされてますか?」

「してるしてる!最近書類が多くてなー、ずっと座りっぱなしなんだよ!」

 

原因それな。間違いなくそれな。

ケーキを食べながら、私は説明を続けた。あ、これ美味しいな。

 

「簡単に言うと、眼精疲労は目の疲れです。細かい字をずっと見続けていると、目だって疲れてしまうんですよ。合間合間に休憩を挟んで、遠くを眺めたり目を閉じたりして目を休ませて上げてください。肩凝りは、長時間同じ姿勢でいると、重たい頭を支える首と肩の筋肉が疲労して、血の巡りが悪くなり固まってしまうことです。命に別状はないですが、かなり堪えると思いますよ」

「今でも充分しんどいんだよ・・・・・・なぁ、薬飲む以外に即効性のある方法って知らないか?」

 

ロッサさんは情けない顔をして私に詰め寄った。近ぇよ、少し離れろ。

路線をズレるどころか、もう空でも飛んでるんじゃないかと思うくらい外れまくった話に、私はうんざりする。

だが、話に乗ってしまったものは仕方ない。

これはさっさとひと働きして、本来の目的を果たそうか。

私はやれやれと肩を竦めて、ロッサさんに言った。

 

「そりゃ、マッサージが一番だと思いますよ。お嫌でなければ、私がさせていただき」

「よし採用!」

 

即決かよ。少しは悩めよ。

よっこらせ、と立ち上がり、私はウルスさんに尋ねた。

 

「ウルスさん、仮眠室・・・もしくは横になれる場所はありますか?」

 

 

 

数分後、私は何故か膝の上におっさんの頭を乗せて、マッサージを施していた。

 

「あ゛~・・・・・・最高・・・・・・」

「それは何より」

 

確かに私はマッサージ係を買って出たよ。だが膝枕までするとは言ってないんだけど。別途料金請求しようかな。

 

「・・・・・・アーチャーよぉ、お前も苦労するよな」

「お気遣い痛み入ります」

 

ウルスさんの哀れみの視線と言葉を受け流し、ポイントを指圧する。

眉の辺り、鎖骨付近、腕。

特に鎖骨付近や腕はガチガチに強ばって硬くなっており、ロッサさんの言葉通り仕事は真面目にやってるらしい。

そうそう、ついでに耳ももみもみしておいてやる。

耳はツボの宝庫で、眼精疲労と頭痛には効果てきめんなのだ。

膝枕に関しては、男でもいいから癒しが欲しい、人肌って癒されるじゃん。というぶっ飛んだ理屈をゴリ押しされ、断りきれずに今に至る。

 

「私の膝なんぞ、硬くて痛いだけだと思うんですがね」

 

そうボヤけば、閉じていた目をかっ開いて、ロッサさんが叫んだ。

 

「思ったより柔らかいぞ!力を抜いた状態だと、ハリがあって普通に気持ちいいな!」

「・・・・・・はぁ、そうですか」

 

もうどうにでもせーや。

若干無我の境地に達せそうな感じで、私は腕から掌にかけて揉みほぐしていった。

その後、膝からロッサさんを退かし、うつ伏せにして首から肩、背中を押してやる。

余りにも硬すぎるところは、肘を使ってピンポイントで。

肩甲骨に沿って、張った筋を解すように。

 

「はい、お疲れ様でした。これにて終了、です」

「っはあああぁぁー・・・・・・・・・生き返ったああぁー・・・」

 

背中を擦り、最後にぽんぽんと軽く叩いて終了を告げると、満足そうな溜め息と声を洩らしてロッサさんは起き上がる。

 

「で、どうなんだよ。ちったあ楽になったのかこの野郎」

 

呆れ顔のウルスさんに、ロッサさんはスッキリ顔で答える。

 

「ちょっとどころか、かなり楽になったぞ!おい、あんた!俺の専属にならんか!?」

「お断りします。私には、まだしたいことがありますので」

「即答・・・・・・」

 

しょんぼりと項垂れるロッサさんを一瞥し、ようやく私は本題に入ろうと口火を切る。

 

「物凄く遠回りしましたが・・・・・・今日はウルスさんにご相談がありまして」

 

ああ、ここまでの道のりは、実に長かった!

 

 

 

 

 

 

場所を移して話がしたいと言う私に、ウルスさんはそれなら奥の部屋に行くかと提案してくれる。

それに、何故か当然のように着いて来るロッサさん。

 

「・・・何故貴方が一緒に来るんですか」

「いやー、何となく?」

 

いや帰れよおっさん。何となくじゃねぇよ。

額を手で覆い、私は溜め息を吐き出した。

 

「まぁまぁ。アーチャー、話したいことってェのは・・・・・・面倒事か?」

 

最後の言葉だけ、声を潜めてウルスさんは言った。

 

「・・・・・・はい」

 

小さな声で答える私に、ウルスさんはニヤリとした笑みを返してくる。

 

「そうかよ。なら、こいつにも聞いてもらえ。なぁに、ロッサは見た目はこんなだが、信用のおける相手だ・・・・・・きっと役に立つと思うぜ」

 

うーん、ウルスさんがそこまで言うなら、いいのかな。

私はロッサさんをじっと眺めた。

 

「いやん、そんなに見つめちゃらめぇ・・・!」

「脳天ぶち抜いていいですか」

「・・・・・・いいんじゃね?」

 

頬を両手で押さえ、くねりと身を捻るおっさんに、ついうっかり殺意を抱いてしまう。

本当に大丈夫なんだろうか、この人。

 




台風ですね・・・。
もう台風は見飽きました(。 ー`ωー´)
今回は思いっきり趣味に走った回になりました 
好きなんですよ、マッサージとかの話。そして行きたくなる!
眼精疲労からの頭痛って本当にキツいですよね・・・・・・あれヘタすると気持ち悪くなるからなお辛い。
さて、新たな人物が登場しました。変なおっさんです(笑)
この変なおっさんがはたして何者なのか?アーチャーはこれから何をしでかそうとしているのか?
次回は楽しいコスプレで街を徘徊するかも。乞うご期待!








そのうち短編でマッサージ&耳かきとか書いてみたい願望・・・・・・
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