赤い弓兵に成り代わり、ファンタジー世界で第二の人生を   作:松虫

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本題突入、そしてコスプレ

ウルスさんに相談しに行ったのに、何故かおっさんのマッサージをするハメになってしまったんだが、まぁ色々あって何とか無事本題に入ることができた。

奥まった部屋に案内され、向かい合って腰を下ろす。

そして、スノウを拾った時のことを話した。

 

「・・・ふむ、それじゃあアーチャー殿。君はそのスノウちゃんを酷い目に合わせた奴隷商人の捕獲と、一緒に連れてこられた少女達を解放しようとしているわけか。ついでに、隷属の首輪を違法リークしてる国の連中も、纏めてしょっぴこうっていうことな」

 

話を聞いたロッサさんが、私のしたいことを纏めてくれる。

 

「国に関しては、証拠さえ見つけられれば後は勝手にどうこうするでしょう。私はただ、スノウや他の女の子達を解放してあげたいだけです」

 

少し目を伏せ、私は言う。

そう。私は別に、国の捕物にまで手を出すつもりはないのだ。私の目的の端っこに、少し国が絡んでいるだけ。

 

「正直、証拠さえあげることが出来れば、後で国がどう動こうと興味はありません。国の不始末は、国がとるべきですからね。それが出来ないのであれば、辿る先は緩やかな崩壊しかない」

 

国であろうと、人であろうと。自分の仕出かした事に対して責任を取れなければ、いずれ()() ()

最初は些細なことであっても、それはやがて波紋のように大きくなっていくだろう。

 

「私は、スノウを髪も染めず、服も変えず、そのままの姿で外を歩かせてやりたいだけです」

 

たったそれだけのこと。普通なら、なにも難しくないことなんだ。

私の言葉を黙って聞いていたロッサさんは、よし!と一声あげて立ち上がった。

 

「そういうことなら協力しよう。俺も知り合いに声をかけて、残りの少女達を売りつけた可能性のある娼館をあたってみよう」

「しょうがねぇな。俺も馴染みの冒険者連中に、お前の話す「撒き餌」の噂を流すように言っといてやるよ」

 

ウルスさんも立ち上がると、私の側までやってきて肩をバシッと叩く。

 

「やるぞ、アーチャー。お前もヘマするんじゃねぇぞ!」

「・・・ご助力、感謝します」

 

よっしゃ、これで強力な味方が二人も出来た。

次は、必要なアイテムの準備だ!

 

 

 

 

一足先に宿に帰ってくると、髪を隠すために帽子を目深に被ったスノウが、廊下の拭き掃除に精を出していた。

ラフィールが今日、髪の染料と男物の服を買って帰ってくるって言ってたな。

 

「おかえりなさい、マスター!」

 

私の顔を見るなり、尻尾を振りながら飛んでくる。

それを受け止め、よしよしと頭を撫でてやると尾を振るスピードが上がった。

 

「ただいま、スノウ・・・・・・もう掃除はいいのかね」

 

スノウの背後に放りっぱなしの掃除道具を見やって言えば、彼女はハッとしたように目を見開く。

 

「まだ終わってない・・・!」

「そうだな。このままだとダメだろう?」

 

スノウはパッと私から離れると、いそいそと元の場所に戻った。

 

「ここの廊下、ピカピカにする!スノウ、頑張る!」

 

モップを片手に、キリッと顔を引き締める。

うんうん、仕事は最後までやるのが大事だよね。

 

「うん、スノウは偉いな。お手伝い、しっかりやるんだぞ」

 

ゴシゴシと廊下を擦る姿を見送って、私は部屋へと入る。

今から考えるのは、怪しい噂を流す時に着る変装用の衣装だ。

紙とペンを借りようと思ったが、べナードさん達が忙しそうだったので止めた。

ベッドに腰掛けて、さてどうしたものかと考え込む。

私の肌と髪の色はかなり目立つから、全身覆い隠せるものがいい。

アサシン・エミヤの初期段階はどうだろう。いや、カラーリングにも気をつけるべきか。赤は避けた方がいい。

普段の私の格好とは、似ても似つかないようなスタイル・・・・・・アヴィケブロン?うーん止めとこう、あれ普通に派手だし。

 

「・・・・・・呪腕のハサン先生とか?」

 

第一段階の格好だと、黒い布を全身に被ってるし、顔は白い髑髏面で隠してるし。というか、もうあと思いつかない。

 

「よし・・・・・・ハサン先生にするか。トレース・オン!」

 

ふわっと光の粒子が集まったかと思うと、伸ばした両手に真っ黒なマントと白い髑髏面が引っかかる。

 

「おお、凄いなこれ。これをこうして・・・・・・こうか」

 

ちょっと試着してみる。マントを羽織って、仮面を装着。

あ、これ頭丸出しだから、フードも付けとこう。

 

「こういう感じだな。あとは手袋と靴だけか」

 

黒い手袋とブーツを投影して、こっちも試着。ついでに短刀も出してみる。

 

「・・・瞬きの間に殺してみせよう」

 

ポーズをキメて、ハサン先生のセリフを言ってみる。

ヤベ、何かスゲェ楽しくなってきた。

 

「魂なぞ飴細工よ!」

 

シュバッ、ヒュンッ、シャキーン!!!

テンションがアガってきたので、一人部屋で短刀を振り回し遊んでいると。

 

「師匠?いるんですか?」

 

ガチャッとドアが開き、ラフィールが入ってきた。

短刀を構えた私と目が合い、一瞬の沈黙後。

 

「・・・わああああああぁ!?!?」

 

ラフィール、大・絶・叫。

うん、部屋の中にこんなの居たら、誰だってびっくりするわな。

 

「ラフィール君!すまん私だ!」

 

慌てて仮面をとり、マントを脱ぎ捨てる。

涙目になってる彼に駆け寄り、必死に宥める。

 

「しっ、しし、師匠・・・!な、何やってんですかそんな格好で!?」

「ホントにすまん!怖かったな」

 

心臓がドキドキしてるのか、ラフィールは胸の辺りを押さえている。

思わず笑ってしまえば、恨めしそうな顔で睨まれる。

 

「もう・・・!びっくりしたんですからね」

「うん、凄い声だったな」

 

今になって笑いの波がやってくる。

あんまり笑ってしまうと悪い、と思ってるのに、ラフィールの悲鳴を思い出すと肩が震える。

 

「おや、賑やかにやっておりますね」

 

ひょっこりと顔を覗かせたラピッドも、さっきの大騒ぎを見ていたのか同じように声を震わせている。

 

「ラフィール、大きな声だった。どきどき、大丈夫?」

 

あ、スノウもいたんだな。お掃除終わったー?

スノウは暑そうに帽子を脱いでいる。

 

「師匠の馬鹿!いつまで笑ってんですか!」

「いやごめん、ちょっとツボに入って・・・・・・痛い痛い痛い、杖はダメだ杖は!」

 

すっかり機嫌を損ねたラフィールは、照れ隠しもあってか杖でバシバシ私を叩いてくる。

それをするりと躱して、私は降参のポーズをとった。

 

「にしても、随分個性的なお姿になりましたね。ラフィール様が驚かれるのも無理はないかと」

 

ラピッドが外した髑髏面を両手に持ち、ちらほらと眺めながら言う。

 

「マスター!これ着たら、誰もマスターだってわからない!」

 

スノウはマントを被って嬉しそうにヒラヒラさせている。

あんまり激しく遊ばないでね、破れたりはしないと思うけど・・・万能布ハッサンだっけそれ。

 

「こらこら、大事なものだから返してくれ。ラフィール君、依頼お疲れ様。今日はどうだった?」

 

スノウからマントを受け取って、小さく畳んでテーブルの上に置くと、私はラフィールに本日の依頼について聞いてみる。

ラフィールは気を取り直すように咳払いをして、口を開いた。

 

「今日は薬屋さんの在庫整理に行きました。今日と明日と、二日間の依頼です。あ、そうそう。師匠、これどうぞ」

 

差し出されたラフィールの掌には、胡桃ほどの大きさの黒い玉が四つ。

 

「これは?」

 

手に取ってみると、ビー玉のように表面は硝子で覆われ、中にゆらゆらと煙?霧?のようなものが揺らめいていた。

 

「依頼主の方から頂きました、煙幕だそうです。外側の硝子を壊すと、中から黒い煙が出てきて辺り一面に広がるみたいですね。師匠、この変装を用意したっていうことは、今晩辺りから出る予定なんでしょう。もしもの時の逃走ように持っていってください」

 

ヤダうちの弟子マジいい子・・・・・・!

つい撫で撫でしそうになったが、あんまりやりすぎると嫌がられるかなと思ってぐっと押し止める。

 

「さすが我が愛弟子、ありがたく頂こう」

 

四つある内、二つ私は受け取る。残りの二つは、ラフィールとスノウに。

 

「二人も持ってるといい。何があるともわからないからね」

 

ラフィールとスノウは顔を見合わせ、頷きあって煙幕玉を手に取った。

 

「ラフィール様、早速スノウ様の髪と尾を染めましょう。スノウ様、よろしいですね?」

 

お買い物袋に頭を突っ込んでガサゴソしつつ、ラピッドが取り出してきたのは黒い小瓶。どうやら、これが染料らしい。

 

「うん。スノウ、何かすることある?」

「それでは、髪と尾を濡らしてきてくださいませ。濡らしたらちゃんと拭いてくるように。いいですね」

 

次々とラピッドは道具を出してくる。

黒い小瓶の他にも、透明な液体の入った小瓶、木でできた皿二つ、刷毛、細い筆、大判の布数枚、そして最後に男物の 服か何着か。

様子を観察していると、ラフィールが黒い小瓶の中身を木皿に空け、刷毛でよく混ぜ合わせ始めた。

 

「う・・・ちょっと油臭いですね。師匠、窓開けてもらっていいですか」

 

確かに油っぽい臭いが結構鼻にクる。私はいそいそと窓を開け、臭気を外に出した。

そうこうしてると、髪と尾をびっしょり湿らせてスノウが登場する。

 

「スノウ、ちゃんと拭けてないぞ。こっちへおいで」

 

スノウの首から引っ掛けていたタオルをとると、わしわしと濡れているところを拭いてやる。

 

「それではスノウ様、こちらへお掛け下さい」

 

ラピッドは床に布を敷き、その上に置いた椅子にスノウを座らせると、更に布を肩から纏わせた。

 

「うぅ、これ臭い・・・・・・!」

「暫く我慢だ。スノウ、頑張れ」

 

グルグルと嫌そうにスノウが唸る。

髪の染め方は、現代世界にいたときとよく似ていた。

まず黒い染料を刷毛と筆で髪に乗せ、少し時間を置いて馴染ませる。

そして、多分定着剤であろう透明な液体を塗り重ね、今度は布を被せて温める。

ラピッドが魔法で温風を吐き出している姿がドライヤーそっくりに見えて、笑いを噛み殺していたのは内緒だ。

二時間ほどでスノウの髪と尾は、ツヤツヤした漆黒に染まった。

 

「ふむ、色が違うだけで別人だな」

「マスター、スノウこの色似合う?」

 

傍まで駆け寄ってくると、スノウは上目遣いに私を見上げる。あざと可愛い。

それに頭を撫でてやりながら答えた。

 

「ああ。黒いスノウも可愛いよ」

 

耳の辺りをくすぐるようにしてやれば、頬を染めてくすくすと笑う。

 

「あとはこの服に着替えれば、男装完成ですね。スノウ様、早速どうぞ!」

 

アリッサさんの部屋から借りてきた、折り畳み式の衝立に入り数分。

白いシャツとベージュのベスト、チャコールグレーのパンツに黒い靴を身につけたスノウが、そろそろと出てきた。

それでキャスケットを被れば、靴磨きの男の子みたいだ。

 

「変じゃない?」

「よく似合ってるよ。しかし、随分雰囲気が変わったな」

「はい。これで少しはバレにくくなったんじゃないですか?」

 

スノウの男装姿を皆で眺め、見た目の変わりように感心する。

よし。スノウの変装も完成したし、私も今晩から頑張るぞー!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~とある職人の話~

 

いや、俺も長い間この街で過ごしてきて、色んな奴を見てきたさ。

真面目そうな奴、気性の荒い奴、訳ありの奴・・・・・・ホントに色々、な。

でも、昨日久し振りにめちゃくちゃ変な奴を見たんだ。

えぇ?変な奴ならそこいらにいるって?

馬鹿野郎、そういう意味の変な奴じゃねぇよ。

昨日の夜、一杯引っ掛けた後によ、俺は家に帰ろうとしてたんだよ。

その日は結構疲れてて、普段はあんまりしねぇんだが、近道をして帰ったんだ。

お前も知ってんだろ。マディ通りを横切れば、俺ん家までの距離がうんと近くなるって。

あそこの通りは物騒だからな・・・いつもなら絶対通らねぇんだがよ、その日は早く家でゆっくりしたくて思わず通っちまった。

ああ、相変わらずクソみてぇな通りだよ。物乞いに立ちんぼ娼婦、酒に酔ったゴロツキがうようよしてやがる。

まあ、でもあれだ、通る道を間違えなかったら、酷い目にゃ遭わねぇ。

俺は安全ルートを足早に通り過ぎてたんだが、ふと視界の端に何か動くものを見つけて、思わず足を止めたんだ。

明かりは月明かりだけの中、暗い路地にそいつは立ってたんだ。

真っ黒なマントで上から下まで覆ってよ、タッパは俺よりあるんだぜ。

あ?そいつの顔?

・・・・・・どんな面してやがったと思う?

ちょ、おい待て待て!相変わらずせっかちな野郎だなお前って奴はよ。

髑髏だよ髑髏。真っ白な髑髏の面を被ってたのさ。

そりゃ驚いたよ!思わず大声上げそうになって、必死で呑み込んだがな。

だってお前、こんなとこで大声あげてみろ。そいつに何されるかわかんねぇだろ。

俺はしばらくそいつを睨みつけてたんだが、そいつが足音もなく近付いて来たときは殺されるかと思ったね。

・・・・・・笑い事じゃねえよ、考えてもみろ。時間は夜、辺りは人っ子一人いねぇ、目の前にゃ得体の知れねぇ奴がいて、近寄ってくるんだぜ。

固まる俺のすぐ傍までそいつは来たかと思うと、こう言ったんだ。

 

「白き狼の値は如何程なりや?」

 

最初意味がわからなくてよ、つい「はぁ?」って聞き返しちまった。

しまった殺られる、って思ったんだが、そいつは別段腹を立てた様子もなく、もう一回同じ事を言った。

 

「白き狼の値は如何程なりや?」

 

白い狼、って言えばホワイト・ウルフの毛皮くらいだろ。この時期だと、まだホワイト・ウルフは出てこねぇ・・・冬じゃねぇからな。

答えられねぇ俺を、そいつは暫く見ていたが、次の瞬間高々と飛び上がってよ。

信じられるか?助走も何もなく、その場で真上にだぞ?

おうよ、Sランク冒険者並だ。俺は呆然とそいつを見送ったよ。

追いかけなかったのか、って?あのなぁ、無茶言うなよ!俺だってまだ命は惜しいっての。一目散に走って家に帰ったさ!

 

 

 

 

 

~とある娼婦の話~

 

ちょっと、お兄さん。どうかしら、アタシと遊んでかない?

・・・・・・え?どうしてここ最近、人が少ないのかって?

お兄さん、他所から来た人?そう、なら知らないのも無理ないわね。

最近ね、この辺りに変な噂がたってるの。夜になると、死神が獲物を求めてうろつき回る・・・っていうね。

ふふ、信じてない顔ね。当然よ、アタシだって、最初は何馬鹿なこと言ってるんだか、って思ったもの。

噂を聞くようになった時期は、ここ二週間くらい前かしら。

ほら、アタシ達って、こういう仕事上街の噂とかよく聞くのよ。

最初はマディ通り・・・そうね、あんまり治安の宜しくない場所でその死神が目撃されたらしいの。

そして、今では少しずつ違う場所で死神を見たって連中が増えてきてるわ。

死神の見た目?お兄さん、そんなこと知ってどうするの?

・・・・・・へぇ、新聞のコラムに書くんだ。物好きね、お兄さん。

見た目って言っても、そんな派手じゃないわよ。真っ黒なマントとフード、顔に白い髑髏の仮面。ね、ありきたりな感じでしょう。

でも、()()目にしてみると驚くものよ。

あははっ!そうよ、アタシ見たことあるの。

驚いた?うふふ・・・驚いた顔も可愛いわ、食べちゃいたいくらい。

その死神ね、現れると必ず問いかけてくる事があるの。

知りたい?そうね・・・・・・この後、アタシと遊んでくれるなら教えてあげてもいいわ。

・・・・・・・・・・・・そんなに悩まなくてもいいじゃない。冗談よ、冗談!もう、失礼しちゃうわね。

 

「白き狼の値は如何程なりや?」

 

こう問いかけるのよ。白き狼、っていうと大体皆はホワイト・ウルフを想像するけど・・・そんなありふれた魔獣のことを死神が他人に尋ねるかしら。

アタシは絶対違うと思うわ。白き狼って多分、「誰か」を指し示す言葉なんじゃないかしら。

それか、「白き狼」について知っている「誰か」を死神は探してる、とも考えられるんじゃない?

随分自信満々じゃないか、って・・・・・・ふふっ、勘よ、勘!

アタシ、結構勘が当たることって多いの。

それにね、これは娼婦仲間の間で流れてる話なんだけど・・・・・・その死神の噂が流れ出して、何故か貴族連中が最近苛付いてるらしいの。

貴族連中って言っても、ごく数人の話で、しかも中々評判の悪い奴等が多いって話。

何か関係あるのかしらね。まぁ、アタシ達にとってはどうでもいいことなんだけど。

他に変わったことはなかったか?

うーん・・・・・・あ、そうそう。噂のせいで、ここの所夜出歩く人がめっきり減っちゃってね、アタシ達も商売上がったりなのよ。

娼婦仲間の内、何人かは死神を怖がっちゃって、出てこれなくなっちゃうくらい。

ほかの所も似たり寄ったりな状況なんでしょうけど、貴族連中御用達の高級娼館で、妙に賑わってる所があるようね。

店の名前は・・・・・・何だったかしら、ええっと・・・・・・「ゴルゴーン」だったかしら。

高級娼館はそう何軒もないから、調べればすぐにわかるんじゃない。

あら、もういいの?結局アタシとは遊んでくれないのね・・・つれない人。

・・・・・・何、これ。話を聞かせてもらったお礼?いい話を聞かせてもらったから、受け取れって?

普段なら、馬鹿にするなって引っぱたいてやるところだけど・・・貴方、アタシにさっきちゃんと「ありがとう」って言ってくれたわね。

こんな仕事をしてると、そういうお礼の言葉を言われるのって凄く稀なのよ。

ちょっと、柄にもなく嬉しかったから・・・・・・貴方のお礼、ちゃんと頂くわ。

ねぇ、今度その気になったらアタシを訪ねてきて。大抵ここにいるから、もし来てくれたら色々サービスしてあげるわ。

ふふふ、お仕事、頑張ってね。

 

 

 

 

 

 

 

~アーチャー視点~

 

いやぁ・・・・・・いーい感じに噂は広まってるみたいだねぇ。

街を歩けば、私がハサン先生のコスプレで徘徊している話が否応なしに耳に入ってくる。

毎晩出歩くのは少しまずいかな、と思ったので、ハサン先生コスプレdayはランダムにしているのだ。

にやにやと笑いたくなるのをグッと堪え、私はギルドへ足を運ぶ。ウルスさんから集まった情報を聞くためだ。

 

「こんにちは、お疲れ様です」

 

ドアを通り抜けると、ウルスさんとロッサさんが既に揃っていて、私は待たせてしまったのかと足を早めた。

 

「よう、アーチャー殿!」

「すみません、お待たせしてしまったようで」

 

ゆるーく片手をあげて挨拶してくるロッサさんに、軽く会釈する。

 

「いいって、コイツに気なんて使わなくっても。で、どうだアーチャー、仕事は上々か?」

 

ウルスさんは、私達を別室に案内しながらそう言った。

 

「ええ、上々も上々ですよ。お二人はどうですか」

 

私がそう尋ねると、二人は顔を見合わせてニタッと笑った。

 

「喜べ、いいネタが手に入ったぞ」

「お前の言ってた娼館で、きな臭い所が一箇所だけ見つかったんだ」

 

お、マジか凄いな。私は、思ったよりも早い情報に驚きつつも、二人のネットワークの広さに感心した。

 

「娼館の名前は「ゴルゴーン」。人族以外の娼婦が豊富にいてるってぇのが、この店のウリらしい。他にもこういう娼館はちらほらあるんだが、最近特に売上を伸ばしてるのがここのようだ」

 

ウルスさんは身を乗り出し、声を潜めるようにして言った。

 

「と、いうわけでだアーチャー。潜入捜査と洒落込むぞ!」

 

テンション高いな二人共。まぁ私も嫌いじゃないけどね、こういう空気。

潜入する際の私は、元Sランク冒険者ウルスさんと、その友人のロッサさんの付き人を演じる。

名前はアルク・ボーガン、真面目で堅物な下戸・・・・・・という設定らしい。

衣装の方は、ロッサさんが用意してくれるとのことだ。

作戦はシンプルに、下戸の私が無理に酒を飲み、酩酊して眠ってしまったという状態を作り、ゴルゴーンで一夜を過ごすことにする。

勿論眠ってしまうのはフリで、その一晩で内部を調査するのだ。

ウルスさんとロッサさんはその間、まあ、その、お楽しみになるとのことで。

作戦決行は明日の夜。さてさて、ちゃんと裏は取れるのやら。

 




どうもー、皆様お疲れ様です松虫です。
三連休はとっても暑かったですね・・・・・・夏かよ、と叫びたかったです。
本当は三連休中に更新したかったんですが、なんかまったりし過ぎてしまい本日になりました(A;´・ω・)
さて、今回はコスプレ回でした。ハサン先生の格好は個人的に中々素敵だと思っております。
次回は潜入の為、付き人として主人公は娼館へ向かいます。
娼館ゴルゴーン、果たして鬼が出るか蛇が出るか・・・・・・?
相変わらずナメクジの如き話のスピードですが、ほのぼの気長にお付き合いくださいませ!
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