赤い弓兵に成り代わり、ファンタジー世界で第二の人生を   作:松虫

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二人と一匹の攻防戦!

~ラフィール視点~

 

今日も快晴、いい天気だ。

朝御飯を食べた後、僕はのんびりと部屋で寛いでいた。

今日の依頼は、依頼主の都合によりお昼からスタートなのだ。

今回は、スノウも一緒に行くことになっている。

内容は、部屋の模様替えを手伝って欲しいとのことだった。

きっと、汗を沢山かくだろうから、タオルは絶対に持っていかなくては・・・。

そう思っていると、とんとん、とドアをノックする音。

 

「はーい、どうぞ!」

 

そう応じれば、ガチャリとドアが開いて、ややお疲れ気味な師匠が顔を覗かせた。

 

「ただいま・・・」

 

潜入捜査の為、普段あげている髪を下ろし、白のジャケットに黒いドレスシャツと、いつもと全く違う装いなので、凄く別人に見える。

 

「おかえりなさい、お仕事お疲れ様でした」

 

駆け寄って出迎えれば、師匠はふんわりと笑って僕の頭を撫でる。

 

「ああ。今から依頼か?」

 

ジャケットを脱いで椅子の背に引っ掛け、ドレスシャツの首元を緩めて、師匠はドサッと椅子に腰掛けた。

 

「依頼はありますが、お昼からです。スノウとラピッドは、今下で洗い物のお手伝い中ですね。僕も手伝おうとしたんですが、交代制だから!って言われて追い出されちゃいました」

 

ちょっと苦笑して言えば、師匠も同じような表情を浮かべた。

 

「・・・・・・そうか」

 

うーん、結構師匠の元気がないなぁ。これはかなり潜入捜査がしんどかったのかな。

僕は師匠の傍に寄ると、何処かぼんやり遠くを見ている目を覗き込んだ。

 

「しーしょう。大丈夫ですか?疲れてるみたいですけど」

「大丈夫、とは言い難いな。全く、ろくでもないものを見る羽目になったよ・・・・・・多分嫌な気持ちになるだろうが、聞いてくれるかね」

 

はぁ、と溜め息を吐き出す師匠に、僕は手を伸ばす。

そして、いつも僕にやってくれるみたいに、師匠の髪と頬を撫でてあげた。

 

「ラフィール君・・・?」

「身体より、気持ちが疲れちゃったんですね。本当にお疲れ様でした・・・・・・嫌な気持ちは、誰かと分け合うのが一番ですよ。僕にも、ラピッドにも、スノウさんにも、ちゃんと話してくださいね」

 

さわさわ、すりすり。

思ったより柔らかい髪と、滑らかな頬の感触。

ぽかんとしていた師匠は、やがて微かに笑って、ゆっくりと目を閉じた。

これは、もっと撫でてもいいってことだろうか。

うん、ならばそうしよう。なんてったって、僕はヒーラーだ。癒すのが僕の役目なんだから。

しばらく師匠をよしよしと撫でていると、廊下をタタタタタッと走る音がして、次の瞬間ドアが勢いよく開けられた。

 

「マスター!おかえりなさい!」

 

喜色満面のスノウさんだ。

そのまま師匠の背後から、がばっと抱きつく。

 

「こらスノウ、そんなに勢いをつけちゃ駄目だ。椅子が倒れてしまう・・・・・・ふふふ、ただいま」

 

肩越しに振り返って、師匠はスノウさんを優しく咎めた。

 

「ごめんなさい。でも、マスター、帰ってきて嬉しい!だから、走っちゃった」

 

はにかむスノウさんの肩から、ぴょこっとラピッドが顔を出す。

 

「昨晩からずーっと、スノウ様はそわそわしておられましたからね。嬉しくなってしまうのも無理はないかと。とにかく、ワタクシからも言っておきましょうか。お帰りなさいませ、アーチャー様!皆、待っておりましたよ」

 

ラピッドはスノウさんの肩を離れ、定位置である師匠の肩に留まった。やっぱり、ラピッドの場所はそこだよね。

皆に迎えられ、ようやく師匠の顔の翳りが薄まった。

 

「ラピッドも、ただいま。よし、やっと元気が出てきたみたいだ。とりあえず、皆報告を聞いてくれないか」

「あ、師匠!その前に着替えてください」

 

僕は師匠が帰ってきたときに、すぐに渡せるようしていた着替え一式を手渡した。

よれよれした服装は、この人に似合わない。

僕の自己満足に過ぎないけど、師匠にはいつでも、パリッとした格好でいてもらいたい。

 

「あ、ああ。準備がいいな、ありがとう」

 

着替えを受け取って、師匠は部屋の隅にある衝立の向こうに向かった。

数分後、いつもの格好で出てきた師匠を見て、やっぱりこの人は、赤が一番素敵だなぁと思う。

心なしか、纏う雰囲気もピシッと凛々しく、師匠は口を開いた。

 

「それでは、潜入捜査の報告をしよう。先に言っておくが、聞けば不快になること確実だ。私とて、こんな話はあまりしたくはないが・・・・・・だが、聞いてもらわねばならない」

 

僕とラピッド、そしてスノウさんは、互いに顔を見合わせた。

場所が場所なだけに、きっとエグいだろうと予測はしている。

僕達はそれぞれ、椅子やベッドに腰掛け、話を聞く体制をとったのだった。

 

 

 

 

 

「なん・・・・・・て、酷いことを・・・・・・!!」

 

話を聞き終えた僕は、それだけ言って絶句していた。

何なんだ、そのアウレリスって奴は・・・!?

変態か?変態なのか?誰かが痛がったり、苦しんだりしているところを見て喜ぶなんて!

 

「これはこれは・・・ドラゴンですらドン引きな御趣味でございますねぇ」

 

ラピッドは、エメラルドグリーンの眼に軽蔑の色を浮かべ、深々と溜め息を吐いてみせる。

そしてスノウさんは、とんでもなく怖い顔をして、喉の奥からグルル、と唸り声をあげていた。

その顔は、まさに怒り狂う狼そのもの。

 

「マスター・・・・・・その、青い人魚・・・多分、スノウと同じ時に、連れてこられた人魚・・・・・・!」

 

ようやくスノウさんが吐き出した言葉に、僕達は目を見開いた。

 

「許さない・・・!アウレリス、必ず殺す!一片の肉片も、一欠の骨も、残さない!引き裂いて、噛み砕いて、喰い殺す!」

 

激しい声を上げるスノウさんの背中を、師匠は落ち着かせるように撫でる。

 

「スノウ、あまり興奮しては駄目だ。いいかね、アウレリスは生かして捕まえる・・・・・・殺してしまっては、スノウと同じような目にあっている違法奴隷達の情報が引き出せないだろう」

 

スノウさんは、ギリッと歯を食いしばった。

握り締めた拳が、力を込め過ぎて震えている。

その手を師匠はそっと握り、掌を傷付ける前に開かせた。

 

 

「落ち着いて。必ずアウレリスは私が捕まえる。違法奴隷の少女達も、きっと解放してみせるから」

「・・・・・・うん。スノウ、マスターのこと、信じる」

 

俯いたスノウさんは、こくりと小さく頷いた。

 

「それでは、今のところギルドからの作戦連絡待ちということですね」

「そういうことだ」

 

場を仕切り直すようにラピッドが言うと、師匠は椅子に座り直した。

とりあえず、師匠の報告は以上だろうか。

そこで僕は、気になったことを口にした。

 

「一つ引っかかったんですけど・・・・・・ボガート、って奴隷商人の名前ですかね?」

 

そう。師匠の話では、娼館の主人とやらがアウレリスに向かい、ボガートにも捜索に力を尽くすように伝えておく、とか言っていたらしい。

誰だよボガートって。名前の感じからして、悪そうな奴って印象がスゴいんだけど。

 

「ああ・・・私もそう思ったんだが、ウルスさんの話によると、奴隷狩りの可能性も高いらしい」

 

奴隷狩り・・・・・・母さんから、聞いたことがある。

違法奴隷が逃げ出したとき、その奴隷達を探し出して連れ戻すことを仕事にしている連中のことだ。

普段はチンピラ紛いなことしかしてない、しょーもない奴等らしいが・・・・・・。

 

「奴隷商人が奴隷狩りを雇う。まぁ、当たり前な事だな。引き続き警戒しておこう」

「「「はい!」」」

 

難しい顔をして言う師匠に、僕達は皆で返事を返したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

さて、そうこうしてる間に、依頼に向かう時間がやってきた。

 

「本当に三人だけで大丈夫かね?」

 

心配そうな師匠は、自分もついて行きたいと言いたそうだ。

 

「大丈夫ですよ!ラピッドもいますし、スノウさんは男装してますし。場所も、そんなに遠くはありません。師匠、朝帰りで疲れてるでしょう?すぐに終わらせて、帰ってきます」

 

あんなにお疲れ顔だった師匠に、更に疲れる肉体労働はして欲しくないのだ。

お人好しなこの人のことだから、きっと頼んだ以上のことをしてしまうだろうし・・・・・・ま、それが依頼人から好かれるポイントなんだろうけど。

 

「うむ・・・・・だが、やはり危険では」

「マスター、スノウは大丈夫!アリッサから、これもらった!」

 

尚も渋る師匠に、スノウさんが何かをヒラヒラさせながら飛びついてきた。

 

「見て見て!これで顔、隠せる。スノウ、バレない!」

 

その手に持ってるのは、白い・・・布キレ?

長方形の布の両サイドに、半円状の紐がついている。

 

「・・・それはマスクか?」

 

師匠はまじまじと、スノウさんの持つ布キレを見る。

そのままいそいそとマスクを装着したスノウさんは、腰に両手を当てて何故か仁王立ち。

 

「今日の依頼、部屋の模様替え。埃立つ、これで吸わない!完璧!」

「え、あ、うん。そうだな・・・・・・」

 

自信満々に宣言するスノウさんに、何とも微妙な表情で師匠は頷いた。

そこに、呆れたと言わんがばかりのラピッドが、ドアからひょこっと顔を覗かせた。

 

「いつまでぐだぐだやってるのです。そろそろ時間ではないのですか?」

 

ホバリングしながら、キィキィとけたたましく僕達を急かす。

ちょっと待ってラピッド、今師匠を説得中なんだ!

 

「と・り・あ・え・ず!師匠はお留守番です!いいですね!?」

 

師匠の背中を、スノウさんと二人がかりで押して、部屋の中へと押し込む。

 

「ちょ、ラフィール、スノウ!」

「「大丈夫だから!休んでて!」」

 

そのまま椅子に無理矢理座らせて、二人で声を揃えて僕達は言い放った。

さすがにそこまで言われれば、師匠も不満そうながらも渋々納得してくれた。

 

「・・・・・・わかった。でも、何かあったらすぐに逃げるんだぞ。それだけは約束してくれ、いいな?」

 

師匠は両手で僕達の頭を撫で、行ってらっしゃい、と微笑んだ。

 

「ラピッド、二人のことを任せたぞ」

「承知致しました。お任せ下さいませ!」

 

ラピッドは一礼して、僕の肩に留まる。

よし、それじゃあ依頼に出発だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結論から言うと、帰りが遅くなった。

時刻は夕方・・・・・・うん、本当はもっと早く終わらせられる予定だったんだ。

依頼人は薬師さんで、家具や棚を動かしている最中に、何やら発作?を起こした人が担ぎ込まれて、急遽薬の調合が始まってしまったのだ。

お陰で予定がかなり狂ってしまい、今に至る。

 

「師匠、心配してるかな・・・」

「うん、マスター、きっとしてる」

 

ぽそっと二人呟けば、僕の肩でラピッドが苦笑する。

 

「いきなりの出来事でございましたからねぇ。帰った時は一言二言、お小言がくるかもしれません」

 

眉を寄せて、つらつらとお小言を言う師匠の様子を思い浮かべて、ふふふっと笑い声が漏れる。

 

「それじゃ、少しでもお小言が減るように、急いで帰らなきゃね・・・・・・スノウさん?」

 

突然、立ち止まったスノウさん。

振り返ってみれば、紅い目を険しく尖らせている。

 

「ラフィール、何か変。静かすぎる・・・・・・誰もいない、何も聞こえない」

「これは・・・遅効性の結界、でございましょうか」

 

ラピッドも、声に警戒を滲ませて辺りを見回している。

確かに、さっきまで人が沢山いたのに、今は僕達の周囲は人っ子一人いない。

 

「な、何これ・・・?どういうこと?」

 

なんとも言えない薄気味悪さを感じて、思わずそう言えば、真上から引き攣った笑いを含んだ絶叫が降ってきた。

 

「そォれはァ・・・」

「コぉいウぅ・・・」

「「ことおおおォォォ!!!!!」」

 

バッと見上げた先に、光るのは白く光る白刃。

見開いた僕の目に、やけにスローに映る二つの影。

あ、ヤバい僕死ぬかも。

 

「ラフィールッ!!!」

 

鞭打つような声と共に、僕の胴体がスノウさんに抱えられて、弾丸のような速度で飛び退く。

 

「アはぁ、ハズしちゃッたァ」

「でぇモ、わかッたネぇ~・・・」

「「コイツがァ、白狼の一族ゥ!!!」」

 

ゲラゲラと笑いながら、地面に刺さった鍵爪のようなでかいナイフを引っこ抜くのは、茶色のフード付きマントを身に付けた謎の男女ペア。

女の方は、派手な赤茶色のショートヘアにヘーゼルの瞳。

黒いビキニトップに、同色のショートパンツと、見惚れるようなスタイルの持ち主だが、ニタニタと気の触れたような笑みを顔中に浮かべている。

男の方は、スキンヘッドにヘーゼルの瞳、黒のタンクトップにパンツと、そしてやっぱりちょっとヤバい笑みを浮かべており、二人共よく似た格好だ。

 

「随分と派手な登場でございますね。もしや、あなた方が奴隷狩りのボガート、とやらですか?」

 

口から炎を溢れ出させ、ラピッドは臨戦態勢をとる。

 

「「ご名答ォ~!」」

 

仰々しく一礼して、二人は高々と名乗りあげた。

 

「ハロ・ボガートでェす!」

「アロ・ボガートでぇス!」

 

女の方がハロ、男の方がアロ。コイツらが、師匠の言ってた奴隷狩りか。姉弟なのかな・・・・・・?

 

 

「会えて嬉しいよォ、白い狼ちャん。今まではテキトーに捜してたんだけどォ・・・・・・」

「雇い主かラ、もう少し真面目ニ捜せッて、お小言貰っチゃってネぇ」

「ついデに、金まで倍に積まれタら、もうホンキ出すしかないじゃンか?」

 

ニタリと両眼に三日月を描き、ハロとアロは交互に喋った。

僕は震えそうになる舌に力を入れて、二人に問いかける。

 

「待って、下さい。どうして、スノウさんのことがわかったんですか?今だって、彼女は髪を染めて、男装してるのに」

 

まるで今、初めて僕の存在に気が付いたように、ハロが態とらしく驚いた顔をした。

 

「おやおやァ~?白い狼ちャんノ他にも、こォんな仔犬ちャんまでいたとはねェ。仔犬ちャん、知りたイかい?どうシてワタシ達が、白い狼ちャんの変装を見抜けタか」

 

誰が仔犬だ、誰が・・・・・・気色悪い呼び方するな。

ぐっと顔を顰め、僕は頷いてみせた。

素直にリアクションしたのに気を良くしたのか、ハロはアロに片手をあげて合図する。

 

「ほぉラ、おいでブラッドドッグ!」

 

アロの足元に、黒い魔法陣が現れ、そこからズズズッ、と何かが浮き上がってくる。

召喚魔法だ!ブラッドドッグ、って・・・・・・かなり凶暴な魔獣じゃなかったっけ!?

 

「ラフィール!スノウの、後ろに!」

「ラフィール様、お下がりください!」

 

唸り声を上げ、スノウさんとラピッドが僕の前に立ち塞がった。

僕は杖を握り締め、いつでもブラッドドッグをぶん殴れるように構える。

攻撃魔法は使えないけど、防御魔法ならいけそうだ!二人のサポートなら任せといて!

そうしてる間に、ブラッドドッグの真っ黒な頭と、乾きかけの血のような目が、魔法陣から現れた。

そこからゴツゴツとした背骨の浮き出た、厳つい身体が出てくるのかと思いきや。

 

「・・・・・・え?頭だけ・・・・!?」

 

そう、アロの隣でふわふわ浮かぶのは、ブラッドドッグの頭だけ。何これ、どういうこと!?

 

死体蘇生術(ネクロマンシー)でございますか。しかし、器用なものですね・・・死体の一部分だけ蘇生させるとは。お粗末ともいえましょうか」

 

注意深くブラッドドッグの首を観察しながら、ラピッドは言った。

それに、アロはゲラゲラとした大笑いで返す。

 

「確かニ、中途半端な出来だよなァ。でぇモ、白い狼ちゃンの匂いヲ辿るくらいナらぁ、頭だけで良いんだよォ!」

 

そう言いながら、アロは短いが太い鎖の切れ端を取り出した。

それをスノウさんの前に掲げ、ひらひらと振ってみせる。

 

「ほぉラ、運ばレてる最中に、お前を縛ってた鎖さァ。血と、その他色ンな匂いの染み込んだモンだ。大体の目星は付けてたンんだがなァ、いマいち確信が持てずにいたんダよ。さっき、オレ達のナイフが掠ったろォ?ソの時の血の匂いで、コイツが反応したッてワケ~」

 

鎖を見つめるスノウさんの顔が、険しさを増す。

その腕は、白いシャツがスパッと切れて、浅い切り傷から血が滲んでいた。

つまり、スノウさんが捕まって縛られていた鎖の匂いを、あのブラッドドッグの頭に覚えさせて、僕達を発見して目星を付けた後、確認の為に襲った訳か。

ウルフタイプの魔獣は鼻が恐ろしく効く。これは、誤魔化せそうにない。

 

「アはは!というわけデぇ、お喋りはおシまいィ!」

「そロそロ、オレ達にオ仕事させテくれよナぁ!」

 

ギラリとナイフが、鈍く光った。

そして、濁った唸り声を上げるブラッドドッグの首。

 

「「イィィヤッホオオオォォ!!!」」

 

奇声と共に、ナイフを振りかざしてハロとアロの二人が踊りかかってくる。

 

筋力強化(パワーブラスト)

「轟け、震撼せよ。雷霆の針(ケラウノス・ニードル)

 

スノウさんの身体が、ぼんやりと光を放った。

にんまりと、凶暴そうな笑みを彼女は浮かべて、ルビーの瞳が狂喜に輝く。

 

「ちょうど、むしゃくしゃしてた。お前等で憂さ晴らし、する」

「奇遇でございますね、スノウ様。ワタクシも、今朝の話を聞いてムカついていた所なのですよ」

 

対するラピッドの周囲は、バチバチと小さな雷が針状になって浮遊している。

あ、これ絶対僕邪魔になるから離れてよっと。

慌てて数歩、距離をとると、次の瞬間スノウさんとラピッドは、電光石火の勢いでハロとアロを迎え撃った。

スノウさんはハロ、ラピッドはアロを相手にするようだ。

そして、僕はというと・・・・・・・・・。

 

「やっぱり、これになるよね・・・」

 

牙を剥き出したブラッドドッグの首である。

うぅ、気持ち悪い・・・正直、アンデッド系の魔獣は苦手なのだ。

でも、こいつがラピッド達の邪魔をしてはいけない。

 

「防いで殴るくらいなら、僕だって!鍛練の結果、ここで見せてやるっ!!」

 

いつまでも守られるばっかりじゃ駄目だ!こんな犬の首くらい、僕一人で対処してみせる!

 

 

 

 

 

 

 

恐ろしい咆哮をあげて、僕に喰らい付こうとするブラッドドッグの首。

ガバッと開かれた牙の並んだ口を、僕は杖を真横にして防いだ。

首だけの癖に、何処からそんな力が出てくるのかと不思議なくらいの勢いに、僕は歯を食いしばって耐える。

「こ、の・・・!爆ぜる光よ、黒き影を打ち払え!閃光(フラッシュ)!」

 

杖に埋め込まれた宝玉から、カッと激しい光が炸裂した。

普通なら、目くらましにしかならない魔法だが、アンデッド系の魔獣には効果てきめんだ。

光に皮膚を焼かれ、ギャン!と悲鳴をあげてブラッドドッグの首は杖から口を離し、地面を転がった。

間発入れずに、杖を振り上げて首を殴ろうとするが、ブラッドドッグの口が大きく開いて、炎の吐息(フレア・ブレス)が吐かれた。

 

「守れ、我が身を害する力より!魔法防壁(マジック・プロテクション)

 

慌てず騒がず、魔法防御に特化した防御魔法を展開させる。

跳ね返しの魔法はまだ練習が必要だが、防ぐだけの魔法なら問題ない。

炎の勢いは強いが、魔力をコントロールして盾の部分に凝縮させる。

そのまま炎を防ぎつつ、一歩一歩僕はブラッドドッグの首に近付いていった。

チャンスは、こいつの息が切れて、炎が止まったその一瞬。

今、こいつの視界は広がる炎のせいで悪い・・・近付いてくる僕の姿は、見えにくい筈だ。

ごうごうと、激しい熱が僕を包み込む。杖を握る両腕も、段々重たくなってきた。あと少し・・・あと少し・・・・・・!

フッと炎が消えたその瞬間、僕は素早く魔法防壁(マジック・プロテクション)を解除して杖をブラッドドッグの口内に突っ込んだ。

そして、もう一度閃光(フラッシュ)の魔法を叩き込む。

柔らかい口の中に、あの強烈な光を浴びせかけられては、いくら凶暴な魔獣でもひとたまりもないらしい。

耳障りな絶叫をあげてブラッドドッグの首は焼け落ち、カラン、と足元に頭骨だけが落ちてきた。

 

「・・・・・・勝った!」

 

その頭骨も、杖の先で殴って粉砕しておく。

ここまですれば、もう一度復活することはない筈だ。

ラピッドや、スノウさんの相手にしてる連中と違って、だいぶささやかな敵だったが・・・初陣にしては上出来じゃないだろうか多分。

ちょっとだけ、勝利の余韻に浸っていると。

 

「グぎゃッ!!」

「がハっ!!」

 

ドガァン!と地面をブチ割る勢いで、僕の両サイドにハロとアロが激突した。

そこに、追撃とばかりにスノウさんの蹴りが、ラピッドの雷が降り注ぐ。

バネのように跳ね起きた奴隷狩り達は、間一髪で追撃を躱した。

 

「クハッ、さスが白狼の一族、ダねェ。ワタシ達の腕前ジゃあ、ヤっぱり手を焼くカ」

「ハロ、コッチもヤバいナぁ。このトカゲ、タダのトカゲじゃネぇ」

 

二人共顔が腫れ上がったり、火傷したり、あちこちから出血したりと酷い有様だ。

 

「当たり前でしょう。お前達普通の人間如きが敵う相手ではありませんよ。というかワタクシ、トカゲではないと何度言えばわかるのです」

「スタンフィールドの民、肉弾戦得意。スノウ、こう見えて力持ち」

 

軽やかにラピッドとスノウさんは、地面に着地した。

うん、やっぱり強いなぁと感心していると、ヒヒヒ、と引き攣った笑い声が聞こえてくる。

 

「何が、可笑しい?」

 

スノウさんの問い掛けに、ハロとアロは肩を震わせながら答えた。

 

「いやァ・・・・・・強気だねェ?」

「でモ・・・・・・油断しすぎィ!!!」

 

アロが地面に叩きつけたガラス玉から、紫色の粉末が爆発的に広がった。

僕は防御魔法を展開しようとするが、間に合わずに粉末の波に巻き込まれる。

ツンと鼻にくる匂いに思わず噎せるが、それだけで特に影響はない。

何だこれ?と首を傾げていると、徐々に煙が晴れていき、視界がクリアになっていった。

 

「だ、大丈夫ですか・・・・スノウさん!?ラピッド!?」

 

振り向いた僕の目に映ったのは、片膝を付いてぐったりしているスノウさんと、苦しげに呼吸を繰り返すラピッドの姿だった。

僕は駆け寄ろうとしたが、ハロに蹴り飛ばされ無様に倒れ込む。

 

「アはははは!こりゃ凄い!」

「ぐっ・・・・・・何を、したんだ!?」

 

唇からの出血を拭い、けたたましく笑うハロに、腹部の痛みを堪えながら僕は叫んだ。

 

「ちょぉッとした痺れ薬さァ。人間以外なラ、何にでも効くッていうスグレモノでねェ・・・」

 

何だよそれ、そんなのあるの!?

というか、ラピッドにも効いてるのか?小さいから誤解されやすいけと、ドラゴンだよ!?

ドラゴンって、毒とか痺れとかが効きにくいって聞いたけど!?

 

「ゲホ、ゴホゴホッ・・・・・・!な、何でございますか・・・これ・・・!?喉が・・・!?」

 

涙目になり、ラピッドは酷い咳を繰り返している。

そんな状態の彼を、アロは掴み取り、力任せに地面に叩きつけた。

ギャウッと悲鳴をあげるラピッドを踏みつけ、ギリギリと足に力を込める。

 

「さっキは色々やッてくれたよナぁ?ほぉラお返シだッ!!」

「その、足・・・どけろッ!」

 

ラピッドを助けようとスノウさんが拳を突き出すが、ハロに易々と掴み取られてしまう。

 

「大人しくしてなァ、白い狼ちャん!」

 

そのまま鳩尾に一発、そしてナイフが、スノウさんの身体のあちこちに傷をつけて行く。

どうしよう・・・まさか、あいつらがあんな隠し玉を持っていたなんて。

僕は何も出来ないまま、見ているだけなのか・・・・・・?

 

「助けて、師匠・・・・・・!」

 

無意識の呟きが僕の口から零れた時。

 

「柘榴と散れ」

 

激しくも、底冷えする程に冷たい怒声と共に、いくつもの短刀が流星のように投擲された。

驚きの声をあげて飛び退く奴隷狩り達の前に、化鳥のようにふわりと降り立つ黒い影。

そう、あの不吉な髑髏の仮面を付けた、師匠だ。

 

「しっ、師匠!!!」

 

大きな背中に僕達を庇い、死神のように恐ろしげな姿が、今は何よりも頼もしく映った。

 

 




あけました!おめでとうございます!
どうも皆様、お疲れ様です松虫です。
休み明けで仕事に身が入りません!家に帰りたい(笑)
お待たせしました、やっと更新出来ました長かった・・・・・・
初っ端からタイトル詐欺してますねー、戦闘描写すっげ後半からwwwwもう難しいのなんのって。
作業用BGMのお世話になりまくりでした。澤野弘之の音楽は漲ってくるネ!
あ、元旦そうそうFGOのガチャ引いたら見事紅閻魔が来てくれました戦慄。今日は術ギル様が来ました驚愕。
弓ギル狙いだったんだけど嬉しい(≧∇≦)
さて、次回は奴隷狩りをサクッと倒して、スノウちゃん編後半戦のとっかかりまでいけたらいいな!
それでは皆様にガチャ運がありますように・・・・・・
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