赤い弓兵に成り代わり、ファンタジー世界で第二の人生を 作:松虫
僕の住むカタール村は、それこそルーンベルグ国では辺鄙な田舎ではあるが、何度も絵画や書物で読んだり見たりしたことのある人だ。
かつて、王族に生まれながらも、周囲の反対を押し切って冒険者となり、数々の冒険を成し遂げて王に即位した冒険者王。
ルーンベルグの冒険者制度が手厚いのも、この方が冒険者だったから。
どうして気が付かなかったんだろう、何故普通の人だと思い込んでいたんだろう。
「ふむ、成程。何となく予想はしていたが、現役の王様だったとは。これは驚いた」
「全然そんな感じはしないんですけど!」
あくまでもクールなリアクションの師匠に、僕はぺちっと彼の腕にツッコミをいれた。
「私はともかく、だ。何故他の人間が気付けない?やはり、その
ちらりと師匠は、ロッサさん・・・いや、国王様の手にぶら下がるペンダントに視線をやる。
国王様は何がおかしかったのか、くつくつと笑いながら師匠の肩に肘をかけ、長年の友人のような様子で口を開いた。
「おうとも。こいつは
それを聞いた師匠は、これ見よがしに呆れた溜め息を吐き出し、ロッサさんの肘を払い落とした。
「タチの悪い玩具ですね。成程、でも使い用によっては役に立ちますか」
国王様相手だというのに、師匠は見てるこっちが胃痛でも引き起こしかねないほどいつも通りだ。
師匠!その人国王様ですよ!?この国の王様ですよ!?
普通の王族なら、間違いなく斬首レベルの振る舞いだが、国王様は何が気に入ったのか、楽しそうにニヤニヤ笑っている。
「いいねぇいいねぇ、俺が誰かをわかった上でのその態度!やっぱりお前はいい男だわ!」
「気色悪いことを言わんでください。うわ鳥肌たった鳥肌」
顔を顰めてみせる師匠だが、声は少し笑ってる。
その空間だけ、ほのぼのした空気が漂ったが・・・国王様はすぐさまそれを打ち消して、鋭い視線をアウレリスとセルドに向けた。
・・・・・・というか、いたんだハゲ豚。今まで空気みたいになってたから、僕気付かなかったし。
「さて、お前等。今投降すれば、その素直さを買ってある程度罪を軽くはしてやれるぞ。そうだな・・・犯罪奴隷期間10から15年程度ってとこか。どうだ?」
国王様は、あくまでも気さくな雰囲気を崩さないようだ。口調は軽いが、視線の鋭さと漂う重苦しい覇気は一向に弱まることがない。
床にへたり込み、蒼白な顔でガタガタ震えているセルドは縋るようにアウレリスを見上げている。
さぁ、彼はどう出るのだろうか。大体の結果は見えているような気がするが、僕達が傍観する中、アウレリスは無理矢理に嘲笑を引きずり出した。
「ふ、ふふふ・・・・・・はははは!笑わせる、何故こんな所に国王がいるというのだ!惑わされるな、こいつは国王の名を騙る紛い物だぞ!どうせ、そのペンダントも宝物庫から盗んできた物だろう。この不敬者め!」
やっぱり。そうなるか。
呆れて続きを見守る僕達に、アウレリスは腰の剣をすらりと抜いて突き付けた。
「国王を騙る偽者よ!このアウレリスが成敗してくれる!おい、奴隷狩り!金ならくれてやる、貴様等手を貸せ!」
ハロとアロは気まずそうに顔を見合わせ、互いに頷きあった後、凄い勢いでアウレリスに頭を下げた。
「申シ訳ありマせん、我々こちらにツかせて頂キます!」
「・・・・・・は?」
シュバッと師匠の横につき、武器を構える二人。
唖然とした顔のアウレリスに、国王様はハッハッハ!と豪快に笑ってみせた。
「すまんなぁ、アウレリス。こいつらは今、金よりも大切な物を握られてんだよ。お前がいくら積み上げたって、こいつらがお前につくことは決してないぞ」
そう、二人の心臓だ。
ギルドを出る間際、師匠は二つの心臓を
師匠からの合図があれば、ライチちゃんが遠慮なく心臓をつつきまくるぞ、という脅し文句を含めて。
「どんな気分なんだろうな、生きたまま心臓をつつかれるというのは?一突きではそう易々と死ぬまい、何せ心臓というのは硬い筋肉の塊だそうだ。延々と苦しむ様は、さぞや見物だろうな」
こんなえげつない事を笑顔で言われれば、いくら怖いもの知らずな奴隷狩りだって、率先して死にに行こうとは思わないだろう。
「さて、これでただでさえ少ない味方がまた減ったな?」
師匠の煽りに、ギリッ、とアウレリスが歯を食いしばる音が聞こえてきそうだ。
「・・・・・クソっ、このまま終わってたまるか!」
身を翻し、アウレリスはそう吐き捨てていきなり奥の部屋へと駆け込んだ。
出口へ突進するならともかく、まさかの奥へのダッシュに、僕達は一瞬驚くが、すぐ様師匠と国王様があとを追う。
しかし、駆け出した二人の横っ腹に、セルドが体当たりをぶちかましてきたのだ。
「アウレリス様!お逃げください!」
「言われずともそうする!」
ハゲ豚、と国王様が言ったように、セルドの体型はとってもふくよかだ。
ふくよかすぎて、地面で弾むんじゃないかと思うほど。
そんな身体が勢いよくぶち当たってきたら、然しもの師匠達も堪らず足を止める。
「させない!待て!」
臨戦態勢をとりながら、今まで黙って様子を伺っていたスノウさんが、矢のようにアウレリスへ駆け寄る。
「下がれ雌犬!紅き螺旋よ、焼き殺せ!
アウレリスがそう叫び、剣の切っ先を向ける。
するとそこから炎が、蛇のように螺旋を描いて吹き上がった。
さすがのスノウさんも、炎に突っ込むことは出来ず、素早く横っ飛びに身を躱す。
「こんな狭い部屋で、炎の魔法ですか!?イカれておりますね!来たれ細やかに、
部屋が真っ赤な火の海になる前に、透明化を解いたラピッドが雨の魔法を使って消火する。
「ッの野郎、いい加減邪魔だ!退けハゲ豚挽肉にされてぇのか!?」
とても一国の王とは思えないチンピラみたいな口調で、国王様がセルドに強力な蹴りを叩き込む。
まさに豚のような悲鳴をあげて吹っ飛ぶセルドに見向きもせず、師匠は跳ね起きてアウレリスを追う。
ドアを気合いの声と共に蹴破り、中に入った瞬間やられた、と零す声が聞こえた。
「どうしたんですか、師匠!」
気になって師匠の元に駆けつければ、奥の行き止まりであろう部屋はもぬけの殻で、壁にはぽっかりと口を開ける通路が。
「これって・・・まさか抜け道ですか」
「だな。くそ、アホか私は・・・・・・何でこの可能性を考えてなかったんだ。こんな場所なら、もし何かあった時の保険として、抜け道をつくっているだろうに!」
師匠は腹立たしげに、ダン!と壁を殴った。
「早く追いましょう、アーチャー様!貴方様の足ならば間に合いましょう!」
「わかっている。その前に・・・・・・おい、お前達!」
ラピッドの言葉に頷き、師匠はオドオドしているハロとアロに、何かを投げ渡した。
それは、刀身がうねうねと波打つ短刀。
「師匠、それって・・・!」
スノウさんの呪いを解く際に使った短刀だ。確か名前は
「仕事だ。お前達は、ここに捕えられている彼女達を助け出せ。そのナイフなら、どんな強固な結界でも斬ることができる!」
そう言い捨てて、師匠は壁の通路に飛び込んだ。
「待って、マスター!」
「おいおい、俺を置いていくなよ」
「ちょ、早く追わないと!師匠の足はめちゃくちゃ早いんです!」
それぞれ思い思いの言葉を吐き出して、僕達は急いで後を追った。
~アーチャー視点~
暗い抜け道は、想像より短かった。
脚力にものを言わせて、階段と梯子を駆け抜けて、多分出口であろう壁?ドア?みたいなものを蹴り飛ばす。
そこから勢い余って、びっくり箱のように飛び出せば、そこはゴルゴーンの厩の横だった。
アウレリスはどこ行った!?と辺りを見回せば、何故かそこにはドヤ顔のウルスさんと三人の・・・・・・騎士の方々が。
そして彼等の内の一人が、ギャーギャー喚き散らすアウレリスをがっちり取り押さえている。
「ウルスさん、どうしてここに・・・?」
ポカンとしてそう聞けば、彼は豪快に笑いながら教えてくれた。
「いやぁ、タイミング見計らって突入しようと思ってたんだがな、なーんか勘が働いてよ。とりあえず店の周りも囲っておこうと思ってな。そしたらご覧の通り、ってヤツだ」
何て運がいい・・・いや、アウレリスから言わせると悪いのか。
私は関節をキメられて、ひぃひぃ言ってるアホ貴族を、ちょっと哀れに思って見下ろした。
「離せ!離せと言っているんだ!俺を誰だと思っている!?」
「喚くなこのド変態め」
冷たく吐き捨てる騎士の人は、押さえ付ける力を強めたようだ。途端に上がる苦悶の声。
「マスター、そいつ捕まえた!?」
「おや、用意のいい事で」
「よーウルス、おっつー」
「師匠・・・って、もう終わってるし!?」
スノウ、ラピッド、ロッサさん、ラフィールの順番に到着し、それぞれが口にする言葉を聞きながら、私はやれやれと溜め息を吐いた。
何だか、騒がせた割には呆気ないものだったなぁ。
「クソっ!離してくれ腕が痛む!」
ジタバタしてるアウレリスは、何とか腕の一本を外してもらったようだ。
その様子をぼんやり見ていると・・・・・・何だろ、あれ・・・アウレリスの手首に、ブレスレット?
何か装飾部分がミョーに厚みがあるな。
何だっけ、えーっとペンダントの種類でなかったっけ。写真とか入れとくやつ・・・・・・確かロケットって名前だったかな。
そんな事をつらつらと考えていると、アウレリスは素早く口でブレスレットの蓋を開けて、中にある何かを口に含んだ。まさか毒か!?
「アウレリスッ!今何を飲んだ!?」
掴みかかった私を見て、アウレリスはニタッと笑った。
その笑みに、何故か息を呑む。
「ははっ・・・はははははははは!終わりだ、終わりだ、終わりだ、何もかも!奴隷なんぞに落とされるくらいなら、俺はこの道を選ぶぞ!」
嫌な感覚が背筋を突っ走る。
違う。こいつがさっき飲んだのは、きっと毒じゃない。
毒よりも、もっとタチの悪い何かだ。
ミシミシ、メキメキ、とアウレリスの身体から、軋むような音がした。
ヤバい。ヤバいヤバいヤバいヤバい!!!!
「皆離れろ!!!」
咄嗟に、私はこう絶叫していた。
見開いた目に、みるみるうちに人から外れた姿形へと変貌していくアウレリスを映して。
「何だ、これはぁ!?」
「王、お下がりください!!」
ロッサさんの驚愕の声、騎士の人達の張り詰めた声を聞きながら、私はなんて事を、と呟いた。
所々、身体は元の肌の色を残してはいるが、後は灰色にくすんだ、鈍い青。
浮き出て肥大した筋肉や血管は、ガジュマルの幹のように全身を覆い、身体のあちこちには大人の頭くらいありそうな、フジツボのような物がついている。
何処のウィリアム・バーキンだお前は。それともあれか、戸愚呂弟か。
グオオオオオオオォォ、と辛うじてアウレリスの顔だと分かる箇所が濁った獣声を上げると、その身体中にくっついているフジツボから、緑色のガスが吹き上がった。
・・・・・・あれ、絶対吸い込んだら良くないものだ!
「全員、防毒の術を使え!近隣の住民の避難を最優先で行う!ウルス、アーチャー、それを少しばかり抑えててくれ!ラフィール、スノウ、お前らも下がれ!!!」
ロッサさんは矢継ぎ早に指示を出し、皆それに応、と答える。
「お前は城へ!宮廷ヒーラーを総動員させろ!」
「承りました!」
さらに近くの騎士の一人に命じると、その人は文字通り、風のような速度で城の方へと走り去って行った。
「だっはっはっは!やっぱ物事ってぇのは、思うように進まねぇもんだな!仕方ねぇ、いっちょやるか!」
ウルスさんは高らかに笑って、次の瞬間がらりと表情を変える。
「仕事だぜぇ!久しぶりだが、耄碌しちゃいねぇだろうな!?来い、アダマイト・アーケロン!」
ウルスさんの頭上に、黄金の光がぐるりと円を描く。
おお、魔法陣だ!よく分からないけど、何か凄いぞ!
ひっそりはしゃぎながら、さらに見守る。
すると、どこからともなく、深くしわがれた声が響いてきた。
「耄碌するにゃあ、あと数千年ほどかかるわい。やれ、しかし久方振りの出番だというのに、相手が斯様に無様な人鬼とは・・・・・・儂もウル坊も、つくづく運のない事よな」
ごろごろとした、地響きのような低音に、私はあちこちを見回す。
「こっちだよ、お若いの」
からかうような声は、見あげた黄金の魔法陣から。
そこからドォン、と音を立てて降ってきたのは、ウルスさんの身の丈以上にでかい盾だった。
縦長の六角形は、つるりと艶のある赤瑪瑙のような色。
それを金色の金属(多分金じゃないと思う)が縁どり、天辺には同じ金属で横を向いた・・・亀?のようなレリーフが豪奢に施されていた。
そのレリーフがぐりん、と動き、真っ赤な焼石のような目と視線がかち合う。
「盾が喋った!?」
亀は私の言葉に、悪戯が成功した子供のような顔で笑う。
「はははは・・・驚きが新鮮でええのう。インテリジェンスの武器を見るのは初めてか?儂は意思ある武器、アダマイト・アーケロン。ふれんどりぃにケロちゃんと呼んでくれても良いぞ」
茶目っ気たっぷりにウインクして、亀の盾・・・もといケロちゃんは言った。
「へ・・・?あ、えー・・・どうも初めまして。アーチャーと申します」
ついいつも通りに挨拶すれば、ケロちゃんはほっこりと笑う。
「おお、ちゃあんと挨拶が出来るか。偉いのう、儂に手があればよしよししておった所よ」
「はあ・・・・・・」
どうしよう、この人(亀?盾?)何か空気が独特だ。
「こら、亀爺!何を呑気に話してやがんだよ。この状況わかってんのか!?」
私がなんとも言えない顔をしているのを見て、ウルスさんはぺちっと盾を叩いた。
「喧しいのう、若いもんと話す年寄りの楽しみを奪うでないわ。それに、あの人鬼の毒霧を防ぐ壁ならもうこしらえておる。こしらえておるが・・・・・・ちぃと壁の範囲が広すぎてのう。目一杯力を抑えても、これ以上狭められん。この人鬼が暴れては、ここいら一帯の倒壊は免れんな」
困った顔で言うケロちゃんに、私はあたりを見回した。
すると、少し離れたところにぼんやりと金色に光る壁を見つける。
・・・・・・ゴルゴーンは間違いなく更地になる運命か。
「カ━ッ、なまじ力があるってぇのも考えもんだな!背に腹はかえられねぇ、とりあえずあんまり暴れさせないようにするぞ。アーチャー、やれるな?」
ウルスさんの確認するような目付きに、私は弓を構えることで答えた。
「ほれ、来やるぞ!」
咆哮を上げ、こちらに突っ込んでくるアウレリスを見据えて、私は引き絞った弓の弦を弾いた。
~ラフィール視点~
ウルスさんが文字通りにアウレリスと激突して、物凄い音が響き渡る。
衝撃で地面や家屋の壁がひび割れ、四方に吹っ飛んだ。
それを軽く避けながら、師匠が次々に矢を放った。
唸りを上げ、空気を引き裂き飛んだ矢は、アウレリスの緑のガス?霧?を吹き出す腫れ物のような所に突き刺さる。
耳障りな悲鳴を上げて、アウレリスは標的を師匠に定めたようだ。
オーガエープよりも、遥かに太い腕を振りかぶり、アウレリスは師匠に叩きつける。
それを抜群の跳躍力で躱し、その後ろから距離を詰めたウルスさんが、手にした巨大な盾でぶん殴った。
そんな規格外の戦いを横目に、僕は何をしているかというと。
「ラフィール放せ!スノウも行く!マスターと戦う!」
「ちょっと待ってくださいって!今スノウさんが飛び込めば、師匠達の邪魔になります!横槍厳禁!ダメ絶対!」
乱入しようとじたばたするスノウさんを、必死に宥めて押さえ付けていた。
「そもそも、防毒の術無しでどうやってあの霧の中を動くんですか!?落ち着いて、今自分に何が出来るのか考えてください!」
耳元で絶叫するように言えば、スノウさんはキャウッと悲鳴を上げて耳をぺたりと伏せた。
「声、大きい!」
「だったら大きくさせないで下さいよ・・・・・・」
溜め息を吐けば、膨れっ面ではあるがとりあえず落ち着いてくれたらしい。
「お二人共ー!」
上空から落ちてきた声に見あげれば、ラピッドが流星のようにこちらに飛んできている。
「良かった、ご無事ですね!アーチャー様から伝言です。あのお二人がアウレリスを押さえつけている間に、周辺の住民の避難を手伝うように。ラフィール様は、宮廷ヒーラーが到着するまで怪我人の治癒をお願いします。スノウ様は」
ラピッドがそこまで言ったとき、ビュンと空気を切って、そこそこな大きさの瓦礫が僕目がけてぶっ飛んできた。
「ええええぇぇ!?」
最悪ぶつかる死ぬ、と思ったその瞬間、物凄い音を立てて瓦礫は砕け散った。
「ラフィール、大丈夫?」
スノウさんが、蹴り砕いたのだ。
ちょっと待って、その脚力やばい。見た目細いのに、どうなってんのそれ。
目を白黒させる僕を一瞥して、スノウさんは納得したように頷いた。
「スノウの仕事、だいたいわかった。ラフィールのこと、守る」
「ご理解が早くて何よりです」
苦笑して、ラピッドはまた空へと舞い上がる。
「ラピッド、どこ行くの?」
「ゴルゴーンでございます。アーチャー様のお願いで、シェラ様を手伝いに行くのですよ。今頃、客の避難で大変でございましょうから」
それではお二人共、お気を付けて!とラピッドは敬礼すると、メタリックブルーの鱗を煌めかせてゴルゴーンの方に飛んでいってしまった。
それを見送ると、スノウさんと頷きあって、避難誘導している騎士の人達の元まで急いだ。
~アーチャー視点~
ぶん、と顔の横すれすれを通り過ぎて行ったぶっとい腕に、思いっきり干将を突き立て、空振りして大きくがら空きになった脇腹に潜り込み、莫耶も叩き込む。
そして、
しかし中々ヤツの装甲が硬いのか、思ったよりダメージを与えられない。
「アーチャーよぉ、コイツ結構硬いな!」
「そうですね。やっぱり、矢の方が確実かもしれません」
ウルスさんの言葉に答えて、私はもう一度黒い大弓と投影すると、魔力を込めて矢を放った。
すると、矢は深々とフジツボの口に突き刺さっていく。
やっぱり、斬るより刺すの方が良さそうだ。
ウルスさんが私への攻撃を受け止め、その隙を縫って矢を射る。
そんなやり方でちまちまと攻撃していると、埒が明かぬとわかったのか、突然アウレリスの動きが変わった。
一声吼え、身体をブルブルと震わせると・・・・・・。
「何か飛んできたっ!?」
フジツボの部分がぶしゅっと外れ、ミサイルのように飛び、あちこちにばら撒かれる。
何だアレはとフジツボを見れば、そこからうじゃうじゃと、エビと蜘蛛を足して二で割ったような生き物が這い出てきていた。
大きさは柴犬くらいだが、顎にはごついハサミのようなものがついていて、これで挟まれたら痛いじゃ済まないだろう。
「くそっ、このままじゃ被害が拡大する一方だ!応援はまだなのか!?」
「わかりませんが・・・・・・数は減らしていかないと」
私は
あれだけいるんだ、これでも足りないぐらいだろう。
私の周囲に次々と現れる剣達を、ウルスさんは目を剥いて眺めていた。
「たっぷり食らっていけ・・・
数多の剣が、次々と射出されてエビもどきを貫いていく。
「しゃあねぇなぁ!おらアーケロン、一発かますぞ!」
「おお、やはり戦はこうでなければのう!」
赤瑪瑙の盾が金色に輝き、高々とそれを振りかざしたウルスさんの口から、雷のような声が発せされる。
「穿通せよ!奴等に喰らい付け
地面に叩きつけられた盾が、ゴーンとまるで除夜の鐘のような音を響かせる。
すると地面がグラグラと沸き立ち、そこから文字通り茨のようなものが、エビもどき目掛けて襲いかかった。
ところが弱っちい雑魚モンスターとは言え、数がヤバい。
人海戦術というやつか、倒しても倒してキリがなく、大元のフジツボを叩こうにも、そこまで辿り着けないのだ。
更に不味いことに、私達がエビもどきに構いっきりで動けないとわかったのか、アウレリスはニタリと笑ってこの場を離れようとする。
「アーチャー!彼奴を逃すんじゃねえ!!ここは俺に任せて、お前はアウレリスを追え!」
盾をぶん回して、ウルスさんが怒鳴った。
私は一瞬躊躇ったが、ここで留まればアウレリスが何を仕出かすかなんて、容易く想像出来る。
ぐっと歯を噛み締め、すみません、と詫びて私はアウレリスを追おうとしたその時。
「焼き払え、紅き両翼よ!
私の頭上から、真っ赤に燃える鳥を形どった炎が物凄い勢いで飛び、ウルスさんにまとわりつくエビもどきを焼き払う。
何だ何だと振り向けば、息を切らせたロッサさんが不敵な笑みを浮かべて、剣を構えて立っていた。
「遅れてすまんな、アーチャー。ここからは俺も参戦出来そうだ!そこの雑魚は、俺達に投げとけ!」
住民の避難が一段落着いたのか、何人かの騎士の人達も武器を振るいエビもどきを倒してくれている。
「ここを片付けたら、俺達もすぐそっちに向かう!頼めるか?」
私はこくりと頷いてみせる。アウレリスも放っておけないが、このエビもどきもそのままにしておけない。
私達にとっては雑魚同然でも、戦う術を持たない人達にとっては脅威だからだ。
「ここをお願いします。あの毒ガスをばらまいているアレは、斬るより突く方が効果的みたいですよ」
素直にロッサさん達に感謝して、私はお得情報を伝える。
そして一礼すると、身を翻してアウレリスを追ったのだった。
おっっっ久し振りです、松虫です。
何とかギリギリ四月に更新出来ました(:.;゚;Д;゚;.:)ハァハァ
いやー、腰痛に謎の体調不良にと色々ありました……。
前に使ってたスマホが調子悪くなり、買い換えなきゃいけないのに粘りに粘って約二ヶ月、やっとこさ機種変出来ました。
戦闘描写が難しいし、よく打ち間違えるし、仕事はしんどいしで中々進まなかった( ;´꒳`;)
さて、ラスボス戦開始となりましたが、あんまり進展してないのはスルーしてください。
あ、二百件ありがとう短編は近々あげます……ふわーっとお待ちくださいませ。
それでは、皆様にガチャ運がありますように!