「出力幅、
制御値から起動値まで魔力量を急上昇させ、こちらを嬲ろうとしていた屑どもを捻り潰し始める。
急激に上昇したスペックに対応しきれず、高みの見物をしていた連中を投げ飛ばした頭を起点に共振破壊で柘榴と散った。次、右の雑魚を高周波振動を乗せて脇から心臓へ切り上げるコースで振り抜き、回転の勢いのまま逆の手で増幅させ、心臓を直接破壊する。
「な、なんだよお前! さっきまでヤられるだけの、只のモブだったはずだろうが!」
「残るはお前一人、力を持て余したまま――死ね」
カツン、と震源を調整し真横から音を生じさせれば新たな敵襲だと思い振り向いて、
「一丁上がり、ってか? 雑魚じゃねぇか。良くもまぁこんな出来損ないにあっさりバラされるもんだ」
基本、魔導師ってのは非殺傷設定とかなんとかで縛りをつけて闘ってる。
無駄とまでは言わないが、実戦において無駄な一手間であり、デバイスがない現状そんな余分な力を使う余裕はない。
「あーあー、血に汚れちまったな。落とすのが面倒なんだぜ、コレ?」
事切れた有象無象に言っても仕方ないが、文句も言いたくなる。
魔法の実験だとか抜かして攻撃してきた役立たず共は片っ端からバラしているため、リッパーとボマーという犯罪者がこの街にはいることになっているらしい。脱がされた革のジャケットを上から羽織って、
「じゃ、逃げますか」
振動操作で足音を消し、起動値のまま上昇した肉体スペックで民家の屋根から屋根へと渡り、自分の家にたどり着くやいなや、アルコールと熱湯で血を洗い流す。
一息ついたところで、起動値を制御値に落とし、その落差のあまりにストンと崩れ落ちた。
思わず嘔吐する。少し血が混じっていた。
「あーくそっ、やっぱりポンコツじゃねぇか。十二分にモブだろこれ」
傍から見る分には、瞬間的には強者となりうる。が、一度の戦闘に支払うコストが重すぎて使えない、というのが現実だ。
だから、自分は敗北を噛み締める狼なのだ。
勝利を輝かしいと信じ、だがそれを冒涜する嘆きの人狼。
他を圧倒する性能が足りないから、パターンを見極め、予測し、次手を潰す形でしか勝利を得ることができない逆襲者。
叩き伏せるだけの実力があれば、そもそもパターンを見極める必要はなく、頭脳が優れているのなら後の先を取ってカウンターで仕留めればいい。
削られながら戦うなんて正気の沙汰じゃない。だが、これしか能がないのだから仕方がない。
逆襲を、逆襲を、逆襲を。重ねるたびに完全な勝利からは遠ざかる。
いつかやってくる優秀な狩人に恐れながら、今日も人肉を食らう狼として牙を研ぎ澄ます。
「まあ、襲わない襲われないのが一番なんだがな」
だが、ソコはそれ。ドブさらいの仕事は終わらない。
明日にでもグループの討伐報告をしないとな。
息抜きにちょろっとずつ。
性根は何処ぞのリュカオン。