「おっハロー! 無事に正式な
「ヤー! 相性が良かったので」
「性格! 性格の相性だから!」
週が空け、何時もの奇妙なテンションの高さで現れた月見は申請をした相手と並んで座る教室を見回し、透流とユリエ、王土とみやびの二組を見てはやし立てればユリエの爆弾発言でクラス中が少しざわついた。
「私達も同じ様なものですね。他の皆さんの何人かにお誘い頂きましたが、既にお誘いを受けて了承しましたし……何より、直向きに頑張るみやびさんの姿は素敵だと思うべきでしたから」
「あ、あわわわわ……。お、王土君、その辺で……ひゃっ!?」
正式な申請をした日の夜、みやびは友人は名前で呼ぶからと名で呼ぶように願い出て、王土も楽土と被るので自分も名で呼ぶようにと言ったのだ。言ったことは後悔していないし、抵抗もない。だが、大勢の前で平然と名前で呼ばれて誉められれば恥ずかしい。思わず俯いて袖を引っ張ろうとすれば間違って手を重ねてしまった。
「へぇ~! ず・い・ぶ・ん、仲良くなったみたいだね~。うんうん、まあ、それは置いといて、来週は
「先生、質問宜しいですか? 一人、格が違う人が居ますが……」
月見が平然と告げた言葉にクラスが騒然とする中、王土は冷静な表情で手を挙げた。誰の事を言っているか、この僅かな期間で皆が理解している。組み手ではユリエやトラ、透流等の上位陣を相手に圧倒、持久走等も格の違いを見せ付けた。
「何を今更。戦場で格上を相手にするのは珍しくも有るまい」
クラス中の視線を受けても楽土は些細も態度を崩さず、淡々と告げるとクラス中を見回す。その程度の覚悟もないのか、と、暗に告げているかの様だ。重苦しい空気、それを吹き飛ばしたのは場違いな程に明るい月見の声が響いた。
「うんうん、天上ちゃんは既に昇華の儀を何度も受けてて、ぶっちゃけうさ先生より強いから……不参加でっ! って言うかぁ、天上君、君もレベルアップしてるし、経験の浅い子達と同じじゃ不平等だし、ハンデを付けて貰うからね」
「
「だ、大丈夫だからっ! 頭上げて……」
理解はしたが納得は出来ないけど従うしかない、そんな落ち込んだ様子で頭を下げる王土にみやびは慌てた様子。その様子を月見はジッと見ていた。
(ふ~ん。これはこれは……)
「良いですか、みやびさん。己を追い込むことと無理は別です。無理は心身共に追い込んでしまうし、逃げを選んでしまう。ギリギリを見極めて僅かでも良いので前に進みましょう」
「う、うん。……でも、私、本当に強くなれるのかな? 天上さんが言ったように私は邪魔にしか……」
夕方、新刃戦に向けての特訓を開始したみやびだが、王土が提案した訓練内容以上のオーバーワークを行って息を切らして膝を着く。そんな彼女に嗜めと励ましの言葉が掛けられるも自分と王土の差に劣等感は増すばかり。仕方のない話だ。自分には何もないと思って生きてきて、選ばれたと知って持ち直すも同じく選ばれた者に囲まれ王土に励まされて持ち直す。
だが、そこまでして貰っている相手に何も返せず、あまつさえ足を引っ張っているだけという自責の念が重くのし掛かっていた。そんな心中を察した
「自分だけは自分を最後まで信じるべき……等とは言いません。ですので、私を信じて下さい。何度転んでも、起き上がって前に進める。貴女がそんな人だと信じる私を信じて下さい。……それとも、私は信じるに値しない男ですか?」
真摯な表情で差し出された手、みやびは迷い無くそれを掴んで起き上がる。先程まで彼女の顔に浮かんでいたのは諦めと己への失望、今は決意だ。夕日に照らされた影響か少し顔に赤みが差し、倒れるまで動いたためか体温の上昇や鼓動の増加も感じる中、みやびは王土に向けてはにかんだ。
「……卑怯だよ、王土君。うん。信じてみる。王土君が信じてくれる限り、私はきっと何度も立ち上がれるって」
この青春の一ページというべき遣り取り、それを遠くで見詰める影が一つ。一見すれば蝶に見えるが縮尺が滅茶苦茶だ。実際、それは蝶々ではなく、人だった。
「うーん。青春物とすれば在り来たりだが、即興劇として見れば蝶・サイコーとまでは行かなくても及第点はくれてやれるかな? ……お前はどう思う?」
股間の部分に蝶のマークがある鎖骨から臍にかけて前面を露出した黒の全身タイツに前分けの黒髪、ドブ川が腐った様な目の色も特徴だが、一際目を引くのがパピヨンマスク。病的に細く青白い体も相まって不気味ささえ感じさせる彼の背中の羽根は黒い粒状の何かが密集して構成され、一部が火を噴いてバーニアの働きをしている。
「何しに来た、パピヨン」
その背後に楽土の姿があった。腕を組み、変態をパピヨンと呼びながら遠くの弟の姿を忌々しそうに見詰め、強く噛みしめた八重歯がギシリと鳴った。その姿が面白いのか、それとも興味はないが元からそんな性格なのか、パピヨンはおどけた様子で大きく手を広げた。
「パピ♡ヨン♡ もっと愛を込めてっ!!」
「黙れ。
「怖い怖い。ああ、お前の愛は全部、可愛い可愛い弟に向けているんだっけ? 弟離れしろよ、いい加減。過保護は嫌われるぞ? 今日は俺の相方の
向けられた殺気を受け流しふざけた態度を崩さないままパピヨンは空高く飛んでいく。楽土はそれを忌々しそうに睨むと、今度はみやびに視線を向け、静かに呟いた。
「他者の気持ちが分からない私の愚弟は、他人から何の感情も向けられずに育ったに等しい。頭の良さでどう振る舞えば良いか理解しているから破綻は無いがな。……人は他者との関わりで己を形作る。余り信頼せぬ事だ。其奴は貴様が望む物を向けはしないのだから」
「さてと、今から開始ですが……ハンデが思ったよりも大きいですね」
新刃戦当日、みやびの
「じゃあじゃあ、君達が背負うハンデについて発表しまーす。先ず、天上君は
この様な感じで月見に差し出されたのが今装着している足枷だ。勝利数で成績が決まり、昇華の儀を受けるチャンスが与えられる事から大きな痛手となるだろう。王土も憤っている様に見えた。
「この程度の足枷、私達の前では何の障害にもならないと証明しましょう。……大丈夫、私がリードします。信じて着いてきて下さいますね?」
「う、うん! 王土君が居るなら百人力だもん!」
自分が邪魔になると暗に指摘された事に怒りを覚えているらしい姿にみやびは素直に喜びを感じる。そうすれば不安がなくなり、今の状況を直視する事になった。肩が王土に触れるほどの距離であり、顔も当然間近。意識したら駄目だと思うほど意識してしまう。
「時間も惜しいですし行きましょうか。本来、制限時間は広大な戦場で索敵する事に多く使われますが……私の
本来、
王土から発せられたのは紅ではなく蒼の炎。それが三つに別れ、手元ではなく足下で具現化する。短く硬い滑らかな黒い体毛、筋肉質でしなやかな四肢。ドーベルマン、人にそう名付けられた犬、二匹は中型犬に分類されるアメリカンタイプ、一匹は大型犬のヨーロピアンタイプだ。三匹共、首輪に放射状に配置した刃が着いている。
「ヌル、アインス、ツヴァイ、戦いです」
王土が犬笛を吹けば同時に耳を動かし、嗅覚を使い匂いを感知する。その光景を見るみやびに王土は苦笑を向けた。
「ある人が言いました。私にとって飼い犬が幼い頃の唯一の友だったからこそ、
それは今まで言わなかった過去であり、みやびは自分が信頼されて来たのだと嬉しく思う。
そして、まだ話していない事がある。その言葉を口にした相手に幼い王土はこう言ったのだ。
「別に犬でも変ではないのでは? 生物が動くのは電気信号による物で、感情は脳内物質の化学反応。まあ、手で動かさずに済むだけ生きている方が
感想お待ちしています やる気がでるのでお願いします
よし、決めた。次回は原作キャラ死亡のタグを付け・・・・・・