「なんでや!!なんでワイがコイツらと組まなアカンねん、ディアベルはん!?」
「同感だディアベル。俺やアスナはともかくレイとキバオウを組ませるのはコンビネーション的にも最悪だと思う」
三々五々パーティー毎に散らばって装備やステータスの共有、戦術確認をする中、俺とキバオウはレイド指揮官ディアベルに対して講義の声をあげている真っ最中である。
ちなみにレイとアスナはと言うと、片やムスッと不貞腐れて、片や目元まで下ろしたフードと俯いていて顔が見えない。だが、漂う負のオーラからご機嫌絶壁急降下なのは明白だろう。
「ま、キリトさんとアスナさんは他チームに入れてもいいんだけど問題はその二人だ。キバオウさんとそこで不貞腐れてるレイさんの問題児ぶりは流石に目に余るからね。それに攻略が進めばレイドは今後更に大きくなるだろう。そうなれば嫌いな奴、気に食わない奴とのチームを組む必要もある」
「つまり、今ここで矯正しとくと?」
「ああ、そのサポートとして君たちに見ていて貰いたい。キリトさんとアスナさんは元々ソロだしね。他のパーティーとの連携面を考えるとどうしても遊撃戦力としての方が戦力化しやすいんだ」
それ遠まわしに『キミ達邪魔だから後方で大人しくしててね?』っていうのと同義じゃないの? と率直な感想が口から出掛かる。隣のアスナさんの負のオーラも一層濃くなるのがわかった。
にしてもレイのキバオウに対する苛立ちは解るとして、キバオウのβテスターへのあの反発心は何なのだろう。確かに彼の言っていた非テスターとの戦力差の開きや情報不足からの死者の発生など叩く要素はあるものの、昨日の会議でエギルが、そしてディアベルが言った通りテスターとの協力無ければボス攻略は成し遂げられない事は重々承知している筈なのに。
ニッコリ笑顔のディアベルは仏頂面極まるキバオウ、レイを交互に見ながらハッキリ告げる。
「二人とも今回のボス攻略戦で問題を起こせば二度とレイドには加入させない。しっかりとチームワークというものを学べよ」
それつまり俺とアスナはこの二人の巻き添えですかい。
ツッコミたかったが、ディアベルの有無を言わさない気迫に飲まれ頷くしかないチキンハートの俺だった。
***
「……あー、えーと。ゴホン。H隊隊長を務めるキリトだ。武器は盾なし片手直剣。よろしく頼む」
兎に角、座れるところで作戦会議しようと目立たない裏路地にある隠れ家的な酒場(故に他のプレイヤーはゼロ)に案内したキリト。
四人テーブルには私とアスナ、向かい側にキリトとキバオウが座っている。テーブルの上にはそれぞれ飲み物のジョッキがあるも誰一人手につけようとはしない。
「……アスナ。クラスはフェンサー。……よろしく」
「キバオウや。得物の種類はそこの小僧と同じや。宜しゅう頼むで」
私に視線が向き、仕方なく私も自己紹介する。
「レイ。装備は盾なし片手曲刀。ま、よろしく」
自己紹介が終わり、だが拍手も無く沈黙が場を支配する。
パーティーリーダーのキリトは恐らく疲労で腸が捻れる思いだろう。だが、少なくとも目の前対角線上に座るトゲトゲ頭と今のところ協調する気は無い。
「いらっしゃいませ。ご注文はいかが致しますか?」
渡りに舟と表情が若干良くなるキリト。
『じゃ、じゃあ先に注文しようか!』、とそれぞれメニューを選んだ。キリトは鳥団子の餡掛け、アスナはあまりお腹減っていない、とチーズとナッツの盛り合わせ、キバオウは串焼き十種盛り、私は魚のフライを注文した。
ウェイトレスのニコニコ笑顔が消えると再び冷戦状態に突入したテーブル。
「うん。明日の、ボス取り巻きの対処についてだけど……」
「ねぇ、キリト……でいいの? 少し聞きたいことがあるのだけれど」
うん、とアスナの方向に向くキリト。
「あなたたち、何で私の名前知ってたわけ?自己紹介の前から私の名前読んでたじゃない」
は?
私もキバオウもキリトも驚いた。が、その内容に関してはだいぶ違うようだ。
私としてはただ単に自己紹介もしていないのに知っていたというマジックに関してだが、キリトとキバオウは、
「いや、嘘やろアンタ…知らんのか…?」
「デフォなら自分の視界の左上に……。もしかしてアスナさん、今までパーティー組んだことは?」
「……無いわ」
視界左上、と聞いて、視線を向ける。そこには自分の名前と緑色のバーのしたに、キリト、アスナ、キバオウの名前と、三本の同色のバーが。
「なるほどな。コイツを見て名前を読んでたワケか」
「……レイも、もしかして……。いや、そういや昨日初心者だって言ってたな」
「おい、小僧。ワイらのチームって溢れモンの味噌っカス且つ、地雷パなんとちゃうんか?」
***
注文した料理と飲み物がなくなる頃には、どうにか明日のボス攻略で足手纏いにならない(ハズ)の知識とチーム内の戦略に関して練る事ができた(と思う)。
基本戦術としては俺とキバオウが取り巻きmobである"ルインコボルド・センチネル"の攻撃を迎撃、アスナとレイが体勢の崩れたセンチネルへの追撃役として役割分担した。
と役割分担に特に否定しなかったキバオウが、ふとウィンドウを開く。一瞥すると、すぐに消し、
「────ん、ほなな小僧共。明日はせめて足は引っ張らんでくれ」
「え、でもキバオウ。ドロップアイテムの分配とかは……」
「んなモンディアベルはんが言ってた通り落としたモンの物でええやろ?メッセ待たせとるし、ワイはもう帰らせてもらうで」
律儀に自分の飲食代のコルをテーブルの上に積み、じゃの、と店の外に出ていった。
「じゃあ私も帰るわ」
「もう会議はお開きなんだろ?私も帰る」
「ちょ、ちょっとだけ待ってくれ二人共!」
二人からの『もう帰りたいのですが』目線にどうにか耐えつつ、最後に確認だけとる。
「いいか?明日のボス戦では何が起こるか分からないんだ。だから、二人共予想外のことが起きたらすぐにボス部屋外まで逃げるんだ」
「……何でそんな事を?私は自分の意思で今ここにいるの。他人に指図はされたくないわ」
「────それは……、君たちに死んで欲しくない、から……」
SAO初日に同じβテスターを見殺した自分が何を今更、と自虐感に襲われる。だが、一度言葉が出ると止められずに隠していた本音が出てくる。
「過程はどうあれ、こうやって関係をもった人が。友達とかそういうんじゃないけど、────目の前で死なれるのは、見たく、ない……。だから」
「────ッハハハ、やっぱり面白いよ、お前」
初めて出会った時と同じ声音だった。レイはこちらを見て笑う。
「それに良い奴だ。わかった。明日は基本的にお前の言うこと聞くよ。キバオウとも一応連携してやるさ。ただ、敵に尻尾巻いて逃げる事だけは嫌だね」
「聞いてなかったのかよ!死んで欲しくないって」
「ああ、だから死ぬ気は無い。死ぬなら全てを出し切って、それでも届かなかった時だけさ。アスナ、お前もだろ?」
隣のフードの少女も頷く。
「アナタに同意を求められるのは癪だけどね。キリト、私も戦う覚悟をもってここに居るの。逃げるぐらいなら、自分の気持ちに逆らうぐらいならボスと戦って死ぬから」
二人の覚悟は、本物だった。
あの日、デスゲームが始まったことで変わったのか、それとも戦いの日々の中で身につけたのか。それは当の本人たちにしか分からないが、一つだけ言えるのは、彼女たちは意思をもってここに、死地に立っていることである。
なら俺は何故攻略集団の中にいるんだ?
自分がはじまりの街を飛び出した理由を思い出そうとし、
「じゃあな、また明日。帰って風呂入って寝r」
赤い閃光が店の中に一閃した。いや、正確にはアスナさんの両腕が今日の迷宮区で見せたソードスキルよろしくレイの両肩を掴んだのだが。
「…………な、何?」
「……………………るの?」
「え、なんて?」
「…………アナタの宿、お風呂あるの?」
その後、キリトはレイとアスナと別れて一人宿へと帰った。別れる直前、アスナのテンションが恐ろしい程に上昇していたのは何だったのか、彼は理解出来なかった。
どうも、お久しぶりです。野澤瀬名です。
先ず、先月起きた地震に関してですが、被害に遭われた方にはお悔やみ申し上げます。自分も地震に遭遇したのですが、震源からは若干離れていたので家の中の物が散乱する程度で済みました。
……ええ、ガンプラのV字型アンテナ数個がお釈迦になっただけです(泣)。
という事で、キバオウと同じパーティになったキリト、アスナ、レイの三人ですが、今後の物語の展開にチョイと関わってくるファクターです。特に原作(プログレッシブ含む)&アニメでは『関西弁の好きになれないけど何か憎めない奴の筈なのに最後外道に堕ちてた』的なキャラだったキバオウさんはかなりテコ入れする(かも)。
近日中にAct.03も投稿する予定です。本日はここで読者の皆様に感謝しつつ筆を置かせていただきます。
アスナさんのお風呂回は次の話です!