誰か助けて・・・(涙) 作: 芝
目の前にいる、竜人族・・・いえ、リュウ人族と呼べばいいかしら? やっぱり、彼がほしいと思ってしまう自分がいる。
だからこそ、イラっとすることだってある。
たとえば、
「貴方が行かなくても、他の者に行かせたらいいんじゃないの?」
「いえ、今回は普通ではなさそうなので、自分の目で見て確かめた方が良いかと思いまして」
「・・・そう」
彼を遠くに連れていかれたりすれば、私はつい、
「あの
と小声であったとしても、言ってしまうのは仕方がない事だと私は思います。
彼の視線が、私の顔を見たり、顔を見たと思ったら私の胸元を見て、私の後ろを見、また私の顔を見る。
忙しなく動き続けるその目を見て、少し笑ってしまいそうになる。谷間が見える服を着てきて良かったし、顔も見てもらえているというのは、とても嬉しい。
「それで、いつ出発するの?」
「あと五日後には。皆さん優秀ですし、明々後日には準備も終了しているでしょう」
「・・・そう」
一言呟いてから、
そして、遠く離れた場所。フラヒヤ山脈の奥。氷雪に閉ざされた地に、
・・・なら、あれを作って渡すのもいいかもしれないわね。
「じゃあ、出発前にもう一度ここに来なさい。良いものをあげるから」
彼がそれに頷いたのを見たあと、ホールロックから銅鑼の音が響き渡った。
それに反応した彼が錆色の時計を見、立ち上がった。
「それでは、帰らせていただきます」
「ええ、また今度・・・ね?」
そう言うと、彼は扉へと向かい歩いていく。
途中、
「「「今度は私達ともお話ししましょうね?」」」
「アッハイ善処いたします」
という会話を聞き流し、彼が出ていくのを見送る。
そして、彼が街の角を曲がったところで、彼女たちの方へと向いた。
「貴方たちは何をやっているのですか? 足下を見なさい」
そこでようやく気が付いたのか、三体とも足下から火が出ているのに驚き、紅が足で軽く床を叩くだけで、火を消し去った。
「・・・で、何故、こんな事を?」
「あ、いや、ちょっと力みすぎて」
「言い訳は結構ですよ黒。さっさと言いなさい。貴方たちも」
ちょっとしょんぼりとした黒の前に、煉が前に出てきた。
「少し、感情が昂りすぎました。申し訳ありません」
「ええ、良いわよ。まあ、謝らずに言い訳をしようとした子はどうしようかしら?」
先に産まれたはずの黒や紅よりも早く頭を下げる煉。
普通は歳上、または先輩が先に頭を下げ、そしてその後に歳下、または後輩が頭を下げやすいようにするのが普通なのだけどねー。と、喋ることなく言葉を目で伝える。
「申し訳ありませんでした」
「ちょ、紅、先にお前が頭を下げたら」
「紅は少し遅れたけど、火を消したとしてお仕置きは無し。じゃあ、謝るのも遅くて、何もしなかった黒にはお仕置きよっ♪」
それに「ヒッ」と言って逃げだす黒。扉に手を掛けた瞬間、
バチッ
「いっア″ア″ァ″ァ″ァ″ァ″!!」
金属に触れれば私の雷製の静電気の発生を誘発させ、それを体全体の神経に直接流し、全身の筋肉を硬直、痙攣させるだけのお仕置き。
それだけで海老反りになった黒はそのまま倒れ、肩にかかっていた服の一部がズレ、
彼が見たら興奮するのかしら? と考えてしまい、もう一回お仕置きしようか悩み、結局はやめた。
「さあ、黒は引きずるからいいとして、さっさと行くわよ」
「行くって、どこにですか?」
「地下よ地下、玉倉庫。彼にあげる良いものを作るためよ」