変わらぬ空で、貴方に愛を   作:毒蛇

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「第七十三話 ――撃ち抜け」

 数日前まで、防人たちも正月の為に交代制ではあるが親元に帰省する人も多かった。

 しかし、大赦側からの通達を受け、全員が千景殿に戻り、現在展望台で指示を受けていた。

 

 天の神に捧げる奉火祭は、勇者たちの手によって退けられたのは防人達も知っていた。

 その行動に大赦が泡を食い、次の手を打てなくなりあらゆる手段が中断された事も知っている。

 だから、大赦から訪れた神官たちが、また壁の外での任務内容を告げるのだと少女たちは思い、

 

「明日、天の神が襲来する……!?」

 

「――はい」

 

 淡々と告げられたその内容に対する驚愕を、この場にいる仲間31人に代わり芽吹が口にする。

 以前まで防人たちの監視役を勤めていた安芸の姿は、今回訪れた神官たちの中にはいない。

 その姿を見ないことに対して思うことは多々あれども、それ以上に何故という思いが強かった。

 

「それは……神託によるものですか?」

 

「――――」

 

 芽吹の言葉に対して、その仮面に隠した表情は何も見えない。

 いつも通りに、ただ淡々と何の感情を見せることはなく彼女たちは神官として口を開く。

 勇者として華々しく活躍するのではなく、32人の『大勢』として、いつも通りに裏方に徹しろと。

 

「千景砲だけでは、天の神に対して大きなダメージを与えることはできないでしょう。しかし、多少でも侵攻の妨害が出来れば良い。その後は勇者に託すしかありません」

 

 

 

 

 ---

 

 

 

 

 大赦からの指示を受け、準備は着々と進んでいた。

 翌日早朝から、大赦より命じられた任務を遂行するべく千景砲のエネルギー充填を進めていた。

 

 襲来の予想時間から逆算し、直前に発射できるように起動時間は先に決められていた。

 千景砲は、大地のエネルギーを汲み出し、充分に貯まるまで相当の時間がかかる。

 

 巫女の亜耶と彼女を守る神官はタワー地下の一室に待機している。

 彼女の肉体そのものが、大地のエネルギーをタワーへ送る回路となる。

 エネルギーが溜まり次第、亜耶と芽吹の所持するスイッチを同時に押せば、発射となる。

 

 そうして時間が午後を回った頃、タワーが揺れを起こした。

 地震かと思われたが、まるで大地が悲鳴を上げるような、そんな揺れである。

 その異質な感覚に、防人の一人が思わず過剰に恐怖を感じ、生存本能に従い悲鳴を上げる。

 

「じ、地震――!? 崩れる~~!! タワーが崩壊するよ~~!!!」

 

「落ち着いて、みんな! それよりも、これは……!!」

 

 耐震補強を施された霊的国防装置たる千景殿は軽度の地震程度では倒れない。

 このタワーが倒壊する時は、それこそ他の建物が全て跡形もなく倒壊する時だ。

 故に、彼女たちは展望台からガラス越しに外へと視線を向けて、その悪夢を見る。

 

「――――」

 

 その光景を、何と表現すればいいのだろうかと芽吹は思う。

 美しい瀬戸内海、青い空に、一滴一滴絵の具を垂らすように結界に穴が生じていく。

 大赦の神官から聞いた、去年の24日に天の神が攻撃した物と似ているらしいが多すぎる。

 

 そうして神樹が形成していた壁を呑み込んでいくように、外の炎が舐め燃やしていく。

 結界に穴を開けながら、通る物全てを外の地獄と同じ色へと燃やし、溶かし、壊しながら、

 

「あれが、――天の神」

 

 空が不条理に呑まれるように、赤黒く染まっていく。

 それこそがこの世界に相応しいと、摂理を押し付ける巨大な円盤状のモノが現れた。

 この場にいる誰もが『天の神』を見たことは無かったが、その存在感に本能が理解した。

 

「――――」

 

 あまりに巨大なその存在に目を奪われながらも、芽吹は大きく息を吸う。

 息を吸って吐いて、吸って吐いて。驚愕と僅かな恐怖を己の信念と怒りが押し流す。

 問題は千景砲の充填完了までまだ20分以上もあること。だが今こそ踏ん張り時だと思い直す。

 

『敵の出現が想定時間よりも早い! 天に近い千景殿は、他の物よりも優先的に狙われます! 千景砲発射までタワーを守り抜きなさい!』

 

 スピーカーを通じて、大赦神官の声が防人たちに響く。

 想定外の事に対して悪態を吐く防人がいる中で、芽吹は冷静に指示を全員に下す。

 

「相手は神、想定外の事を起こす事が想定内よ! 総員、配置について!!」

 

『『『了解!』』』

 

 結界の内側には星屑程度は侵入することは出来ないはずだが、天の神の襲来によって出来た穴。

 天の神に付随してきたのか、神自身が生成しているのか、いずれにせよ白い星が四国の空を舞う。

 千景殿へと星屑が向かって来るのが見える中で、防人たちは不条理へと抗うべく武器を手に取った。

 

 4人1組をゴールドタワーの屋上、展望台、地上1階の3か所に配置する陣形である。

 加えて今回は千景殿で敵を迎え撃つ為、専用の足場を展開し、5か所に防人を配置する。

 屋上にある千景砲発射装置こそが今作戦の要の為に、一番戦闘力の高い芽吹が配置された。

 

 そうして予定していた通りに全員が各々の武器を構え、事前に決めた配置について。

 およそ2分後には、白い流星群が群がるようにゴールドタワーに到達した。

 

 

 

 

 ---

 

 

 

 

「…………」

 

 そうして、俺は彼女たち防人が戦っているのを地下室に配置されているモニターで見ていた。

 外用に取り付けられた監視カメラを通じて、亜耶の通信機を通じて、彼女たちの戦いを見守る。

 

『総員、戦闘態勢! 千景砲充填完了まで残り約20分、タワーを防衛する! 今回も誰一人死なせず、犠牲を出さず、任務を達成してやりましょう!!』

 

「犠牲を出さずに、か……」

 

 防人の士気を上げるべく告げられた言葉には、強大な信念を感じられた。

 「誰一人犠牲にしない」という素晴らしい言葉に眩しく思いながらも、思わず俺は顔を顰める。

 そんな夢物語のようなことを実現出来るわけがないと、脳裏では冷静に冷徹に答が出される。

 

 隊長である芽吹の言葉に了解し、懸命に戦う少女達がモニターに映し出される。

 発射装置だけでなく、地下にいる亜耶を殺されれば彼女たちの負けである。

 一応は戦力として俺もこの場に来たのだが、残念ながら文字通りに手を放すことが出来ない。

 

『私たちの千景殿を星屑などには壊させません! 皆さん、気合を入れて守り抜きましょう!』

 

 地上を守り星屑の侵攻を防ぐ指揮型防人の一人が勇ましく果敢に声を上げる。

 それに追随する防人たちの士気も高く、着実に少女たちは迫りくる星屑を駆除していく。

 その鬼気迫る相貌には、それだけ彼女たちのこのタワーへの思い入れを示していることが分かって、

 

「――あと、何分だ?」

 

「14分です」

 

 言葉少なく告げた言葉に、少女の言葉が返ってくる。

 繰り返される何度目かのやり取りになるが、亜耶の声音に呆れはない。

 

「――――」

 

 左手に繋いだ小さな手、巫女装束を着た亜耶を見下ろす。

 あくまで俺の御役目は亜耶を守る最後の砦という形だが、今回はそれ以上にやることがあった。

 初代の入れ知恵もあり、霊的改造を施し、千景砲のエネルギー上限を上げることに成功した。

 

 俺は千景砲の一撃を、ただの牽制の一撃で終わらせるつもりはなかった。

 わざわざ千景殿を訪れた以上は、屋上の兵装も、天の神に拳をぶつける程度の攻撃力ではなく、例えるならば至近距離から銃口を向けて撃ち込む程度に攻撃力を跳ね上げるつもりであった。

 

 だがその分、タワーを通じて発射装置へとエネルギーを溜める量は必然的に増える。

 そのために指輪の世界から指輪を通じ、俺の因子を通じて、亜耶という回路へ力を送る。

 俺自身は亜耶へ力を送るだけの回路として彼女の手を握るだけなのだが、

 

「―――っ」

 

「――大丈夫ですか?」

 

「ああ、これくらいならバーテックスと戦うよりも楽だよ。良いリハビリだ」

 

 指輪の蒼色の石から力を亜耶へと送っていく際に、身体中の細胞が焼けそうになる感覚。

 気を抜くと身体中が内側から弾け飛びそうな痛みが押し寄せるが、歯を食い縛り我慢する。

 心配気にこちらを見上げる亜耶に対して、俺は辛うじて片頬を吊り上げて何とか笑って見せる。

 

「実は俺って、結構根にもつタイプなんだ」

 

「――?」

 

 全身の血が沸騰し、細胞が、因子が暴発しそうな感覚を必死に制御する。

 胸の傷が痛みを伴い、傷が開いてしまいそうだが、ソレを確認する暇はない。

 白い装束の裏側で、己の心境に相応しい花言葉を持つ黒百合がわずかに輝きを放つ。

 

『化け物どもを国土さんに近づけるな!! 絶対に死守! 人間の力を見せてやろう!』

 

『星屑の一匹だろうと、絶対に逃がさないで!』

 

 通信機を通じて指揮型の誰かがそう告げた言葉に、ふと意識を向けた。

 彼女たちにとって、今握っている小さな手の少女がどれだけ大切な存在なのか。

 亜耶が防人たちにとって、どれだけ想われているのか、ほんの少しだけ理解できた気がした。

 

「みんな、亜耶ちゃんのこと、好きなんだな」

 

「嬉しいです――本当に」

 

 ポツリと呟いた言葉。それに無邪気に笑い答えて亜耶は小首を傾げた。

 ブロンドヘアの少女の無垢な笑顔に俺も少しだけ楽になった気がして、再度気を引き締め直すと、

 充填まで残り5分という所で、通信機を通じて、戦っている防人たちの困惑した声が聞こえた。

 

「あれは……何でしょうか?」

 

 その光景をモニター越しに見ていた亜耶も疑問の声音を上げるが、それには答えない。

 外で戦う防人たちの戦衣の胸部分に、太陽の紋章の如き烙印が浮かび上がっている光景。

 記憶の中にある赤い髪の少女のものと酷似している呪印が、少女たちにも浮かび上がっている。

 

「…………」

 

「私には、浮かんでないですね」

 

 咄嗟に亜耶の左胸付近を見るが、どういう条件か亜耶には浮かび上がってはいない。

 この千景殿の回路の一部として、外部からは切り離されていることが対象外の理由なのか。

 そんな事を考えながら、モニター越しに敵を、摂理を語る『神』という存在を睨み付ける。

 

「――?」

 

 そうして睨み付けると、俺は違和感を抱いた。

 理論ではなく、死という味を舐め知った本能が、俺に警鐘を鳴らす。

 あの烙印が現れても、即死するような類の物ではなかったと思いたい。だが、ただ空を見上げる愚かな一般人と異なり、明確に『神』に反逆の意思を示す存在を烙印を通じて認知したのなら――

 

「――茨木」

 

 何となく嫌な予感がした。

 喧しく鳴らす警鐘に従い、精霊を呼び出す。遅い。

 目などないはずなのに、『神』がこちらを見たような気がして、

 

 ――瞬間、赤い光が弾けた。

 

 

 

 

 ---

 

 

 

 

 赤々と脈動する巨大な円盤、神と語るその存在が赦せない。

 人間をそこらへんの塵のように、虫けらを気まぐれで踏み潰すように、平然と殺してしまう。

 そんな傲慢で上から見下ろし続け、運命という言葉で人を殺す傲慢な神が芽吹は嫌いだ。

 

 防人たちを8か所に分散させた弊害で銃弾の数は少ないが、射撃の精密さは訓練で補う。

 訓練の日々を思い出しながら、一発一発を正確無慈悲に星屑に命中させ駆逐していく。

 途中から自らの戦衣の左胸付近に現れた太陽の様な烙印に、防人達の困惑の声が聞こえる。

 

「なんですの、これは!?」

 

「絶対ヤバいやつだよ、これ! 死んじゃう死んじゃうよ~~!!」

 

「落ち着いて、みんな! 千景砲充填までもう少しの辛抱よ!」

 

 禍々しさを感じさせるこの烙印は恐らく危険な物だと芽吹の本能が告げる。

 だが、それがどうしたと、同じくタワーで戦っている仲間たちに懸命に呼びかける。

 

「――――」

 

 息を吐き、タワーの屋上から四国の大地を見下ろすと、人々が困惑の表情で空を見上げていた。

 自分たちが敗北すれば、きっと彼ら彼女たちが次に不条理に蹂躙され、魂を凌辱されるだろう。

 彼らだって今を精一杯生きているのだ。その人生を塵のように天の神は踏みつけ壊すのだ。

 

「許せない……」

 

 怒りを燃やす。あの傲慢たる存在に、この怒りの全てを叩きつけるのだ。

 

 天の神。あれが存在するだけでどれだけ多くの人が犠牲になったのだろうか、想像もつかない。

 自らに勇者のような力は備わってはいないけれど、せめて一撃、人の命を弄んだ返礼をしよう。

 仲間と共に、銃弾を回避する星屑に対しては銃剣の刃で斬り倒しながら、

 

「――は」

 

 その光景に芽吹は、いや防人達は、思わず双眸を限界まで見開いた。

 その光景は先の任務で見たことがある。だから知らないはずがない。

 あの地獄の、赤黒く、生命を感じさせない、死を彷彿とさせる空間で見た物。

 

「サジタリウスの矢――!!」

 

 それも複数。あの巨体から神々しい光と共に四国の大地に放たれる。

 当たり前だ。天の神が作り出した神の尖兵、バーテックスの能力が神に扱えないはずがない。

 創造主でありながら、恐らくは全てのバーテックスの能力を有しているのかもしれない。

 

 回避は許されなかった。

 自分たちの役目はタワーの死守であって。

 

 全ては迎撃できない。

 あれだけ多くの疾い矢がタワーだけではなく、その周辺をも。

 思考を働かせる間もない、一瞬の出来事だった。赤い光が――

 

「あ――」

 

 優に100を超える膨大な数がタワーの壁に直撃し、他の建築物を破壊し、見上げた人を蹂躙する。

 一瞬の出来事に、それこそが運命だと言うように、この箱庭が血と煙の臭いで満たされていく。

 何も出来なかった。そう考える前に攻撃によって揺れるタワーの屋上から落ちるのを回避する。

 

「――――」

 

 悲鳴を押し殺し、転げ落ちるのを必死で回避し、他の防人たちの悲鳴を通信機越しに耳にする。

 誰一人犠牲にしないという信条が、容易く破壊されていく音が聞こえた。神の嗤い声が聞こえた。

 壮絶な破壊音。これが神であると教えるように、その光景を目の前で見せつけられて――

 

「――――」

 

 赤黒い衝撃が芽吹を殴りつけ、叩きのめし、ぶちのめす。

 己の怒りを凌駕するように、純粋な破壊が、芽吹の、防人たちの胸中に恐怖をもたらす。

 どれだけ頑張ろうとも、神という絶対的存在が、避けがたい恐怖が――――

 

 

『―――狼狽えるな!』

 

 

 冷たく、低く、そして真剣な声音が、通信機から防人たちの胸中に鳴り響いた。

 

 

 

 

 ---

 

 

 

 

『―――狼狽えるな』

 

 再び誰かの声が、その有無を言わせぬ声音に、防人の誰かが息を呑んだ。

 目の前で広がる絶対的な絶望。この敗北こそが運命であるという状況下で、

 冷たく、低く、真剣な声音が、芽吹の、雀の、夕海子の、シズクの、防人たちの耳朶に響く。

 

「この声……?」

 

 どこかで聞いたことのある声だった。

 男の声音。だが神官の声音ではない。低い声音が、その言葉が魂を震わせる。

 目の前で起きた残虐な景色を肯定しながら、それでもなお愚直に前に進まんとする言葉。

 

『―――寧ろ教えてやれ』

 

 何をだ。何を言っているのだ。

 この声は、ノイズ混じりに聞こえるこの声は、自分たちに何を伝えたいのだ。

 

『ここに誰がいるのかを』

 

「――――」

 

 言われるまでもなかった。

 そう思い、弱気に挫けそうになった己の心に喝を入れながら、再度星屑と戦う。

 そうだ、教えてやるのだ。天の神に。人間の、防人の力を思い知らせてやるのだ。

 

 先程の天の神による直接攻撃の後も、星屑による攻撃は終わらない。

 確かに犠牲は目の前で出てしまった。だが決定的な敗北はしてはいないのだ。

 雑草のように必死に勝利に食らいつきながらも、それでも勝利に向けて銃剣を振るう。

 

 自分たちは勇者の様な、あの神を殺す力はない。

 だが、それがどうした。防人の力を、頭上から見下ろす神に教えてやろうではないか。

 

「――みんな、もう少し頑張って!!」

 

「――。もちろんですわ!」

 

「怖いよ怖いよ……けど頑張る!」

 

 自身を落ち着かせ、怯んだ戦線を星屑に明け渡さないように防人は不条理に抗う。

 息を吐き、芽吹の怒りを再熱させ、防人の戦衣に仕込んだ通信機を通じて、再び声が聞こえる。

 先程の男の声音ではない。柔和で静かながらも、防人なら知らない人はいない少女の声音。

 

『芽吹先輩、発射準備が完了しました!』

 

 通信機を通じて、先ほどの攻撃を受けながらも、凛とした亜耶の声が芽吹へと届く。

 

 

 

 

 ---

 

 

 

 

 柄にもなく変なことを言ってしまったと思う。

 壊れてしまったモニター、恐らくは天の神の攻撃によるものだろう。

 先程の衝撃は乗り切ったが、通信機は辛うじて生き残り、防人の狼狽えた声が聞こえた。

 だから落ち着かせるために、考える前に何かを告げようと、勇者として奇術師として口を開いた。

 

「芽吹先輩、発射準備が完了しました!」

 

 隣で通信機に告げる亜耶、彼女の握られた手は全く震えてはいなかった。

 怖くないわけがない。だがそれ以上に防人たちを信じて、この場で己の役割を果たしているのだ。

 

『亜耶ちゃん、一緒に撃つわよ!』

 

「はい! 一緒に!」

 

 先程の衝撃を受け、やや暗くなった地下室は爽緑の光が迸っている。

 大地の力を一身に受け、その身を回路とし、充填された人類の叡智にして反逆の狼煙。

 

「――――」

 

『3、2、1………ゼロ!』

 

 充填は完了したのに、未だに少女は右手でこちらの左手を握り、片方の手でスイッチを押す。

 ふとチラリとこちらを見上げる亜耶、その双眸に片頬を吊り上げて不敵に笑いかけた。

 今こそ、傲慢たる神に、人の底力を見せつけてやろうではないか。そう思って。

 

「――撃ち抜け」

 

 瞬間、力強い唸りと共に爽緑の光が収束し、不条理を唾棄する反撃の一撃が放たれた。

 

 

 

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