ふと悪夢を見たらしく、嫌な気分の中で瞼を開ける。
どうやらうつ伏せに寝ていた所為か、胸が圧迫されている感覚に眉を顰めた。
「――――」
心地良さの中で、体内時計が午後の時間を告げている。
一瞬だけ開いた瞼を閉じ、意識を再び優しい眠気に渡そうとする瞬間に、
「――?」
眠りながらも瞼の裏に映った物、直前に見た光景に違和感を抱く。
念のため寝台の上でそのまま目を閉じたまま前後の記憶を探るが、何も思い出せない。
記憶がないという訳ではない。己の状態、自らが加賀亮之佑であるという自己は確立済みだ。
「――ふあ」
何となく柔らかい欠伸を漏らし、淡々と身体の状態を確かめる。
両手両脚を動かし異常がないことを確認、身体の気怠さは少なく意識は冴え始めている。
では目覚めてから感じる違和感は一体何かと考えて、最後に俺は瞼を開け現状把握に努める。
「――――」
目の前に映る薄青のカーテンと、自らが横たわる白い枕とシーツ。
鼻腔を擽る香りに混じるアルコールの匂いは消毒を主とする用途なのだろうか。
なんとなく勇者となってからよく運び込まれる病室と似ているが、雰囲気はもっと柔らかい。
耳に集中すると、部屋の主の趣味かゆったりとしたリズムの音楽が流れているのに気づく。
何度か訪れたことのある場所だ。
真面目で勤勉な人間、ある程度健康な学生ならば訪れる機会は少ない場所。
周囲を薄いカーテンで覆われながら、遠くから聞こえる多くの学生の声という判断材料を加味し結論を下す。
「……保健室、か」
声に出して驚愕する。
その声は掠れていながらも分かる程度に、明らかに自らの声ではなかった。
そんな少し焦る自分の心を沈めたのは、自分が何者かの理解とアイデンティティだった。
「風邪……、いや」
声帯模写や変装はある機会に身に着けた自慢出来る特技だ。
だから、つい無意識に快活な少女の声音を出してしまったのだと無理やりに納得する。
脳裏に過り始める嫌な予感を無視しもう一度、今度は意識して“自分”の声を発声する。
「……おれ、オレ、俺は、加賀亮之佑だ……!」
その声は明らかに少女の声音だ。
可憐さと幼さが残る陽だまりのような桜色の声。
「……ぁ?」
何となく頬に触れようとして、自らの手のひらを注視する。
手のひらと手の甲を呆然と見ながら上体を起こしてみると、違和感は確信に変わる。
「………」
最初は変装したまま眠ってしまったのだと思った。
だが、頬に触れた手の感触と視界の端に映り込む短めの鮮紅色の髪という現実が幻想を砕く。
見下ろした讃州中学校の“女子”の制服と布団を捲って分かる短めのスカートに鼓動が高鳴る。
「――は、――あ……」
冷たい汗を掻きながらパニックだけは抑える。
己の小さな手で華奢な身体を抱くと分かる少女の柔らかさに、自己を見失いかける。
掻きむしるように薄くはない少女の胸元に触れ、あるはずの指輪を探そうとするが、
「ない」
口にした途端、足元がぐらつくのを感じる。
寝台に腰を掛けるのすら疎ましく、倦怠感に包まれながら再び寝台に横たわる。
股に触れて息子が無くなった絶望の中、胸に触れて柔らかさしかない事に気づく。
乱れた衣服、曝け出した下着を直す気にすらならず、自らは男だと呆然としながら寝転がる。
己を囲うカーテンの外、その世界に出ることも検討はしたがその気力すら削がれてしまった。
「……、どうしよ……」
このまま引き篭もろうか。
毛布を頭まで被り、考えることを止めようと思い始めた頃に救いは来た。
ガラガラという引き戸を開ける音と共に入り込む靴音、上履きと思わしき足音を立ててこちらに近づく。
「――友奈ちゃん」
「……と、東郷しゃん?」
「……しゃん?」
女神のような声音が、方向的に己を気遣っているのだと分かった。
内と外が噛み合わないというホラーな状態の中で訪れた、赤い髪の少女と黒髪の少年の親友。
「東郷神! こっち来て!」
「えっ、かみ……?」
「はやく!!」
「う、うん……」
戸惑う声を無視して懸命に呼ぶ。
その祈りが通じたのか、シャッという音と共にカーテンが開き少女が姿を見せる。
奥の照明器具が艶のある長い黒髪をリボンで纏めた少女を後光の如く照らし出す。
「友奈ちゃん? どうしたの、そんな布団に包まって……寒いの? もしかして風邪?」
「未だに自己の定義が揺らいでいる故の悪寒かな……」
「……風邪のようね」
「――いいから、こっち来て東郷さん」
小さな白い手で寝台の上をポンポンと叩くと、わずかに頬を赤らめた東郷が腰を掛ける。
背筋を伸ばした姿は美しく、布団に身を包めながら人肌を求めて凛とした少女の隣に座る。
室内のどこかにある時計の針音が聞こえる中で、小さく息を吸い、口を開く。
「東郷さん。単刀直入に聞くけど……、俺って友奈だよね」
「……え、ええ、そうよ、友奈ちゃん。……俺? さっきからちょっと変よ?」
「――加賀亮之佑って知ってる?」
「知ってるも何も……、亮くんなら隣で寝てるわよ?」
心配そうな顔をして、冷たく柔らかい手のひらを俺の――友奈の額に触れさせる。
難しい顔で熱を測っている東郷は、「熱は……ないようね」と独り言を呟きながら此方を見る。
その反応を見ながら、己の知っている少女の姿に思わず身体を傾け、全体重を東郷に預けた。
「東郷さぁん……」
「うん」
両腕で腰に抱き着く俺を拒否せず、文句も言わず、優しく頭を東郷は撫でる。
その行為に安堵を抱き、落ち着きを見せる精神の中でわずかな逡巡と共に唇を震わせる。
「実は……俺……」
---
「友奈と亮之佑が入れ替わったぁ!?」
「そうらしいんです」
勇者部部室。
その後、目覚めた友奈――俺の身体を客観的に見るという経験はいい気分ではなかった。
男物の制服を着た姿、長くはない黒髪、血紅色の瞳は見る者の記憶に焼き付くようで、そんな風貌の少年を園子が優しく抱いているのは、何か心の奥で湧き上がる感情があった。
「ゆーゆ、大丈夫?」
「……うん、大丈夫だよ園ちゃん」
そう柔和ながら快活な笑みを浮かべる少年。
楽観的にこの状況を楽しんでいるようにも見える少年は、中身は友奈であった。
「それで、なんでこんな事になってるの?」
「いま大赦の方に連絡したけど……、調査中だって」
「なるほど……」
端末片手に俺を見下ろす夏凜に頷き返す。
東郷に全てを話すと半信半疑ではあったが、その後目覚めた友奈の反応を見て理解したらしい。
直後に勇者部員を招集、既に授業は終わり放課後になった為にこうして知恵を出し合っている。
「……ん?」
「あんたが亮之佑なのよね……?」
「えっと……」
それでも、やはり信じ難いだろう。
夏凜の双眸はわずかな疑問を宿しながら、ジロジロと動物を見るようにこちらを見下ろす。
何と答えるべきか、東郷の豊満な身体に先程から抱かれながら数秒程考えて顎に手を這わす。
「酷いよ、夏凜ちゃん……」
「え?」
「こんな可愛らしい私の事が信じられないの? 煮干しの食べ過ぎで頭沸いちゃったの? そんなんだから東郷さんのように大きなぼた餅になれないんだよ、夏凜ちゃん!」
「なあっ――!? あ、あんたね……」
「うわぁああん! 小ぼた餅が怖いよぉ、煮干しにされちゃうよぉ、東郷しゃぁああんッ――!!」
「よしよし、大丈夫よ亮くん。――あと、夏凜ちゃんには後で少しお話が」
「いやいや横暴よ!!」
「やだな冗談だよ、本気にしないで。私、夏凜ちゃんの事、大好きだから!」
「なっ……!!」
唐突にギアを切り替えて今度は友奈らしく快活そうな笑顔を見せる。
そんな東郷に慰められる俺に狼狽える夏凜の姿に、周囲は何故か納得の様子だった。
若干慣れつつある中で、元の身体の持ち主よりもあざとさを増しているのは気分だ。
「……ま、まあ、確かに友奈なら言わないわね」
「そんな事ないよ! 私も夏凜ちゃんの事だーいすき!!」
「――!!」
「……どんな状態でも、かっきーはかっきーだよ~」
便乗する気か、恐らくは天然が入っている黒髪の少年が口を開く。
そんな風に夏凜を赤面させる友奈――俺の身体を抱く園子の言葉に小さく笑みを浮かべる。
そして此方をジッと見つめる、鏡越しでしか見たことがなかった血紅色の瞳から目を逸らしていると、
「――っていうかあんた、今日はやけに東郷に触れているわね」
「そう? 私っていつもこんな感じじゃない? ねえ、東郷さん?」
「そうよ友――亮くん」
「完全に口調を変えられると、ほとんど違和感ないわね」
「亮くんは可愛い演技派だから……」
「可愛い……?」
何故か今日は随分と東郷は俺を甘やかす。それは見た目が友奈だからだろうか。
椅子に座る東郷の膝に借りた猫のように座り、背中に触れる柔らかさを感じながら夏凜と話す。
その状態で何気なく園子の方に目を向けると、友奈は俺の身体で、園子を膝の上に乗せていた。
「重くない、ゆーゆ?」
「全然! すっごく軽いよ! ……そうだ、ぎゅーってしてあげるね!」
「えっ、待ってゆーゆ。それは……、ふわぁ~……!」
「……もしかして嫌だった?」
「ううん、かっ……じゃなくてゆーゆだったね……。うん、もっと力入れて良いよ~」
「ぎゅー!」
「ん~」
絵面はともかく、中身だけだったら百合の花が咲いているだろう。
楽しそうに自分と園子がイチャイチャしている姿を客観的に見ているのは微妙な気分になる。
やはり自分を客観的に見つめるのが不思議と良い気分ではないのは、精神的な部分からだろう。
それはともかくと頭を振り、周囲を見渡す。
現在、この部室には夏凜、園子、俺、友奈、東郷が集まっている。
樹と風は少し用事があるらしく、遅れて来ると連絡があった。
「――それで、そもそもの原因とかは分からないわけ?」
「うーん? そもそも確か……」
腕を組んだ夏凜が壁に背中を預けて聞いている。
原因は判らず黙り込む俺に代わり、友奈に可愛がられている園子が当時の状況を語る。
彼女曰く、俺と友奈が意識を失ったのは一時間前、放課後になってからだったという。
「その時ちょうど曲がり角で運悪くゆーゆとかっきーがぶつかって……」
「その衝撃で入れ替わった……?」
「多分……」
「なるほど……」
「こういう展開で定番なのは~、もう一度同じことを繰り返してみることかな……あっ、ゆーゆもう良いから……」
「ううん、せっかくだから園ちゃんの身体、マッサージしてあげるね!」
「――――」
外野を無視して、改めて自らの風貌を見下ろしてみる。
見慣れた讃州中学校の制服、袖から覗く白くほっそりとした腕は間違いなく己の物ではない。
短めのスカートと黒いハイニーソ、鏡で確認した瞳の色や顔の造形は紛れもない少女の物だ。
自らを抱くように腕を組むと胸部が腕に触れ、小さく頬を緩める。
ラッキースケベというか、触れているのが自らの身体なので興奮が少ないのが残念な限りだ。
頬を緩めた俺に視線を向ける東郷と夏凜に肩を竦めながら、何てことないように口を開く。
「まあ、大丈夫だろ」
「いやあんた……そんな適当な」
「なんとかなるって」
心配し慌てる人を見ると自然と落ち着ける。
落ち着けるからこそ血が巡り、冷静な頭脳が役割を果たすべく稼働する。
何となく脚を組み、はしたないと東郷に怒られながらも一つの結論には至っていた。
素晴らしい椅子から立ち上がり夏凜の前に立つ。
ジッと見つめ、にへらっとした笑みを向けると、夏凜はわずかに頬を染めて顔を背ける。
「……なによ、亮之佑」
「ありがとう、夏凜」
「えっ、ちょっと……」
「――それにしても、夏凜ちゃんは良い匂いだね!」
「や、やめ……、友奈の真似するなぁ!!」
「夏凜ちゃんは優しくて可愛いね!」
何だかんだで精神的な安定が生まれ余裕も出来た。
感謝の意を表し、友奈の身体のまま親し気な笑みを浮かべて夏凜に抱き着く。
亮之佑の肉体ならば怒られていただろうが、友奈の身体故に抵抗は薄くされるがままだ。
「ところで……風先輩と樹は?」
夏凜とのじゃれ合いを止め東郷へと振り返る。
薄っすらと笑みを浮かべ続けていた東郷だったが、俺の質問に小首を傾げる。
わずかに逡巡した様子で思い出したように口を開くと、廊下を走り此方に寄る音が聞こえた。
「さっき連絡が入って……、多分そろそろだと――」
「おっまたせー! 皆の部長が来たわよ! 待ったー?」
「待ってない……って!? 樹じゃない。風の真似なんかしてどうしたのよ、しかも結構似ているし……」
「……? 何変な事言っているのよ……ってあれ、夏凜背が伸びた?」
「いや、あんたの背が縮んでいるというか……樹の身体になっているというか……ええい、ややこしいわね!!」
扉を開け、部室に入ってきたのは樹と風だった。
だが今の挨拶をしたのは樹でありながら、その言葉は如何にも風が言いそうな言葉だった。
この瞬間、何となくだが、樹と風も入れ替わっていると本能が脳裏に囁くのを感じた。
こうして新たに部屋に入ってきた部員で勇者部全員が揃う。
だが、現状は更なるカオスとなっているのには違いなく、もはや苦笑の一つも浮かばない。
乱入してきた樹に入っていると思わしき風にノリツッコミと説明をする夏凜から目を背ける。
目を向けるべきは混沌と化した部室内ではない。
外見が樹の風と共に部室へと入ってきた少女を、俺は訝しげに見つめた。
友奈の身長は目の前のブロンド髪の少女よりも少し低い為に、見上げる形で見つめ合う。
「……そんなに見つめられると照れるじゃないか」
「お前か」
「ボクだ」
確証といった物がある訳ではなく、ただの直感でしかなかった。
だが実際に口を開き、少女の声音を台無しにする淡々とした響きと態度で確信に変わる。
見た目が風という状態で肩を竦めながら抑揚の少ない口調の少女は、何より見知った存在だ。
俺の、加賀亮之佑の力の源。
男である俺に勇者としての力を貸してくれる存在。
「樹はどこなんだ?」
「さあ」
「――――」
「今キミが考えている通りだったら、犬吠埼樹がどこにいるかは気にする必要はない」
ただ、彼女とこうして対面する機会は闇夜に浮かぶ月下での夜会が常なので新鮮に感じる。
小首を傾げる仕草は本体ならば似合うだろうが、その妖艶な姿は見た目が風なのが残念だ。
決して風の見た目が悪いなんてことは無い。ただ外見と中身の不一致が過ぎるだけなのだ。
「一番似合うのは園子辺りだろうが……」
「似合わないことは自覚しているさ。そういうキミは……」
「きゃるーん、可愛い可愛い友奈だよ!」
「――楽しそうだね」
「……まあ、少しはな」
塵を見るような目を風から向けられるとゾクゾクする。
何かに目覚めそうな冷たい視線なので、茶番を止めて二人でため息を吐く。
当たり前だが、俺は人にぶつかった程度で人格の入れ替わりなんて起こることはないと考えている。
神樹による物だとも考えたが、流石に神がそんな暇つぶしのためにリソースを割くはずもない。
しかし現状俺の、結城友奈の目に映るこの世界は、明らかに異常であるのは間違いない。
「なあ、初代」
「なんだい半身」
「一応聞くけど、新種のバーテックスの可能性は?」
「無いと断定はしきれないだろう。ボクの知る限り大型――つまりバーテックスと呼ばれる物は大赦より与えられた星座の名を冠するモノだけ。実際に天神が作成した……そうだね、第十四の星座からの攻撃であっても、この世界で唯一キミの精神と肉体を分離させえるのは難しいだろう」
「それは契約の効果でか」
「その通りだ」
以前初代と勇者因子を繋いで交わした契約。
その効力は、たとえ世界が変わろうと加賀亮之佑は『加賀亮之佑』のままでいられる程らしい。
だが実際の俺の身体は、この可憐で華奢で愛らしい快活な笑みが素敵な赤い髪の少女である。
「つまり――やっぱりそういう事なんだな」
「キミ……覚えているのかい?」
「ああ、タイミングは?」
「いつでも」
コクリと風の見た目をした初代に頷く。
ひとまず話し合いを終え、騒がしい部室、数人の中身が複雑な少女(+少年)たちに呼びかける。
だが誰も聞かないので適当に制服に入っていたホイッスルを鳴らすと、ようやく静かになった。
「みんな、ちょっと聞いて!」
「何よ、友奈……じゃなくて、ええと、亮之佑!」
「もしかして何か分かったの?」
「ああ、樹……じゃなくて……、まあ誰でもいっか」
抗議する樹の外見をした風を無視して話を進める。
ふとこちらをジッと見る園子に気づくと、パチンと金髪の少女からウインクを貰う。
「園子は何か分かった感じ?」
「う~ん、何となくだけど分かっちゃったかな」
聡明な金髪の少女に心の中で喝采を送りながら、未だ困惑する少女たちを見渡す。
全員の顔を見渡し、そして最後に隣でまるで処刑人の如くハリセンを持つ少女を見る。
「さて、みなさん。今回の事件は多分……」
「「「「たぶん?」」」」
「――夢オチです」
処刑人は、片手に持つハリセンを俺の頭に叩きつける。
直後にパッコーン! と鳴り響く音と共に、世界という名の『夢』は壊れ去ったのだった。
---
何か悪夢を見た気がした。
上体を起こすと背中にびっしょりと汗を掻いているのが分かる。
一体どんな夢だったのかを思い出そうとするが、ただ悪夢だったとしか覚えていなかった。
「……、なんか酷いオチだったような」
掠れた声で、寝台の近くにある目覚まし時計を見る。
これで4時頃なら二度寝を、6時頃なら起きるのだがと手を伸ばして――違和感。
「…………あれ」
声に出して気づく違和感に眠気が吹き飛ぶ。
身体を動かして気づく違和感に意識が覚醒する。
周囲を見渡して気づく違和感に徐々に鼓動が高鳴る。
「まさか……、そんな、いやいや……冗談はよしてくれよ……うふふ」
独り言を言いながら小さな鏡を手に取り己を見る。
わずかに物が散乱している部屋に見向きせず、ただ食い入るように見つめる。
金髪の少女、ただ髪は短めでやや気弱な相貌だ。
だが今は、額に流れる汗で前髪を張り付かせながら絶句した表情が鏡に映る。映ってしまった。
鏡に浮かぶ少女の姿は、どこからどう見ても犬吠埼樹であり、加賀亮之佑ではなくて――
「い、イヤヤアアアぁァああああっっ――!!」
リクエスト回でした。なお続かない。
【リクエスト要素】
・勇者部で身体と精神の入れ替わり