「もうここまで増やせば」
「いいだろうな、うん」
黒井慎二、そして白川由美に続き複数の人修羅を作り出した彼らルイ少年達は、いよいよ計画を進めることに。
「ガイア教の、儀式か……」
「ミロクなんとかという、けったいな書物に基づいている東京受胎ですな」
「そうだ、ゴモリー」
その言葉に深く、深く頷くルイ少年。
「だが、その前に下準備がまだ出来ていない」
「東京受胎の主宰者……」
「あの氷川とかいう男、今回は野心が希薄な様子だ」
「他の人物を探す必要があると……?」
「一人、心当たりがある」
艶然と笑みを浮かべるルイ少年の近くへ、彼の使い魔が近付く。
「僕の魔力も、充実してきたしな……」
――――――
「母さんと、僕の静寂なる世界……?」
「そうらしいな、聴くところによると」
ルイ少年から「未来視」の力を見せつけられた氷川は、その未来の不安定要素を取り除くために。
「シジマ、というコトワリだよ」
「シジマ……」
あえて、この狭間という少年を利用しようと考えていた。
「君の母さんとも、静かな時がすごせるよ……」
彼狭間偉出夫の母が、この病院に入院していたことも、彼氷川にとって好都合だ。
「この、女な……」
「マグネタイト、いや」
新宿衛生病院の地下へと囚われ、その身を鎖に繋がれたままに狭間達の前へと立っている少女、彼女の顔を見ながら。
「マガツヒ吸引に、必要なようだな」
「気の強そうな女だ」
その女生徒、彼女がその顔を微かに上げる。
「……して」
「なんだ、小娘?」
「私を誰だと思っているの?」
「さあ……」
その娘の声、それに対して氷川の声は冷たい。
「知らないな」
「橘千晶、橘の家名をしらないの?」
「知らないな」
「くそ……」
その橘という少女は、その言葉を聞いたきり。
グゥ……
再び、その面を下へと向ける。
「ミロク教典によれば」
「まもなく東京受胎が始まる、だったな氷川」
「お前の望みも叶うよ、狭間偉出夫君……」
「ふん……」
その狭間の鼻を鳴らす音と共に、彼の手に納められた「スライム」が。
「な、何よそれ……!!」
「マガツヒ吸引に必要なものだ」
「や、止めて……!!」
ビュウ!!
橘千晶という少女に向かって飛びかかった。
「ああ!!」
彼女の皮膚や服こそ溶かさないが、そのスライムによる「飛び掛かり」を受けた彼女から。
シィ、ン……!!
紅い光、いや燐光が暗い部屋へと舞い、それが氷川の手に持たされている容器へと吸引されていった。
「思ったより、マグネタイト含有量が多いな……」
「僕はここでサヨナラをさせてもらう……」
「見物だぞ?」
「あいにく、僕にはその手の趣味はない」
「なるほど」
その狭間の言葉に合点がいったらしい氷川は、その彼が部屋から出ていく姿を見やりながら。
「シジマのコトワリに、相応しい男かもな」
一人、静かにそう呟いた。