「ふん!!」
ズ、シャア!!
その白川由美のキックにより、餓鬼がまたしても一匹吹き飛んだ。
「スゴイホー!!」
「まだまだ、くるよ!!」
「ホー!!」
その紅い光を発している白川の隣には、雪だるまのような姿をした悪魔が立っている。
「僕も、負けてられないホー!!」
「無理しないでね、ヒーホー君!!」
「ホー!!」
ビュオウ!!
その雪だるまの姿に相応しく、ヒーホー君と呼ばれた悪魔はその口から冷気をほとばしらせて。
カ、ヂィ……!!
その幽鬼達を、次々にと凍らせていく。
「白川のおねえちゃん、マガツヒだホー!!」
「こんなゾンビみたいなやつらの、マガツヒというやつなんて吸いたくないわ」
「贅沢を言っちゃいけないホー……」
「ちぇ……」
マガツヒ、それはこのボルテクス界に生きる者の「食べ物」だということは彼、ヒーホー君に聴いたし。
「しゃあない、吸うか……」
直感的に「悪魔」となった自分にはこれが必要だとは解っている白川である。
「あ、ありがとう」
「どういたしまして、マネカタさんだっけ?」
「は、はい!!」
ピクッ……
その餓鬼に襲われていたマネカタと呼ばれた者は、戦いの最中にずっと白川とヒーホー君の後ろにと佇んでおり、そして。
ピ、クッ……
微妙な振動を自らにさせながら、そのまま白川由美達から立ち去っていく。
「ふう」
「大丈夫、おねえちゃん?」
「うん、平気……」
顔、そして衣服から見える素肌にピンク色のラインを輝かせながら、白川はヒーホー君に軽く抱きついた。
「冷たいねえ、ヒーホー君は」
「そりゃ、雪だるまだからだホー!!」
「フフ……」
ガ、サァ……
「誰、新手!?」
「おっと、勘違いしないで」
廃ビルの狭間から這い出た女、それは。
「貴女達の戦いを見ていただけ」
「確か、あなたは」
ちらりと病院で見たきりであるが、彼女の顔には見覚えが、白川にはあった。
「橘さん……」
「橘でいいわ」
そう言いながら、橘千晶はその顔の血化粧、赤いラインを「月」の光により光らせた。
「それで、どう?」
「何がよ、橘さん」
「橘、でいいといっているじゃないの」
「何だって言うの、橘?」
「弱者を助けた感想は」
その揶揄するような言葉に白川はムッとしたが、その色は顔には出さず。
「いい気分ね」
「優越感でしょ?」
「何が言いたいの、橘?」
「勝ち組だけが持てる、優越感」
スゥ……
しばらくの間が、二人の女生徒の間に疾る。
「私はね、橘」
「何、偽善者さん?」
「この子、ジャックフロスト君だって」
そう言いながら、白川はヒーホー君へとその指を向けた。
「この子だって、あたしが助けた」
「それは御苦労」
「あなたに、なんだかんだ言われる筋合いはないわ」
「……」
再びの間、その暗い合間にヒーホー君はオロオロとしている。
「白川さん」
「今度は何?」
「私、気の合う仲間を探していたんだけど」
「無理ね」
「まだ、話は途中よ」
そう言う橘を無視して、白川は大きく口へと息を吸い込む。
「どうしたの?」
「あたし、あなたといたくないわ、橘」
「嫌われたもんね、私は」
「嫌われるような事を言っている、あなたは」
その白川の言葉に、橘千晶はその細い肩を竦めてみせて。
「さようなら、偽善者さん」
そのまま、何処かへ去っていった。
「おねえちゃん……」
「大丈夫よ、ヒーホー君」
「でも……」
「大丈夫、大丈夫だから……」
トゥン……
何故か一筋の水、涙が目からこぼれ落ちたのも気がつかずに。
「アサクサって、どこなの?」
「もうすぐだホー」
「そう、ならよかった」
彼女はその、目先の目的地への旅路を急ごうとした。