IFのマガツヒ   作:早起き三文

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第6話 「チート」

 

「な、何だよ!?」

「マグネタイト経絡が乱れたか……」

 

 赤黒い光の塊が落ちた地面、そこから異形の小人の様な者達が這い出る、まさしく地の底からよじ登ってくるかのような光景に、恐怖にその顔をひきつらせた黒井慎二の唇が震え始めた。

 

「ここまで多い実体化プラズマは初めてだな、私も」

「コイツらを見たことあるのかよ、大月!?」

「言っただろう、黒井君」

 

 その背中、謎の機械から伸びるホースと腕のアームターミナルを構えながら、冷静な声を放ちながら大月は慎二へ自分の背中へ来るように促す。

 

「最近、悪性プラズマが多いと」

「じょ、冗談じゃねぇ!!」

 

 ト、トゥ!!

 

「バケモンじゃねえかよぉ!!」

「おい、黒井君!?」

 

 脱兎のごとく、その場から逃げだす慎二へ慌てた声をかける大月のその顔へと掛けてある眼鏡がずれ。

 

「おっと!!」

 

 右へと、片寄った。

 

「仕方があるまい、大月先生」

 

 軽くその身体を捻らせるハザマのその両手、そこにはなにやら紅い光のような物が渦を巻き始めている。

 

「愚人には悪魔など信じられる物ではい、だろう」

「プラズマだと言っているだろうに、ハザマ君」

「あなたがどうこやつらの事を思おうと」

 

 赤黒い塊、それらが産み出した生き物。腹部が異様に膨れ上がった灰色の肌をした異形達がその濁った瞳を二人、ハザマと大月へと向けている。

 

「ニク、だ……」

 

 ペツァ……

 

その醜い悪魔が涎を滴らせながら、その足を一歩踏み出した途端。

 

「ハアァ!!」

 

 ハザマのその手、そこに渦巻く紅い輝きが白く変化をし、涼やかな音と共にその異形の悪魔達の内、その足を踏み出す一匹を包み込んだ。

 

 シィア……

 

 その怪物は悲鳴を上げる暇もない、ハザマから投げ付けられた冷気がそのまま悪魔の表面で氷結をし、氷漬けとさせる。

 

「ニク、ニクゥ……」

「ちっ、餓鬼どもめ……」

 

 だが、その異界から招来された幽鬼達は、氷の柱と化した同族の事などはその視界へ入らないかのように、ジリジリとその足をハザマ達へと向け、近づく。

 

 

 

――――――

 

 

 

「ハア、ハア……」

 

 暗闇の森のなか、黒井慎二はその息をきらせながら後ろを振り返る。

 

「だ、大丈夫かなアイツら……!!」

 

 ようやく、人の心配が出来るようになった心境のその時。

 

 グゥ、グゥン……

 

「あ、あわわわ……」

 

 先程の幽鬼、地獄からの餓鬼、それらが空間を切り裂き出現し、慎二の行く手を阻む。

 

「ニク……!!」

「だ、誰か助けてくれ!!」

 

 股間が濡れるのも気にせずに、慎二は手足をばたつかせてその場からまるで「ハイハイ」をするかのように逃れようとする。

 

「うぐぅ!?」

 

 その時、何かが黒井慎二の口の中へと入り込んだと、彼が思ったその刹那。

 

 ニク……!!

 

「うわっ、くるな!!」

 

 慌てて飛びかかってくる餓鬼へと向かって、その両手を突き出す慎二、その彼の手から。

 

 バァン!!

 

「へ!?」

 

 何か、衝撃波の様なものがその餓鬼を弾き飛ばし、その光景を見た他の餓鬼が僅かにたじろぐ。

 

「な、なんだってんだ!?」

「ヒフミ亜流のマガタマかなあ……?」

「おい、小僧!?」

 

 いつの間にか彼、黒井慎二のすぐ近くまでやってきたルイ少年が、彼の慌てぶりを面白そうに眺めている。

 

「な、何がなんだか……」

「漏らしたね、お兄ちゃん」

「そんなことを言っている場合ではないだろう?」

「ほら、またきたよ」

 

 自らから冷気をほとばせながらも、ルイ少年は慎二をけしかけようとその尻へと蹴りを入れた。

 

「破魔、使えるはずだよ?」

「な、何を言っているんだよ?」

「天使を生け贄にしたからね、そのマガタマ」

 

 シャア!!

 

 間合いをとっていた餓鬼たちが、焦れたかのように一斉に黒井慎二達へと襲いかかる。

 

「う、うわぁ!?」

「破魔、と念じるんだ!!」

「破、破魔!!」

 

 バシュ!!

 

 その言葉を念じた途端に、慎二の頭へと強い頭痛が疾り、そのまま彼は血の凝結液と成り果てた餓鬼達の姿を見やった。

 

「す、すげえ……!!」

「初めてにしては、上出来」

「チート、スキルってやつじゃねえか!!」

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