「慎二君、ルイ君」
「やだよ、ハザマなんか助けるのは!!」
「同じ同級生だろう!!」
「いくら、俺がチートを手にしたからって!!」
狭間偉出夫を助けようとする大月に対しても、黒井慎二は渋ったきりにその場から動かない。
「もう、こんなオカルトはいやだっての!!」
「確かに」
「んだよ、小僧……!?」
「この程度の戦闘能力では、餓鬼程度ですらまともに戦えない」
「何だと、ルイ小僧!?」
そう言われて、いきなりいきり立つ黒井慎二。
「ならば、俺の手に入れたチート能力を見せてやるぜ!!」
「ちょ、ちょっとお兄ちゃん!?」
ダッ!!
そう言ったきり、慎二は暗闇のなか方向も解らずに狭間偉出夫を探しだそうとする。
「狭間、どこだ!!」
「よし、プラズマ吸引装置が復帰した!!」
先程から慎二を説得しつつに再利用しようとし、回復したプラズマ装置を担ぎ大月も黒井慎二へと続く。
「狭間君、どこだ!!」
「全く、二人とも……」
その二人の「人間」の姿を見て、一人苦笑するルイ少年は、軽快な足取りで彼らの後を追う。
「興味深い人達だ」
――――――
「邪魔立てをするのなら!!」
ヒィーン!!
再び軍馬が、夜の公園に大きないななき声を上げる。
「貴様から始末してくれるわ、女!!」
そう言いながら、再びランスを携えて、突撃を仕掛けようと試みるエリゴール、戦を司る堕天の者。
「今度は、もうけったいな対障壁は効かんぞ!!」
ジャ!!
突撃の前に術を唱え、その対物理障壁を防ぐ呪いをかけながら、エリゴールは五森婦人へとその穂先を突きつける。
「危ない!!」
その光景を見て、電雷をその手のひらから放つ狭間、彼の額には大粒の汗が浮かんでいる。
「母さん!!」
「母さん!?」
その狭間の言葉を聞き、わが耳を疑う五森婦人。
「いや、違うわ!!」
「似ているんだよ、あなたは!!」
「私は貴女のママじゃありません!!」
そう言いながらも、五森婦人は大きなマグネタイトを集束させ、一気にその戦いにけりをつけようと試みる。
「戯れ事を、人間どもめ!!」
「同族の気配も気が付かぬとは、エリゴールよ愚鈍な!!」
「再び拙者をバカにするか!!」
その言葉に猛るエリゴールは、その穂先を。
バカォ!!
五森婦人へと突貫させる。
「マグネタイト……!!」
その突撃にも動じる様子はなく、五森婦人がその両の手を大きく拡げた。
「吸引!!」
「何ィ!?」
その婦人からの紅い光、それを受けたエリゴールの身体から、先ほどの狭間の電光を受けたときとは比べ物にならないほどの「紅い魂」が暗い夜の闇へと放たれていく。
「バカな、人間がこのような真似を……!!」
悪魔エリゴールの身体が徐々に萎み、その身へと纏う鎧がカシャリと音を立ててかれの体躯から地面へと落下をする。
シュウウ……
同時に、彼(いわゆる悪魔をこう呼ぶのには語弊があるが)の乗馬も溶解し、乗り手もろとも液状化した。
「マグネタイト吸引、急速吸引だ……」
そう呟いたきり、何か気味の悪いモノを見るような目で、狭間は五森婦人を睨み付ける。
「狭間ぁ、いるかぁ……?」
「狭間君、大丈夫かね!!」
その時二人の男が、片方はおっかなびっくり、もう片方の白衣の男は大声で彼を呼びつけた。
「ちっ、邪魔どもが!!」
吐き捨てるようにそう言うと、一つ。
「礼を言わせてもらう、婦人」
「なんの……」
あるかなしかの一礼を五森婦人へ傾けてから、狭間は夜の森へと駆け抜けていった。