「うそだよね……」
「そんな嘘が許されるの、小学生までだよね」
やはりというべきか、慎二が手に入れた「チート」の話は二人の女学生「白川由美」と「内田環(たまき)」には信じてもらえない。
「本当だってよ、ホラ白川!!」
「火の玉も衝撃波も、何も出ないじゃん」
「う……」
「いい病院、知っているわよ」
確かに、黒井慎二にしてみてもなぜあんなことが出来たのか、理由は説明出来ない。しいていえば。
「あのガキども、どこへ行きやがった……」
「ガキども、ルイ君たち?」
「知っているのか、内田?」
「確か、狭間君を探しているとか……」
「ちっ……」
あの一件以来、狭間偉出夫は学校には出てきていない。
「肝心な時に役にたたない、狭間の奴と同じだ」
「あんたも狭間君が嫌いなの、黒井?」
「うっせーよ、白川」
――――――
「じゃあな、祐子先生」
「さようなら、勇くん」
「次はマジで、他の連中も連れてくるよ」
「お願いね」
新宿衛生病院、そこのベッドに一人の美しい女性が佇んでいる。
「でも呼べそうな奴、橘ぐらいしかいねぇんだよ」
「いいじゃない、彼女で」
「俺、アイツ苦手で……」
「フフ……」
そのままベッドサイドへ花束を花瓶へいれ、一つ礼をして病室から立ち去ろうとする勇、ベレー帽みたいな帽子を神経質そうに被る新田勇。
「おっと……」
「ごめんね、お兄ちゃん」
「気を付けろよ、小僧」
病室から出た彼とぶつかりそうになったが、寸前でかわした金髪の少年はそのまま。
「ぼっちゃま、ここが新宿衛生病院で間違いないようですわね」
「狭間、えーと」
「狭間偉出夫でございます」
「彼の母親が、ここに入院しているんだったよな?」
「ええ」
「だったら、彼もここにいるかも知れない」
しかし、いくら探しても狭間偉出夫の姿はこの病院にはない。
「僕やゴモリーの能力が制限されているからなあ……」
――――――
その時、狭間偉出夫は先にエリゴールが液状化した公園にいた。
「あった……!!」
昼の光に煌めくマグネタイトの塊、いや。
「やはり、僕には……」
スライムという、悪魔が強引にマグネタイトを吸収させた後に出る「残骸」
「母さんを、諦めきれない」
――――――
「おい、黒井」
「な、なんだよ宮本……」
校内一の不良と恐れられている宮本明に話しかけられるだけでも、黒井慎二のその脚はすくんでしまう。しかし彼の迫力をみれば、無理もない。
「何か用かよ、宮本……」
「何か、お前の顔」
「な、なんだよ」
それほどの凄みが、宮本明にはある。
「早く、用件を言ってくれ」
「何か、ラインのような物が通ってないか?」
「ライン?」
「こう、血管や筋みたいなものが……」
そう言われても、怯えている状態のチャーリーには、何か因縁をつけられているようにしか感じない。
「まあ」
「まあ?」
「俺の気のせいかもな」
スッ……
言いたい事を言ったきり、宮本明はボクシング部の方向へと去っていく。
「アイツ、宮本はボクシング部に入ったのか……」
また、不良を恐れる要因が出来てしまったことに黒井慎二は戦々恐々としている。
「あの……」
その宮本と入れ替わるように、一人の地味な女生徒がチャーリーに語りかけてきた。
「なんだよ、赤根沢……」
「狭間、狭間偉出夫君を知りませんか?」
「俺がしりてえよ、おい……」
先の宮本明に「脅された」反動か、今度は慎二の方が不良のような口調になってしまう。
「す、すみません」
「とっとと消えてくれ、赤根沢」
「は、はい……」
そう、吐き捨てるように行ったのち。
「何やってんだろ、俺……」
兎の子のように慎二から逃げていく赤根沢の姿をみて、自己嫌悪におちいる黒井慎二。
「根暗なネクラ沢、アイツが悪い、うん」
しかし、そう正当化ができてしまうところが、彼の良い意味での「チャラい」所である。