戦争という行為。その中でも人は出会い。別れ。信じ。裏切られる。
生と死の隣り合わせだからこそ、それらは濃密なのかもしれない。
生まれた時…、
いえ…、彼女は作られたのです。モビルスーツの部品として。
だから、生まれる前から大人達の道具となっていた彼女。
だが、今は救ってくれた人の為に、道具ではなく人として戦う。
彼女とバナージは戦いの中で、一度は心を通わせた。
しかし、彼女はまた大人の道具にされてしまった。
黒いユニコーン・ガンダムのパイロットとして、白いユニコーン・ガンダムのバナージの前へと立ちはだかる。
「止めるんだ! マリーダさん!」
バナージの心の叫びは届かない。
「お前は、五月蝿いんだよ!」
マリーダの容赦無い攻撃。だが、バナージは攻撃を躊躇う。
「このままでは…。」
バナージは自らの心に問い掛ける戦うのかと。
「俺だって、ここで死ぬわけにはいかない。まだ、この手で護るものがあるんだ!」
決心。それは戦うと言うこと。
「燃え上がれ! 俺のサイコミュー!」
白いユニコーン・ガンダムがバナージのサイコミューで黄緑色に燃え上がる!
「そんなもので、この黒いユニコーン・ガンダムに勝てるとでも。」
マリーダの嘲笑を込めた言葉。
「見るがいい! 燃えろ、私のダーク・サイコミュー!」
黒いユニコーン・ガンダムを、マリーダの黒いサイコミューが燃え上がらせる。
「私の力の前に、ひれ伏すがいい!」
黒いユニコーン・ガンダムの力は、白いユニコーン・ガンダムの力を遥かに凌駕する。
「この力は邪悪なサイコミューなのか…。」
バナージの問に答えるものはいない。
圧倒的な力は、白いユニコーン・ガンダムを破壊する。
「バナージ。お前は殺すなとの命令だ。だから、生かしておいてはやる。」
拿捕されるバナージ。だが、瀕死の状態。
「手加減はしたのだがな。」
マリーダに浮かぶ表情は破壊に酔いしれた笑い。
「ユニコーン・ガンダムも回収しろ!」
ミネバの願い…。否、オードリーの願いと、かつては敵として戦った者の思いで、瀕死のバナージは救い出された。
そして、破壊された白いユニコーン・ガンダム共々逃がしてくれた。
その命を代償として…。
「頼んだぞ。マリーダを救えるのはお前だけだ…。」
医療用のカプセルに横たわり意識のないバナージに託された思い。
オードリーは噂を聞いた。ある宙域に住むモビルスーツ技師の噂を。
それは、絶望の淵から這い上がる一縷(いちる)の望み。
必死に探し、バナージとユニコーン・ガンダムを届けた。
そこは、モビルスーツ技士のテ・ムウの住む資源衛星。彼は、そこで隠遁(いんとん)生活をおくっていた。もう戦いの道具を作るのは懲り懲りだとの理由で。
彼は、かつて八十八体全ての守護のガンダム・フレームの設計をした。
その彼に聞かされた話は…、
黒いユニコーン・ガンダムは、破壊のモビルスーツ。そのため設計の段階で中止されていた。
そして、戦いの白いユニコーン・ガンダムが造られた。
誰かが、封印された破壊のユニコーン・ガンダムを形にした。
と。
そして、最後に、
「あれに勝てるモビルスーツはこの世にはありません。この世には…。」
諦めが籠っていた。そして、繰り返した言葉に深い意味を感じられた。
瀕死のバナージは今だ医療用のカプセルの中で意識は無い。見詰めるオードリーが語りかける。
「バナージ。あなたは、また戦うのでしょう…。」
流れる涙は、今のバナージに? それとも未来のバナージに?
決意し、テ・ムウの元へ。
「ユニコーン・ガンダムを修理してください。」
懇願するオードリーに、テ・ムウは冷ややかに、
「ユニコーン・ガンダムの心(メインシステム)が破壊されています。もう、死んだのです。二度と立ち上がる事はありません。」
それは無情の言葉。だが、オードリーは食い下がる。
「ユニコーン・ガンダムはバナージそのものなのです。お願いします。」
オードリーの熱に圧倒されたのか、困り顔のテ・ムウ。
「解りました。」
一旦、間をとり、
「そのためには、貴女は命をかけなければなりません。」
驚くオードリー。そして、
「よろしいですか?」
と、確認した。
「構いません。バナージのためなら…。」
手の平を胸の前で合わせた姿は、小さな希望へ祈る様に見えた。
「では、貴女の血をもらいます。それも、死ぬかもしれない量が必要です。」
さらりと言ったテ・ムウ。
微睡みの海から意識を取り戻したバナージは、カプセルの開閉レバーへと腕を伸ばす。
(動け!)
思う様に動かない腕に苛立ちを感じながら。
ようやく開いたカプセルの縁に手を掛け体を起こす。
「ここは…。」
思い道理に動かない体を引きずり、カーテンで仕切られた隣の部屋へと向かう。
カーテンの隙間から見えた椅子に座る背中。
ふらふらとしながらも、その背中へ歩み出す。
そして、
「オードリーはどこだ。」
と、問い掛ける。
背後からかけられた言葉に驚きながらも、椅子を回転させ向き合うテ・ムウ。
「彼女は誰とも会えません。」
その言葉に、苛立ちを増し掴みかかるバナージ。
だが、伸ばした両手は届かず、そのまま意識を失う。
「まさか、歩けるなんて…。」
呟くテ・ムウ。
そして、傍(かたわ)ら向けた目線の先に、カプセルに入り治療を受けているらしきオードリーの姿があった。
二度目に意識を取り戻したバナージ。
その目に写ったのは、心配そうに見下ろすオードリーの姿だった。
「よかった、バナージ。」
その目に浮かんでいた涙は喜び。
「オードリーも無事で良かった。」
「話したい事がいっぱいあるの。」
涙を拭い笑顔で、バナージを迎える。
これまでの経緯を聞かされるバナージ。知る自分に託された思いを。
始まるバナージのリハビリ生活。受けた傷と治療の時間は彼の体をすっかり緩ませていた。
ある日、テ・ムウに呼ばれたバナージとオードリー。
「見せてください。」
傷と体を確認されるバナージ。
「もう、大丈夫そうですね。」
「はい。お陰様で。」
憂いのある笑顔がテ・ムウに浮かぶ。この日が来ることを望んではいないという思いからか。
「では、こちらへ。」
先導するテ・ムウを追いかける二人。
テ・ムウに案内されたのは、資源衛星の中心部。中は薄暗く、ただ広いとしか判らない場所だった。
「ここは?」
木霊する声に、答えるテ・ムウ。
「ここは、あなた達を闘いに引き戻す場所です。」
振り向くテ・ムウは悲しげに、
「できれば、この日が来ない事を願ってました。」
テ・ムウの言っている事が理解できなかったが、その悲しげな感じは伝わる。
「でも…。私はあなた達のを送り出さなければならない。」
その言葉に答えるかの様に、明りが灯る。
照らし出された場所は格納庫。その中央に鎮座する、
『GMタイプのモビルスーツ』
と
『ユニコーンのモビルアーマー』
「これは…。」
驚きを隠せないバナージ。そして、目の奥に灯るのは希望の光か? 闘争の炎か?
「治してくれたんですね。」
「はい。彼女の強い要望で。」
テ・ムウが軽く傾げた首の意味に気付かず、バナージはモビルスーツ近付き魅入っていた。
気が付くバナージ。
この二体の纏う雰囲気が異なる事に。更に良く見れば細部も違っていた。
バナージの背中にテ・ムウが語る。
「黒いユニコーン・ガンダムが『破壊』の力なら、新しい白いユニコーン・ガンダムは『破滅』の力です。」
その声は悲しげ。
バナージは振り向き、
「テ・ムウさん違うよ。月並みだけど、モビルスーツが破壊するじゃない、パイロットの意識が破壊するんだ。」
驚いた夢宇は目を丸くした。
後に彼は、
「そんな単純なことを私は忘れていたのですね。」
と、周囲に語ったと言う。
「新しい白いユニコーン・ガンダムの心(メインシステム)は、貴方を想う心を繋ぎ、貴方の想いと共に力に変えます。」
「ありがとうテ・ムウさん。これで、また護れる」
「この世に無かった、黒いユニコーン・ガンダムを倒せるモビルスーツです。」
固い握手を交わした。
そして、バナージは戦いの場に帰って来た。そこが自分の故郷であるかのように。
再び、合間見える白いユニコーン・ガンダムと黒いユニコーン・ガンダム。
「懲りずに、また私の前に立つか。」
嘲笑と驕りの彼女。
「今度は、手加減しないよ。」
浮かぶ表情は邪悪。
「燃えろ、私のダークサイコミュー!」
黒いユニコーン・ガンダムから、マリーダの黒いサイコミューが立ち上がる。
黒いサイコミューの圧に耐えながら、
「俺は、また立つ力を皆に貰った!」
バナージの心に灯るのは戦いの炎。
「負ける訳にはいかない!」
燃え上がり、全身を駆け巡る。
「護るんだぁ!」
金色のサイコミューの炎がバナージの体から、
「極限まで、燃え上がれ! 俺のサイコミュー!」
白いユニコーン・ガンダムを燃え上がらせる。
その叫びは、眠りについていた心に届く。そう新しい白いユニコーン・ガンダムの心(メインシステム)に!
目覚めた無数の心の糸は、行く先を探し、互いにもつれ合う。
もつれた糸は、ほどける…。
生まれた形…、
それは、綾取りの、
【八賭けの吊橋】
の形!
オードリーの血から創られたもの、それは、ユニコーン・ガンダムの新たな心
『バイオ・コンピューター』
オードリーの想いが、ユニコーン・ガンダムの心を通してバナージへと伝わる!
メインモニターに浮かぶ文字が燃え上がる!
・Control(コントロール)
・Armor(アーマー)
・Machine(マシーン)
・Unit(ユニット)
・Improve(イムプーヴ)
『CAMUI(カムイ)』
と…。
そして、文字の輝きは金色を纏い広がっていく。
ついには、白いユニコーン・ガンダムを全て包み込み、
『金色のユニコーン・ガンダム』
へと染め上げた!
「色で強さが決まるなんて思うな!」
マリーダが発せられる異質な力が増す。
「また、私の前にひれ伏すがいい!」
金色と黒色の力がぶつかる。
破壊の力が、破滅の力に勝てるはずもなく。金色の力は、黒色の力を染め上げる。
「馬鹿な。バナージにこれ程の力が…。」
一度は圧倒的な力で倒した。その自負は、金色の圧倒的な力で上書きされた。
「マリーダさん。もう、止めよう…。」
放たれたのは、最後の一撃。
「バナージ…。」
金色の腕が、黒いユニコーン・ガンダムの胸部を貫いていた。
そして、ついに動かなくなる黒いユニコーン・ガンダム。
そのまま、受け止めるように抱きかかえた。
バナージはコックピットから出る。託された思いを遂げる為に。
黒いユニコーン・ガンダムのコックピットへと近付き、開閉レバーへと手を伸ばす。
ハッチが開くと、内部のコックピットへ語りかけるバナージ。
「マリーダさん。聞こえる…。」
中に入り、シートで気を失っているマリーダを抱えながら、
「帰ろう。皆のところへ。」
託された思い。
それに答えたバナージ。
だが、それは終わりではなく…、
聖域・アクシズ・サンクチュアリを我が物とする
[ハマーン・カーン]
との戦いの開幕であった。
「少年よ! 君のサイコミューは燃えているか?」