米林三兄妹の生活様式 作:米林
姉
妹 ちょい鬱
妹達は中学生である。
セーラー服に袖を通して三年目の、中学三年生。そんな妹達は、今日。体操服を着ていた。
本日は、忌々しいことに晴れの天気。雲が少しあることが幸いか。世間的には、運動会日和と言える日だろう。
俺も白いが、妹達も白い。長時間太陽に晒されれば…いや、その前に倒れる。日焼けでもすれば真っ赤に焼け、一日で脱皮する。その一日が地獄であるのは十二分に理解しているので、日焼け止めを塗りたくる。一応、妹達が日に弱いことは学校側にも理解されているので、特別にテントの中で応援することになっているが、それでも油断はできないのだ。
この日までの、練習期間中も非常に辛そうだった。…ああ、かわいそうに…。
「兄ちゃん、髪やっておくれ。帽子あるから、下で二つに結んで」
「私も…」
妹達も陰鬱な表情をしているが、気を張っているのも分かる。今日は、母親も時間を作ってきてくれるらしい。俺もしっかりと応援しなければ。
あ、ピンポン鳴った。才美さんかな。
才子と弥才は、歩けば小鳥がさえずり、花香るようなJCの中のJCである。
中学生も残すところ、あと一年。と思ったら、またこの季節がやってきました。才子達の玉のお肌の大敵、運動会シーズンです。
学校側からも理解され、生徒達からも、ある程度の理解は得ているものの、やはり練習中にテント待機というのは、中々に辛いもの。暑さに脳をやられた同級生達のピシピシとした視線が痛くてたまらん。応援歌を、先生達の横で片割れと歌うのも辛くて堪りません。位置的にも、結構同級生達に注目されます。ここは、地獄だ。だけど、涼しい地獄。
そんな日々も、一ヶ月経って本日は本番。
兄は早起きして、せっせとお弁当を作ってくれた。才子達は、人よりすこーしだけ多く食べるため、作るのも大変なのだ。
しかし、憎っくき太陽よ。ギラギラと照りついてからに、我ら米林兄妹を確実に殺りにきとるぞこれ。
やっときたランチタイム。
未だ、才子達の出番はなし。でも応援だけは頑張ってやった。しかし片割れ、暑さにやられたのか、なんかハイになっていた。
人のいない、校舎裏の日陰スポットにシートを敷いて、準備オーケー。お母さん、兄ちゃん、才子、弥才とお弁当をぐるりと囲んで座っている。
兄がつくる料理は、そこそこうまい。家庭の味というやつだろう。給食のほうが美味しかったりすることもある。たまに変なの入れて不味くなることもある。
才子は、そんな兄のつくるご飯が好きだ。才子が作れば、料理的なものになってしまうし。
今日は、気合いを入れて作ったのか、おかずは全て当たりだった。
午後も頑張ろ。
私達双子の姉妹は、中学三年生である。
前世で通っていた学校では運動会なんてなかったので、新鮮…と感じたのは、小学校で終わっている。なくなればいいのに。
特典の影響か、前世よりも太陽が苦手だ。なくなれば…なくなったら困るから、いつも曇りだったらいいのに。
中学生になって、喰種の存在を知ってからは、人が少ない場所もこわいが、人が集まる場所はもっと恐ろしい。この中に、どれだけの喰種がいるのだろうと考えて、身体の震えが止まらなくなる。いつもどこかで、次はどれを喰べようかと、奴らは常に獲物を品定めしているのだ。0.5の私に出来るのは、ひっそりと息を殺して目立たないようにすることだけである。
そして、悪夢の日はやってきた。体調は最悪だ。兄が卒業した去年よりはマシだけど、やはり悪夢を見た。
リレーでバトンを受け取って走ろうとしたその瞬間に、前走者の目が赫眼になって、私に手を伸ばしてきた。
捕まらないように、私は必死で走った。
やっと振り切った。
そう思った時に、隣を走っていた走者の目が赫眼になった。そして、全身から触手を生やして私を絡め取った。
助けを求めるように手を伸ばせば、数え切れない程の、二つの赤色の光が、じっとこちらを見ていた。
そこで、夢は終わった。
こんなことは、現実ではありえない。そもそも最強の兄がいるし、1.5の双子の姉もいる。夢のようなことが起きても、絶対に二人は守ってくれる。でも、恐怖は頭にこびりついて剥がれてくれないのだ。
思考を振り切るように、テントの中で大声を出して必死に応援して、他に誰もいない場所で家族四人で美味しいお弁当を食べて、ついに出番がやってきた。
運動会の最終種目。ブロック対抗リレーである。
「やーちゃん!がんばれー!」
トラックに立つ。
兄と母の声援が、乱れようとした呼吸を戻してくれた。深呼吸して、後ろに並んでいる双子の姉を見る。大丈夫だ、姉がいる。のんきに大きなあくびをかましている姉にイラっとくる。
前走者からバトンを受け取った。目を瞑って、本気で走る。早く才子のところに。
しかし。
残り四分の一というところだろうか。カーブのところで私は盛大に転がった。コケたなどと、可愛いものではない。コース外までゴロゴロと転がった。
地面に打たれていた水が乾いていたのか、砂煙が上がり目をしみさせた。
こすりながら、目を開ける。
赫眼になった集団が、私に手を伸ばしていた。
私は、弾かれるようにコースへと戻った。
後ろを振り返れば、数人が私を追ってきている。
早く、早く逃げろ!才子がいるところまで!
私は、必死に走った。だが足はもつれ、お世辞にもスピードは出ていない。
もう、追いつかれる!
そう思った時に、目の前に才子がいた。
「…お姉ちゃん…」
「ぶふっ。よう頑張ったな。ほら、バトンくれ」
隣を、一人かけていった。二位になった。早く渡さないと。
「い、いかないで…」
「…えー…じゃあ一緒にいくぞ片割れよ」
双子の姉はそう言って、バトンごと私を抱え上げた。爆走する1.5の双子の姉に、敵はなし。
私達は二人でゴールテープを切った。