米林三兄妹の生活様式   作:米林

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完全兄メインです。
妹達がアカデミージュニア行くまでしばらく続くかも。


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兄の初戦

 

 

 

 

 喰種捜査官生活も三ヶ月目に突入したこの日。

 俺は初めて、喰種をこの手で駆逐した。

 

 

 パートナーである安浦さんに何時ものようにくっついて、今日は昼前から隣の三区に足を運んだ。定期的な現状報告のためだ。本来なら、三区支部に派遣されている本局員が一区に出向くところだが、今回は三区支部の視察も兼ねている。

 安浦さんは、対策Ⅰ課の課長。常にお忙しい人なのだ。それについて回る俺も忙しい。全然役に立ってないが。一応、初めの頃こそ怒られることが多かったが、最近はそれも減っている。安浦さんのサポートのみならば、人より熟せる自信がついてきている。

 

 三区の支部を出たのは、日が昇って降り始めた午後三時前。

 それなりの数の指摘箇所があったために、その場で指導を始めた安浦さん。予定の時間より大幅に遅れた。今夜は残業か。俺にはないけど。

 妹達が待っているのだ。配慮していただき、夜勤もまだ当たったことはない。厨二妹に、有馬さんみたいな髪になるまで酷使されるよと脅されていたが、そんなことはなかった。非常にホワイトな職場だったようだ。

 これが、安浦さんの厚情により成り立っていたことだと知るのは、後のことである。

 

 「遅くなってしまったけど…戻る前に何処かで食べましょうか」

 「はい」

 

 決めたお店は、外にメニューボードが置かれていた喫茶店だ。それなりにメニューの数がある様子。人通りが少ない通りに構えているため、ゆっくり出来そうな雰囲気だ。

 ドアを開けようとしたところで、向こうに人がいることに気づいて、一歩引いて横にずれた。

 白いスーツを着た、特徴的な大柄の男が出てくる。身長控えめの俺を見下すようにーー

 

 「あ、大守さん」 

 

 俺は、宙を舞った。いや、弾丸のように跳んだ。

 背中に衝撃。コンクリートの壁に、足を外にだして胴体が埋め込まれた。出れない。

 

 砂埃が舞う中。安浦さんが、大守から伸びる触手を、クインケ是毘図の二刀流モードで防いでいるのが見える。あ、いつのまにかマスクつけてやがる。ホッケーマスクだ。…まさか、大守がジェイソン?

 店の中から、追加で白いスーツ達が出てきた。

 力を込めるが抜けない。完全にハマってしまっているようだ。

 安浦さんは、防戦一方。救援に行かなければ。しかし。

 

 「おい!あのチビをやれッ!」

 

 大守が白スーツ達に命令した。なぜ俺を狙うんだ。さっさとずらかれよ。

 …ああ、顔見たからか。

 無理矢理したら、俺が刺さってるところから、崩れてしまうかもしれないと思っていたが、仕方がない。

 力を込める。

 だが、その途中でもっと不味いことが起きた。

 安浦さんが俺に気を取られてしまったようだ。その一瞬の隙に、数を増やした大守の赫子が安浦さんに迫る。

 

 俺は、瞬間移動した。

 

 安浦さんを左腕引き寄せジャンプし、そのまま大守の首を狙って右手を伸ばす。

 太い首だ。俺の胴くらいはあるかもしれない。

 力を集中して迷わず掴む。

 そのまま叩きつけようとしたら、プンと手が抜けた。

 振り返ってみれば、大守の顔はどこにいったのか、赤い液体が空へと噴き出していた。

 コツンと、何かが足に当たる。

 ホッケーマスクをつけたままの、大守の顔がそこにあった。

 

 「アハ」

 

 なんか、変な音がした。

 

 「はは はははははははははははははははははははははははははは はははははははははははははははははははははは ははははーーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ーーあれ?」

 

 一面、血の海ーーとはいかないまでも、半面くらいは、ペンキがぶち撒けられたかのような地面が広がっている。

 前には、誰もいない。

 左右を見渡す。同じく人影はなし。

 下に視線が行った。

 人の顔と目が合う。しかし、首だけだ。

 

 「ぉぶぅげええええ」

 

 迫り上がる吐き気に抵抗できない。ツンと喉と鼻を焼きながら、胃液が口から垂れ落ちていく。

 白スーツ達は、もはや白スーツではない。赤スーツにイメチェンしていた。

 暑い日だ。クールビズなのかもしれない。しかし、なにも手足までパージしなくてもいいと思うが。

 

 「おげえええええ」

 

 誰かの手が、俺の背中を撫ぜた。すらっとした、心地のいい手だ。安浦さんの手だろう。しかし、なぜこんなにも震えているのか。声出したらア"ア"ア"ってなりそう。

 俺は口元を押さえて後ろを振り返る。

 安浦さんと目がパチっと合う。

 顔を真っ青にさせて心配そうな安浦さんの顔が変化する。綺麗な顔が引きつっていくのが、ヤケにゆっくりと見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの、見た目猟奇的殺人現場の後処理は大変だった。俺は何もしてないが。

 サイレンは鳴るわ、野次馬が押しかけるわで事態の収拾がつくまでに時間がかかった。俺は、隅の方でゲーゲーしていた。

 一区の本局に戻ったのは(戻るまでの記憶がない)、空が紅くなっていた午後六時頃。

 妹達の夕食を忘れていたことに気づき電話したところ、作り置きしていたものをチンして食べたそうだ。全部食い尽くしてしまったらしい。今日は遅くなると一言入れて、電話を切った。

 

 そして、報告やら何やらが終わったのが時計の針が午後八時を回った頃。

 やはり大守の正体は十三区のジェイソンだったらしい。何で三区に居たんだよ。それと、家に帰ったら厨二妹に聞くことがある。大守が喰種なんて聞いてなかった。

 

 さあ、家に帰ろうとしたら、安浦さんに止められた。何でも、俺の顔が大変なことになっているらしい。

 鏡を渡されて、俺はビクッと後ずさった。目がイッてしまっていた。何だこれ。口も、口角が微妙に上がっている。怖っ!!これでもマシになっているらしい。現場では、もっと酷かったそうだ。

 あの時、安浦さんの顔がが引きつっていったのはこれだったのだ。

 本局に着いて、他の局員達が怯えた顔をしたのもこれが原因だったのだ。

 

 こんな顔じゃ家には帰れなかった。妹達は完全夜型だ。時間をずらしても、明日は休みのため、遅くまで起きているだろう。

 今日はここに泊まれないかなと思っていたら、安浦さんからお誘いがあった。

 いや、それってどうなの?と思ったが、パートナーとしてケアしないと、と押し切られてしまった。初討伐の祝いもしてくれると言われたら断れない。しかし、なんか変な気分だった。

 安浦さんは、どこか居酒屋にでも入ろうとしたが、流石に何も食べれる気はしなかった。というか、この顔で入るのか。聞いたら、もう慣れてしまったから、このことを忘れていたそうだ。流石特等捜査官ですねとも言えばよかったのだろうか。

 「じゃあウチに」となって、安浦のお家にお邪魔した。

 

 

 

 「どうぞ、召し上がれ」

 「あ、その…」

 

 食卓に置かれたのは、胃に優しそうなスープと雑炊。

 暫く何も食べれないなと思っていたが、意思に反して胃は元気に声を上げた。

 

 「ほら、少しずつでいいから」

 「いや、やっぱり…」

 「食べさせてあげましょうか?」

 「いただきます」

 

 食事を頂きながら、とりとめもない会話を続けた。

 気になったのが、安浦さんのパートナーの話だ。今までコンビを組んだのは皆女性捜査官だったらしい。じゃあ、何故今回俺が選ばれたのかと聞けば、上の事情でこうなったそうだ。なんだそれは。非常に気になる。

 

 「あ、それ私のグラスじゃない…?」

 「ぇ?」

 

 そこから先の夜の記憶はない。

 

 

 

 

 

 

 

 起きたら、布団の中にいた。リビングの部屋だ。状態を起こしてみれば、少し離れた場所に布団が敷かれて、山が出来ていた。

 ズキズキンと頭痛がする。

 そう言えば、何で安浦さんもここに寝ているのだろう。家に上がった時に、安浦さんは寝室のベッドで、俺はリビングで寝るようにと言っていたのに。

 もしかして、心配して一緒にいてくれていたのだろうか。

 「あれ?」

 でも寝室のドアが開いている。頭痛を我慢しながら俺は立ち上がってーー

 

 「米林くん?」

 「あ、はい。おはようございます」

 

 起こしてしまったのか。安浦さんは、布団を被ったままだ。

 

 「シャワー、浴びてきなさい。寝汗かいているでしょう。お湯も張っていいわ」

 

 ?…何で寝汗?

 あ、でも確かに全身がベタベタする。

 

 「すみません。いただきます」

 

 返事はなかった。

 お風呂から上がると、朝食が用意されていた。布団も片付けられていた。安浦さんの姿はなく、手紙がテーブルの上にあった。

 手紙には、もう少し寝るから、見送りできなくてごめんなさいと書いてあった。鍵はオートロックだから、気にしないでいいそうだ。

 

 俺は、これまた胃に優しいメニューの朝食を頂いて、寝室に向かって頭を下げてから、安浦さんのマンションをあとにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆才子

 

 

 私、才子、フィバータイムに突入しました。

 運動会が終わり、代休を挟んで登校した日のランチタイム。才子のお盆には、山盛りに盛られたおかずの品々があった。皿の数も、いつもの二倍。クラスメイトからの献上品である。

 しかも、今日は幸運なことにデザートまでついている。三段重ねだ。ゼリーの三段重ね。あ、もう一段増えた!

 有り難く頂戴する。今の才子に遠慮などカケラもないのだ。

 これは、フィバータイム。時間制限があることを去年のことから学んでおるのだ。

 来週には、奴らは才子の活躍を忘れ、再来週にはパタンとなくなる。今週でさえ、日に日に少しずつおかずの量が減っていくのだ。

 なんとおそろしい。

 今日が天国。あとは、ゆるやかな地獄への道が続いている。

 だから、遠慮などしない!

 皆の衆!来るものは拒ばんぞよくれくれくれ。

 

 

 

 

 兄ちゃんが、初めて夜に帰ってこんかった。才子と弥才は起きていたのに、帰ってきたのは朝方。不良だ。才子は、兄ちゃんにそんな育て方をした覚えはない。

 もう知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 ☆弥才

 

 

 

 ある日、兄に忠告した。

 何故思い立ったのかはわからない。衝動的に思い出した。

 うん。記憶を辿りながら書いた絵は中々の出来だった。

 

 「お兄さん、お兄さん。この絵の人ねーー」

 

 あれ、なんて言おう。本当のことは言えない。でも、私という異物がいながらも、原作と変わらないようにするために言わないといけない。兄は、勘が鋭いから、何とか近づかないようにしないと。

 

 「ーーこの人、ショタコンでホモだから気をつけて。名前は…大守さん」

 「なに!?いきなり!」

 

 

 

 

 日を空けたある日。

 朝帰りした不良兄が言った。大守さんを駆逐してきたらしい。

 ………あれ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




大守ヤクモ
ヤモリの本名
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