米林三兄妹の生活様式   作:米林

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別視点

才子
双子の妹
別視点です。


とてつもない力をもった子供の失禁ちゃん達

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「貴将。米林三等が十三区のジェイソン、他五体の喰種を殲滅した。それも惨たらしく殺したらしい。撮影していた一般人がいたようで、映像も残っている…この後に見るがいい。

 それで、どう思う。お前の報告とは違うが」

 「いえ、私には…あの時点では、自ら手を出せるような人間ではないと判断しましたが…」

 「はっ…!人間か。だとすれば奴は新人類とでも呼ぶべきか?RC細胞を有していない人類など、奴とその妹達のみだ」

 「…」

 「結果も出たぞ。奴の血縁上には何の要因もなさそうだ。出来上がった()()達にはRc細胞が確認され、至って普通の人間だった。奴らの細胞を基にした()()も変わらん。現状、全てが不可解だ」

 「では、私は」

 「ああ、今のまま続けろ。だが、今後は徹底的にやれ。奴には首輪も必要だ。何にせよ奴はーー第二のお前となるのだからな」

 

 

 

 

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 初討伐から一ヶ月。

 

 筆記免除で、二等捜査官になった。給料アップでみんな大喜びである。異例のことらしく、少し誇らしい。しかし、知識はあって損はないと安浦さんにも勧められ、それなりに勉強した。寧ろ、安浦さんのチェックがあったために、筆記試験有りとそう変わらなかっただろう。

 

 そして、専用のクインケができた。

 傘型鱗赫クインケ"如意傘(じょいさん)"

 デザインはヤサイ、命名はサイコである。読み方は、凄腕女医ドラマを観て思いついたらしい。そのままですね。

 

 クインケ工場(CCGラボラトリー)に受け取りに行ったら、濃い紫色の傘が台の上に鎮座していた。機能は二つ。傘の石突部分がウネウネと伸びる。あと、普通に開いて盾にできるが、そこまで防御力はない。手動で回転させることも可能(当然)で、その時に表面のザラザラが開いて敵を削り取るそうだ。中々エグいぞこれ。

 素材提供者は、十三区のジェイソンこと大守さんだ。彼は、三つもの赫包を有していたらしく、レア個体だったらしい。もうちょっと言い方ってものがあるだろうと思った。

 その内、如意傘に使った赫包は二つ。使わなかったもう一つは買い取り要請が来たが、断った。ヤサイが言うには、貴重なものだから取っておいた方がいいそうだ。よって、研究所に保管される流れとなった。

 

 

 

 

 

 「やあ、元気?」

 「ご無沙汰しております。今日は、ご指導ご鞭撻の程よろしくお願いします」

 

 気さくなセリフで、しかし全然フレンドリーさの欠片も無い表情で現れたのは、苦労人白髪有馬さん。有馬さんは、CCG最強の人だったらしい。つい、この前聞いた。そう思ってみると、何だかオーラもある気がする。俺の言葉遣いも、自然と丁寧なものになっていた。

 

 「固いよ。この前みたいでいいから」

 「いっ…え、しかし」

 「いいから」

 「はい」

 

 有馬さんによる指導が始まった。

 俺に、油断はなかった。最小限の動きで避け、時には受け流す。前回有馬さんに指導されたことは、日々の訓練において反復し、モノにしたとは言えないまでも、それなりのモノにしたつもりだった。

 しかし、世界が違った。有馬さんの規格外さを、知識をつけたから今だからこそ理解した。俺には、程遠い存在だ。

 

 「真面目にやれ」

 

 防戦一方の俺の鳩尾に、有馬さんの脚が突き刺さった。体重の乗ったそれを受けた俺は、無様にも床をコロコロと転がっていった。つい力が抜けて、木刀が手からすっぽ抜けた。ゲーゲーと汚物を地面にまき散らした。

 

 俺は、混乱の最中にあった。いやほんといきなり何なんだこの人。何で俺は怒られているのだ。そして、まさかの追撃が来る。ジャンキーなのか、この人。

 

 俺は、必死に転がって避けた。しかし、有馬さんは立つ暇を与えてはくれなかった。有馬さんは、いつの間に拾ったのか、俺が落とした木刀も携えて二刀流だ。絶え間なく突きを浴びせてくる。俺は、コロコロと転がりながら避ける。

 しかし、限界が来た。壁に追い詰められてしまったのだ。俺は、苦し紛れに足を出した。カン、と音を立てて、有馬さんの持つ木刀の一つが半ばから折れた。

 

 唐突だ。

 パチリと一瞬、全身に熱が走った。

 途端、視界が鮮明になる。

 有馬さんが突き出してきたもう一方も、床に手をつき、回し蹴りの要領で弾く。これで、無手だ。

 ――でも、まだ!まだ!まだ!まだ!まだ!

 

 「あははははは!!!!」

 

 こんなに楽しいんだ。まだ終わらせたくない。ずっとずっとこのまま!

 

 俺は有馬さんと無手で応戦した。といっても、俺の直線的な攻撃は、紙一重で避けられたり、受け流されたりと、直撃は一つもない。しかし、確実に肌に傷を増やしていった。服は裂け、至る所で血が滲んでいる。

 そして、有馬さんの攻撃と言えば、大技なものが多くなっていた。俺に小技を当ててもダメージがないことに気づいたのだろう。隙を突いて繰り出される一撃に、俺は何度か吹き飛ばされた。しかし、意地でも追撃は許さなかった。

 

 俺には、大守達を駆逐した時の記憶が鮮明に残っている。

 首を捩じ切ったことも、クインケナイフで細切れにしたことも、そのまま心臓を抉ったことも、甚振るようにしたこともだ。

 熱が冷め我に返って、俺は吐いた。眼前の凄惨な光景にではない。いや、それも四割くらいはあるか。グロかった。

 そう、それよりも――楽しかったのだ。我に返って、興奮しながらあの残虐を生んだ自分に、吐き気を覚えたのだ。

 

 そして、今もそれを理解していながらも―――――どうしようもないくらいに、楽しい。

 

 もっと!もっと!もっと!と、これは最早細胞レベルで求めているようだから仕方ないね。

 

 ふと頭に過ぎった。いつかヤサイが言っていた。お兄さんは戦闘民族×3だから、気をつけてねと。

 

 

 

 

 訓練室を出たのは、三時間後のことだったそうだ。おれは、燃え尽きたように寝落ちしたらしい。エネルギー切れである。

 有馬さんは、全身打撲に裂傷は数え切れず。起きてそれを知った。ああ、やばい。でも、それよりめっちゃ腹減った。

 レモンの蜂蜜漬けは、俺が寝ている間に有馬さんが食べてしまっていた。

 

 

 

 

 討伐褒賞金が出ていた。税金なしの、きっかり八百万。これが、安いのか高いのかは分からない。十三区のボスで悪逆を尽くしていた大守は、S~レートで八百万。最強と悪名高い隻眼の梟はSSSレートで討伐褒賞一億。そう考えると安い気もするが、大守レベルのレートだと特等捜査官一人に対して、隻眼の梟は特等捜査官何人いても討伐できないため、妥当な気もする。

 気分のいい金ではない。だから、その夜は皆で高級中華に行った。俺たち三人は普段着、母親だけが服装をキメていた。

 金は口座に振り込まれているが、早く何かに使ってしまいたい気分だったのだ。普段は食事量が少ないヤサイもこの日はよく食べ、最終的には三人で満貫全席並(どれくらいか知らないけど)の量を食べたと思う。母親は、顔を青くして途中退場していた。

 

 ――そうだ。いいこと思いついた。食べ飛びしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆才子

 

 

 我が片割れは勉強ができる。

 しかし、ベンガリーと言うわけではない。才子がゲームしているときに、予習復習している程度。しかし、テストはいつもトップを独走している。

 何故だ。同じ双子なのに、何故こうも違うのか。それに、いつだったか…大学受験レベルならいけると吹かしておった。しかし実はこれ、最近マジだと思い始めている。

 では、才子は馬鹿なのか。決してそんなことはない。弥才先生の下、強制的にガリガリさせられている才子に、そんなには死角はないはず。一応に、クラス五番内にも滑り込んでいる。

 なのに、どうしてや。

 最近になって突然、弥才先生がスパルタレベルだ。略して、スーパー弥才先。今では、才子の人生のスケジュールは全て握られていると言っても過言ではなかろうぞ。

 

 経緯は…うん。

 受験シーズンということもある。才子逹は三年生なのだ。マジで勉強してるのはまだ半分もいなさそう。きっと皆さん夏に地獄を見るに違いない。二年前の兄ちゃんだってそうだった。全てが無駄になる努力をしていた。

 そう、理由は兄だ。兄が働き出してそれなりのお金が入り、ウチにも随分と余裕ができたのだ。ありがたやー。家計の管理を任されている片割れが、自慢げに言っていた。

 なので、才子と弥才がドナられる未来は、めでたく消し去られたのである。強制労働させられるような場所ではなく、普通の高校生になれるそうな。

 感謝の気持ちとして、兄ちゃんには、マッサージ券一年分を発行しておいた。片割れと一緒に一年分の券を作ってしまったので(気づいた時にはもう遅し)、才子と弥才の二人分、占めて二年分のマッサージ券の進呈だ。一回三十分。肩もみ腰もみ足もみ尻もみなんでもござれ。

 兄は毎日使っているので、我ら双子姉妹のテクは日々磨かれている。片割れなんかは専門書だって読んでいた。才子も負けじと修練した。今では、マッサージ終わった頃には、だいたい兄はあへってる。兄の身体は、もう才子達なしでは生きていけない身体にしてやったと、片割れとハイなタッチ。

 

 そんな兄のおかげで高校生になれそうな我ら双子であったが…片割れが欲を出し始めたのだ。何と、私立女子校に行きたいなと戯言を抜かした。公立で良くないかと聞けば、共学が嫌らしい。じゃあ、お金はどうするのと聞けば、特待取れば問題ないらしい。公立よりも安くなりそうだと。

 そんな片割れといえば、才子の受験の面倒を見ながら大学の受験勉強を始めていた。へぇ気が早えながんば!と全く他人事に思っていたら、才子も同じ大学に行くそうだ。初耳だ。

 いや何でやと聞けば、私が一人で通える訳ないだろとぷんすか怒られました。ええ、そこは納得ですね。

 でもしかし。学費はどうするのかと聞けば、奨学金制度もあるし、あと三年もすれば兄がもっと稼ぐようになるらしいので、問題なしっん。らしい。片割れは、そんな感じでドヤと決めながら、追加のマッサージ券をせっせと作っていた。お兄さんは神様だと。今さら何を当然のことを。

 まあつまり――才子の地獄はこれからという訳なのだ。でも、仕方ない。やっぱり妹は、お姉ちゃんなしでは生きていけそうにないから。

 少しだけがんばろ。

 

 という、ランチがすっかり元に戻ってしまった今日この頃である。

 

 

 

 

 

 

 

 ☆弥才

 

 

 

 兄が昇進した。

 さすがに二階級特進とはいかなかったみたいで、二等捜査官。

 ヤモリを倒してしまった件は、考えてもどうにもならなかったので、とりあえず保留にした。そもそも拷問なんか無い方がいいのだ。もっと最悪な想像もしてしまったけど…大丈夫、きっと大丈夫……うん。

 

 クインケのデザインは私が担当した。三人で紙に描いて、せーので見せたら、私のが一番ましだった。兄が描いたのはただの棒だし、双子の姉に至っては、戦隊モノのロボットである。

 私が描いたのは、番傘。もろパクリだ。だが、兄の髪色はまんまそれだし、描くとしたらこれしか思いつかなかった。残念ながら、兄に中華服は似合いそうにないけど。

 ギミックは双子の姉が提案して、それが通って名前は"如意傘"。ニョイサンとそのまま読んでもまあまあ微妙だが、双子の姉が決めたジョイサンという読み方もアレだった。しかしまあ、兄も喜んでいたのでそれに決定。兄は、私達がしたことは何でも喜んでくれるため、それが本心かどうかはイマイチ自信はないけども。

 

 勉強頑張ってる私達にご褒美にと、兄が食べ歩きならぬ食べ飛びに連れていってくれた。

 ラーメンは、しばらくはいいな。うん。おいしかったな。

 

 

 

 

 

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 「ふむふむ……うわー、まじかよ。ヤモリさん殺されちゃって、やな予感してたんだ。

 なんでこいつ喰種じゃないんだよ」

 

 「印象:力を持っただけの至って普通の子ども…ってそれ…。ていうか、何でそんな力あるのに、普通でいられるの?この子」

 

 「うーん…じゃあ、この妹ちゃん達ほしいなぁ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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