ペロロンチーノの冒険   作:kirishima13

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第2話 凌辱モノはグロ成分控えめが良い

 結局、守護者たちもこの状況について理解はできていなかった。ただし、外の様子が違っていたとのことだ。ナザリック地下大墳墓は沼地にあったはずであるのに、なぜか草原が外には広がっていたのだ。そして守護者たち曰く、ペロロンチーノが来る直前までモモンガがいたと言う。

 

 しかし、ナザリックの隅々まで探したがモモンガを見つけることはできなかった。残る可能性があるとすれば、外か宝物殿か、だが宝物殿はギルドの指輪(リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン)がないため入ることが出来ない。メッセージで宝物殿の領域守護者パンドラズ・アクターに連絡をとったが、宝物殿にモモンガは居ないとのことであった。

 

 ちなみにパンドラズ・アクターに宝物殿の中にギルドの指輪(リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン)がないか確認させたが、見つからなかった。つまり、ギルド内転移を可能とする指輪は現在一つもないのである。そのため、ペロロンチーノは比較的外界に近いシャルティアの部屋で、遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)の操作をしていた。操作方法がおぼつかなかったが、何とか近くの集落らしい場所を映すことに成功する。

 

「おめでとうございます」

 

 後ろで白髪の執事が褒めてくれる。

 

「ありがとう、おじさん」

 

 白髪の執事はなぜか、悲しそうな顔をした。なぜだ。

 

「さすが、ペロロンチーノ様でありんすえ」

 

 腕に抱きついたままのシャルティアが耳元でささやく。

 

 シャルティアは玉座の間で会ってからずっとペロロンチーノにベッタリであった。そして気づいたことがある。シャルティアやその部下の吸血鬼の花嫁(ヴァンパイアブライド)などはペロロンチーノに絶対の忠誠を誓っているのだ。R18に該当する行為を試してみたが、特に嫌がるそぶりもなくペナルティーはなかった。おそらくペロロンチーノ自身で作成または傭兵システムにより召喚したNPCはモモンガよりもペロロンチーノを優先するのだろう。

 

 そして、この世界に来て以来シャルティアはペロロンチーノに甘えに甘えていたし、ペロロンチーノも満更でもなかった。己の煩悩の限りを尽くして作ったNPCが何でも言うことを聞いてくれるのだ。それこそ「なにそのエロゲ」である。

 

 煩悩の限りを詰め込まれたNPCとその創造主。まさに最高(さいあく)のコンビであり理解者であった。ここにはいつも弟にツッコミを入れていた(ぶくぶく茶釜)も暴走を止めていた親友(モモンガ)もいない。

 

 

 

 

そしてここからこの変態(ばか)たちが世界へ飛び立つことになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カルネ村の村娘エンリ・エモットは妹の手を引いて森への道を走っていた。後ろからは全身を鎧で身に包んだ兵士がニヤニヤ笑いながら追いかけてくる。背中を斬られる。しかし致命傷ではない。嬲るつもりなのだろう。突如村を襲った兵士たちは何の目的も告げずに村人たちを殺し始めた。エンリを逃がすために兵士に向かっていった父は大丈夫だろうか。母は大丈夫だろうか。もはや死を迎え入れるしかない少女達の前に、突如黒い空間が現れる。

 

 

 

 

 

 そこから現れたのは全身を羽で覆われた異形、黄金に輝く4つの翼を持った亜人と、この世のものとは思われないほど美しい銀髪の少女だった。血の臭いを嗅いだその少女から舐めるように見つめられる。

 

「美味しそうな純潔の匂いがするでありんすねぇ」

「可愛い・・・・・・。これはフラグか?ここで助けることで×××(ピー)×××(ズキューン)な展開になったりして!」

「そ、それはわらわも参加していいんでありんすか!?」

「もちろんだシャルティア。それどころか一緒に×××(バキューン)な展開かもしれないぞ」

「まさかそんなプレイが・・・・・・。さすがペロロンチーノ様でありんす!」

「エロゲー イズ マイライフ!」

「エロゲー イズ マイライフでありんす!」

 

 シャルティアはエロゲーとは何のことか分からないが、創造主が言っているのだからきっと素晴らしいものなのだろうと思っていた。この世界をゲームまたは夢としか認識していないペロロンチーノは特に何も考えてないだけであったのだが。

 

 呆れるような会話に冷静さを取り戻した兵士は突如現れた化物に斬りかかる。

 

(レベルにして10以下ってところか)

 

 ペロロンチーノはスキルにより敵の強さを確認し、安堵する。これなら避ける必要さえもない。二度三度と剣を振るうが傷一つ負わせることができない兵士は、大きく振りかぶり渾身の一撃を振り下ろそうとしていた。しかし、傷がつかなかろうが至高の存在がやられるのを黙ってみているわけにはいかない。

 

「ペロロンチーノ様に触れるな!」

 

 次の瞬間、兵士の頭がコロンと落ち、血が吹き上がる。シャルティアが手刀を振るったのだ。切断面から骨が見え、ビクンビクンと血管が震えている。

 

「グロッ!い、いや俺はエロ画像取得のためあらゆる罠にあえてかかりグロ画像を見せられても耐えてきたんだ。この程度のグロには耐性が・・・・・・」

 

 

 

 

 木の幹に大量の虹が舞った。無理でした。

 

 

 

「狂ったか運営・・・・・・規制をなくすことはいいが、見せちゃいけないものは規制しておいてくれよ・・・・・・グロすぎだろう。せめて残虐な表現のオンオフ機能を付けてくれ・・・・・・」

 

 ペロロンチーノはGMコールを連打しながら跪いていた。しかしGMコールはつながらない。

 

「まったく!まったくでありんす!まったくうんえいはまったく!」

 

 当然、シャルティアは何も分かっていない。

 

 

 

 

 

 何とか立ち直り、出来るだけ内臓とか切断面とかは見ないようにしながら少女と幼女に話しかける。

 

「怪我をしているようだな」

 

 あらためて見るとなかなか整った顔立ちをしていて可愛い。このフラグを繋げるべくアイテムボックスを探す。その中からたいした価値もないのでそのまま入れっぱなしにしていたポーションの瓶を手に取る。

 

「これを飲むといい」

 

そう言って真っ赤なポーションを差し出した。

 

「ひぃ!血・・・・・・?」

 

 少女は考える。先ほどから意味不明のことを言っている化物の持ち物だ。それにすぐそこで虹を吐いていた化物が出したアイテム・・・・・・とてもまともな飲み物であるはずがない。だが、飲まないとどんな目に遭うか・・・・・・逡巡するエンリに化物の仲間が声を張り上げる。

 

「至高の御方がお慈悲をくれてやろうというのに受け取らないとは・・・・・・殺すぞ!」

 

 仲間の女の目が真っ赤に染まる。口からはチラリと牙が見えた気がする。彼女も間違いなく化物だろう。圧倒的な殺気と恐怖に少女の股間が濡れていき、そしてつられるように幼女の股間も濡れていく。

 

(なんだこれは、こういうイベントか?先ほどの発言は撤回しよう。運営やるじゃないか。グッジョブ)

 

 シャルティアを見ると彼女も興奮している様子だ。しかし、このまま放尿プレイをしていてもイベントは進まない。仕方ないので、少女の顔にポーションをぶっかけ、ニッコリとほほ笑む。

 

 ポーションの効果が発動し、少女の傷が治る。

 

「大丈夫ですか?お嬢さん」

 

 その言葉を聞いて、少女は本能で感じる。この顔を醜く歪ませている化物たちが本気で心配してるとは思えない。自分を、そして妹を舐め回すように見るあの目・・・・・・。食べようとしているのか、いやもっとおぞましいことをするつもりなのか。しかしエンリの本能とは逆に人見知りをしない妹が声をかける。

 

「うん、大丈夫です。ありが・・・・・・」

「ネム!見ちゃダメ!見ちゃいけません!」

 

 瞬間、少女は幼女の手を引いて村のある方向に向かって逃げて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 兵士たちの殲滅は終わったが、フラグの折れたペロロンチーノの心も殲滅されていた。

 

「あれ、絶対キモがられてたよね。何が悪かったんだろう。エロゲトークしてるところを目撃した女性陣と同じような目をしてたよ・・・・・・」

「至高の御方に助けられておいて逃げだすとは許せないでありんす!今すぐわらわが連れ戻して・・・・・・」

「やめて!これ以上俺の心を折らないで!」

「そうでありんすか?」

「本当に何が悪かったのか・・・・・・」

「困ったときはデミウルゴスでありんす」

「デミウルゴス?」

「はい、デミウルゴスはナザリック最高レベルの頭脳を持っているでありんす。聞いてみんしょうかえ」

「なるほど、困ったときはデミウルゴスか」

 

 ペロロンチーノは心にそうメモした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ナザリックに戻り、デミウルゴスに先ほど集落での経緯を説明する。

 

「なるほど、恐らくですが原因は顔・・・・・・でしょうか」

「やっぱりか!ちくちょう!」

 

 ペロロンチーノが地面を叩く。

 

「やっぱイケメンじゃないとダメか!?俺の顔じゃダメだったか!」

「そんなことはありんせん。ペロロンチーノ様のお顔は最高です!」

「その通り。ペロロンチーノ様は非常に美しくあられます。ですが、おそらく人間達はペロロンチーノ様のお姿に恐れを抱いたのではないでしょうか」

「恐れ?え?このアバターそんなに怖い?むしろかっこいいと思うんだけど」

「もちろん大変素晴らしいお姿です。ですが、愚かな弱者たる人間にはその価値が分かるはずもなく嫌悪することもございましょう。そのような人間どもは命じてくだされば即座に皆殺しにして見せます」

「いやいや、殺すなよ。これ以上グロを見せられるのは勘弁だ」

「さようでございますか。御意に」

「ユグドラシルじゃ普通に人間の町に行っても大丈夫だったのになぁ」

「確かに、かつていた世界では人間も異形もある程度ともに暮らしておりました。しかし、先ほどのペロロンチーノ様の話を聞く限りですとこの世界の人間はさらに弱いのではないでしょうか。弱ければ弱いほど臆病であるのは道理でございます。自分たちの種族だけでコミュニティーを形成しないといけないほどに。同じ人間で整った顔のものが対応していれば結果も違ったことでしょう」

「なるほど、つまり『ただし、イケメンに限る』と言うことか」

「イケ・・・・・メン・・・・・・でございますか?」

「イケメンなど滅びればいいのに!」

「あの・・・・・・ペロロンチーノ様聞いていらっしゃいますか?」

 

 

「少し我を忘れてしまったようだ。忘れてくれ」

「御意に」

「次からは人に化けてから町にでも行くことにするよ。でもまぁ、人助けもできたし良いとするかな」

「まったくあの人間はもっとペロロンチーノ様に感謝するべきでありんす」

「しかし、ペロロンチーノ様であればそのお姿のままでも人間を如何様にも支配できるのではないでしょうか。それほどまでに人間に気を使う必要があるのでしょうか。ペロロンチーノ様らしく、欲望の限りを尽くしてもよろしいのでは」

「それではフラグがほぼ折れてしまう。できれば王道ルートを行きたい。無理やりというシチュもたまにはいいが、後回しだな。まぁ悪人になら多少のことはいいだろうが」

「フラグ・・・・・・王道・・・・・・ふふっ、なるほど。欲張りな方だ。さすがはペロロンチーノ様です」

「くくくっ、分かるかデミウルゴス。このHめ・・・・・・」

「あ、あのペロロンチーノ様。本当に分かってます?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてその頃、カルネ村へ向かった王国戦士長(イケメン)達が陽光聖典の特殊部隊と遭遇し全滅させられるのであるが、それはまた別のお話。

 


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