ペロロンチーノの冒険   作:kirishima13

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第21話 お風呂でばったりはエロゲの定石

―――ナザリック地下大墳墓 玉座の間

 

 精神支配を解除されたペロロンチーノに守護者たちはその帰還を喜ぶ。そして今後のナザリックの方向性を決めるため、主人に今まで何が起こっていたのかの確認を行うこととなった。今までの経緯を尋ねられたペロロンチーノは頭を押さえる。

 

「確か・・・・・・スレイン法国の特殊部隊漆黒聖典の女の子・・・・・・女の子だったよね?に魔道具(マジックアイテム)を使われて・・・・・・」

「いえ、確か最初はババ・・・・・・」

 

 シャルティアがその間違いを訂正しようとしたとき、ペロロンチーノは激しい頭痛に襲われた。

 

「うっ・・・・・・頭が・・・・・・」

「シャルティア!」

 

 ペロロンチーノの状態を察したデミウルゴスはシャルティアを遮り、目配せを行う。

 

「そ、そうでありんすね。最初は女の子でありんしたね」

「そうですよ、女の子・・・・・・可愛い女の子だったに違いありません!」

 

 記憶を女の子にでっちあげ、頭痛のおさまったペロロンチーノは精神支配されていた間に起こったこと、スレイン法国、そして竜王国であったことを語った。

 

「それからナザリックに戻ってきて・・・・・・戻ってきて・・・・・・何だっけ。黒い・・・・・・黒いカサカサしたものが・・・・・・うっ頭が・・・・・・」

「ペロロンチーノ様!そこまでで結構でありんす!」

「しかしペロロンチーノ様を精神支配し、道具として使おうとは。スレイン法国、竜王国ゆるすまじ。報復の準備はできておりますが、いかがいたしましょうか」

「報復?いや、結構楽しかった気がするし、それに二つの国は・・・・・・エロゲの開発に、ケモ耳娘の開発・・・・・・今後が楽しみだ。報復の必要はない」

「開発・・・・・・ですか?」

 

 ペロロンチーノは法国であった闇の神官長、そして竜王国とビーストマンたちの関係について語る。それを聞いてデミウルゴスは目を輝かせて喜んだ。

 

「それは素晴らしい!精神支配されている状態でありながら、望む世界への布石、まさに(フラグ)を立てていたわけですね。とくに異種間交配に着手されていたとは、先を越されてしまいましたね。さすがはペロロンチーノ様です」

 

 ペロロンチーノが守護者たちからの称賛を受ける中、デミウルゴスは侵入者たちより得た情報を報告する。その報告にペロロンチーノは口をほころばせる。ナザリック地下大墳墓に侵入者が現れ、それは撃退された、その者達の中からモモンガに関する情報を得たというのだ。

 

「モモンガさんいたんだ!それでどこに?」

「現在調査中ですが、それほど時間はかからないかと」

「分かった、調査を続けてくれ。それから捕えた女王や侵入者たちだけど・・・・・・」

「はっ!いかがいたしましょう」

「竜王国の女王はさっき言ったように価値があるので殺す必要はない。侵入者たちも情報の見返りに帰してやってもいいけど、モモンガさんの情報を得るまでは手放さないほうがいいかな」

「その後でも手放せばペロロンチーノ様の正体やナザリックの存在の情報が漏れてしまうのでは?」

 

 デミウルゴスの疑問にペロロンチーノはなるほどと思うとともに、かつての仲間たちがいたらどう思うかと少し考えると、不敵な笑みを浮かべる。

 

「それで何か問題はあるか?」

「え」

 

 かつての仲間であったなら喜んで侵入者の挑戦を受け入れたであろう。モモンガやウルベルト等の少し中二病が入ったメンバーであったなら嬉々として魔王ロールを楽しんだかもしれない。そう思うと侵入時にナザリックに居なかったことが少し悔やまれた。そんなことを考えるペロロンチーノにデミウルゴスは不思議そうな顔をして言葉を詰まらせる。

 

「ナザリックの存在が明るみになる。そして、ここを襲われるようなことがあって何か問題があるか?何百人、何千人にここが攻められたとして何か問題が?」

 

 他の守護者たちが答えに窮している中、その疑問にいち早く答えたのはコキュートスであった。

 

「ソノヨウナコトハゴザイマセン!ドノヨウナ者ガ何人来ヨウトモ全テ撃退シテゴ覧ニ入レマス!」

 

 コキュートスの自信を持った言葉に守護者たちは悔し気に顔を歪める。なぜ自分たちはすぐにその言葉を発せなかったのかという後悔だ。

 

「そのとおり!このナザリックが堕ちること何て俺はこれっぽっちも思っていないぞ?それじゃあ捕縛した人たちとは後で俺が話をしてみる。後は冒険者組合への報告か。アウラは冒険者組合に報告しておいてくれ。王国の村を襲ったのはスレイン法国の部隊らしいと。それから遺跡調査の依頼への報告だけど・・・・・・」

 

 ペロロンチーノの言葉の先を読みアウラが答える。

 

「帝国の冒険者組合にはすでに帰還者なしで報告しています」

「そうか。さて、今まで生きて帰ったものの居ない難攻不落のナザリックに侵入した勇者たちに会って来るとするかな」

 

 こうして、アウラは冒険者組合へ、ペロロンチーノは捕縛者たちの尋問に向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

―――ナザリック地下大墳墓 第六階層

 

 

 第六階層の一角に、ログハウスが建てられていた。中には複数の個室があり、それぞれの部屋は一人が十分快適に過ごせるだけの広さがある。入口から入った場所にはリビングがあり、そこに複数の男女が集まっていた。

 エルフのメイド達、フォーサイトの4人、そして竜王国の女王ドラウだ。ドラウはその服装を不憫に思った白髪の執事からメイド服を与えられていた。

 その中でエルフ達と他の者達との待遇は違う。彼女たちは奴隷から解放されたことを感謝し、ナザリックで働くことを望んだ。国に帰っても戦争に駆り出されるだけだからだ。その上でナザリックの一員として迎えられている。

 彼女たちと違い、フォーサイトの4人とドラウは捕虜という扱いであったが、ペロロンチーノの判断により開放することが伝えられた。それまでは客人待遇という扱いだ。命の心配が薄れ、ほっと胸をなでおろす彼らの前に、人間に擬態したペロロンチーノとシャルティアが現れる。

 

「いらっしゃいませ!ペロロンチーノ様」

 

 エルフのメイド達が一斉にお辞儀をする。その態度には明確な忠誠があり、彼らが本当にペロロンチーノに感謝しているのが分かるものであった。その中でただ一人、ドラウだけが不思議そうな顔をする。

 

「え?ペロロンチーノ?どこに?」

「ええっと、正気の状態では初めましてかな。初めまして、ドラウ陛下。俺がペロロンチーノです」

「ええ!?人間じゃったのか!?」

 

 ドラウが驚いている中、アルシェがペロロンチーノに対して謝罪の言葉と共に頭を地面に擦り付ける。

 

「ペロロンチーノ様。この度は申し訳ございませんでした!」

 

 アルシェに続き、フォーサイトの他の3人も頭を下げた。それを見ていたドラウも慌てたように頭を下げる。

 

「解放まで待つように言われていますが、お願いがございます!妹たちが無事かだけでも確認させていただけないでしょうか」

 

 アルシェはペロロンチーノに事情を説明する。両親が見栄のために借金を重ねていること、いくら説得しても聞く耳を持たないこと、妹たちを引き取るためにお金が必要であったこと、このままでは妹たちまで破滅すること。それを聞いたペロロンチーノはシャルティアに大きな鏡を用意させた。

 

「この鏡は遠見の鏡(ミラー・オブ・リモートビューイング)と言う。遠くの映像を見るための魔道具だ。様子を見てみよう、場所を教えてくれるかな」

 

 それはアルシェたちが見たこともないような高度な魔道具であった。あらためてこの地が外とはレベルの違うことを思い知る。帝国内の実家の場所を聞き、ペロロンチーノは鏡を操ってゆく。するとやがて、大きな屋敷が見えた。その前に馬車が止まっている。男たちが幼い少女二人に袋をかぶせて馬車にまるで荷物のように積み込んでいるところであった。その傍で両親と思われる男女は慌てるでもなく、平然と男たちから金貨を受け取っている。

 

「クーデリカ!ウレイリカ!」

「あれが妹さん?」

「お願い!妹たちを助けさせて!私が・・・・・・」

 

 縋りつくアルシェを落ち着かせ、ペロロンチーノはシャルティアを連れて、ナザリック入口より帝国へ転移した。

 その場に残ったアルシェたちは、遠見の鏡にペロロンチーノ達の姿を確認する。ここから帝国まで一瞬だ。その高位すぎる転移魔法に驚きつつ、鏡を確認すると男たちとペロロンチーノが話をしているようだ。

 やがて男たちの一人がペロロンチーノを殴ろうとする。その瞬間、男が倒れ伏した。シャルティアが動いたような気がしたが、アルシェたちには速すぎて捉えられない。怯む残りの男たちや両親を無視して妹たちの入った袋を掴むと、そのまま転移門(ゲート)をくぐり、ペロロンチーノ達は鏡の中から掻き消えた。

 

 しばらくして第六階層に姿を現したペロロンチーノ達にアルシェは駆け寄る。

 

「ああ・・・・・・クーデリカ!ウレイリカ!」

 

 アルシェは急いで袋を開け、妹たちを抱きしめる。妹たちには何が起こったのかわかってなかったようでキョトンとしていたが、姉を認識し、喜んで抱きついた。

 

「人身売買みたいだったから連れてきちゃったけどよかったかな?」

「ふふん、ペロロンチーノ様の慈悲深さにむせび泣くといいでありんす」

「シャルティアもよくやったな」

 

 ペロロンチーノがシャルティアの頭をいつものように撫でるとシャルティアもいつものようにその手にもっともっとと頭をこすりつけて目を細める。

 

「ありがとうございます!本当にありがとうございます!」

 

 アルシェは涙ながらに感謝する。そして家の名誉のために子供を売ろうとした両親を想い顔を歪ませる。

 

「まさか妹たちを売ろうとするなんて・・・・・・」

「アルシェ、ありゃもうだめだ。諦めろ」

 

 ヘッケランが諭すように言う。最後に借金を返し終えてから妹たちを連れ出そうとしていたが、あの両親たちにはその価値さえないだろう。

 

「うん・・・・・・そうする」

「ペロロンチーノさん、あんた結構いいやつなんだな」

「意外と優しいのですね」

「ただの変態かと思ってたけどやるじゃない」

 

 ヘッケランに続き、ロバーデイクとイミーナも同意する。それを聞いたドラウはもしやと思い、ペロロンチーノに問いかけた。

 

「そ、そうなのか?もしかして私たちの国でケモ耳娘とやらをつくらせると言う話も冗談か?」

「あれはぜひお願いします」

「!?」

「とにかく、ロリが増えるのは歓迎するよ。ここの施設は自由に使ってもいいから。第八階層にはバーもあるし・・・・・・。そうそう、スパリゾートナザリックっていう大きい入浴施設もあるから。じゃ俺はこれで」

「それではわらわもこれで失礼しんす」

 

 片手をヒラヒラ振りながら去っていくペロロンチーノの後を、優雅に一礼したシャルティアが続く。残った彼らの頭に先ほどペロロンチーノが言った言葉がよみがえる。そう、聞き捨てならないことを今彼らは言っていった。

 

「お風呂じゃと・・・・・・」

「それも広いお風呂?」

「最近ここで水浴びしかしてないよね・・・・・・」

 

 お風呂と聞いては黙っていられない。ドラウ、アルシェ、イミーナ、お肌を気にする女性陣の目が期待に輝いた。

 

 

 

 

 

 

―――スパリゾートナザリック

 

 男女合わせて9種17浴槽を持つそこにエルフ達、ハーフエルフのイミーナとアルシェ、そしてドラウが降り立った。お風呂の扉を開くと同時に、3人の口も大きくДの字に広がり間抜けな声を出す。

 

「「「ふぁー」」」

 

 このような神の居城に住んでいる以上大きいお風呂だとは思っていたが、想像していたものの規模が全く違った。その広さは一つの集落といってもいいほど広く、お湯を張った複数の湯舟があるが、その一つ一つも巨大だ。蒼く光り輝くお風呂や、奥にはジャングルが見える。お風呂にジャングルである。

 

「すごいのじゃ・・・・・・」

 

 ドラウの何とも味気ない感想にイミーナとアルシェも同意する。それしか表現のしようがない。

 

「すごいね・・・・・・」

「うん、すごい・・・・・・」

 

 3人が裸で佇んでいる中、クーデリカとウレイリカはシャワーを掛け合って喜んでいた。エルフ達は以前から使わせてもらっているようで、それぞれお風呂を楽しんでいる。ただし、いまだ棒立ちの3人にはエルフ達のその大きく揺れる自分たちにはないものがいやが応にも目に入って心が痛い。

 

「しかしあのエルフ達の胸・・・・・・」

「すごいのぅ・・・・・・」

「んー?どうしたのアルシェと陛下」

「いや、それは・・・・・・」

 

 言い淀むアルシェは自分の薄い胸とエルフ達のものを比べてため息をついた。

 

「んもー、可愛いんだからアルシェは。お姉さんに任せなさい」

「きゃー!」

「ほーれほれ。いっぱい揉んでおっきくしてあげるからねー」

「ちょっと、イミーナ!やめ・・・・・・あんっ」

 

 アルシェを弄ぶイミーナをドラウは呆れたように見つめた。イミーナの胸は歳の幼いアルシェと比較しても微妙だ。

 

「そんなこと言う割にはお主も小さいのう」

「なんですって!えーい、そういう子もこうだー!」

「ぎゃー!ちょ、やめるのじゃー!」

「うわー、肌すべっすべ。それにつるつるだー。ほら、アルシェも触ってみて」

「え、いいんですか?あ、本当だすっごいすべすべで・・・・・・ぺったんこ」

「何をー。これは仮の姿じゃ。見ておれ!私の本来の姿は・・・・・・」

「うわ、でっかくなった!」

「ふふん、ほれ。お主らの貧相なものと比べてみるが良い」

「「ぐぬぬ」」

 

 悔しがるイミーナとアルシェ。そんな姦しい女風呂の脱衣所に、侵入を成功させた者たちがいた。ペロロンチーノだ。今回は訳あってシャルティアは置いてきている。そして、なぜかヘッケランとロバーデイクが連れられていた。

 

「ちょっと、ペロロンチーノさん。不味いって殺されるぞ・・・・・・俺とロバーデイクが」

「そうですよ。神がこのようなことをお許しになるはずがありません」

「いやいや、俺のエロゲ神はこういっているよ。汝女湯を覗くべし、汝男仲間とその幸福を共有すべし、そしてそのすべてを後世の同志たちに残すべしと」

「あの・・・・・・意味が分かんねえよ」

「神を冒涜してるのですか?」

 

 二人を色々と引き留めるがそれを無視して、ペロロンチーノは女風呂の扉に手をかける、そして手は水晶のようなものがついた魔道具。しかしその時、風呂場全体に大きな声が響き渡った。

 

 

 

―――覗きをする者風呂に入る資格なし!これは天誅である!

 

 

 

「うわ、ライオン像が喋った」

「動いたわ!」

「あれ?でも脱衣所の方に行っちゃう?どうしたのじゃ?」

 

 女性陣が不思議そうに事の成り行きを見守っている中、命の危険を感じたヘッケランはロバーデイクの腕を引く。

 

「ロバーデイク、逃げるぞ!」

「ええ!これは不味そうです」

 

 逃げる二人を尻目に、ペロロンチーノは引かない。絶対に引くわけにはいかない。ライオン像が脱衣所の扉をぶち破り、その場にいる者に攻撃を加えてきたとしても。

 

「俺は負けない!同志たちのため・・・・・・いや、言い訳はよそう!他の誰のためでもない!俺・・・・・・俺自身のために!そう、この目で神秘を見るまでは!絶対に・・・・・・絶対に俺は倒れない!」

 

 その後、脱衣所一帯を破壊しつくした戦いという名の一方的な蹂躙はしばらく続いた。魔道具を守るため、一方的にボコボコにされた結果、ペロロンチーノは風呂でばったりと床にめり込んで倒れている。侵入者を撃退したことに満足したのかライオン像は元の位置に戻ってお湯を吐き出していた。エルフ達が心配してペロロンチーノに声をかけているが気が付く気配はない。

 

「ねぇ、イミーナ。この人なんなんだろう」

「さぁ?馬鹿だってことは分かるけど・・・・・・」

「何か手に持ったアイテムをずっと守ってたよね?必死に守って一方的にやられたみたいに見えたけど」

「時々チラチラこっち見てそのたびにぶっ飛ばされてたわね」

「おかしな奴じゃなぁ・・・・・・」

「「ぷっ」」

 

 ドラウのその呆れたような物言いに二人はつい笑ってしまった。

 

「ふふっ、ほんと馬鹿みたい」

「じゃが悪い奴じゃないの」

「うん、あたしも嫌いじゃないかな」

「クーデリカとウレイリカの恩人だしね」

 

 その後、裸の女性陣に囲まれているにも関わらずスパの中でペロロンチーノの意識は回復することなく、風呂から退場するのであった。

 

 

 

 

 

 

―――ペロロンチーノの私室

 

 激闘の末倒れたペロロンチーノは治癒を施され、自室のベッドに寝かされていた。傍にはメイドが一人いるのみで静かな部屋だ。ペロロンチーノは目を覚まし、周囲を確認する。まず心配したのは魔道具だったが、それは手の中にしっかりと握られていた。傷もついていない。ペロロンチーノはホッと胸をなでおろす。中を見るのが楽しみだ。

 だが一人で見るというのも味気ない。やはり想いを同くする同志とともに見たいものだ。ペロロンチーノは一人の人物を思い浮かべる。エロいことは好きなくせに恥ずかしがってツッコミを入れてくれたギルドマスターの姿を。

 そんな物思いにふけるペロロンチーノの頭にデミウルゴスから伝言(メッセージ)が届いた。

 

『ペロロンチーノ様、モモンガ様の居ると思われる国が判明いたしました』


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