ログ・ホライズン “円卓の従者たち” 作:よなみん/こなみん
今回から新しく、投稿していきます。
それではお読みください
異世界の始まり
「直継!玲音!右前方注意!」
「わかった!レオ!反対は任せたぜ!?」
「了解!反対は任せろ!」
シロエの言葉に俺と直継が叫び返すと、直継は鈍い銀色の盾を掲げ、人喰い草〈トリフィド〉をたたき落とし
玲音は、その手に弓を持ち、距離を取るため、牽制射撃を行いつつ下がっていく
「いいよ!そのまま!」
「主君!」
左から突出してきた緑色のうねる蔦を素早い一撃で牽制したアカツキはそのまま身体を低く沈めながら、シロエの護衛ができる位置に入っている
ここは〈スモールストーンの薬草園〉
小規模のゾーンではあるが、古代の遊具施設を含むに、周辺の廃墟とは違い、地形が変化に富んでいて戦闘が難しい
「つか、多くねぇ?」
「お前が下ネタ言うからだろ?」
「「以下同文」」
「俺のせいかよっ!?」
直継のツッコミに答えず、シロエは青白い魔法の矢を作り出すと棘茨イタチ〈ブライアーウィーゼル〉に投射した。
シロエの放った魔法の矢〈マインド・ボルト〉は付与術師〈エンチャンター〉のもつ基本的な攻撃方法で、単体の敵を撃ち抜く精神力の矢だ。
鋭い悲鳴を上げて跳ねる1メートルほどの齧歯類を見ながらも、シロエは脳裏に浮かぶアイコンを創相する
再使用規制時間〈リキャスト・タイム〉を表現するために色を失ったアイコンは、砂時計のようにゆっくりと復活してゆく。アイコンが輝きを取り戻すまで、この呪文は使用不可能だ。しかし、シロエが使用できる呪文は他にも30種類近く存在する
「ラッシュ!アカツキは左翼攻略っ、玲音は中央でっ」
「了解っ」
「まかせろっ」
「あいよっ」
それにそれらが使用できないとしても、今のシロエには三人の仲間がいる
「おらぁ、いっくぜぇ!〈シールド・スマッシュ〉ッ!」
苔に覆われた小径を鋭く前進して、盾を横薙ぎに払う銀鎧の戦士は直継。短い髪と陽気そうな瞳を持つ長身の男で、シロエの古くからの親友である
そんな直継の職業は守護騎士〈ガーディアン〉。敵の攻撃を一手に引き受ける戦士系三職のなかでも、最大の防御能力を誇り、〈エルダー・テイル〉においては不破の盾の異名を誇っている
「・・・・・・遅いっ」
その直継の前進で生まれた空間を、燕のような印象の少女が疾駆する。裂けたラグビーボールに口を生やした感じの奇怪な生物が襲いかかるが、少女は構えた小太刀で、駆け抜けざまに斬り捨てた。
黒髪を風のように舞わせる小柄な少女はアカツキ。
シロエのことを「主君」と呼んで憚らない彼女もまた、彼の友人である
彼女の職業は暗殺者〈アサシン〉。一撃必殺の技を振るう凄腕の剣士。その物理攻撃力は12職中、最大を誇る
「っ、まだ来るのか」
さらに遠くから増援の〈棘茨イタチ〉達を矢が高速で貫く
「・・・まぁまぁか」
増援で出てくるモンスターを湧き潰しするのは玲音。髪は直継の短い髪とは反対で、ポニーテール風に纏めており、耳には翼のピアスが着いている、彼もシロエの親友の一人である。
職業は、吟遊詩人〈バード〉。味方の回復や、能力補助などができる“歌”を使え、さらに身軽な武装を装備できるまさに軽装戦士。そのポテンシャルの多さから使う人には相当の技量が求められるものだ。
その三人の動きに見とれながらも、シロエは前進する
シロエの職業は付与術師〈エンチャンター〉。
魔術師系三職のうちでは、補助魔法と状態異常魔法に特化した完全な支援職だ。魔法系職業の常として防御力は心もとない。直継の頼りがいのある全身鎧はともかくとして、アカツキや玲音が着ているような〈冒険者〉用の革鎧さえ着けることはできない。
白衣じみた大きなローブマントの下は、ごく普通のチュニックシャツにズボンに過ぎないのである。
そんな、防御力に欠けるシロエが戦場で孤立したり、前衛に近づきすぎるのは望ましくない。しかも、背後からの奇襲を警戒しながら直継やアカツキ、そして玲音との一定の距離を保つ方が得策ということになる
もちろん。この〈スモールストーンの薬草園〉は高レベルのフィールドではない
現れるモンスターも、レベルは高くても50程度のものなのだ
シロエ達はレベル90の〈冒険者〉だ。
MMO-RPG〈エルダーテイル〉の世界において、ほとんど最高クラスの能力を持っている。いくらシロエの防御能力が低いとはいえ、これだけのレベル差があるとそうそう被害を受けることは無い
そもそも、直継は数が多いと言うが、10や20の人喰い草など、3人のうち誰だって、たった一人で蹴散らすことができることができる程度の敵である。
(とはいえ。今のところはね)
先ほどから、余裕ぶっては呟いてはいるが、直継やアカツキ、玲音の表情だって至って真剣だ。
戦闘とは、恐ろしいものだ
いくら強化された肉体を持っていて、魔法や剣技を駆使できるとはいえ、モンスターといざ、対峙するとなると恐怖がつきまとう
大地を踏む足も、武器を持つ手も自分のものなのだ。頬をなぞる風・・・耳障りな怪物の唸り声・・・血管を流れる血液も自分自身のものなのだ。
突然出される爪や牙、襲いかかってくる炎や酸のかたまり・・・前線ならそれをかわし、あるいは受け止めるのは、予想以上に大変だ。それらを乗り越えるためには、場数、経験しかないだろう・・・
「右っ!」
「「あいよっ」」
険しい顔をしながら、シロエの警告方向を素早く確認して、直継と玲音はそれぞれ回避しながら攻撃する
直継は長剣を叩きつけ
玲音は広範囲に矢を放つ
直継の牽制攻撃により、距離を取ったモンスター達が、玲音の矢によって餌食になっていく・・・
「そろそろ終わりか?」
「まだ来るか?・・・来ないな」
そう言う直継に冷静に分析して答える玲音・・・
直継は玲音の言葉を聞くと、片手剣を大きく振り回し、血を取ってから、鞘に収める
シロエ達も、言葉に頷くとそれぞれ武器を下ろし、しまいこむ
「いっぱい倒したな」
「一応敵影は・・・ないか。でも見張っとくから回収よろしく」
シロエは言葉に頷くと、玲音は素早く周囲を警戒する
脳裏のアイコンは赤い色からマリンブルーに変わっていく、どうやら戦闘状態が解除されるわけだ。
シロエ達三人は玲音警戒のもと、モンスターから戦利品を回収する
この数週間で何回も経験した行動だ
回収を終えると、シロエはマジック・バッグから水筒を取り出し一口飲む。飲んだあとに深いため息・・・
その深い息を見ていた玲音は少し苦笑いをする
それに照れてしまい、シロエはそばを見下ろす・・・
見下ろせば、白いローブマントの裾。野外向きの厚手の生地でできた、それでも上等なズボン・・・柔らかくて履き心地のいいショートブーツ
手に持っているのは杖だ。
〈思慮する木菟の杖〉ー魔法威力と詠唱速度を増加する。レアアイテム。シロエの財産の一つだ。
その長さは2メートルほどで、シロエの身長を越えている。
なかなか神秘的なデザインだ。かっこいいとも思うが、その「格好良さ」は現実のものでなく、ゲームの世界で感じるそれである。
シロエたちが〈大災害〉と呼びはじめたあの日の出来事を境に、全てはがらりと変わってしまったのである。
◇
ーー〈大災害〉ーー
大災害は突然起こった。
原因は不明だが・・・怪しいと思っているのは拡張パック・・・〈ノウアスフィアの開墾〉が導入されようとしていたこと、街の近辺で新人プレイヤーと遊んでいたら、この事件に巻き込まれていたと言うこと・・・それが、この〈エルダー・テイル〉の開始地点“アキバの街”にそっくりで自分たちはこのゲームのキャラの身体を持っているということ・・・それが、僕達が理解したことである。
・・・つまり、僕達はゲームの世界に閉じ込められたのだ。
ひっそり、まったりとやっていきます。
それではお読み頂き、ありがとうございました。
次回更新をお待ちください。