The HERO 〜ロード・オブ・ガロウ〜 (仮題)   作:十五夜の月

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暑い、やる気が出ないですね・・・
ゆったり行きましょ、暑いんで


VS脳無!!

 

 

 

 

 

 振り下ろさせた腕を間一髪の所で避けると身体がよろけそうになる。

 

 ーーー風圧だけでこのレベルか・・・。

 

 脳無。

 そう呼ばれた異形の巨大な男?はやはり異常であった。黒い皮膚の下にうねる様に発達した筋肉を包み込んでいる。身に纏っているのはズボンだけで、左右の膝部分には悪趣味な膝当て。

 顔は、B級映画から飛び出してきたゾンビのように脳と目がむき出しだ。

 無論、異常なのは見た目だけではない。

 スピード、パワー共に規格外で、恐らくオールマイトに匹敵すると思われるその力は個性を持ってしても消すことは出来ない。

 あのパワーでは例え捕縛が出来たとしても無意味、更に悪い結果にも繋がりかねない。

 

 ーーー参ったなこいつは。

 

 死柄木と呼ばれていた敵が此方に手出しをして来る様子は無いが、もしもアレが参戦したとなると敗北はほぼほぼ決定的であろう。

 死を意味していそうな拳を既のところで避けて風圧で体勢を崩さないように距離を取る。

 先程からこの状態が続いていた。

 

「・・・・・・変化がないと面白くないな、時間稼ぎのつもりか?」

 

 飽きてきたとでも言いたいのか、前髪と異様なオブジェのせいでその表情はよく分からないが雰囲気だけは伝わる。

 徐ろに歩き出した死柄木に警戒を色濃くした相澤だが、その脚は此方に向かわない。

 

「仕方ない・・・子供を何人か殺してからずらかるか」

「っーーーさせる訳が」

 

 わざと聞こえるような大きさの声で呟かれたのは明白。しかし、だからと言って罠だとわかっていても行動しなければ行けないのがヒーローの欠点でもある。

 

「余所見すんなよイレイザー。言っただろ、脳無は対平和の象徴だって」

 

 身体が警告を発する。

 音を鳴らして振るわれるあの剛腕をまともに受けることは、死を意味するだろうとすら思えてきてしまう。

 身体のあらゆる感覚、あるかどうか疑わしい第六感までもが相澤の脳に警鐘をけたたましく鳴らした。

 

「ーーーっ!!」

 

 脳無の腕が僅かに服を掠めた。

 身体に当たりはしていないが、風圧だけで身体が揺らぐ威力の拳は相澤の姿勢を難なく崩した。

 既に二発目の拳は振るわれていた。

 

「ぐっおぅ!!」

 

 ひしゃげる様な音に僅かに遅れてから灼熱の鋭い痛みが片腕に広がる。

 幸運なことに何とか身をよじることができ、直撃は避けられたがそれでもダメージはデカい。

 

 ーーー腕は完全に潰されたか。

 

 片腕は動かず、身体にも鈍い痛みが侵食する様に広がっていく。

 もはや満身創痍。気を抜けば即この場に削れ落ちそうな身体と心に鞭を打って踏ん張っていた。

 

「へぇ・・・頑張るなぁ、イレイザー。

  けど、本当はもう限界なんだろ?ホントのところは直ぐにでも横になりたいんじゃないのか?」

 

 死柄木の声には明らかに愉快そうな感情が含まれていた。この現状を楽しんでいるのだ。

 

「頑張れよ、イレイザー・・・続きだぜ?」

 

 

 

 ◎

 

 

 

 

 相澤が敵と戦っている広場から僅かに離れた水辺に三人の人影がある。

 黒霧によって水難事故ゾーンに飛ばされて、何とか協力しあって窮地から脱出を果たした緑谷、蛙吹、そして峰田の三人だ。

 

「なぁ、緑谷。やめとけって!いま行ったところで俺達には何も出来ねぇよ」

「けど、それでも・・・」

「緑谷ちゃん、勇気と無謀は違うのよ?」

 

 三人の視線の先には敵と戦っている相澤の姿がある。

 そこに飛び入ろうとする緑谷を峰田と蛙吹が止めている。緑谷とて無謀にも戦おうとしている訳では無い。自分に出来る限りのことをしようと考えている訳であるがーーー未だに良い案は浮かばなかった。

 

「けど、このままじゃ相澤先生が・・・」

「先生が苦戦する相手に俺らが勝てるわけないだろ!」

「勝てなくってもいいんだ・・・とにかくこの窮地から脱出出来れば」

「緑谷ちゃん。さっきみたいにそう何度も上手くいくとは思えないわ」

 

 二人にそう言われて緑谷は悔しそうに顔を歪める。

 

「ぐっおぅ!!」

 

 苦痛により漏れ出た相澤の声が三人の下まで聞こえてきた。見れば相澤の片腕が妙な方向に曲がってるのが視認できるーーー折れているのだろう。

 

「まずい・・・あのままじゃ幾ら個性を消せる相澤先生でも・・・」

「だからって行くなよ緑谷ぁ!」

「ダメよ緑谷ちゃん!」

 

 水場から上がり今にも駆け出そうとする緑谷の腕を二人が必死に掴んで、何とか抑える。

 打開策もない。

 上手く相澤の下までたどり着けたとしてもそこから逃がしてくれるほどあの敵達は優しくはないのも分かっていた。

 体格のでかい黒い敵が拳を振るい、相澤は後に飛び退きながら距離を取っている。緑谷たちがいる場所からでもそれが精一杯の回避である事が分かった。

 

「あっーーー」

 

 誰が声を漏らしたのか分からない。もしかしたら全員だったのかも。

 敵の拳を躱した相澤が大きくよろけてしまった。身体が震えたのは半身が浸かっている水のせいではないだろう。

 思わず目を背け、直後、ドギャッ!!という衝撃音があたりに響いた。

 

 ーーーやられた!

 

 沈黙が不安や恐怖といったあらゆる負の思いを掻き立てる。

 

「いててて・・・。随分と強いパンチだな」

 

 緊張感を感じさせない、とても聞き慣れた声が緑谷達の下に届いた。

 ツンツンと尖り左右に分かれた髪型、つり上がった目、肥大してなくとも鍛えこんでいるのが遠目からでも分かる肉体。黒いヒーロースーツに身を包む彼は間違いなくクラスメイトのガロウだった。

 何が起きたのか、と思いながら彼のそばを見ると相澤を守るようにして立つ彼の少し離れた場所にはクレーターが出来ていた。彼が何かしたのだろうか。

 しかし、先程の惨状を見ていた緑谷がこれからクラスメイトである彼が痛めつけられるのを見るのは出来ずに、叫ぶ。

 

「ガロウくん!そこから逃げて!!」

「あぁそこに居たのか。取り敢えず無事みたいだなぁ」

 

 目の前に敵が立っているというのに彼は此方に顔を向けて安堵したように言った。

 いったい何を考えているのだろうか。

 

「・・・・・・なんだそのガキ?先生を助けるために出てきたのか?ま、いいや。脳無、そいつを殺せ」

 

 死柄木の指示でガロウの目の前に立っていた脳無が、音を鳴らしながら拳を振り下ろした。

 敵は相澤を一方的に打ちのめす程の実力者。どう足掻いてもガロウがなんとか出来る相手ではないと思っていたーーー寸前。

 僅かな音の後に、必殺の威力をはらんだ剛腕が狙いであるガロウを逸れて地面を穿ったのだ。風と轟音が空気を揺らし、衝撃が地面を揺らす。

 

「なっ!」

 

 見ていた緑谷達の三人はポカンと口を開け、死柄木は驚きの声を僅かに漏らした。

 ガロウは無造作に左手を伸ばすと脳無の腕をがしっとつかみ体のひねりを加えて回転すると、死柄木に向けて投げ飛ばした。

 

「っ!!」

 

 抵抗らしい抵抗もせずに投げ飛ばされた脳無はかがみ込んだ死柄木の頭上を飛び越えて地面に身体を打ち付けた。ズザァァ、という擦りつけられたような音と一緒に。

 ガロウは体の向きを変えると地面に伏す相澤に腕を回して立ち上がり緑谷達の下まで来ると地面に寝かした。

 

「相澤先生は任せるぞ?」

 

 短くそう言うと再び身体の向きを既に起き上がって此方に歩いて来ている脳無に向ける。

 特に構えることもなく歩き始めると、力みを捨てたかのようにだらんと両の手を身体の左右に垂らした。

 やがて二人の間の距離がほぼほぼゼロへと近づきーーー

 パンッ!!という破裂音と共にガロウの片脚が掻き消えた。そして脳無の顎が上へと打ち上げられている様子を見てから初めて、ガロウが脳無の顎を蹴り上げたことにこの場にいた全員が気付いた。次いでズドォッ!!という音が拳を叩き込んだということを教えてくれる。

 しかし、どうかしたのかガロウは後ろへと跳び退いて距離を取った。

 

「妙だな・・・。二発とも結構力入れたんだが手応えがない・・・。それがお前の個性か?」

 

 ガロウの質問に対して脳無は何も答えずに目の前で佇むだけ。

 ガロウは短く息を吐くとそこでやっと姿勢を低くして構えを取って見せた。

 

「面白い個性だなぁ。

  まぁ、せいぜい楽しませてくれよ」

 

 






はい!という訳で、いよいよお待ちかねの脳無戦でございます。
作者としてもここからが本番という気持ちであります。
戦闘シーンの描写は中々に難しいですが楽しみですね。

感想ですが最近、死柄木達の事を心配する声がちらほら。
作者も書いていて死柄木君達が心配になってきます。
まぁ、気にせず書くんだけどね!

短いですが今日はここまで!
感想、コメントよろしくお願いします!
では次回!
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